旅限無(りょげむ)

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古い法の穴には詐欺師がいっぱい 其の弐

2006-02-14 19:11:18 | 社会問題・事件
■経費節減で交通費も宿泊費も切り詰めて交渉や契約で日本中を飛び回っている人達にとって、ビジネスホテルは第二の自宅みたいなものですから、ちょっとした地震で倒壊するとか、障害者を邪魔者扱いする銭ゲバ・ホテルとか、一日の疲れを取って明日の英気を養う施設としては、甚(はなは)だ具合が悪いですなあ。何でも安ければ良いという風潮から、「経済設計」などと言う奇怪な造語まで生まれていたそうです。「経済」は、元々、「経世済民」の略語ですから、世の中の生産活動や取り引きや物流を支障なく行なえるようにして、人々の暮らしを豊かにする事です。ポンコツ違法商品を安く作って儲けようとする人が、「経済」などと言っては行けませんなあ。

■取り除くべき「支障」の中には、当然、無駄な物が含まれますから、規制緩和は基本的には正しいのです。しかし、つっかえ棒や仕切りを無くしたら、悪知恵に長けた無法者が跋扈(ばっこ)し始めますから、丈夫な霞網(かすみあみ)のような仕掛けを怠り無く準備しなければなりません。雁字搦(がんじがら)めの縛りを解くだけでは、何が起こるか誰にも分からないでしょうに!法律も監視体制も規制だらけだった時と同じでは、トンデモない事が起こるのを助長しているようなものです。何やら、東京の六本木を「特区」にして本格的な不夜城にしようという話が持ち上がっているそうですが、「合法ドラッグ」や「脱法ドラック」などというヤヤコシイ物が抜け抜けと売買されるような法律のままで、その筋では有名な麻薬の名所を「特区」になどしたら大変な事になるでしょうなあ。直ぐに北朝鮮のフロント企業が店開きして、「特産品」を流し始めるに違い有りません。またぞろ「拉致」を初めて人身売買業も始めるかも知れませんなあ。


耐震強度偽装事件に絡み、熊本県が著しい耐震強度不足の可能性のある物件の報告を怠っていた問題で、国土交通省は13日、これまでに「偽装なし」と報告があった460件について、耐震強度を満たしていないにもかかわらず、国への報告がない物件がないか、各自治体に再点検するよう指示することを決めた。この問題は、熊本県などが、専門家に依頼していた再計算結果で、一部のマンションについては、耐震強度が、震度5強程度の地震で倒壊の恐れのある50%未満の可能性があるなどという指摘を受けながら、国には「偽装なし」とだけ報告していたもの。他の自治体が「偽装なし」と報告した分についても、同様に耐震基準を満たしていないケースがないか、点検を求めることにした。読売新聞 - 2月13日

■「第二の姉歯」=「非姉歯」現る!とマスコミは大喜びしたようですが、文句を付けられた建築士の方は黙っていないで、お役所に怒鳴り込んでいるようです。あちこちの自治体が、「安全です」「ちょっと心配です」「やっぱり危険です」と、コロコロと発言を変えるので、誰が被害者だか分からなくなってしまいます。規制緩和以前に設計され建築された物件は、こうした頼りないお役所の人が、「合格」と判定してくれていたわけです。本当に大丈夫だったのでしょうか?建築現場での「手抜き工事」は何度か摘発されてはいましたが、全国的な大事件になった事は有りませんでしたなあ。その頃のお役所は非常に有能で、建築士のモラルは山よりも高く、建設会社の度量は海よりも深かったのならば安心なのですが……。


耐震強度偽装問題で、福岡県は13日、建築物の構造計算ソフトの使い方を教える職員研修会を県庁で始めた。同県春日市の設計会社「サムシング」(2002年廃業)が関与した物件が確認されれば再計算する方針で「ソフトを使える態勢を整え、来週から本格的に始めたい」(建築指導課)としている。県は姉歯秀次元一級建築士による偽装問題発覚を受け、1月末から3種類のソフトを使って、土木事務所など8カ所で構造計算ができるようにした。しかし、ソフトを使える職員が技術職2人しかいなかったため、17日まで5日間の日程で研修をする。福岡、北九州、久留米、大牟田各市の職員も参加している。西日本新聞 - 2月13日

