■戦後の一時期には、民族や宗教の違いを超えて「第三世界の連帯」を謳い上げたバンドンでも、火の手が上がったようですから、時代は変わっているようで、実は何も変わっていないのかも知れませんなあ。
…西ジャワ州バンドンではFPIのメンバーら数十人が、西スマトラ州パダンなどでもイスラム団体が小規模なデモを行った。ジョクジャカルタでは急進派組織ヒズブット・タフリルなどの数十人がデモ行進、デモ隊のリーダー、アルワン氏は「1988年、サルマン・ラシュディがイスラムを冒とくする小説『悪魔の詩』を発表したことに匹敵する事件」と厳しく非難した。各地に広がったデモについて、ハッサン・ウィラユダ外相は「各国大使館から警備強化の要請は受けていないが、国家警察は必要な警備を行っている。抗議運動は一時的なもので、デンマークをはじめとする外国人が国外退避することはないだろう」との見方を示した。ユドヨノ大統領はこのほど、表現の自由として宗教を冒とくすることは認められないと批判する一方、デンマーク側の謝罪を受け入れるよう国民に呼び掛けた。
■世界最大のイスラム教徒数を抱えているインドネシアは、東ティモールが分離独立したり、イスラム教ではないバリ島が爆弾テロの標的にされたりする複雑な国です。大統領の一言が全国に広まって浸透するようなお国柄でもありません。沈静化は簡単に実現しないと思われます。
…コフィ・アナン国連事務総長も抗議運動の過激化に深刻な懸念を表明。インドネシアなど57の国・機構が加盟するイスラム諸国会議機構(OIC、本部サウジアラビア)は、限度を超えた過激な抗議運動はイスラムのイメージを悪化させるとして冷静な対応を呼び掛けている。毎日新聞 2006年2月7日
■サウジアラビアは、聖地メッカの守護者を辞任しつつも、アルカーイダの生誕地でもあります。歴史を播き戻すようなイスラムの熱狂が盛り上がると、現在の一族支配体制の矛盾から建国の正当性にまで非難される恐れも有りますし、王族が追い詰められれば、米国に身を守ってもらうしかないのですから、どちらに転んでもイスラムの敵とされる必然性を抱えています。既にアルカーイダがこの上も無い「過激な抗議運動」の見本を見せているのですから、こんな呼び掛けを発表しても顰蹙を買うだけでしょうなあ。
イスラム教の預言者ムハンマド(マホメット)の風刺漫画への抗議デモ参加者がベイルートのデンマーク大使館に放火した事件でレバノン政府は6日、デンマークに対する謝罪声明を出した。ロイター通信によると、声明は「文明度の高いレバノンのイメージを損なう暴動とデンマーク大使館への攻撃を非難する」としている。レバノン治安筋は同通信に対してこれまでに330人を逮捕、うち半数以上がシリア人やパレスチナ人だと語った。レバノン国会の反シリア派連合は「レバノン内に潜伏するシリアの特殊部隊やパレスチナ、ヨルダンの武装集団が暴動の背後にいる」と指弾している。
以上は 毎日新聞 - 2月7日の記事
■動乱や戦乱が起これば、自国内の宗教対立が激化するレバノンは、断固として治安維持に乗り出さねばなりません。禍転じて福となすには、レバノンの問題は全部「国外の悪い奴」のせいなのだ、と世界中に宣伝したいのでしょう。米国に睨(にら)まれているシリアとパレスチナから流れ込んで、騒ぎを起こしている連中にとっては活躍の場が得られて大喜びでしょうが、余り盛大に暴れると、イスラエルが防衛軍事活動を始めますから、そんな事が自国内で起こっては大変です。レバノンで活動できなくなれば、彼等はイラクに流れて仕事をするのでしょうなあ。
イスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画掲載問題で、6日の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、東部ペンシルベニア州のフィラデルフィア・インクワイアラー紙が4日付で風刺漫画を掲載、20数人のイスラム教徒が6日、同紙の社屋前で抗議デモを行った、と伝えた。…米主要紙の風刺漫画掲載は初めて。同紙やワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズなどの有力紙は控えているが、今後の状況次第では米国でも問題化する恐れもありそうだ。デモ隊は「(民族や宗教への)憎しみを拒否しよう」などとアピール、1時間ほど抗議した。謝罪しなければ10日にもデモを行うとしている。
共同通信 - 2月7日
■キリスト教保守派を大きな支持基盤としているブッシュ大統領ですから、しばらく様子を見ないと下手な事も言えません。「自由」と「民主主義」を看板にしてイラクに駐留しているのですから、新聞編集も抗議デモも、どちらも認めるしかないでしょうが、米国は広くて複雑な国ですから、「売られた喧嘩は漏れなく買うぞ!」という威勢の良い人達も多いので、また反イスラム問題が幾つか起こるでしょう。こうした問題が世界的に広がっている時に、日本は北朝鮮を相手にして「拉致被害者を返せ」と無駄な交渉をし続けているようです。「社会主義革命の核」も「イスラムの核」も、どちらも時代遅れなのですが、そうは言えない人が世界の半分以上の地域に住んでいるという事実は忘れてはなりません。北朝鮮の工作員が好き放題に仕事が出来る日本なのですから、イスラム過激派が標的にしたら、何が起こるか分かったものではありません。陸上自衛隊が撤収し始める頃には、この騒動が収まる事を祈るばかりです。
