旅限無(りょげむ)

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チャイナは危機の缶詰か? 其の弐

2006-02-27 21:43:07 | 外交・情勢(アジア)
■株だ不動産だと、日本国内でもチャイナに投資しよう!と煽っていた本や週刊誌が目立っていましたが、ライブドア騒動に隠れてすっかり店じまいしているような様子ですが、間違って投資してしまった人達は、ちゃんと資金を引き上げたのでしょうか?

北京市統計局は同市の商品房物件について、2005年末時点の未入居面積が05年初めから31.6%拡大して1374.2万平方メートルにのぼったことを発表した。このうち、住宅物件の未入居面積は10.5%増の799.7万平メートルだった。26日付で中国新聞社が伝えた。統計局によると、05年の北京市の不動産景気指数では、販売価格、未入居面積、竣工面積、新規着工面積などが上昇、開発投資額、土地開発面積、土地購入費などが下降した。

■要するに需要の無い住宅建設が乱暴に続行されていて、既に供給過剰になっているのに、欲の皮が突っ張っている誰かさんが、住みもしないで「転がす」ためにまだ買い続けているという事ですなあ。


中国では05年4月、不動産価格を抑制するための一連の措置が出されたが、北京市の05年の分譲住宅の予約販売価格は、1平方メートルあたり6725元と、04年から19.2%上昇。分譲住宅の売買成立件数は前年比11%減の28.3万件、総面積は8%減の3366.7万平方メートルだった。このうち、予約販売は21.8%減の18万件だった。また、未入居物件のうち、1年以上未入居となっている物件が全体の27.7%を占めるとともに、77.3%が三環路内に集中していた。サーチナ・中国情報局 - 2月27日

■バブル崩壊後の越後湯沢辺りの風景を想像すれば良いのでしょうか?不動産価値が出るぞ!とスキー場の近いリゾート・マンションを手当たり次第に建てて売り捲った後、夜になっても明かりの点かない暗黒の高層住宅が林立する無気味な風景が現出したのでしたが、もともと薄暗いチャイナの夜ですから、余り目立たないのでしょうか?借金して大家さんになったチャイニーズが、店子が居ない事に気が付いたらエライことになりそうですなあ。日本と違って、融資額の大部分はコネと脅迫の情実融資である可能性が高いので、大規模な銀行の倒産が相次ぐかも知れませんなあ。さすがの米国ハゲタカ・ファンドも、ヒューザーより信用できない工事物件を買い叩こうとは思わないでしょう。本当に危ないらしいですからなあ。


中国吉林省延辺朝鮮族自治州の琿春市交通局は27日、同市の企業が北朝鮮北部の日本海沿岸にある羅先の港湾や道路を合弁経営する計画について、北朝鮮当局が認可したことを明らかにした。1月には金正日労働党総書記が訪中して中朝経済関係がさらに強化されたが、両国の協力を通じて中国東北部から日本海に出る貿易ルートを確保することが狙い。時事通信 - 2月27日

■そんな所に投資して、どうやって元を取ろうと言うのでしょう?「羅先」というのは「羅津」とは違うのでしょうが、ちょっと場所が分かりません。ロシアとの海上交易を狙っているのか、日本の港との貿易を計画しているのでしょうか?北朝鮮の港からやって来ても、日中友好の船だと言い張れば日本は喜んで入港させると思っているのなら、日本は随分と舐められていることになりますなあ。しかし、向こうから来るのなら対処のしようが有りますが、日本側から切実な理由で出掛けて行く場合は止めようが有りません。


肝臓や腎臓の臓器移植を受けるため最近2年間に中国へ渡った日本人少なくとも7人が、手術直後に上海や遼寧省瀋陽などで死亡していたことが26日、分かった。これまでに中国で移植手術を受けた日本人が、計180人以上いる事実も判明した。中国の臓器移植では、ドナー(臓器提供者)が死刑囚である点など人権上の問題が指摘されている。厚生労働省の研究班と日本移植学会は、安全性を含めた実態把握に向け、渡航移植者の調査に乗りだした。 
時事通信 - 2月27日