■これは、決して九州という場所が全国的にも劣った検査体制だったという告発記事ではありません。国が音頭を取って「IT化」を推し進めた裏側で、お役所だけはその時代の波から外れたまま放置されていたのです。今でも、中央官庁には紙の書類が山積みになっていると言われますし、ノート・パソコンを自在に操って仕事をしている官僚も少ないと聞きます。強固な年功序列体制を守っている所ですから、「コンピュータがウィルスに感染した!」などと聞いたら「すぐに消毒薬を買って来て、全員で撒け!」と大真面目に怒鳴るような上役が、まだうようよしているとか……。長年、構造設計の確認作業をしていたお役人にとって、コンピュータ・ソフトを使ってプリント・アウトされる書類など、この世の物とも思えなかったというわけですなあ。

■姉歯さんがやった事は、昔ながらの「手書き」であったら簡単にバレる幼稚な犯行だったようです。今回、「書類の不備」が発覚した福岡の問題でも、別の数値で計算した表を画面上で切り張りしただけの物らしいのです。実物の紙が切り張りされていたら簡単に見つかりますが、コンピュータを通せば偽札だって作れるのですから、お役人を責めるのはちょっと可哀想です。「IT化」を推進するのなら、役所が率先して最新技術を導入するべきだったのです!犯罪者が先進的で、お上が原始的なままだったら、詐欺師の天国になるに決まっているのです。小泉首相がパソコンの扱いに通じている、そんな話は一度も聞いた事が有りません。でも、規制緩和や「IT化」には大賛成なのですなあ。『皇室典範』改正にしても、日朝国交正常化交渉にしても、知らないから手を着けられたのではないでしょうか?もしかしたら、自分がひどい音痴だという事も知らないかも?

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古い法の穴には詐欺師がいっぱい 其の壱

2006-02-14 19:10:38 | 社会問題・事件
■中途半端なオリンピック騒ぎと、何処まで闇が広がっているのか想像も出来なくなって来たライブドア事件、度重なる豪雪による被害の報道に隠れて耐震偽装問題は中だるみ状態のようです。しかし、この事件は全国に広まると同時に、時間も遡って究明する必要のある大問題になりつつあります。小嶋社長のキャラクターに飽きたら御仕舞いというものではありません。この問題が発覚した当初、偉大なるイエス・マンの武部幹事長が大事な弟さんが建築業を手広く営んでいる地元の北海道で、これを突き回すと全国の建設業が危機的状況に追い込まれる!と、誠に適切な予測を立てておられましたが、それが現実化しつつあるようです。

■気のせいか、耐震偽装問題が明るみに出てから、テレビも新聞も、「近付く大地震!」特集をしなくなりましたなあ。直ぐにでも大きな地震が来るような騒ぎで、多くの人が災害用のキットを買い求めたのはつい先日の事のような気がします。あれは単なるシャレだったのでしょうか?姉歯さんが軽い口調で「震度5なら潰れますね」などと言うシーンを何度も何度も放送するから、いつの間にか普及型のマンション=地震で倒壊、というイメージが出来上がってしまったのではないでしょうか?悪徳リフォーム犯罪が続出していた最中に耐震偽装が発覚したのですから、自分が済んでいる住宅について考えたくもない気分になった人が多かったでしょうなあ。

■集中豪雨的にテレビ画面に出して面白い人物に偏った報道が多かったせいか、事件の中心に位置しているカリスマの影が薄くなる傾向が有りましたが、本格的な訴訟となれば、事件の原点となる指導力を発揮していた人物が全面に出るのは当然の事です。


構造計算の偽装で耐震強度が不足していたため解体に追い込まれたとして、愛知県半田市のビジネスホテル「センターワンホテル半田」は14日、建築確認を行った同県と、開業を指導したコンサルタント会社「総合経営研究所」(東京都千代田区)と、同社の内河健社長を相手取り、総額約7億2100万円の損害賠償を求め、名古屋地裁に提訴した。耐震強度偽装問題を巡り、提訴に踏み切ったのは全国で初めて。

■裏に何が隠されているのかは分かりませんが、「総研」に関する報道は姉歯さんやヒューザーに関するものよりも圧倒的に少ない。木村建設本体に関しても、どこか腰が引けた報道が目立ちます。ネット上では、隣の国との関係や某宗教団体との関係を微に入り細を穿って書き込みが続いているようですが、まだ確証は得られていないようです。具体的な損害賠償が争われるなら、弁償能力を精査しなければならないでしょうから、儲けた金が何処に消えたのかを徹底的に洗い直さねばなりませんなあ。一説には、木村建設はさっさと倒産してしまったので、訴えられないという話も有りました。「総研」はまだ倒産したとは報道されていませんが、そろそろでしょうか?マンションの方は、ヒューザーの社長とユニークな弁護士さんの猿芝居で時間稼ぎに入ってしまったので、報道も膠着状態に陥っていますが、商売用に建てたホテルが使い物にならない経営者は、何が何でも再建資金を調達しなければなりません。マンション問題は、国民の生命財産を守る義務を負っている国や地方自治団体が逃げられませんから、多少でも補償金が出る気配ですが、完全な自己責任で営利を目的として建てたホテルは、誰も助けてはくれません。