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…西ジャワ州バンドンではFPIのメンバーら数十人が、西スマトラ州パダンなどでもイスラム団体が小規模なデモを行った。ジョクジャカルタでは急進派組織ヒズブット・タフリルなどの数十人がデモ行進、デモ隊のリーダー、アルワン氏は「1988年、サルマン・ラシュディがイスラムを冒とくする小説『悪魔の詩』を発表したことに匹敵する事件」と厳しく非難した。各地に広がったデモについて、ハッサン・ウィラユダ外相は「各国大使館から警備強化の要請は受けていないが、国家警察は必要な警備を行っている。抗議運動は一時的なもので、デンマークをはじめとする外国人が国外退避することはないだろう」との見方を示した。ユドヨノ大統領はこのほど、表現の自由として宗教を冒とくすることは認められないと批判する一方、デンマーク側の謝罪を受け入れるよう国民に呼び掛けた。
■世界最大のイスラム教徒数を抱えているインドネシアは、東ティモールが分離独立したり、イスラム教ではないバリ島が爆弾テロの標的にされたりする複雑な国です。大統領の一言が全国に広まって浸透するようなお国柄でもありません。沈静化は簡単に実現しないと思われます。
…コフィ・アナン国連事務総長も抗議運動の過激化に深刻な懸念を表明。インドネシアなど57の国・機構が加盟するイスラム諸国会議機構(OIC、本部サウジアラビア)は、限度を超えた過激な抗議運動はイスラムのイメージを悪化させるとして冷静な対応を呼び掛けている。毎日新聞 2006年2月7日
■サウジアラビアは、聖地メッカの守護者を辞任しつつも、アルカーイダの生誕地でもあります。歴史を播き戻すようなイスラムの熱狂が盛り上がると、現在の一族支配体制の矛盾から建国の正当性にまで非難される恐れも有りますし、王族が追い詰められれば、米国に身を守ってもらうしかないのですから、どちらに転んでもイスラムの敵とされる必然性を抱えています。既にアルカーイダがこの上も無い「過激な抗議運動」の見本を見せているのですから、こんな呼び掛けを発表しても顰蹙を買うだけでしょうなあ。
イスラム教の預言者ムハンマド(マホメット)の風刺漫画への抗議デモ参加者がベイルートのデンマーク大使館に放火した事件でレバノン政府は6日、デンマークに対する謝罪声明を出した。ロイター通信によると、声明は「文明度の高いレバノンのイメージを損なう暴動とデンマーク大使館への攻撃を非難する」としている。レバノン治安筋は同通信に対してこれまでに330人を逮捕、うち半数以上がシリア人やパレスチナ人だと語った。レバノン国会の反シリア派連合は「レバノン内に潜伏するシリアの特殊部隊やパレスチナ、ヨルダンの武装集団が暴動の背後にいる」と指弾している。
以上は 毎日新聞 - 2月7日の記事
■動乱や戦乱が起これば、自国内の宗教対立が激化するレバノンは、断固として治安維持に乗り出さねばなりません。禍転じて福となすには、レバノンの問題は全部「国外の悪い奴」のせいなのだ、と世界中に宣伝したいのでしょう。米国に睨(にら)まれているシリアとパレスチナから流れ込んで、騒ぎを起こしている連中にとっては活躍の場が得られて大喜びでしょうが、余り盛大に暴れると、イスラエルが防衛軍事活動を始めますから、そんな事が自国内で起こっては大変です。レバノンで活動できなくなれば、彼等はイラクに流れて仕事をするのでしょうなあ。
イスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画掲載問題で、6日の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、東部ペンシルベニア州のフィラデルフィア・インクワイアラー紙が4日付で風刺漫画を掲載、20数人のイスラム教徒が6日、同紙の社屋前で抗議デモを行った、と伝えた。…米主要紙の風刺漫画掲載は初めて。同紙やワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズなどの有力紙は控えているが、今後の状況次第では米国でも問題化する恐れもありそうだ。デモ隊は「(民族や宗教への)憎しみを拒否しよう」などとアピール、1時間ほど抗議した。謝罪しなければ10日にもデモを行うとしている。
共同通信 - 2月7日
■キリスト教保守派を大きな支持基盤としているブッシュ大統領ですから、しばらく様子を見ないと下手な事も言えません。「自由」と「民主主義」を看板にしてイラクに駐留しているのですから、新聞編集も抗議デモも、どちらも認めるしかないでしょうが、米国は広くて複雑な国ですから、「売られた喧嘩は漏れなく買うぞ!」という威勢の良い人達も多いので、また反イスラム問題が幾つか起こるでしょう。こうした問題が世界的に広がっている時に、日本は北朝鮮を相手にして「拉致被害者を返せ」と無駄な交渉をし続けているようです。「社会主義革命の核」も「イスラムの核」も、どちらも時代遅れなのですが、そうは言えない人が世界の半分以上の地域に住んでいるという事実は忘れてはなりません。北朝鮮の工作員が好き放題に仕事が出来る日本なのですから、イスラム過激派が標的にしたら、何が起こるか分かったものではありません。陸上自衛隊が撤収し始める頃には、この騒動が収まる事を祈るばかりです。
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