旅限無(りょげむ)

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岐阜から福島へ、次は何処? 其の六

2006-10-03 19:22:04 | 政治


福島県の佐藤栄佐久知事(67)は27日、辞職願を県議会議長に提出した。県発注の下水道談合事件で実弟の紳士服メーカー「郡山三東スーツ」社長佐藤祐二容疑者(63)が逮捕されたことで、道義的責任は免れないと判断した。28日の県議会本会議で辞職が認められる見通しで、50日以内に知事選が行われる。辞職願提出後、県庁で記者会見した佐藤知事は、「談合事件で県民に迷惑を掛け、心からおわびする。実弟や県職員OBまで逮捕される事態となり、道義的責任を取り、県政に対する県民の信頼を取り戻すために18年間の職務に自ら終止符を打つ決意をした」と述べた。 
時事通信 - 9月27日

■「18年間も談合政治をやっていたのか?」と突っ込まれたらどうするのでしょう?辞職すれば信頼が回復するほど福島県民は間抜けとも思えませんが、芋ズル式に摘発が続いたら岐阜県どころの比ではない大規模な処分が必要となりますぞ!


福島県発注工事の談合事件で、入札情報の漏えい元となった財団法人「福島県建設技術センター」(福島市)と同様に、公共工事の設計・積算業務を行う外郭団体が全国に41あり、うち38団体に計209人の道府県職員が天下りしていることが、毎日新聞の調査で分かった。出向者は37道府県で計452人。一方、既に解散や出向の取りやめを決めた自治体もあり、センターが絡む官製談合発覚を機に、見直しへの動きが強まりそうだ。調査対象は41道府県などが出資した財団・社団法人。京都と青森を除く39団体の理事長を現職幹部かOBが務め、道府県のほか市町村からも委託を受け、公共工事の設計・積算などをしている。

■安倍新総理が思い切って大鉈を振るえば少しは「美しい国」になる大掃除が出来そうですが、最初の国会質問では大した話は出ていないようです。国が吸い上げた税金が、公共事業の工事現場に達するまでに、一体、どれ程の抜き取りやら山分けやらで減っていることやら……。これでは増税議論など危なくて出せないでしょうなあ。


天下りが最も多いのは「静岡県総合管理公社」の16人(全職員の約23%)。「三重県建設技術センター」が15人▽「栃木県建設総合技術センター」が14人▽「福井県建設技術公社」と「富山県建設技術センター」が各12人と続く。出向者が最も多かったのは「兵庫県まちづくりセンター」の42人(同約37%)。「愛知県都市整備協会」が36人▽「沖縄県建設技術センター」が34人▽「栃木県建設総合技術センター」と「福岡県建設技術情報センター」が各32人だった。元々は設計・積算能力の低い市町村を支援するため、各地で県発注分と併せて業務を行う団体が設立され、技術力を持つ県職員が業務を担当してきた。

■静岡県と聞けば「第二東名」と静岡空港の名前が思い浮かびますし、福井・富山と聞けば「整備新幹線」、愛知県でも「第二東名」という具合ですが、列挙されている地方自治体の名前が、何故か最近の「酒気帯び運転」の多い地域と重なっているのが気になりますなあ。


しかし、最近になって「民間にできることは民間に」「出向による行政の肥大化見直し」などを理由に、広島県が4年後をめどに廃止を決定。青森、山形、新潟、長野の各県は出向を中止し、群馬、神奈川、岐阜などの各県は年々出向者を減らしている。福島県の川手晃副知事は、事件への批判から廃止の検討を表明しており「官民癒着の場になる」との批判が、各地の見直しを加速させそうだ。……毎日新聞 - 9月29日

■本気で大掃除をしないままで「道州制」だの「財源委譲」などが進むと大変な事になりそうですぞ。破綻の可能性がどんどん高くなる地方自治体が増え続ける速度と、事情効果が表れるのと厳しい競走になりますが、間に合わなかった所は次々と国家の管理下に置かれて行くのでしょうか?


