旅限無(りょげむ)

歴史・外交・政治・書評・日記・映画

イスラム、怒りのネット・ワーク 其の参

2006-02-07 17:02:05 | 外交・世界情勢全般
■戦後の一時期には、民族や宗教の違いを超えて「第三世界の連帯」を謳い上げたバンドンでも、火の手が上がったようですから、時代は変わっているようで、実は何も変わっていないのかも知れませんなあ。

…西ジャワ州バンドンではFPIのメンバーら数十人が、西スマトラ州パダンなどでもイスラム団体が小規模なデモを行った。ジョクジャカルタでは急進派組織ヒズブット・タフリルなどの数十人がデモ行進、デモ隊のリーダー、アルワン氏は「1988年、サルマン・ラシュディがイスラムを冒とくする小説『悪魔の詩』を発表したことに匹敵する事件」と厳しく非難した。各地に広がったデモについて、ハッサン・ウィラユダ外相は「各国大使館から警備強化の要請は受けていないが、国家警察は必要な警備を行っている。抗議運動は一時的なもので、デンマークをはじめとする外国人が国外退避することはないだろう」との見方を示した。ユドヨノ大統領はこのほど、表現の自由として宗教を冒とくすることは認められないと批判する一方、デンマーク側の謝罪を受け入れるよう国民に呼び掛けた。

■世界最大のイスラム教徒数を抱えているインドネシアは、東ティモールが分離独立したり、イスラム教ではないバリ島が爆弾テロの標的にされたりする複雑な国です。大統領の一言が全国に広まって浸透するようなお国柄でもありません。沈静化は簡単に実現しないと思われます。


…コフィ・アナン国連事務総長も抗議運動の過激化に深刻な懸念を表明。インドネシアなど57の国・機構が加盟するイスラム諸国会議機構(OIC、本部サウジアラビア)は、限度を超えた過激な抗議運動はイスラムのイメージを悪化させるとして冷静な対応を呼び掛けている。毎日新聞 2006年2月7日

■サウジアラビアは、聖地メッカの守護者を辞任しつつも、アルカーイダの生誕地でもあります。歴史を播き戻すようなイスラムの熱狂が盛り上がると、現在の一族支配体制の矛盾から建国の正当性にまで非難される恐れも有りますし、王族が追い詰められれば、米国に身を守ってもらうしかないのですから、どちらに転んでもイスラムの敵とされる必然性を抱えています。既にアルカーイダがこの上も無い「過激な抗議運動」の見本を見せているのですから、こんな呼び掛けを発表しても顰蹙を買うだけでしょうなあ。


イスラム教の預言者ムハンマド(マホメット)の風刺漫画への抗議デモ参加者がベイルートのデンマーク大使館に放火した事件でレバノン政府は6日、デンマークに対する謝罪声明を出した。ロイター通信によると、声明は「文明度の高いレバノンのイメージを損なう暴動とデンマーク大使館への攻撃を非難する」としている。レバノン治安筋は同通信に対してこれまでに330人を逮捕、うち半数以上がシリア人やパレスチナ人だと語った。レバノン国会の反シリア派連合は「レバノン内に潜伏するシリアの特殊部隊やパレスチナ、ヨルダンの武装集団が暴動の背後にいる」と指弾している。
以上は 毎日新聞 - 2月7日の記事

■動乱や戦乱が起これば、自国内の宗教対立が激化するレバノンは、断固として治安維持に乗り出さねばなりません。禍転じて福となすには、レバノンの問題は全部「国外の悪い奴」のせいなのだ、と世界中に宣伝したいのでしょう。米国に睨(にら)まれているシリアとパレスチナから流れ込んで、騒ぎを起こしている連中にとっては活躍の場が得られて大喜びでしょうが、余り盛大に暴れると、イスラエルが防衛軍事活動を始めますから、そんな事が自国内で起こっては大変です。レバノンで活動できなくなれば、彼等はイラクに流れて仕事をするのでしょうなあ。


イスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画掲載問題で、6日の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、東部ペンシルベニア州のフィラデルフィア・インクワイアラー紙が4日付で風刺漫画を掲載、20数人のイスラム教徒が6日、同紙の社屋前で抗議デモを行った、と伝えた。…米主要紙の風刺漫画掲載は初めて。同紙やワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズなどの有力紙は控えているが、今後の状況次第では米国でも問題化する恐れもありそうだ。デモ隊は「(民族や宗教への)憎しみを拒否しよう」などとアピール、1時間ほど抗議した。謝罪しなければ10日にもデモを行うとしている。
共同通信 - 2月7日

■キリスト教保守派を大きな支持基盤としているブッシュ大統領ですから、しばらく様子を見ないと下手な事も言えません。「自由」と「民主主義」を看板にしてイラクに駐留しているのですから、新聞編集も抗議デモも、どちらも認めるしかないでしょうが、米国は広くて複雑な国ですから、「売られた喧嘩は漏れなく買うぞ!」という威勢の良い人達も多いので、また反イスラム問題が幾つか起こるでしょう。こうした問題が世界的に広がっている時に、日本は北朝鮮を相手にして「拉致被害者を返せ」と無駄な交渉をし続けているようです。「社会主義革命の核」も「イスラムの核」も、どちらも時代遅れなのですが、そうは言えない人が世界の半分以上の地域に住んでいるという事実は忘れてはなりません。北朝鮮の工作員が好き放題に仕事が出来る日本なのですから、イスラム過激派が標的にしたら、何が起こるか分かったものではありません。陸上自衛隊が撤収し始める頃には、この騒動が収まる事を祈るばかりです。

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イスラム、怒りのネット・ワーク 其の弐

2006-02-07 17:01:24 | 外交・世界情勢全般
■今でも社会主義革命の看板を下ろさずに「闘争」を続ける国と同じように、イスラムの栄光を回復する「聖戦」を再開しようとする人々が動き出しています。イランは政府が先頭に立って核武装を進めながら、とうとうデンマークとの外交闘争を始めてしまいましたなあ。

ヨルダン下院(定数110)の過半数の64議員は6日、イスラム教預言者ムハンマドの風刺漫画が新聞に掲載されたデンマークやノルウェーなどとの経済や文化に関する合意を破棄するようバヒト内閣に求めた。国営ペトラ通信が伝えた。また、掲載国の商品の輸入ボイコットも要求。AP通信によると、バヒト内閣が応じなければ、議員らは内閣不信任案を可決させる構えという。アルジェリアの首都アルジェでは同日、数千人がデンマーク国旗を燃やすなどの抗議デモを行った。共同通信 - 2月7日

■国力に不安の有るヨルダンはずっと穏健派として巧みな外交を続けて来たのですが、民主化が進むとこうした過激な意見も正当な扱いを受ける権利が生じます。アルジェリアも一度は民主選挙を実施した国です。イラクでも民主的な政府が誕生すると言われていますが、甘い「アメリカン・ドリーム」に簡単に同調するのは危険でしょうなあ。


タス通信によると、イスラム教徒が多いロシア南部チェチェン共和国のラムザン・カディロフ第1副首相は6日、デンマークなど欧州の新聞がイスラム教預言者ムハンマドの風刺漫画を掲載した問題に関し「デンマークのいかなる組織もチェチェンでの活動を許すことはできない」と述べた。人道支援分野で活動する非政府組織(NGO)などが今後、締め出される可能性がある。共同通信 - 2月7日

■反ロシアの独立闘争は、チェチェンの歴史に根差す限定的な理由で続いていましたが、これで世界のイスラムと連なって戦う大義名分が立つかも知れません。まさか、ロシアは昔のロシア帝国が、当時、世界最大のキリスト教国だった事を思い出すような演説はしないでしょうが……。