訴状によると、愛知県は
(1)重要な審査項目である柱の断面算定で検算などを怠った
(2)耐震壁の審査も枠柱の鉄筋不足を見逃した--などと指摘。
総研に対しては「設計の下請けに姉歯秀次・元1級建築士を指定し、違法な建築確認申請書が作成されないよう監督する義務を怠った」と指摘した。また、内河社長については「同ホテルの違法性を認識していながら黙認した」と主張している。
同ホテルは10階建て、126室。01年10月、総研とホテル経営に関するコンサルティング契約を締結し、同年12月に同県が建築確認をしている。02年7月に開業したが、昨年11月に構造計算書の偽造が発覚したため、同年12月から休業、解体したうえで来年4月の再開業を目指している。毎日新聞 2006年2月14日

■ビジネスホテルと言えば、今や日本で一番有名なのが「東横イン」ですが、もしかしたら正確に固有名詞を覚え切れずに「ビジネスホテル」チェーン全体に悪い印象を持ってしまった人の方が多いかも知れません。これも悲惨な「風評被害」の一種でしょうなあ。

日本に欠けている言語能力

2006-02-14 14:03:00 | 政治
■先日の日朝協議で、日本側が「早く拉致事件を解決しろ!」と迫ったところ、「日本こそ拉致事件を解決しろよ」と反論されて、日本中が溜息をついたばかりです。「対話と圧力」と穏やかな表現が愛用されていますが、外交交渉での「対話」とは利益に関する交渉ですし、「圧力」というのは本格的な戦争を前提とした恫喝です。日本は、最初の交渉前から北朝鮮に提供する利益のリストを作り上げていたのですから、「対話と圧力」というのは情けない後知恵でしかありません。初めから「圧力」の手段も意志も無いのですから、政権が交代しない限り日朝交渉はぴくりとも動かないか、じれた北朝鮮が日本に責任を転嫁して暴発する危険性が高まります。そして、今回の馬鹿馬鹿しい北朝鮮側からの妄言を放置するのは、もっと悪い結果を呼び込む事になりますぞ!相手の発言を放置するというのは、「肯定」したと判定されるからです。

…在ドイツ・イラン大使館は14日までに、自爆テロを実行しようとしている姿のイラン人サッカー選手の漫画を掲載した地元紙ターゲスシュピーゲルに対し「無責任」と抗議する手紙を送り、文書による謝罪を要求した。漫画は10日付の同紙に掲載。イランのユニホームを着た選手4人がサッカー場内で爆発物を身に着け、ドイツ連邦軍兵士と並んでいる姿が描かれ、「(サッカーの)ワールドカップ(W杯)に兵士が配備されなければならない理由」との説明が書かれていた。ドイツでは6-7月のワールドカップ期間中、テロなどに備えて連邦軍兵士を展開させるべきかどうかの論争が起きている。同紙の編集責任者によると、漫画を描いた漫画家は脅迫を受け、身を隠している。責任者は抗議を残念に思うとしながらも、謝罪する意思はないと述べている。共同通信 - 2月14日

■ムハンマドの諷刺画事件とは無関係だったドイツにも、イスラム教徒はたくさん暮らしていますし、排斥運動も起きています。そして、トリノで開催中の冬季オリンピックをまったく知らないイスラム教徒が多いのに対して、サッカーとなれば話がまるで違って来ます。元々、裸足でグレープフルーツを蹴っても出来るのがサッカーですから、貧しい国ほど熱狂するスポーツと言われるように、世界中の貧しい国々も大挙して参加するのがワールド・カップ・サッカーです。今のまま、諷刺画問題が長引けば、自国のチームが負けたことを逆恨みした勢いで、預言者を冒涜した事を理由に爆弾テロを仕掛ける輩が出てもおかしくは無いのです。それが心配だ!とドイツは感じて漫画にしたのでしょう。「残念には思うけど、謝らない」こういう発言が大切です。


マクレラン米大統領報道官は13日、イランのウラン濃縮活動再開を「国際社会への挑戦」と非難、「イランは何をしなければいけないか分かっているはずだ」と述べ、濃縮活動の即時停止を要求した。
 国際原子力機関(IAEA)緊急理事会は4日、イラン核問題を国連安全保障理事会に付託することを決定。イランに対して強硬姿勢を貫くブッシュ政権は、経済制裁やIAEAによる査察強化に関する安保理での非公式協議を加速させ、イランへの圧力を強める意向だ。
共同通信 - 2月14日