大阪市は29日、市政改革の一環として、今春退職した課長級以上の元幹部職員313人の再就職先や氏名、役職を初めて公表、市のホームページにも一覧表を掲載した。再就職したのは220人で、55・5%の122人が外郭団体に天下りし、うち26人が役員待遇で迎えられていた。民間企業には18・6%の41人が就職。外郭団体や公共事業を請け負う企業などが、市OBの受け皿になっている実態が浮かび上がった。市は職員厚遇問題を受け、「再就職活動の透明性を確保する」とし、今年から7月1日時点での再就職先状況を9月に公表することを制度化した。政令市では、札幌、仙台でも実施している。
読売新聞 - 9月30日

■悪名高い大阪市でも、こうした動きが出ているのは目出度い事ですが、福島県の次に摘発を受ける地方自治体は必ず現れるはずですから、選挙民の意識を大急ぎで改善して行かないと恐ろしい国になってしまいそうです。地方の農林水産業には後継者が居ないという悲鳴が全国から上がっているのですが、地方自治体が次々と全国的に恥を晒していると若い人達が故郷を見棄てて出て行くのを止められなくなるでしょうし、地元に残るのは公金を貪る困った人達ばかりになるといよいよ地方は衰亡して行くことになるのではないでしょうか?

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岐阜から福島へ、次は何処? 其の伍

2006-10-03 19:21:38 | 政治


福島県発注の下水道工事をめぐる談合事件で、工事を落札した準大手ゼネコン東急建設側が、佐藤栄佐久知事実弟の郡山三東スーツ社長佐藤祐二容疑者(63)、元同県土木部長坂本晃一容疑者(65)の2人に、入札前にそれぞれあいさつに訪れ、工事の「本命」に決定したことを報告していたことが26日、関係者の話で分かった。これを受け、両容疑者が最終的に話し合った結果、東急建設の落札が了承されたという。……祐二容疑者は逮捕前の聴取に対し、事件との関係を全面否定。一方、坂本容疑者は任意聴取に、談合への関与を認める供述をしていたとされる。坂本容疑者は、県土木部長に就任した1998年ごろから、祐二容疑者と密接な関係になったという。関係者は「県発注工事に関して、2人は頻繁に意見交換していた」としている。…… 河北新報 - 9月26日

■あぶくま高原道路は1995年に着工し、97年には「1億258万5000円」の予定価格ぴったりというビンゴ!が出ているそうですから、捜査は98年からの談合疑惑では収まらない可能性が高いようです。


福島県発注工事をめぐる談合事件で、同県の川手晃副知事は26日、入札関連情報が恒常的に漏えいした疑いが浮上している県出資の公益法人・県建設技術センター(福島市)を廃止する方針を明らかにした。元県土木部長で同センター理事長を務めた坂本晃一容疑者(65)らが逮捕されたことを受けての対応。川手副知事は「歴代土木部長がセンター理事長に就任する慣行の中で、官製談合が疑われる事態になった。属人的な問題ではなく、システムの問題」と指摘し、3年から5年で廃止する前提で組織改革を進める考えを示した。同センターは県と県内市町村が出資して1978年に設立。自治体発注の公共工事の調査や設計、積算業務を受託している。理事長には県の土木部長経験者が就任する慣例になっているほか、課長以上の要職も県土木部の出向職員が占める。

■78年と言えば、田中角栄さんのロッキード裁判の真っ最中ではなかったでしょうか?角栄さんが全国に構築した談合・口利き・献金の無限軌道は健在だった事が裏付けられるような話ですが、公金を使って談合センターを組織するとは、ちょっとやり過ぎでしたなあ。そんな事を30年も続けて来たというのは悪しき先例主義の結果なのでしょうから、既にリタイヤした人々の中には赤い舌を出して笑っている者が隠れていそうです。


佐藤知事は、25日夜は郡山市の自宅にこもり、コメントを出すだけで報道陣の前に姿を見せなかった。佐藤知事は同日朝、自宅前と県庁で取材に答え、自らの姿勢について「原発問題などで国の方向にさおを刺すようなことをやってきた。身ぎれいにしながらやってきており、弟がそれは一番理解していると思ってきた」と従来の釈明を繰り返した。県議会では、最大会派の自民党や第2会派の県民連合が、冒頭で佐藤知事による状況説明が予定されていた本会議への対応などをめぐって幹部らが断続的に協議。自民党は、佐藤知事から説明を聞く全員協議会を本会議前に開催することを要望することを決め、渡辺敬夫議長に申し入れた。共産党県委員会と県議団は同日午前、「佐藤知事の政治的、道義的責任は免れない」として、政治責任と進退を自ら明らかにするよう佐藤知事に求める申し入れを行った。 河北新報 - 9月26日