ムハンマドの風刺漫画を転載したマレーシア・カリマンタン島の英字紙サラワク・トリビューンが6日までに謝罪、編集担当者が引責辞任した。同紙は4日に風刺漫画を転載したが、5日に謝罪文を掲載。イスラム教が預言者の肖像を描くことをタブー視していることを踏まえ、「(社会的な常識や通念を順守する)社内規定を守らず転載したことに深い遺憾の意を表する」としている。
毎日新聞 2006年2月7日

■人口比と宗教分布状態に対して不自然に富を独占していると思われている東南アジアの華人社会には、今、大いなる恐怖が広まっているのでしょう。宗教問題は実に小さな切っ掛けで民族対立の激化を招きますから、こうした先回りが必要なのでしょうなあ。


…6日、世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシアでも各地にデモが拡大し、首都ジャカルタのデンマーク大使館は臨時閉鎖した。インドネシア政府は表現の自由と称して宗教を冒とくすることは許されないと厳しく非難する一方、冷静に対応するよう呼び掛けている。南ジャカルタ・メガクニンガンのデンマーク大使館が入居するムナラ・ラジャワリ・ビル前では同日午前10時ごろ、イスラム政党の福祉正義党支持者約500人が集結、「全世界のイスラム教徒に謝罪すべきだ」などと叫び、デンマークの乳製品などの不買運動を呼び掛けた。

■インドネシアは何度もチャイニーズ虐殺事件が起こった場所です。小さな焼き討ちが起これば、瞬く間に大規模な略奪が始まり、虐殺事件へと進んで行きますから、種火のうちにしっかりと消火しておかなければなりません。


 デンマーク大使館は同ビルの25階にあるため、デモ隊は厳重警備体制の敷かれたビルのロビーで待機、大使が不在のため、面会できず、午後1時半ごろに退散した。同ビルの管理者によると、イスラム急進派組織のイスラム擁護戦線(FPI)が3日に同大使館でデモを行い、ロビーにあった花瓶などを破壊。さらに騒ぎが拡大するのを恐れた同大使館は同日、臨時休館した。……東ジャワ州スラバヤでは、木棒などを持ったFPIのメンバー約200人が米国総領事館前に集結。領事館の看板を取り外し、「イスラムへの冒とくだ」と叫び、正門前に押し掛けたデモ隊に、警察隊が威かく射撃を繰り返す騒ぎに発展した。これに先駆け、デモ隊は同市サンバス通りにあるデンマークの総領事公邸でデモ。柵を乗り越えて敷地内に入り込み、窓ガラスを破壊したほか、デンマークの国旗を燃やして気勢を上げた。
(其の参に続きます)

イスラム、怒りのネット・ワーク 其の壱

2006-02-07 17:00:17 | 外交・世界情勢全般
■ムハンマドが632年に息を引き取った時、イスラム教はアラビア半島を席捲していました。その広大な統一領域を治めるためにアブー・バクルがカリフとなって、イスラム教はますます布教地を拡大しました。イラク、シリア、エジプトを征服し、とうとうササン朝ペルシャをも撃破して欧州と東アジアを完全に分断してしまいました。外に発展した一方で、内輪での権力闘争が激化して崩壊の危機を迎えますが、実力者のムアーウィアがウマイヤ朝を開いて内部分裂を収めてから、イスラムは北アフリカと中央アジアに広まって行きました。ジルラルタル海峡を渡ってトゥール・ポワティエで732年にフランク軍が阻止するまで西への拡大は続きました。