■イランがドイツの漫画に噛み付く本当理由は、ここに有ります。ワールド・カップが開催される頃には、原爆の一個ぐらいは完成させているかも知れない勢いのイランですから、煙幕に使えるネタなら何でも使います。


デンマークのラスムセン首相は12日、米CNNテレビとのインタビューで、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画を同国のメディアが掲載したことなどへの抗議がイスラム世界で広がっている問題で、「シリア、イランを含め自分自身の問題から国際社会の関心をそらそうと、この状況を利用しようとしている国があることは明白だ」と述べ、両国が今回の件を政治的に利用していると非難した。

■一国の首相たるもの、これくらいに分かり易い言葉で、内外の人々に届くように語るべきですなあ。世界中の人々は、日本の小泉首相が北朝鮮に対して怒っている事を全然知らないでしょう。まあ、日本人も御本人も知らないのですが……。


ラムスセン首相は、デンマーク大使館などへの襲撃事件を受けてイラン、シリア、インドネシアから大使館員を国外に退避させたが、これらの国との外交関係を断絶する考えはないと強調した。また、ライス米国務長官は同日、ABCテレビなどで「イランやシリアが望むときにデモ隊を街中に送り込むことはよく知られている」と述べ、両国が“官製デモ”を組織していると非難した。長官はさらに、「もし扇動が続けば、制御不能になりかねない」と、激しい抗議活動が続くことへの危機感を表明、イランとシリアに「責任ある対応」を求めた。特にイランの新聞がホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)に関する漫画コンテストを実施することを批判。長官は漫画自体については「不快感を与えるもの」としつつも、今回の件は、報道の自由と報道の責任の問題であると指摘した。
産経新聞- 2月14日

■北朝鮮やチャイナのデモも、全部「管制デモ」ですが、日本からその点を突いた発言が出された事は有りません。日本の新聞の中にも、「中国13億の人々が怒っている」とアホな事を書き散らして平気でいられる風潮が有るのも変なのですが、相手の非をきちんと言葉にして発する大切さを改めて教わる気がしますなあ。


イランの最高指導者ハメネイ師の側近で政策決定に大きな役割を担うモフセン・レザリ最高評議会事務局長(51)が13日、毎日新聞との会見に応じた。国連安全保障理事会に付託されたイラン核開発問題で、「イスラエルの限定的な軍事攻撃があるだろう」と予測し、報復攻撃の準備を既に整えたことを明らかにした。
毎日新聞 - 2月14日

■中東諸国の核兵器製造能力に関して最も詳しく正確な情報を持っているのはイスラエルです。ですから、イスラエルの標的になったという事は本物の核兵器が完成間近だったことを証明する事になります。イランはそれを逆手に取って、「標的になる資格」が有る事を装ってこんな発言をしているわけです。湾岸戦争の時を思い出せば、イラクのフセイン大統領は何の関係も無いイスラエルに向ってスカッド・ミサイルを何発も撃ち込みましたが、イスラエルは最後まで反撃しませんでした。それはイラクが核兵器を持っていない事の証でした。しかし、毒ガス兵器は持っていたので、万が一ミサイルの弾頭に仕込まれていては大変だ!と大量の防毒マスクを配布して対応したのでした。ですから、本当にイランが今の調子で核兵器開発を進めて、「戻れない段階」に達した時には、ピンポイントでイスラエルの攻撃が有るでしょう。米国が制止するのも表向きだけの話です。

■ロシアや中国にしたところで、そうなったら、毒にも薬にもならない発言をして巻き込まれない工夫をするだけです。濃縮プラントが破壊されたら、その再建工事でまた儲ければ良いだけですから、イランはその繰り返しでどんどん貧乏になって行くのでしょうなあ。核兵器と言うのは、とてもカネの掛かるもので、一発でも持ったら核兵器で狙われる覚悟を決めて防御を固めねばなりませんし、完成間近になって攻撃を受ける危険も高い場合には、その対応手段も用意しなければなりません。ロシア製や中国製の安い迎撃ミサイルなどはお買い得ですぞ。北朝鮮製なら、ディスカウントが効きますよ。