■こういう時こそ共産との出番なのですが、全58議席中2議席では多勢に無勢ですなあ。民主主義も独裁体制を生み出すことが有るという当たり前の課題がまだまだ残されている事を痛感します。自民党だけでも33議席、県民連合を含めれば48議席、公明党の3議席など無くても圧倒多数が確保されていますから、佐藤知事の発言力は絶大で、議員でもない弟さんの影響力も絶大。


福島県発注工事を巡る談合事件で、県建設技術センター元理事長の坂本晃一容疑者(65)が、発注担当の県幹部に工事の受注予定社名を伝えていたことが分かった。その際、佐藤栄佐久知事の実弟、佐藤祐二容疑者(63)の名を挙げ「祐二さんの案件」と強調。これを受け、県側は入札に便宜を図ったとみられる。 
毎日新聞 - 9月27日

■豊臣秀吉と秀長みたいに佐藤知事は兄弟で県政を動かしていたのですなあ。時代錯誤も甚だしいとは思いますが、二世議員や二世官僚が掃いて捨てるほど居るのですから、兄弟知事?が現れてもちっとも不思議では有りませんなあ。


福島県の佐藤栄佐久知事(67)は27日午前、進退をめぐって川手晃副知事ら側近と最終的な協議をした。……佐藤知事は、祐二容疑者の逮捕後も陳謝はしたものの、捜査の推移を見守る意向を表明し、進退を明確にしていなかった。しかし、これまで静観の構えを見せていた自民党など県議会与党会派内からも、辞職勧告決議案や不信任案を提出する動きも出て、議会は開会日の26日から混乱していた。こうした状況を踏まえ、佐藤知事らは27日午前、副知事らを交えて対応を協議した。進退を明確にしないままでは、28日からの代表、一般質問で議会が空転する恐れもあると判断しての辞職説得とみられる。……毎日新聞 - 9月27日

■佐藤知事は不信任案だの辞職勧告決議などと聞いて、「ブルータス、お前もか!」の気分で、飼い犬に手を噛まれた我が身を悔しがっているでしょうなあ。議員のほとんどが文字通り知事の「飼い犬」になっていたのですから、福島県民の質が問われますなあ。困りました。

岐阜から福島へ、次は何処? 其の四

2006-10-03 19:21:07 | 政治


福島県発注の下水道工事をめぐる談合事件で、刑法の談合容疑で逮捕された地元建設会社「佐藤工業」会長、佐藤勝三容疑者(67)が、昨年5月の県建設業協会の総会で、県内建設業者約300人に対し「落札予定会社は予定価格と落札額の差を5%以上あけるように」と談合の隠蔽(いんぺい)工作を指示していたことが22日、関係者の話で分かった。佐藤容疑者は当時、同協会会長。佐藤容疑者が地元業者の受注調整を主導していた実態が浮き彫りとなった。同協会をめぐっては、自動車専用道路「あぶくま高原道路」の改築工事で組織的に談合に関与した疑惑が浮上しており、東京地検特捜部は同道路工事についても、佐藤容疑者らが談合に関与していたとみて、捜査を進めているもようだ。

■福島県須賀川市には立派な地方空港が寂しく営業しております。『冬ソナ』ブームの時には叔母様達が韓国ツアーに飛び立ったようですが、その後はさっぱりのようで、中国バブルにあやかろうと上海定期便で巻き返しを図ろうと頑張っております。その福島空港を中心として阿武隈山地を貫通して、東北自動車道と常磐自動車道を結ぶという大プロジェクトが『あぶくま高原道路』であります。飛行場の利用客が増えないのは道路事情が悪いからだ!との理屈で着工されたのですが、東北の動脈となっている東北道と空港は既に平成14年9月に繋がっているのです。東北道とは比較にならないほど交通量の少ない常磐道に向かって着々と立派な高原道路が延びている最中です。

■お陰さまでアカデミー賞の出品作品にまでなった『フラガール』で有名になりつつあるスパリゾート・ハワイアンを目指して全国から福島空港に飛行機が集まり、高原道路を東に走る観光バスが数珠繋ぎにでもなってくれれば良いのですが……。総工費1300億円ですから、元を取るのは大変だなあと思います。さてさて、1300億円から一体、幾らのカネが抜かれたのでしょう?