■いつぞやの、「人体の神秘展」とか言うミイラの展示会が日本全国を巡回しましたが、あれもメイド・イン・チャイナだと言われましたなあ。「新鮮な臓器」をどうやって入手しているのか誰も知らないというのは怖い話です。以前はフィリピン辺りの囚人が腎臓の片方を半強制的に摘出されてドナーにされている、という告発報道が有りましたが、比較にならない巨大な人口に見合ったびっくりするような数の囚人がストック?されているチャイナの裏側で何が起こっているのか、誰も知りません。記事に有る「少なくとも7人」というのが気になりますが、敢えてそのまま計算すれば、180回の移植手術で7人ならば、約4%の死亡率です。

■でも、「手術直後」という但し書も気になりますなあ。数時間後、数日後、数週間後の死亡はデータになっていないのですから、死亡率は何処まで上がるか分かったものでは有りません。米国に渡るよりも安いからチャイナに希望を繋ぐのでしょうが、中華5000年の神秘などを信じるのは命懸けという話なのでしょうか?臓器移植の希望がこれほど切実なら、日本国内で対応できるようにもっと努力する必要が有るかも知れません。とは言え、臓器移植には微妙な宗教観や死生観などが絡むので、キリスト教風のシステムでは精神的な摩擦が起きます。日本がそんなナイーブな事で悩んでいる間に、苦しんでいる金持ちの日本人をカモにするような国が近くに有るのは困りましたなあ。

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チャイナは危機の缶詰か? 其の壱

2006-02-27 21:42:17 | 外交・情勢(アジア)
■ヤフーやグーグルなどの強力な協力を得て、チャイナの内側はますます見えにくくなりそうですが、一枚の薄皮のような国境周辺からも危ない香りが立ち上っているようですぞ。

台湾の陳水扁総統は27日、中国との統一を最終目標にした「国家統一綱領」と、総統府直属の諮問機関「国家統一委員会」の運用を終了すると発表した。「一つの中国」を前提にした対中政策指針を事実上廃止したもので、中国は強く反発している。同綱領は、1991年、李登輝・国民党政権が策定したもので、中台を対等な政治実体として、「交流」や「敵対状態終結」など、統一に向けた段階的道筋を明記している。独立志向が強い陳政権が2000年に発足してからは、実質的に機能停止状態にあった。陳総統は、同綱領の運用終了について、「台湾住民の自由な選択権を守るためだ」と説明した。

■中東で「民主化」の旗を振っている米国に、何らかの事前通告をしていたに違いないこうした動きが出ても、我が国の外部省や首相は、何も言わないのでしょうなあ。「総合的に判断して、適切に対処」するのでしょうから、結局、米国に尻を叩かれるまでは、知らん振りしていれば良いと思っているのも今の内かも知れませんぞ!


中国共産党台湾工作弁公室は26日に発表した声明で、この問題での陳政権の動きに対し、「陳水扁は『台湾独立』活動をエスカレートさせ、台湾海峡地域の深刻な危機を招いている」と名指しで非難していた。読売新聞 - 2月27日

■誰も台湾海峡にミサイルを撃ち込んだり、ポンコツ潜水艦をぶくぶくさせなければ、「危機」など発生しないのですが、御当人がこう仰っているのですから、「危機」の準備は着々と進めているぞ!という予告的脅迫なのでしょうなあ。イラクの後始末が付かない内に、ロシアを巻き込んだイランを警戒している米国は、北朝鮮への空爆準備態勢は取っていても、台湾海峡が火を噴いたら、日本に「ちょっと出て来いよ」と言うに違い有りません。日本は綱渡りのように、「中間線」の上を器用にトレースして真っ直ぐ公海上を進んで、限界点で「ゴー、スターン」の一声で後進して帰って来るのでしょうか?それでは、「流れ弾」の標的ですなあ。

■「北朝鮮は引き受けるから、台湾海峡は任せますよ」とも言えないし、イラクの陸上自衛隊の皆さんをイラン攻撃の助っ人に御用立てるわけにも行きません。イラク駐留の任務を果たされた皆さんには、何が何でも全員無事に御帰国願わねばなりませんし、インド洋で神業の給油活動をしておられる海上自衛隊の皆さんも同様です。北京にだったら、呼ばれもしないのにいそいそと出掛けたがる議員さんが山ほどいるのに、台湾には誰も行きませんなあ。河野洋平さんのように、台湾に緊急着陸しても機内で「謹慎」していた事を自慢するような方も居られるそうですからなあ。政治家や外交官が割っては入れなければ、いきなり自衛隊の派遣という事になりはしませんかな?それでは、自衛隊が可哀想過ぎますぞ。