■次にカリフの位を継いだアッバース朝は、東に進んで751年にはタラス河畔で唐の遠征軍と激突しました。その後、欧州のイスラム国はアフリカに追い落とされますが、東への拡大は続いて、セルジュク・トルコがイスラムに改宗し、ガズナ朝はインドへの侵入を始め、チンギス汗の大侵略を挟んでイル汗国とチャガタイ汗国がイスラム化してから、ティムール帝国が出現します。明への大遠征を計画中にティムールが病死したために、シルクロードの東半分はイスラム化しませんでしたが、インドはムガール帝国によってイスラムが浸透し、ここから海を越えて東南アジアがイスラム圏に組み込まれたのでした。ウマイヤ朝の末裔がイベリア半島を根拠地に後ウマイヤ朝を開いていましたが、ティムール帝国が滅びた頃、ナスル朝を最後にイベリア半島からイスラムは追い出されてしまいました。

■欧州列強の帝国主義は、アメリカ大陸とアフリカ大陸を蚕食した後、イスラム圏を植民地し始めると、イスラムのネット・ワークはずたずたにされ、帝国主義時代が終わると多数の独立国家が生まれてネット・ワークは復元されなくなりました。第二次大戦後、ワルシャワ機構軍やNATO軍が出来ましたが、最後までイスラム諸国軍は生まれませんでした。最後のイスラム帝国、オスマン・トルコを切り刻んで滅ぼすのが、第一次世界大戦の目的だったのだから仕方が有りません。そんな流れの中でアラブ諸国は石油利権の権謀術数に翻弄されて、不必要な武器を売りつけられて気が付けば大赤字国に転落してしまいました。中東に奇怪な国境線を引いた英仏両国は裏に回って陰湿に動きましたが、米国は正々堂々イラクに攻め込んで見せました。万一、神聖ローマ皇帝に心酔するような米国大統領が誕生したら、メッカ攻略など直ぐに出来る体制が完成しています。

■イスラム側から見れば、不愉快な歴史が続いているというわけです。ウマイヤ朝時代を再現したい!と本気で考える若者が出て来るのは当然かも知れません。そんな時期に、選りによって開祖のムハンマドの風刺画に手を出したのは大失敗でしたなあ。無数の仏教遺跡を破壊したイスラム教徒達は、何よりも仏像の顔面に対して執拗な破壊を加えました。バーミアンの石窟立像は、顔面が無かったのに姿が気に入らないから、21世紀の幕開けを記念するように全身が爆破されてしまいました。世界遺産だの、国連だの、オリンピックだの、それらはキリスト教徒が勝手に決めて運営しているものに過ぎない!と言い切るイスラム教徒が存在する事をよくよく考えて、冬季オリンピックにも警戒を忘れないことが重要でしょうなあ。


イスラム教の預言者ムハンマドの風刺漫画がデンマーク紙などに掲載された問題で、イランのミルカゼミ商業相は6日、デンマーク製品の輸入を含むすべての商取引を禁止すると述べた。7日から発動する。禁止期間については「次の通知があるまで」としている。イラン学生通信が伝えた。アフマディネジャド大統領が4日、漫画の掲載国との経済関係を見直すよう指示したのを受けた措置。イランのデンマークからの輸入総額は年間約2億8000万ドル(約333億円)。
……読売新聞 - 2月7日

■欧米ばかりか世界を敵に回して喧嘩を仕掛けているイランにとっては、世界中のイスラム教徒が怒りの連帯を作り出しているのは勿怪(もっけ)の幸いでしょう。その内、「聖戦には核兵器が必要だ!」と世界に訴える心算なのではないでしょうか?仏教遺跡を灰燼に帰しても平気な人達は、キリスト教文化を絶滅させるのも平気でしょうから、「カネを恵んでくれないなら原爆使うぞ」と言っている国とは性格がまったく違います。