関係者によると、佐藤容疑者は昨年5月20日、福島市内で開かれた県建設業協会総会に会長として出席。あいさつに立った際、「最近は(談合を監視する)公正取引委員会も厳しくなった。いずれ福島もやられるだろう」と話したうえで、「予定価格と落札額に5%以上開きがあると談合とみられにくいようだ。今後は落札予定会社はきちんと5%以上あけるように」と談合隠しを指示したという。同協会には福島県内の建設業者など323社(今月22日現在)が会員として加盟。昨年の総会には約300人の業者が出席していた。佐藤容疑者はこの総会終了後、会長を退任している。あぶくま高原道路工事をめぐっては、入札に参加した複数の地元建設業者が特捜部の聴取に「県建設業協会が入札に参加する共同企業体(JV)の組み合わせを決めていた」などと供述しており、同協会が組織的に談合に関与していた疑いが出ている。設備会社社長の辻政雄容疑者(59)が談合を仕切り、落札業者側から謝礼を受け取っていた疑いも持たれている。産経新聞 - 9月23日

■「5%以上の開き」という隠蔽工作は無駄になったようです。既に談合によって入札が終わり着工していた『あぶくま高原道路』の落札時の平均受注額は予定価格の「99・2%」だったそうですから、言い逃れは不可能でしょうなあ。


福島県発注の下水道工事をめぐる談合事件で、東京地検特捜部は25日、佐藤栄佐久知事の実弟が受注調整に不正に関与した疑いが強まったとして、競売入札妨害容疑で、実弟の紳士服メーカー「郡山三東スーツ」社長佐藤祐二容疑者(63)、元県土木部長で前県建設技術センター理事長の坂本晃一容疑者(65)ら3人を逮捕した。佐藤容疑者は、同工事の受注業者から謝礼金を受け取ったとされ、特捜部はさらに詳しい資金の流れを調べる。水谷建設(三重県桑名市)の脱税事件捜査を発端とした福島県談合事件は、知事親族に対する強制捜査へと発展。知事の進退問題に波及する可能性も浮上した。ほかに逮捕されたのは、工事を落札した準大手ゼネコン「東急建設」東北支店の前副支店長門脇進容疑者(63)。特捜部は同日、佐藤容疑者の自宅や郡山三東スーツなど関係先を一斉に家宅捜索した。時事通信 - 9月26日

■『セーラー服と機関銃』ならぬ、『紳士服と談合疑惑』という笑えない構図が浮かび上がっているようです。ゼネコンの社員でもスーツは必須アイテムでしょうが、佐藤知事の実家が経営しているスーツ会社には土木建築関連の企業から大量の注文が出されていたのだそうです。何だか、安手のテレビ時代劇に出て来る饅頭入りの桐箱に小判が並んでいるシーンを思い出しますなあ。

岐阜から福島へ、次は何処? 其の参

2006-10-03 19:20:39 | 政治
■しかし、あちこちで暴露される「裏金」の金額に驚いてばかりもいられません。巨大な公共事業を巡る「談合」となりますと、小役人が帳簿を改竄してちびちびと貯め込んだカネとは桁違いの公金が闇から闇に流れますからなあ。ちょっとした工事でも100億円単位、大規模なものとなったら兆を越える予算が組まれますから、「口利き料」「情報料」「謝礼」「陣中見舞い」「ご挨拶」などなど、2%だの5%だのと裏の慣例に従って入札時に上乗せされて抜かれる公金は、途中でも怪しげな連中にピン撥ねされて最後は国会議員の政治資金に流れ込むのですからなあ。申告処理される表の政治献金と裏で動く闇献金の合計と、どちらが多いのかは永遠の謎ですが、長期政権が有るところでは、慢性的に裏金が動いてしまうので合計金額は恐るべきものになるはずなのですが、その全貌が公になる事は少ないですなあ。