北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が行っていたとされる偽米ドル札の製造疑惑に関連して、香港に本拠を置く集友銀行の3つの口座が1年前に凍結されていたことが判明した。米当局は「偽米ドル札は米経済にとって脅威となっている」と警告を与えた。香港メディアなどが伝えた。問題となっている口座は、中国大陸からの移民女性の名義。米シークレットサービスなどのおとり捜査によって、同口座が偽米ドル札の入手に深く関与していることが明らかになり、米司法省の求めにより1年前に凍結された。移民女性は、偽米ドル札を手に入れるために支払われた代金を送金する役割があったのではないかとみられている。

■額は減ったと言え、日朝間の合法・非合法の貿易は続いているのですから、偽札犯罪を他人事のように見物している場合ではありません。以前の金丸さんのように、刻印無しの金の延べ棒を自宅の金庫に山積みしているようならば、まだ安心?かも知れませんが、札束で支払って貰っている日本の誰かさん達は大丈夫なのでしょうか?マカオがダメなら香港が有るさ、香港がダメなら、クアラルンプールが有るさ…でも、最後は東京ではないのですかな?


米当局は2月下旬に担当者を香港に派遣、同口座の267万ドルを近日中に、差し押さえる方針だ。 米捜査当局の関係者は「香港は北朝鮮の不法活動と関わりがある」「大きな問題となりつつあり、米ブッシュ政権は『香港は目を覚まさなければならない』とメッセージを送っている」などと話している。集友銀行は2001年に中国銀行(香港)の系列行になっているが、中国銀行(香港)や香港警察当局はコメントを拒否しているという。
サーチナ・中国情報局 - 2月27日

■シンガポールにも華人系の銀行は軒を連ねていますし、フィリピンやインドネシアにも似たような金融機関が並んでいます。そうしたネットワークの中を日本のお札が大量に行き来しているのですから、どこかで摩り替わっていたりしたらどうするのでしょう?米国は自国通貨の探索には熱心ですが、日本のお札の事など心配してはくれないでしょうなあ。自国の通貨も守れない国は、物笑いの種にされるだけですからなあ。こうした場合、偽札の庁舎は外務省の所管なのでしょうか?日銀から専門家が派遣されるのでしょか?否、やはり警察関係の強面の皆さんがぞろぞろと出掛けて行くのでしょうか?ちゃんと分担が決まっているのでしょうな!
(其の弐に続きます)

小学校で英語 どこまで続く泥濘ぞ

2006-02-27 16:09:33 | 教育
■実に変なニュースを目にしました。誰でも教育が大切だと言いますし、どうも今の日本の教育には問題が多いようだとも言います。最低限の読み書きと計算の能力も無いまま中学卒業証書を押し付けられる生徒や、高校どころか大学に入ってから分数計算の補習を受ける生徒まで出現して、日本の将来はどうなるんだ?と驚愕した人達も多かったようですが、そんな騒ぎの中で出て来たのが「ゆとり教育」で、マラソンを完走出来ない者が多くなったから、距離を三割短くしてしまおうという荒業です。42,195キロを走りぬかなければ、それをマラソンと呼んでは行けないのに、隣の国を真似して「日本の特色ある教育学」という訳でもないのでしょうが、教えるべき内容を削って全員に「達成感」を与えて生徒のご機嫌取りをしよう!と考えた愚か者が居た事だけは確かでしょう。完走出来ないのなら、足腰を鍛え直して出直すしか他に方法など有りません。

■週休2日制を断行しながらカリキュラムの再編成をしなかったのですから、教育内容を削るしかなかったのは分かりますが、授業時間を削るのなら、贅沢な目標は遠慮して地味な基礎訓練しか出来ません、と言うべきなのに、創造性だの個性だのと評価不能の得体の知れない才能を伸ばすのだ!などと言われるから保護者は混乱して不安になるのです。公教育よりも自由が聞く私立学校に我が子を押し込もうとする親達が増え続けるのは、公立学校が教育市場から見棄てられているからだと誰でも知っているのでしょう。科目数の帳尻合わせをするために「総合学習」というお任せ日替わり定食みたいな科目を捻り出し、そんな教員免許を取得した教師など一人もいないのに、全国一律に授業を開始されては学校の先生方は堪ったものではないでしょうなあ。