■是非とも次の日本の総理には、言語能力の高い人に就任してもらいたいものですが、残念ながら候補者の中に目ぼしい方がいないようです。その原因は、選挙民がちゃんと演説を聞かないからです。「道路作ります」「橋架けます」「新幹線引きます」それだけで当選できるような国政選挙を繰り返していたら、何を言っているのかさっぱり分からない総理大臣が続くようになっても仕方が無いのでしょうなあ。欧州から有望株を引っ張って来て国籍を変えてもらうしかないかも知れません。

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元気が出ない日本

2006-02-14 13:13:35 | 社会問題・事件
■日朝協議が最悪の無駄足、税金の無駄遣いに終わった事に、国民の間からは大して厳しい声が上がっていないのは、始めから何も期待していなかったからでしょうなあ。冬季オリンピックの人気が盛り上がらないのは、日本の選手団が情けないからではなく、もしかすると、北朝鮮に軽くあしらわれ、拉致問題は永久に解決されないと考えている暗澹たる気分が影響しているのかも知れません。こんなに情けない祖国の旗を振っても、何だか力は入りませんし、だんだん切なくなって来ますなあ。総理大臣もすっかり引退生活のプランを立てるのに忙しいのか、ご懐妊騒動も有って、すっかり他人事みたいな事を言っています。

小泉純一郎首相は13日、北朝鮮に経済制裁を実施した場合の効果について「ある面と、あまり効果を発揮しない面と両方ある」との認識を示した。首相官邸で記者団の質問に答えた。日本と北朝鮮の平成17年の貿易総額が、昭和52年以来最低を記録したことを踏まえての発言で、首相は「(北朝鮮は)日本との交流が減っている分、中国と韓国で増えている。(制裁実施の判断は)国際情勢を見ていかないといけない」と語り、慎重に対応する考えを示した。ただ、安倍晋三官房長官は記者会見で、「対話を閉ざすことは考えていないが、問題を解決するためには圧力が必要だという認識はいっそう強くなった。どのような圧力をかけるか検討していきたい。最終的な圧力は経済制裁だ」と改めて強調した。
産経新聞 - 2月14日

■1年ぶりに再開された日朝協議は前進どころか、停滞でもなく、見方によれば後退してしまっています。やはり、国民輿論の鍵を握っている「拉致事件」の解決方法がまったく出て来ないのに、「平壌宣言」を自画自賛していた能天気な外務省の読み違いに、まんまと乗って踊った小泉総理の見識の無さが、今頃になっても、こんなインタヴュー記事が出て来る理由でしょう。「対話と圧力」という言葉が、何万回メディアが取り上げたでしょう?今にして思えば、この言葉が出る度に、「圧力」の内容と発動時期に話題が移ってしまうのが常でしたが、これが大間違いだったのではないか?戦争に持ち込めない日本側は、その歯止めとなっている憲法9条に見合う調査能力と外交交渉能力を持たないのですから、「圧力」の中身をあれこれ詮索しても、嫌がらせか意地悪としか思えない項目しか並べられないのは、始めから分かっています。


核兵器製造に転用可能な3次元測定機の不正輸出事件で、13日に警視庁公安部の家宅捜索を受けた大手精密測定機器製造会社「ミツトヨ」の手塚和作社長(67)が14日、川崎市高津区の本社で記者会見し「違法性の認識はなかったと信じている」と述べた。緊張した面持ちの手塚社長は会見の冒頭、「多くの皆さまに迷惑をお掛けした」と謝罪。「社内で事実解明に努める」と神妙な表情で話したが、具体的な調査態勢や期限などは明らかにしなかった。「今後誠実に対応したい」と述べながら、相次ぐ質問には「捜査中」や「社内調査中」を理由に「コメントは差し控えたい」と繰り返し、約15分で会見を打ち切った。共同通信 - 2月14日

■冒頭に引用した小泉総理の新聞記事にも、「北朝鮮との貿易額は昭和52年以来最低」という文言が有りました。これを裏返せば、腫れ物に触るように野放しになっていた頃の「貿易」の実態が解明されないまま放置されているという事です。自国で輸出できるような工業性品の無い北朝鮮には、党や軍の上層部には「将軍様からの贈り物」と称して、様々な世界の名品が行き渡っているという話がごろごろしています。家電製品や装飾品ぐらいなら分かりますが、高級自動車やら高性能コンピュータやら、表沙汰になっている品物でも入手方法が分からない品々が多く見受けられます。日本側の対北朝鮮貿易の窓口となっていた会社の中には、相当に怪しい会社も多いようですから、軍事転用可能な技術がどれほど流出したのか、それさえも調べ上げられないか、或いは知っていても国民に公表できないような日本政府は、外交交渉でも足元を見られるのも当然でしょうなあ。