福島県議会は28日午後開会の本会議で、佐藤栄佐久知事(67)が27日に提出した辞職願に全会一致で同意した。これにより佐藤知事は県発注の下水道談合事件で実弟が逮捕された責任を取り、28日付での辞職が決まった。後任を決める出直し知事選は、10月26日告示、11月12日投開票の日程が有力となっている。 
時事通信 - 9月28日

■福島県議会では、岐阜県のような議場での質問に関する「注意書き」は回されなかったようです。それもそのはずで、オール与党体制の仲良しシャンシャン県議会をずっと維持しているからです。御多聞に漏れず、佐藤知事は「知らぬ存ぜぬ」を通して「辞めない」つもりでしたが、検察庁がずっと内偵を続けていた事が分かってからは、弟さんの首を差し出して自分はさっさと辞職する事にしたようです。県議会の議席に並んでいる先生方も、選挙活動では佐藤知事に大変にお世話になっている面々ですから、口幅ったい事は一切言えませんなあ。下手をしたら特別予算で「慰労金」ぐらいは出しそうな雰囲気のようです。


県発注の下水道工事で談合したとして、東京地検特捜部は4日夜、競売入札妨害(談合)容疑で設備会社(郡山市)社長(59)と県内トップ級の建設会社「佐藤工業」社員(47)を逮捕した。また、両容疑者の自宅、福島市の佐藤工業本社をはじめ、同社会長(66)や元県土木部長(70)らの自宅を家宅捜索した。社長は佐藤知事の支援者で、地元談合の仕切り役とされ、逮捕容疑の工事を落札した東急建設(東京)から謝礼金を受け取っていたという。特捜部は水谷建設事件に端を発した“福島疑惑”の全容解明を目指すとみられる。
福島民報 2006年9月5日

■全国的に公共工事の話が有れば怪しげに暗躍していて、その筋では大変に有名だった水谷建設が検察庁に目を付けられ、田舎の気楽さなのか福島県を舞台にする露骨な土地転がしが見つかったというのが事の発端だったようです。水谷建設という建設会社は、面白い事に建設工事をやらないのに大金を儲ける不思議な会社のようですなあ。「苦労せず、働きもせずに大金を儲ける」ことを喜ぶ風潮は世の中を荒ませます。安倍新総理が「汗をかいた人が報われる社会」を実現すると言っていますが、汗と言ったらバレたら大変と「冷や汗」ぐらいしかかかない人が快適で豪勢な生活を楽しめるようになってしまいましたなあ。当事者たちの目から見れば、そんな日本は誠に「美しい国」なのでしょう。


福島県発注工事の談合事件に絡み、新潟県が04年に発注したダム工事でも談合があった疑いがあるとして、東京地検特捜部が大手ゼネコン各社の担当者から一斉聴取したことが分かった。ダム工事は前田建設工業(東京都千代田区)と東急建設(渋谷区)など3社の共同企業体(JV)が137億円余で落札しており、特捜部は、入札に参加した各社の担当者から落札の経緯について説明を求めた模様だ。一斉聴取の対象となったダム工事は、新潟県が04年1月に発注した「鵜(う)川ダム本体建設工事」(同県柏崎市)。2級河川の鵜川の治水や利水を目的に、04年3月に本体工事に着手し、17年度の完成を目指している。約146億3000万円の予定価格に対し、前田建設工業などのJVが93.9%の落札率で受注した。

■幕末の戊辰戦争で、新潟では河井継之助で有名な長岡上越戦争と、白虎隊で有名な会津戦争が連動していたように、福島県と新潟県は境を接している関係上、古くからのお付き合いが有ります。ですから「談合」が発覚してもそれほど驚くべき事では無いのですが、決して褒められた交流ではありませんなあ。


