旅限無(りょげむ)

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北朝鮮流のオバマ歓迎 其の壱

2009-11-12 16:04:35 | 外交・情勢(アメリカ)
■米国テキサス州のフォートフッド陸軍基地で絶望的な「アッラー・アクバル」乱射事件が起こったのが11月5日午後1時半(日本時間6日午前4時半)のことでした。短時間に100発以上の銃弾が発射され、米兵13人が死亡し31人が負傷したとのことでした。事件を受けたオバマ大統領は11月11日の「退役軍人の日」まで全米で半旗を掲げて喪に服すようにとの指示を出したのでした。皮肉なことに乱射事件を起こしたイスラム教徒の軍医殿は、退役ならぬ「除隊」を申請して却下されたことで絶望したことが犯行動機だと言われていますなあ。
 
オバマ米大統領は11日、ワシントン近郊のアーリントン国立墓地で行われた「退役軍人の日」の献花式で演説し、現在アフガニスタンなどに派遣されている兵士について「遠い場所での困難に耐え、私たちを危険から守っている」と述べ、国への貢献をたたえた。……演説の後、オバマ氏とミシェル夫人は墓地内のイラク戦争とアフガンでの戦争の犠牲者が眠る区画を予告なしに訪れ、遺族を驚かせたという。……「(大統領の職務の中で)軍の司令官ほど重大なものはない」と強調。現在戦地にいる兵士に対しては「多くの人が自分の利益を追求する中で、大きな目的のために尽くしてきた」と賛辞を贈った。
2009年11月12日 産経ニュース

■米国にとって沖縄を筆頭に日本各地に存在する基地も「遠い場所」の中に含まれましょうし、そのまた西隣の北朝鮮はもっと「遠い場所」ということになりますなあ。乱射事件が起こったことで、12、13両日を予定していた訪日の日程が1日遅れに変更され、大統領はテキサスの現場に行ってからワシントンに戻って「退役軍人の日」に演説したのでした。そして、いよいよ13日に訪日して鳩山サセテイタダク首相と会談です。

■オバマ大統領は13日に鳩山サセテイタダク首相主催の晩餐会に出て、都内に1泊して14日に日本からシンガポールに移動するそうですから、実に慌しい1泊2日になりそうですなあ。あまりに忙しい日程なので沖縄の基地問題を取り上げる暇は無いのだそうです。シンガポールではアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席して誰かさんが掲げる「東アジア共同体」を牽制するとかしないとか……。何処の誰が仕掛けたのかは存じませんが、13日に首脳会談と晩餐会を行なう鳩山サセテイタダク首相はオバマ大統領が14日も日本に滞在してアジア外交に関する演説をしたり、天皇陛下と対面したりするのを百も承知の上で、13日深夜に一足先にシンガポールに出発するのだそうですぞ。

■オバマ大統領は14日の夜にシンガポールに向けて出発しますが、勿論、沖縄は飛び越して行きますしアフガニスタンへの兵力増派を決定済みの韓国も一旦は素通りしますが、シンガポールからの帰路に北京とソウルを訪問するのだそうです。歴訪の目的は「米国は二十一世紀のアジア・太平洋地域の指導者になる」ことだそうですが、今までの自民党政権だったら唯々諾々と受け入れて幇間(ほうかん)まがいのお追従コメントを出したところでしょうが、さてさて、鳩山サセテイタダク首相はどんな反応を示すのでしょうなあ?

■そこで「大事な国を忘れちゃいまんかってんだ!」と怒って見せているのが北朝鮮。


韓国と北朝鮮の海軍が10日、7年ぶりに交戦した。南北の警備艇による銃砲撃戦の現場は、西海岸の黄海上の南北軍事境界線付近。この海域では過去にもしばしば軍事衝突があり、南北で対立と緊張が続いている“海の火薬庫”だが、オバマ米大統領の日本や韓国訪問を前にした衝突の背景が注目される。北朝鮮の意図としては今のところ「韓国との緊張を印象付けることで内外の関心を集め、念願の対米交渉実現を図ることと、軍および民心に緊張感を持たせ国内引き締めを狙っている」(韓国軍当局筋)というのが大方の見方だ。

■銃撃戦が起こったタイミングが絶妙で、米国務省がボズワース北朝鮮政策担当特別代表を「適切な時期」に訪朝させると発表した直後だったようですから、お見事と言うべきか、北朝鮮らしい分かり易くも実に荒っぽいやり方をするものだと呆れるべきか……。


……李明博政権下の韓国軍は、対北融和政策で“事なかれ主義”に終始した過去10年の政権とは異なる。今や北朝鮮の軍事的挑発には“断固対応”との姿勢に変わっている。今回、韓国軍は北朝鮮警備艇からの銃撃に対して即時、応戦し、警備艇を半壊させ撃退している。「これまでは応戦に際しては上部の判断をあおぎ、自制することが多かった」(同筋)という。

■韓国の警備艇にはミサイル装備は無かったのかも知れませんが、半壊させて逃走を許したのは、意図的に撃沈しなかったのか、それとも惜しくも取り逃がしてしまったのか?まあ、撃沈!となれば相手は怪しい不審船ではなくて正式な警備艇なのですから、後始末が大変だったことでありましょうが……。


「西海五島」と呼ばれる延坪島沖では1999年と2002年に、南北間で戦死者を伴う激しい衝突(1次、2次延坪海戦)があった。しかし、李政権はこれまで冷遇されてきた戦死者の顕彰を積極的に進めるなど、軍の士気高揚を図ってきた。……北朝鮮の警備艇は韓国側の無線による警告を無視し、境界線を越えて韓国側への侵入を続けた。このため韓国警備艇が海上に向け警告射撃したところ、北朝鮮警備艇は韓国艇に向け直接銃撃を加えてきたため交戦状態になったという。

■北朝鮮の警備艇に無線機が積まれていたのか?という素朴な疑問も湧きますが、搭載されていても故障か電池切れなどのトラブルが発生したのかも?まあ、どちらにしても南進したのは故意によるものでしょうなあ。


韓国側でNLL(北方限界線)といわれている海上の南北軍事境界線は、北朝鮮の沿岸近くまで深く切れ込んでいる。このため北朝鮮は現状に不満が強く、NLLを無視する侵犯を繰り返してきた。今回、北朝鮮警備艇が警告を無視して侵入を続け、さらに韓国警備艇を攻撃してきたことに対し、韓国軍当局をはじめ韓国政府は「単なるNLL無視作戦」とは別に「政治的な意図」を感じている。

■6カ国協議を再開するという名目で米朝二国間協議へと落とし込みたい北朝鮮としては、ボズワース北朝鮮政策担当特別代表の訪朝が本決まりになってオバマ大統領が近所に飛来する時期を狙って、自国の存在と意志と意地を示しておきたかったと推察されますなあ。


北朝鮮は現在、核問題をめぐって米国との直接交渉の実現に全力を挙げている。南北間の軍事衝突は米国の目を朝鮮半島に引き付け、米国を北朝鮮との対話の場に引き出すのに効果がある-と計算しているのではないか……。
2009年11月10日 産経ニュース

■地下資源を除いて、核兵器とミサイルと偽札・偽タバコ・偽薬ぐらいしか売り物が無いお国柄なのですから、何かと言うとミサイルを花火みたいに打ち上げたり、「乱射」事件を起こさないと格好が付かないようです。どこまで本気かは不明ですが、「核無き世界」を語り始めた米国大統領を相手に「核だけは持ちたい」北朝鮮が危ない綱渡りを続けられるのも後わずかかも知れません。そうなって欲しいのですが……。

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