■経済制裁をしたら大きな打撃を与えられるほど貿易額が大きかった頃というのは、好き放題に拉致事件や工作活動が続けられていた時期と重なっているのですから、今頃、やいのやいのと騒いでいる日本が、「圧力」などと言ったところで、何も恐ろしくはないでしょうなあ。気が進まない日朝協議や6カ国協議に、北朝鮮が慌てて出て来たのは、今や前門の虎・後門の狼と化した米国と中国からの「圧力」に負けたからです。米国は空からの攻撃体制を整えた上で、偽札犯罪の物証をマカオで上げて、まったく躊躇せずに経済制裁に出ていますし、中国は米国が本気だと知っているので、「面倒見ないぞ」と脅しています。日本は、はなはだ残念ながら、効果的な「圧力」を加える時期を逸しています。しかし、国内の怒りを結集しておく事は重要です。


共産、社民両党は13日、憲法改正反対などで共闘する方策を話し合うため、近く党首会談を行うことで一致した。党首会談は、政権協議からの「共産党はずし」を明記した昭和55年の旧社会党と公明党との合意により、たもとを分かって以来、初めて。だが、共闘のあり方をめぐる双方の考え方の隔たりは大きく、“恩讐(おんしゅう)”を超えて政策協議に踏み出したとしても、共闘実現への道のりは遠そうだ。この日、新体制発足に伴い各党をあいさつ回りした社民党の福島瑞穂党首は、共産党の志位和夫委員長に「小泉構造改革や平和の問題で共闘を強めたい」と明言した。先月、共産党との連携に「障害はない」(福島党首)とし、志位委員長から会談を持ちかけられたことへの回答だ。

■日朝協議でトンチンカンな対話しか出来ずに外務官僚が不機嫌な顔をして帰国した直後に、こういう話をしている政党が、税金から助成金を貰って議員をやっていられるのですから、北朝鮮に舐められるのも仕方が有りませんなあ。社民党は、選挙の度に負け続けたのは、「小選挙区制」に賛成した事と「自衛隊は合憲」と言った事だと反省しているそうです。社民党が国民から嘲笑されて愛想を尽かされているのは、拉致事件が発覚する前には平壌詣でを繰り返し、発覚後にも北朝鮮の言い分を全面的に代弁していたからで。おまけに、今回の小泉チルドレンよりも程度の悪い「マドンナ議員」を並べてしまったからでした。今更、共産党と手を組んで、何をしようと言うのでしょう?追い詰められた北朝鮮代表団が、訳の分からない八方破れの記者会見をしたのと似た様な、現実から目を逸らして逃げ回る姿のように見えますなあ。


福島党首は「自民、民主、公明など、憲法9条改正に慎重な他党のハト派とも連携していく」とも強調。社民党との共闘を軸に反対闘争を進める考えの共産党と、“二人三脚”の形で共闘することには否定的な見解を表明した。背景には、党勢衰退に歯止めがかからない中で共闘すれば、「社民支持層を切り崩されて、『ひさしを貸して母屋を取られる』ことになりかねない」(党関係者)との警戒感がある。ただ、「不破哲三前議長が退き、志位氏が独自色を打ち出し始めた」(別の党関係者)との分析から、「このチャンスに共産党と連携すべきだ」(地方支部)との声は少なくない。このため、共産サイドの真意を引き続き見極めていく方針だ。

■「ひさし」も「母屋」も、取られて惜しいほどの大きさではないし、既に半分焼け落ちているような物ですから、それを心配している社民党は、次の選挙を真剣に考えているとは思えませんなあ。


党首会談の合意に至る過程では、両党間に「不信」の火種も残った。
共産党の市田忠義書記局長は1月23日、社民党の又市征治幹事長と会談し、「社共共闘」を要請。即答を避けた又市幹事長を横目に数時間後、志位委員長が記者会見し、社民党へ共闘を申し入れたことを「一方的に表明」(社民関係者)し、社民党側の不興を買っている。旧社会党と公明党がかつて締結した「連合政権」構想(社公合意)には、「共産党を政権協議の対象としない」と明記されている。社民党もこれを“踏襲”してきたが、この点について市田書記局長は十三日の記者会見で、「憲法問題が急を告げており、わだかまりはない」と述べた。産経新聞 - 2月14日

