旅限無(りょげむ)

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松山上陸作戦 其の壱拾四

2007-03-18 23:49:35 | 著書・講演会
■長いようで短かった、楽しい松山翻訳合宿ツアーもいよいよ終盤となりまして、車に分乗して港に向かいます。何せ出港時刻が午後10時40分なので見送る方は大変です。後で調べて分かったのですが、午後9時10分に港行きのリムジン・バスが有ったのですから駅前で放り出して下さっても良かったようなものです。安酒でも買い込んで港に向かえば、好き勝手に飲んだり唄ったり……それも迷惑な話かも知れませんなあ。最後まで責任を持って熱烈に見送ろうというわけで、先生方がしっかりと港のターミナル・ビルまで一行を送り届けて下さったのですが、大人しく2階部分の乗船通路に上っていくような連中ではありません。

■手馴れたもので混雑している受付カウンターに巧みに割り込んで?さっさと乗船手続きを済ませた生徒たちに、「おい、ちゃんと学生証を見せて割引料金で切符を買ったんだろうな?」と問えば、「アッ忘れた」と、いつも通りのチベット式ウソ・ジョークが返って来ます。馬鹿馬鹿しいので本気では付き合わずに、勝手に言っておれ!と突き放すと、今度は真面目な顔になって、この時のために用意していた特別製のカタ(儀礼用スカーフ)を取り出す生徒達でした。最初から最後まで、いろいろとお世話になった総責任者の佐藤先生を代表としまして、松山の皆様に感謝を込めて長いカタを厳かに進呈です。「どうやって受け取るの?」とどぎまぎしていた佐藤先生でしたが、生徒たちの助けを借りて首に掛けると嬉しそうでした。

■嫌な予感が当たりまして、「先生!」と呼ばれて取り囲まれて身動きが取れなくなったところに、まったく愚かなことにラサから取り寄せたという絹製の馬鹿長いカタが持ち出されました。「馬鹿野郎!こんな高いものを買って来るんじゃない!」と言っているのに、ほとんど羽交い絞め状態で首に掛けられてしまいましたなあ。ラサの名刹「大招寺」の刻印付きで、有り難い経文が織り込まれている純白のカタです。徳の高いお坊様じゃあるまいし、こんな立派なカタが受け取れるか!と騒いで見せましたが、強引に肩を抱きすくめられて横に並んで記念撮影へと雪崩れ込んだのが、この記事に添付した写真です。

■写真撮影の後は握手だの抱擁だの、一目もはばからずにチベット式の別れの儀式となりまして、さすがに他の乗客や見送りの人も多かったのでチベット式の歌や踊りは有りませんでしたが、居合わせた日本人の眼を驚かせに充分な演出だったでしょうなあ。「早く船に乗って風呂に入って、皆でビールを飲みなさい」「ハーイ」というわけで、元気に乗船通路に続く階段を上って行った生徒達でした。小生よりも共に見送って下さった松山の先生方の方がじーんと来たらしく、名残惜しそうに手を振って連中の姿がすっかり見えなくなるまで見送っておられましたなあ。

■一緒に帰りの船には乗りませんでしたが、船室に荷物を置いたらすぐに風呂に走り、わいわいと楽しく入浴した後は深夜のデッキに上って隠し持った?酒を酌み交わして唄って踊ったことでしょう。翌朝には大阪南港に上陸して、それぞれの大学に無事に帰ったとのメールが届きました。事情が有って帰るのを1日伸ばした小生は、そのメールを松山で受け取ったのでした。従いまして、生徒の乗船を確かめてからは、大学の先生方と一緒に松山市内の某所に移動して、生徒抜きの「反省会」を2時間ほど楽しんで?あれこれと話し込んだのでした。大学入試の間隙を縫って実行されたチベット人学生の訪問イベントが終了して、翌日からは再び入学試験の監督や運営に当たらねばならないのに、深夜までお付き合い頂きまして、本当に有難うございました。

■大学の来客用宿舎に一泊しまして、もう1日だけ松山を密かに堪能してから、生徒と同じ船に1日遅れで乗って大阪に戻ったような次第ですが、そのたった1日のずれが、別のブログ記事にも書いた通りに、高知県でのカナダ製航空機の「胴体着陸」と、同じ愛媛県南部で起こった『白鯨』事件を非常に身近に感じる巡り会わせとなったわけです。実感としまして怒涛の3日間、前後の移動を含めればほぼ1週間、事前の打ち合わせや準備を含めますと1箇月余の時間を要した大イベントが、こうして終わりました。残念ながら「歴史的瞬間」に立ち会う機会を逸した松山の学生諸君や市民の皆さんが、後知恵とはなりますが微かにでも残った噂を頼りに、拙著を読んでチベットと松山との不思議な縁を考えて下されば幸いです。本当にチベット人が『坊っちゃん』を読んで翻訳までしたのかいなあ?と思われる方は、是非とも拙著を手にとってじっくりと読んで欲しいものでございます。下手な文章ですが、ウソ偽りは一切ございませんので、安心してお読み下さいませ。オシマイ

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