■そこに追い討ちを掛けているのが、小学校からの「英語」授業です。


小学校での英語教育は是か非か――。三重県で行われている日本教職員組合(日教組)の教育研究全国集会の外国語教育分科会では、中央教育審議会で検討中の小学校への英語教育の導入を巡り、現場の教師から賛否の声が上がっている。

教師という職業は、国が定める免許を取得して就くものですから、免許の種類によって職能がまったく違います。料理をする人達になぞらえれば、河豚を調理して良い板前さんとそうでない人が居るのと同じ事です。免許を持っていない板さんが捌いた河豚を食べる勇気を持っている人は少ないでしょう。だいたい、それは犯罪になるのですぞ!それほど「毒性」は強くなくとも、小学校の教員免許を取得した時には英語の授業などまったく想定されていなかったわけですし、もう少し以前には中高生の英語授業で高度なコミュニケーション能力なども想定されていませんでした。

■文科省が思いつきで、免許内容を逸脱した仕事をやらせようと言うのは、非常に危険なのは明らかです。意識の高い現場の先生方が危機感を抱くのは当然なのです。


富山県氷見市立海峰小の表克昌教諭(40)は27日午後、織田信長と豊臣秀吉らを例に、「どちらが偉いと思うか」と6年生の児童たちに英語で討論させた実践例を報告する。表教諭は「慣れない英語で自分の考えを相手に伝えようとする努力は、コミュニケーション能力を高める」と肯定的だ。大阪市立鯰江(なまずえ)中の酒井聖教諭(51)も、大阪府内の9割以上の小学校が英語をとり入れている実態を報告する。酒井教諭は「小学校英語は定着しており、是非を議論する段階はもう過ぎている」と話す。

■「織田信長と豊臣秀吉」に関する歴史的意義を議論するとは素晴らしい授業ですが、そんなに立派な討論が成立したのなら、是非とも社会科の授業で、日本語を使ってみっちりと議論して見せて欲しいものです。まさか、日本語ではロクな議論も出来ない代わりに、英語では大学生も恐れ入るような高度な討論が繰り広げられたのではありますまいな?!そこはもう日本の学校ではありませんぞ!大阪の酒井先生の「見切り発車」発言は、まるで昔の対米戦争を決めた時の理屈とまったく同じではないでしょうか?そんな先の見えない決断をしてしまって良いのでしょうか?


これに対し、金沢市立港中の七田桂子教諭(48)は26日の分科会で、全小学校で英語の授業を行っている同市の状況を踏まえた上で、「教師にも生徒にも負担が大きく、双方とも疲れ切っている」と指摘した。同市は昨年度から英語教育の構造改革特区に認定されたが、石川県教組金沢支部のアンケートでは、「英語を教える補助教員との打ち合わせ時間がない」「評価が難しい」などの声が目立ち、七田教諭は「十分な授業が出来ない」と効果に懐疑的だ。分科会に参加した別の教員からは、「中学入学時点で既に英語が嫌いという子どもが増えた」との意見もあった。
読売新聞 - 2月27日

■英語で討論まですると言うのなら、全ての資料を英語で読み、メモ類やノートも全部英語で書いて準備して置かねば間に合いませんが、一体、どんな歴史討論をやったのやら……。これらの作業を全部日本語でこなす事が出来ないところに基礎学力の崩壊の危機が露呈しているのではないでしょうか?使いこなせる漢字の数よりも、自在に操れる英単語の方を多くしようとでも思っている先生が居るのでしょうか?日本語の扱い方も良く分からない生徒に、今度は英語だ!と詰め込んで、どこが「ゆとり」教育なのかさっぱり分かりません。

■こんな訳の分からない研究会をやらされる先生方も可哀想ですが、文科省の思いつき行政に振り回される生徒が一番可哀想ですなあ。こんな事だから、親たちは藤原正彦先生の『祖国とは国語』などを貪り読む事になるのでしょうなあ。そもそも、「教育研究全国集会の外国語教育分科会」に参加された先生方は、こういう議論を英語で行なったのでしょうな?!