■こんなメクソとハナクソを混ぜ合わせるような相談をしている前に、北朝鮮に馬鹿にされた過去を国民に謝罪して、平壌に怒鳴り込んで見せる方が先でしょうに!過去を調べれば、怪しげな貿易をしている連中の口利きだってしていたのでしょうから、過去を洗いざらい国民の前にさらけ出して、土下座して謝ることから始めないと、いつまでも出直しが出来ずに自然消滅してしまうでしょうなあ。確かに「憲法9条」は大切なのでしょう。しかし、戦争をしないでも国益が守れる方法を、世界で初めて確立するという大事業には一切着手せずに、無い物ねだりの念仏を唱えるばかりでは絶望的です。その「憲法9条」を守っている隙をつかれて拉致事件やら工作員の暗躍やら、危険な密貿易が野放しにされ、あまつさえ、拉致事件が一向に解決されないのでしょう?その痛みや歯がゆさをまったく感じない社民党には存在価値はまったく有りませんなあ。

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納豆御飯に沢庵ぽりぽり、御御御付けの具は豆腐に若布

2006-02-14 01:24:10 | 健康
■世の中には、夕食の献立を決めるのに昼のワイドショーで怪しげな「○○を食べると…」という能書きをメモしてからスーパーに殺到する人が増えたそうで、店側は鬼のような形相で「品切れ」表示に苦情を言う怖いオバサンたちを怖れて、同じワイドショーを専門に見る係まで作っているとかいないとか…。内戦と飛蝗(ひこう)の影響で、東アフリカには深刻な飢餓が広がり、大地震に襲われたパキスタンの山岳地帯では極寒の冬を乗り切る体力を支える食べ物が無い。隣の「地上の楽園」では煮炊きどころか、暖房用の燃料が無く、薪を拾って来たら、今度は食糧が無い。原爆やらミサイルを解体して皆で食べれば良いのに!そんな意地の悪いことも言いたくなる、計画経済による飢餓は深刻だそうです。

■「世界の工場」だの、経済の一大拠点になる!などと、お調子者があちこちに書き散らしていましたが、一皮めくれば地方は勿論、都市でも飢えの危険は有ります。日本でも生活保障が受けられずに「餓死」するような事件が時々起きるようになりましたが、それでも、「食べるだけで痩せる!」商品が効果が有ろうが無かろうが、飛ぶように売れているらしい事は、新聞に挟み込まれるチラシ広告で良く分かります。腹がいっぱいになったら、肥満の心配、努力の甲斐が有って肥満が解消されたら、頭の毛やら皮膚の加齢現象を止めようとする。行き着く果ては、メイド・イン・チャイナの「不老長寿の秘薬」などという反仏教の極みのような物質です。それが、次々と「発見」されて「発売」されるのですから、秦の始皇帝様も平べったいピラミッドの下で悔しがっているでしょうなあ。

■昔から、権力者が怪しげな薬や治療法で寿命を縮めた話は山のように有りますが、今の日本は「お客様は神様、王様、皇帝様」ですから、怪しげな献上品が届くのでしょうなあ。


厚生労働省は13日、キノコの一種「アガリクス」を含む健康食品で発がん作用が促進されるとの動物実験の結果が出たとして、「キリン細胞壁破砕アガリクス顆粒」を販売するキリンウェルフーズ社(東京都)に対し、自主的な販売停止と回収を要請した。キ社の野中淳一社長は同日会見して謝罪し、すべてのアガリクス製品の販売中止と回収を表明した。学術雑誌にアガリクスで肝障害を疑う例などが掲載されたため、国立医薬品食品衛生研究所が広く流通している3社の3製品を抽出して調査。キ社の製品について、製品自体に発がん性はないものの、ラットを使った実験で発がん作用を助長する結果が出たという。厚労省によると、調査対象となった3製品のうち、キ社以外の2製品は現段階では問題は見つかっていないという。対象製品の問い合わせはキ社(0120・033・827)へ。
毎日新聞 2006年2月13日

■こんな事を唐突に発表されても、高いのや安いのを買い貯めている人は困るでしょうに!それ以上に、毎日、容器に書いてある用量を無視して、「いっぱい飲めば効果は倍増」などと俗信に浸って御飯よりも多く飲んでいたような人はどうしたら良いのでしょう?直ぐに解毒剤が見つかれば良いのですが……。人の身体には、最強の解毒装置の「肝臓」という宝物が埋め込まれています。肝臓が1日でも仕事を休めば人は確実に死んでしまいます。否、ほんの数時間休憩されても体中に毒が回って危険な状態になるでしょうなあ。楽しい酒も、強烈な毒薬となるし、風邪薬だって立派な毒物に変じますぞ。