イランからの報道によると、イスラム教の預言者ムハンマド(マホメット)の風刺漫画が欧州の新聞に掲載されたことに抗議するデモ隊が6日、首都テヘランのオーストリアとデンマークの大使館に押しかけ、一部はデンマーク大使館の敷地内に一時侵入した。デンマークの新聞は風刺漫画を最初に掲載していた。デモ隊は約400人で、保守派の民兵組織「バシジ」によって計画された。門扉を鉄パイプで殴打したり火炎瓶を投げつけたりするデモ隊に対し、機動隊が催涙ガス弾を撃ち込んだ。大使館員は既に避難していた。一方、ミルカゼミ商業相は同日、風刺漫画掲載への制裁措置として、デンマークとの貿易を一部の例外を除いてすべて打ち切ったと発表した。時事通信 - 2月7日
(其の弐に続きます)

他人の空似 其の弐

2006-02-07 10:15:36 | 歴史

■顔はぜんぜん似ていないのに、同じ印象を与える人という他人の空似が有るようです。


計60のホテルで法令違反が確認された大手ビジネスホテルチェーン「東横イン」(東京都大田区)。国土交通省で6日、会見した西田憲正社長(59)は約40分の間、終始うつむき加減で「自分が上等な人間だと増長しておりました。国民の皆様に謝りたい」などと話し、時折、涙をぬぐった。しかし、改造の明確な動機や原状回復のスケジュールについては「私の責任です」「早く直したい」と繰り返すばかりで、具体的には語らなかった。

西田さんがマスコミに登場したのを最も歓迎したのは小嶋ヒューザー社長でしょうなあ。大事件になるのを予見出来ない自己陶酔型の人には良く有る事でしょうから、事の良し悪しを考えずに、マスコミに囲まれると妙に嬉しくなって興奮してしまう癖が有ります。


1月27日の会見で「(改造は)自分たちの流儀」「ちょっとぐらいならいいと思った」などと雄弁だった西田社長は、態度を一変。「申し訳ありませんでした」「心よりおわび申し上げます」と、何度も頭を下げ、消え入るような声で質問に応じた。冒頭、西田社長は「公共的役割を担うホテル運営企業の経営責任者として、極めて不適切な言動があり、深く反省しております。利便性に目を奪われ、すべての人が社会参加できる豊かな社会を築くための、ハートビル法の精神を顧みる姿勢に欠けていました」とする謝罪文を読み上げた。

■西田さんも小嶋さんと同じように、成功者としてマスコミに取り上げられて自慢話を並べた本を出しています。メディアに登場すると有頂天になって、本で作ったイメージに操られるように振舞いますから、後で自縄自縛に陥ります。小嶋社長の方は、先物取り引きやらインチキ商品を強引に売って歩いた前歴が有るのですが、西田社長の方は、親の後を継いで若い頃から経営者になっている人で、大学時代にパーティ券を売って「脱税」事件を起こしたツワモノです。スーパーフリーの先輩ですなあ。保育園を経営した時には、法定基準を無視して園児を掻き集めて行政指導を受けているそうです。

■そんな人が地価暴落と不況に喘ぐ時代にホテル経営をしていたのですから、障害者を邪魔者扱いするぐらいは朝飯前で、就職が難しい女性の弱みに付け込んで、無茶苦茶な就労を強いていたそうです。深夜に女性が1人だけで誰が入って来るのか分からないホテルの受付カウンターに座らせたり、一切の休憩が無い激務に追い込んで、「文句の有る奴はクビ」という単純明快で冷酷な経営方針を貫いていたとも言われます。短期間でしたが、幾つかのメディアは「注目企業」「ホテル戦争」「辣腕経営者」と伝えていたのですが、今となっては知らん振りです。

■「東横イン」が破った法律・条令は、駐車場を潰したとか、障害者用客室を改造したとか、それだけの事ではなく、労働基準法が問題でしょうし、手抜き工事を命じていた可能性が無いとは思えません。従業員の健康や生命をまったく気にしない経営者が、「鉄筋減らせ!」と言わなかったと考える方が不自然です。全国に120以上も「東横イン」を建設したのは誰なのでしょう?その建設会社が使っていた構造設計士は誰なのでしょう?