前田建設工業は、00年8月に入札された福島県発注の木戸ダム本体工事(同県楢葉(ならは)町)を約206億円で落札。入札参加業者の一部は特捜部の調べに「前田建設に落札させるよう談合した」と談合を認めていた。鵜川ダムについても、こうした捜査過程で浮上したとされる。福島県発注工事を巡る談合事件では、04年8月20日入札の流域下水道整備工事を地元大手の佐藤工業(福島市)と東急建設のJVが落札した際に談合したとして、佐藤栄佐久・同県知事の支援者で空調設備会社社長の辻政雄容疑者(59)ら3人が逮捕されている。毎日新聞 - 9月20日

■地方自治体は簡単に封建時代さながらの王国に化ける危険が常に有って、公共事業に関する「勝ち組」「負け組」は正に死活問題となって選挙に絡み付きます。道路・ダム・新幹線という地方にとっては垂涎の3点セットは、国会議員の介入を招いて永田町を発して霞ヶ関を経由して各地方自治体へと伸びる黒いネットワークが広がっております。バブル景気の頃からは「地方空港」という馬鹿馬鹿しいオマケも付くようになったようです。農地・農道や林道も絡んで来ますと国土交通省だけでなく農林水産省まで喰い付いて来ますし、オリンピックなどの巨大イベントでも誘致しようものなら、全国ばかりか世界中からシロアリが集まって地方財政をぼろぼろにして去りますなあ。福島県でも「うつくしま未来博」というのを2001年7月7日から9月30日までゴジラとウルトラマンの生みの親円谷英二さんの故郷である須賀川市で開催されました。

■勿論、佐藤県知事全盛期の大イベントでした。当然の事ながら、未来博の跡地は見るも無残な夢の跡になっております。博物館が一つ寂しく残され、後の広大な敷地は産業・住宅団地として開発する計画でしたが……。

岐阜から福島へ、次は何処? 其の弐

2006-10-03 19:20:05 | 政治


岐阜県庁の裏金問題で、梶原拓前知事は25日、県議会議長の諮問機関「不正資金問題調査検討委員会」(坂志郎委員長)で証言に立ち、裏金の返還額のうち、弁護士の第三者機関がOB負担分とした8億6712万円の約1割にあたる8700万円を、県の元幹部8人が負担することを明らかにした。梶原氏は3000万円を負担する。また森元恒雄元副知事(現参院議員)も同日、同委員会で証言し、裏金調査を見送った責任は梶原氏にあると強調、自身が参院議員辞職で責任を取る考えがないことを示した。元幹部8人は第三者機関の報告で「最も責任が重く、OBの負担額の1割以上を返還すべき」とされた。梶原氏によると、8人で協議した結果、負担額は▽森元氏と藤田幸也元出納長が各1500万円▽3人が各700万円▽2人が各300万円--と決まった。毎日新聞 - 9月26日

■「裏金問題発覚保険」のような制度も無ければ、民間保険会社の商品にも含まれて居ないのですから、バレた上は自腹を切って弁償するしかありません。と言っても、昨日まで運転手つきの黒塗り自動車の中でふんぞり返っていた皆さんが、明日からホームレス生活とか生活保護家庭になっては具合が悪いでしょうなあ。老後の蓄えやら元県政幹部としての体面が保てる範囲で、弁償金額が算定されたものと推察されますが、ちゃんとした法律が整備されていれば、弁償の方法や懲役期間などの罰則も基準が有ったろうに、今のところは裏金問題で懲役刑になった人は居ないようです。まあ、そんな甘さがシロアリを発生させるのでしょうが……。


岐阜県庁の裏金問題で、県の処分の在り方をめぐり不公平感が広がっている。現職員は懲戒免職を含め厳しい処分を受けたのに、梶原拓前知事ら退職者は事実上、おとがめなしだったからだ。9月28日の処分公表後、県民からは、OBの責任を指摘する電話が相次いでいる。4421人の大量処分の公表から30日までに、県庁には230件以上の電話やメールがあった。大部分が「裏金を隠蔽(いんぺい)したOBの方が悪い」「前知事ら元幹部8人の負担金が少なすぎる。刑事告発すべきだ」と退職者の責任を厳しく追及する内容という。県の処分は地方公務員法に基づいており、退職者は責任を問えない。40代の中堅職員の一人は「不公平だし、複雑な心境だ。OBが誰も処分されないのは軽すぎる」と不満を口にした。