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米百俵は何処へ消えたのだろう? 其の弐

2006-02-27 11:16:08 | 教育
■大雪や寒波に苦しめられ、風邪の大流行にも耐えねばならない2月の入学試験という風習は暫く変更されそうもないのは、喉元過ぎれば何とやらで、昔の受験生達にとっては受験は所詮他人事だからでしょうなあ。桜の花を見ながら卒業と入学の儀式を執り行う美意識は大切なのでしょうが、カリキュラムがころころ変わったり、受験方法まであれこれと新しい工夫が実施されると、受験生ばかりでなく大学側でも大混乱なのでしょうなあ。

25日の長崎県立大学(佐世保市)の入試で、200点満点の小論文の配点が問題用紙に誤って100点と表記されるミスがあった。同大は25日中に受験者全員にミスがあったことを伝える文書を郵送。26日中に大学のホームページに訂正と謝罪を掲載する。小論文は募集要項通り200点満点で採点する。毎日新聞 - 2月25日

■受験生の中から、合計点が100点分不足している事を指摘する声が出なかったのが不思議ですなあ。点数配分など一切気にせずに、第一問から解き始める受験生ばかりが集まったのでしょうか?予備校では点数配分の重要性をしつこく指導しているはずなのですが、長崎大学には現役の受験生だけがやって来たとも思えないのですが…


25日にあった熊本大(熊本市)の2次試験前期日程で、一斉放送方式で行う予定だった教育学部の英語のリスニング試験がテープレコーダーの不具合のために取りやめとなり、予備のペーパーテストに切り替えられた。同大入試課は「教育学部の受験生全員が予備の問題を受けており、合否に影響はない」と説明している。同課によると、教育学部の受験生は429人。英語の試験は全4問で午後3時40分から2時間あり、リスニングは4問目だった。英語の試験の開始直前、職員が試験会場の教育学部棟6教室に放送機材に接続して一斉放送するテープレコーダーを最終点検したところ、聴き取りにくい部分があった。受験生に対しては、リスニングが始まる予定時刻に試験監督が口頭で予備の問題への切り替えを説明した。
毎日新聞 - 2月25日

■今時、テープレコーダーを使っていると言うのも呑気な話ですが、急激に生産量が減っているとは言え、メイド・イン・ジャパンはそんなにヤワな製品ではない筈です。何処かの国から輸入した製品だったのか、何十年も前の製品だったのか、原因を知りたいものですなあ。


香川大学(高松市)は25日、同日行った入試の化学で出題ミスがあったと発表した。実施後に教員の指摘で分かったという。ミスがあったのは大問1の小問3。出題文に不要な数値が含まれていたため、問いの趣旨に反し2通りの解答が可能になった。同大は化学の受験者496人全員を正解扱いにした。香川大では昨年の入試の数学でも出題ミスがあった。同大は「迷惑を掛け、心よりおわびする」としている。時事通信 - 2月25日

■新聞の署名記事ではありませんが、大学入試問題にも出題者の名前を書いておいたらどうでしょう?まさか文系の先生が化学や数学の問題を作っているわけではないでしょうから、こういう問題を作る先生の名前を知っていれば、入学後の講義選択の時に参考になるでしょうなあ。最終的に国の知的レベルを決定するはずの大学が、内部から崩壊し始めている、という指摘は随分前から内部告発の形で出されていますが、一向に改善の方向が見えていないようです。文科省が梃入れしようと小手先の対応策を出しても、理系の研究をしたいと志す若者は、ますます米国への留学を希望するようになるでしょう。それを防止するどころか、「使える英語」授業が会話重視に加えて、英語で論文が書けるようにしよう!と言うところまで話が進んでいるようです。日本語でろくな作文も書けない生徒を大量に抱え込んでいる小中学校の先生方はどうするのでしょう?

■英会話に重心を移した時に、「英文科」卒業の先生方を補助しようと外国人を大量に呼び込んだのは御愛嬌としても、英語の論文指導となれば、そんじょそこらの外人なら誰でも良いという訳には行きませんぞ!資金力に余裕のある有名私立学校がカネに物を言わせて米国の優秀な大学院生あたりを高待遇で招いたりするのでしょうか?英語で論文など書いた事も無いような先生を抱えている地方の大学などには閑古鳥が鳴いて、倒産の連鎖が置きそうですなあ。残念なことに、英語論文などとは別問題で、今存在している大学の半分は、あと数年の内に縮小と消滅の氷河期に襲われるという予測が有りますなあ。消える可能性の高い出身校を持とうとは誰も思いませんし、通学中にマスコミが押し掛けて来て追い回されたい学生も居ないでしょうから、志望大学を選ぶのも大変なら受験する大学を選ぶのはもっと大変になっているでしょう。それも「自己責任」と切り捨てられますから、「ゆとり世代」の受験生の受難は妬市を年を追って厳しくなりそうです。