■薬品と呼ばれる物のほとんどは、基本的に毒物ですから、大量に飲めば肝臓がオーバーヒートして壊れてしまいます。そうなったら「百薬の長」も分解解毒されずに体内を猛毒のアセトドアルデヒドが駆け巡る事になって手の施しようが無くなるというわけです。1つの細胞から分裂した身体は、自律的に生命を維持するネット・ワーク・システムになっているのですから、生まれ付いての配線ミスや不良品の部品が組み込まれていない限りは、そのネット・ワークを邪魔しない限りは、結構長持ちするもののようです。

■「病は気から」と言う諺が当たっている場合も多いようで、フラシーボ効果などという笑ってしまいたくなるような心身の共鳴現象も有りますなあ。尤もらしい顔と服装と物の言い方で、素人が澱粉粉を飲ませただけなのに、ややこしい病気が治ってしまう事が有るのだそうですなあ。まあ、聖なる場所の水などというのも、その一種かも知れませんし、尊師が使った風呂の水などというのも有りましたなあ。インドのガンジス川の水や、シーク教徒の皆さんが有り難く飲み干すゴールデン・テンプルの池の水なども、異教徒にはとても飲む気にはなれないような色と臭いを持っていますが、信仰心の厚い人は、その水が万能薬となるのだそうです。

■ちょっと危険で変わった物を体内に吸収すると、怠けていた臓器や機能が目覚めて大慌てで働き出すと、弱っていた免疫力が奇跡のように回復するという現象も起こるそうですから、「秘薬」の名前を信じている間は、案外と体調が良いという事も有りそうです。しかし、身体に負荷をかける「珍しい薬」を飲んでいれば、解毒化学工場の肝臓がくたくたになるのは当然で、それでも気分が高揚していれば不思議と元気溌剌というわけです。ですから、「それは単なる毒ですよ」などと突然言われたら、そのショックで肝臓が元気を失ってへなへなと仕事を止めてしまうかも知れません。こういうニュースを突然流すのは危険ですなあ。

■農水省が、変な牛肉を無理やり輸入しようとしているのを見て、悪評ばかりが目立っている厚生労働省が、一発逆転ホームランでも打とうとしたのかどうかは分かりませんが、日本人のほとんどが「アガリクス」という名前を知っているのではないでしょうか?そして一度や二度は飲んだことが有る、という人も結構な人数になっていると思われます。成人男性を対象とする週刊誌には、この名前の広告が欠かさず掲載されていたように記憶していますし、テレビ・ショッピングなどでも、「特別価格でお分けします」だの、「大きな箱がお買い得です」だの「今なら、もう1箱サービスです」などと売りつけていませんでしたかな?友達と共同購入して愛用している人も多いと推測されますなあ。

■広告に出演した人や、宣伝文を書いた人、印刷した人や放送した人、本を販売した人や友人に薦めた人、日本中で罪人探しが始まるのでしょうか?或る人が言うには、自分の視界に納まる土地で収穫された物を食べるのが最も健康に良いのだそうです。でも、生まれた場所を遥かに離れて暮らしている人には、この法則は適合しないでしょう。要するに、先祖代々食べ続けていた食材を、昔のままの方法で調理して食べるのが身体に負担を掛けずに、消化吸収されるという事でしょうなあ。司馬遼太郎さんが何処かに書いていましたが、山奥で暮らしている人の楽しみだった松茸や、厳しい冬に堪える北の漁師さんたちの楽しみだった蟹が、縁もゆかりも無い暖かい都会でばかばか食べられているのは異常な事なのでしょうなあ。ロシアだの北朝鮮だのにまで手を伸ばして買い集めて、安くて上手い蟹を目の色を変えて食べつくそうとするのは「グルメ」などではなく、それは餓鬼ではないでしょうか?

■忘年会や新年会のシーズンが近付くと、ムヤミヤタラに胃腸薬の宣伝が増えますが、食べ過ぎたら二三日は断食していれば良いのですし、酒を飲み過ぎたら三日以上は酒の後味の悪さをしみじみと思う。共食い同然に育てた牛の肉を、何が何でも食べたい!という人は、移住を考えた方が良いのかも知れませんなあ。昔から、びっくりするような遠方から取り寄せた山海の珍味なんぞを毎日食べていた王様が長生きした事など無いでしょう。食べ過ぎず、薬に頼り過ぎず、質素と言われようが、貧乏臭いと言われようが、体が楽に消化吸収してくれる慣れた食べ物を心掛けるに越した事は無さそうですなあ。でも、ウィルス感染には別の戦略が必要ですぞ!今の内から、変な「特効薬」だの「万能薬」だのに騙されない訓練を積んでおきましょう。因みに、友人の治療家は「医食同源などと言うのはウソだ」と怒っております。

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