■「裏金」という言い方は、どこか「公金横領」の悪質さを薄めてしまう効果が有るようです。裏に溜め込んでいてのがバレたら表に出して、一応は頭を下げて弁償したら話は終わると勘違いしてしまいますなあ。小学生が駄菓子を黙ってポケットに仕舞い込んだのと事情はまったく違うはずなのですが……。抗議の電話やメールが合計230件というのは如何にも少な過ぎるように思えます。岐阜県民は怒りを通り越して恥ずかしいやら呆れるやら、電話料金が勿体無いから黙っているだけなのかも知れませんが、県民がこぞって県庁に押しかけて包囲するような政治の季節は去って久しいようです。納税者よりも「同じ穴の狢(むじな)」から抗議の声が上がるというのも、この種の犯罪の特徴のようで、これまでにバレた裏金問題でも醜い骨肉の争い?が繰り広げられたそうですなあ。


裏金約2億7000万円の隠し場所となった県職員組合。「(1990年代後半に)他自治体で裏金が発覚した時に公表されていれば、こうした事態は避けられた」と三浦孝雄委員長は批判。「元組合役員らの現職は懲戒免職なのにOBは退職金を受け取っている。ほかのペナルティーがなければバランスが取れない。退職金の全額返還は最低ラインだ」退職者は29日、梶原氏が会長を務める返還に取り組む新組織を立ち上げた。60代の元幹部は「知っている部下が懲戒免職になった。申し訳ないと思っている」とぽつりと話した。新組織は県庁近くに事務所を構える予定。負担額は約8億6700万円。約1400人の元幹部の名簿は、まだそろっていないという。
産経新聞 - 10月1日

■甘い汁に群がっている時には「毒を食らわば皿までも!」と団結心も強かったのでしょうが、祭りの後はゴミの始末を押し付け合うというわけですなあ。所詮は我が身可愛さ、利権と役得の中毒になっている人達ですから、組織犯罪が露見したらさっさと露骨なマイホーム主義に逃げ込んでしまいますなあ。「潔さ」が失われたら美しい日本は無くなってしまいますから、安倍新総理に特別談話で「美しい岐阜県」に関する厳しい御指摘をして頂かねばなりませんなあ。参議院の闇に隠れている悪質な人も居るようですが……。


岐阜県庁の裏金問題で、来月3日から始まる同県議会定例会の一般質問を前に、白橋国弘議長が全議員に「議会での発言は名誉毀損(きそん)や不法行為になることもある」などと留意事項を記した文書を配布していたことが分かった。県議会事務局によると、こうした文書の配布は極めて異例。……「一般質問にかかる留意事項」と題し、発言の自由を明記した上で、質問の際の注意を列挙している。地方自治法132条「議員は、無礼の言葉を使用し、または他人の私生活にわたる言論をしてはならない」などを挙げ、「議会での発言は、例えば名誉毀損、公然侮辱の罪に該当することもある。不法行為として損害賠償の責任を追及されることもある」と指摘。03年本会議でのある県議の発言に対し、関係者から名誉棄損による慰謝料支払いなどを求める訴訟が起こされた事例も紹介している。白橋議長は「さまざまなうわさや風評が飛び交っているが、うわさだけに基づく質問や追及は困る。国会議員のような免責特権もなく、議場では何を言ってもいいというわけではない」と話している。
毎日新聞 - 9月30日

■「盗人猛々しい」と言い返すべきか、「泥棒にも三分の理」と言うべきか、連立というよりも保革団子状態になっていない地方議会ならば、遊び場所も似たよりよったり、小さな世間の噂も直ぐに聞こえるでしょうから、攻撃しようと思えばネタは上半身から下半身まで、尽きる事が無いのでしょうなあ。(天下り以外の)御自身の再就職やら、地縁血縁で地元の優良企業に就職している親族の将来やら、はたまた折角6割弱で納めた処分者を更に拡大させられたら大変なのでしょうなあ。処分者を発表するより、清廉潔白だった「奇人・変人」を表彰した方が事務費は少なくて済んだかも知れませんぞ。傷だらけになった県政を考えて、傷に塩を擦り込む様な事は止めましょうね、という大人の助言かも知れませんが、やはり、甘ったれておりますぞ!