家庭の経済格差拡大の影響が子どもの学力に及び、成績の下位層が増えた、と考えている教員が5割近くに上ることが25日、共同通信社が全国の小中学校教員を対象に実施したアンケートで分かった。家計の格差が拡大していると感じる教員は約8割に達した。教員の多くは格差拡大の影響として、低所得層では、親が勉強をみる余裕がなくなっていると指摘。勉強の遅れた子への学校の対応も不十分と考えるなど、長期間にわたった不況の中、生活に追われる親の状況が子どもの学習面に影響していることに教員が苦慮している実態が浮かんだ。アンケートは三重県で始まった日教組の教育研究全国集会参加者のうち250人に行い、126人が回答した。
共同通信 - 2月25日

■基礎学力の不足は、学校の責任ではない!という暗黙の前提が出来上がっているようです。貧乏な家の子供は馬鹿だと言い切ったも同然のアンケート結果ですから、こんな資料を公表しても良いのか?と大いに疑問です。マスコミがあれこれと調査して資料として発表するのは仕事として認められるでしょうが、先生方の全国集会でこんな事を調べて発表するのなら、法律を改正して、学校に行かなくても良いようにした方が話が早いようにも思えますなあ。「大きな政府」よりも「小さな政府」の方が良さそうだと思うなら、同じように「小さな学校」を覚悟しなければなりますまい。「米百俵の精神」が何処に活かされているのかさっぱり分からない事になっているようですが、それを誰も騒がないのは、元々、教育に関して誰も気にしていないという証拠なのかも知れませんぞ。

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米百俵は何処へ消えたのだろう? 其の壱

2006-02-27 11:15:26 | 教育
■受験シーズンも大詰めで、受験生の諸君には花粉症やインフルエンザになど感染せず、蓄積した力を存分に発揮して頂きたいものです。戦後7度目の学習指導要領の改訂が実施されて、「円周率が3」「学習内容が3割減らされる」などと大騒ぎされて、文科省は最初の親方日の丸を降ろして「指導要領は最低限」などと苦しい言い訳をしましたなあ。2000年問題の後で「2002年問題」と名付けられる真っ最中に、ピカピカですかすかの教科書を渡されたのは高校一年生の時でしたかなあ?古い厚くて重い教科書を使っていた浪人生諸君は、受験科目の変化に対応するのが大変でしょうが、試験用紙の取り違えなどしなかったでしょうか?

■「ゆとり教育」の裏側に隠していた「週休2日制」を変えるわけには行かない文科省は、学力低下の後始末を結果的に各家庭に押し付けてしまったようです。勿論、憲法との兼ね合いで、そんな事を文科省が認めるはずは有りません。管轄違いの厚生労働省が発表し続けた「人口は増加に転じる!」という戯言を信じたふりをして、大学の増設を続けていたのは文科省で、大学を作れば若者が集まるぞ!と皮算用した地元選出の政治かも頑張って、大学はどんどん増えているので、名前だけ書けば合格する所もだんだん増えているようです。人間社会は正直なもので、大学が増えて入り易くなればなるほど、明治時代以来の伝統を持つ有名大学のブランド化が一層進んでしまいましたなあ。中学校どころか、小学校、幼稚園から受験レースに参加した者だけが有名大学に入れるようになれば、公立学校に真面目に通った者は馬鹿を見ることになります。

■それも構造改革・行政改革の一環ですから、生まれた時代に合わせて努力するしか有りません。赤紙が届いて戦場に引っ張り出されない時代に生まれなかった事を有り難く思い、大量の残飯が捨てられるような食糧が豊かな時代に生まれた事に感謝するしか無いようです。高額な月謝を払って小さな頃から受験塾に通った者も、公立学校だけで勉強していた者も、大学を受験する時には同じ試験問題を解かねばなりません。「ゆとり教育」から導き出される大学入試は、画一化や偏差値の輪切りと訣別した各大学ごとに特色を持たせて斬新なものになるはずでしたが、何故か全国一律のセンター試験に参加する大学が増えるという奇妙な流れが止まりません。