岐阜から福島へ、次は何処? 其の壱

2006-10-03 19:19:35 | 政治
■安倍新総理が所信表明演説で「美しい日本」を語れば語るほど、中身の無い空疎な響きばかりが木霊して、初の国会質疑も相変わらずの無責任野党のお陰もあって、議論は噛み合わずに「美しい日本」の影は遠ざかるばかりです。それに引き換え、地方自治体でどれほどの税金の無駄遣いと権力の濫用が続いているかははっきり分かる事件が続くというのは皮肉な話です。

岐阜県庁の裏金問題で、県は28日、4421人を処分すると発表した。内訳は免職4人を含む、停職、減給などの懲戒処分が1006人、内規に基づく訓告、厳重注意などの処分は3415人。三役を含む現職の課長以上は基本的に減給処分、古田肇知事も減給1年間10分の5とする。4000人を超える大量処分は、県政史上初めてで、処分を受けるのは、全職員の57・3%に上る。

■「知らぬ、存ぜぬ、濡れ衣だ」と誤魔化し通していた分、傷口が広がって「県政史上初」の空前絶後の大量処分でもしないと落とし前が着けられなくなったのですなあ。実は、最初から怪しいと言われた人達は残らず共犯で、子供騙しの口裏合わせと役所の掟の緘口令で切り抜けられると本気で考えていたとしたら、岐阜県という所はトンデモない自治体だったことになります。6割も経歴に傷が付いている役所に足を運ばねばならい県民は、どんな顔をして諸手続きをするのでしょう?応対する窓口係はずっと顔を伏せて勤務するしかないでしょうなあ。


懲戒免職となるのは、1998年度に裏金を職員組合に集約した時の知事公室次長、当時の職員組合委員長、約1000万円を引き出し、業務上横領容疑で刑事告発された元組合副委員長ら。裏金問題は、弁護士からなる検討委員会が、1992年度から2003年度までの12年間で約17億円の裏金を捻出(ねんしゅつ)したと認定し、現職幹部や梶原拓前知事らに利息を含めた約19億2000万円を返還するよう求めている。読売新聞 - 9月28日

■公金をちょろまかしていたのですから、取り敢えずは返還して貰わねばなりませんが、はたしてそれで事が片付くのでしょうか?マスコミでも規模の大きさと悪質さでコメントのしようが無いかのようです。でも、記者会見などを見ていると大して悪い事をしたとは思っていないような表情の人が目立つような気もしますなあ。


岐阜県庁の裏金問題で、県は30日、すでに処分した4421人以外に、継続調査をしている職員30~40人について、裏金を飲食などで私的流用していた疑いが強いとして、大半を懲戒処分にする方針を固めた。この中には、現金や通帳で約1150万円の裏金を自分の貸金庫に保管しながら、県の調査に「知らない」とウソをついていた職員や、約750万円の裏金を持ったまま他の部署に異動していた庶務担当職員も含まれている。……県の処分では、懲戒免職4人を含む1006人が懲戒処分を受けている。このうち、11人が私的流用など「個人責任」を問われたが、県は11人以外にも悪質な例はあるとして、県が設置した弁護士による検討委員会から「問題あり」と指摘された県職員ら30~40人について継続調査している。
読売新聞 - 10月1日

■組織の頭が腐っていたのですから、下の者がどろどろの悪事を続けるのは当たり前の話です。それにしても選挙資金だの懇親会だの、必要経費みたいなものだと言いたげだった人も居たようですが、やっぱり、個人的な飲み食いに使い込んでいた職員が出ましたなあ。こうなりますと、「懲戒免職4人」という数字が随分と甘いものに思えてくるから不思議ですなあ。それ以外の4000人以上の職員には、多少の減給が行われるとは言っても、定年までは既定通りに給与が払われ、更に税金をじゃぶじゃぶ投入して年金も支給し続けるのでしょう?それも人権問題なのでしょうが、地域の若者達に対する教育に対しては最悪の影響が残りますぞ。