■全国学力試験をやるのやらないのと騒いでいても、センター試験の一次試験は完全に全国一律の学力判定テストとして機能しています。大学の特色を出せるのは、二次試験という事になりますが、一次試験でも可笑しな機械を導入して英語の試験が混乱したり、出題ミスが見つかったりしているのですから、二次試験で何が起こっても不思議ではありません。受験生の中には、学校不信から人間不信に陥る若者も多いかと思いますが、世の中と言うのはそんな物なのかも知れませんぞ。


日本学術会議(黒川清会長)は、理科離れ対策の一環として、教師の“科学的教養”の向上を目指し、検討委員会を設置した。大学の教員養成課程での取り組みや現職教員の教育方法について報告書をまとめる。検討委は自然科学、教育学、心理学の専門家約10人がメンバー。教員や教員志望の学生に、進展が速い科学技術を理解させ、レベルアップを図る対策を練る。黒川会長は「(自然科学の)研究者が学校の先生に転身する道を広げるなどの方法も含め、教員教育の問題を考える」としている。読売新聞 - 2月26日

■どこまで本気なのかは分かりませんが、学問は日進月歩で進むのは当たり前ですし、グローバル化がどんどん進めば世界中の知性が交流して新しい知識が毎日のように獲得されています。新聞紙面に紹介される科学関連の記事を丹念に読むだけでも、相当の基礎知識と努力が必要な昨今です。それが特に如実に現われる理系の科目を担当する学校の先生方が、大学を卒業してからどれほどの努力を続けているのか、甚だ心細いのが現実のようです。本来なら、大学時代に専攻した分野以外にも目配りをして日々是研鑽の日々を送って貰う為に、様々な制度で恩恵が与えられているはずなのですが、大学時代に引き続いて?本など読まない、と平然としている先生方が増えいてるのが実情のようですなあ。


岡山大(岡山市)は25日、同日の入試で、理科の問題にミスがあったと発表した。岡山大によると、1冊になった地学、生物など4科目の問題から選択解答するが、地学に地球の誕生時期を問う設問があるのに、生物の問題文に「地球は約46億年前に誕生」という記述があった。科目間の問題点検が不十分で、重複に気付かなかったという。この問題は配点をなくし、別の問題に追加配点する。

■答えが書かれているのに気が付いたのは、規定の時間内にあちこち目配りが出来た生徒だけでしょうから、それも学問には必要な才能として認めるべきだと個人的には思うのですが、これは大学の裁量ですから、仕方が有りませんなあ。しかし、こうした問題が起こるのは別に驚くべき話ではありません。青春を懸けて一生を左右する大学受験!と言われていますが、それを受け容れる大学側では、受験問題を作る仕事を誰もやりたがらないそうです。特別に受験問題を専門的に考える先生がいるわけではなく、押し付けられた可哀想な先生に支払われるアルバイト料も微々たるもので、結局、大学内の力関係で弱い立場の若い者がぶつぶつ言いながら、一応は過去に出題された内容を調べ直し、高校の教科書を読み直して問題を作り、面倒臭い採点作業までしなければならず、新学年の講義の準備と前年度の成績の整理作業と重なって、晩秋から春先まで、大学の先生方はへとへとになるそうです。完璧な準備を整えて受験生を待ち構えている大学など存在しないと考えた方が良いようですが、大手予備校に試験問題の制作を外注してしまう大学も増えているそうですなあ。


試験室の1つで理科の開始時刻が5分遅れるトラブルもあった。問題を入れる封筒と予備の封筒を取り違え、人数分の問題冊子を予備の封筒に入れたため、試験監督が数が足りないと思って試験本部へ取りに行き、開始が遅れた。田中宏二副学長は「受験生にご迷惑を掛けたことをおわびし、今後は的確な入試を実施したい」とコメントした。共同通信 - 2月25日

■受験生も直前まで受験勉強を続けて疲れ切っているでしょうが、大学の先生方も疲れているのでしょうなあ。受験生の中には、合格しても他の大学に入学しようと思った者も居たかも知れませんが、試験会場には現われないすばらしい先生が大学に居られるかも知れませんから、こういう凡ミスで大学全体を判断しない方が良いでしょうなあ。