この後の質疑応答で、西田社長は、改造を繰り返した理由を「利便性、営利を追求し過ぎた」と認めた。しかし、改造前後の二重図面があったことについて、「検査前から改造が前提だったのか」と問われると、「全部、私の責任です」と答えただけ。その後、涙ぐんで口をつぐみ、同席した加藤敏子・営業企画部長が「東横イン開発の設計士が図面を引いた」と答えると、ようやく、「時間の空いている者に(自分が)描かせた」と認めた。進退については、「(不正があったホテルを)すべて直させてほしい」と述べ、現時点では辞任の考えはないことを明らかにした。

■世間を舐め切って、ころころ表情を変えて見せるのも西田社長と小嶋社長との共通点ですし、何があっても辞任しないのも同じです。小嶋社長の方は、「姉歯が悪い」「イー・ホームズが悪い」「地方自治体と国が一番悪い」と時間稼ぎの責任転嫁する相手に事欠きませんが、西田社長は既に国交省が告発する構えを決めているので、泣いて謝るしか方法が無かったのでした。


…全国62の障害者団体でつくる「日本身体障害者団体連合会」(東京都豊島区)の片岡卓宏副会長は「不正が二度と起こらないよう、罰則を厳しくするなど、法制度を見直してもらいたい」と行政の対応に注文を付けた。読売新聞 - 2月7日

■邪魔扱いされた障害者の皆さんが西田社長を信頼せず、怒りを行動で表現するのは正当なものです。しかし、正当な報酬も貰えず、健康や家庭に甚大な被害を受けた元従業員の皆さんは訴訟を起こさないのでしょうか?国交省が動いたら、厚生労働省は管轄外となるのでしょうか?長引いた不況と就職難が、残虐なリストラを脅迫材料に使って労働者を牛馬のように酷使する経営者を野放しにしてしまいました。個人の健康な生活を破壊され、正当な報酬も受け取れず、労災認定もして貰えない。そんな例が「東横イン」には山ほど隠されているはずです。一罰百戒の好例として、厳罰に処しておかないと、労働基準法が生き返る機会が失われるような気がしてなりません。

■法を守る意識に欠ける経営者が、家庭生活を破壊し、結婚を遠ざけ、子供の健全な養育を阻害して、異様な犯罪や社会問題の原因を作っている事態を厚生労働省はずっと放置しているのですから、「少子化対策」の予算の付け方が間違っているのです。求人倍率が改善した!と新聞は書き立てましたが、やっと再就職したその現場で法律が守られているのかどうかもきちんと検証しなければ、日本が良い方向に向い始めたかどうか、誰にも保証できないはずなのです。「東横イン」と競っていたホテルも沢山有るでしょうし、ヒューザーや木村建設と競争していた会社も有ったはずです。小嶋社長は西田社長が、何十万にもいる経営者の中で、特殊な人物だとはとても思えませんなあ。似た人は、3人どころではないでしょう。

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他人の空似 其の壱

2006-02-07 09:58:24 | 社会問題・事件
■世の中には自分によく似た人が3人は居るのだそうですが、それが本当かどうか確かめた暇な人は居ないでしょうなあ。でも、確かに良く似た人は出て来るものです。北京で始まった日朝協議で、日本側は斎木さんを出世させて新旧混合の顔ぶれを並べたのに対して、北朝鮮側は30歳前からずっと対日交渉に携わっている宋日昊(ソン・イルホ)同局副局長を中心にして、金哲虎(キム・チョルホ)外務省アジア局日本課長を出して来ました。この人は数年間にわたり、日朝国交正常化交渉や拉致問題をめぐる日朝政府間協議に関与して来た人物だそうですが、経歴は謎とされています。なかなか強面(こわもて)で、笑顔など一度も見せたことがない人のような印象の人なのですが、ちょっと見には田中均さんに似ているように感じました。

■仏頂面した時の田中さんは生意気で人の助言なんか馬鹿にして聞かないような冷たい印象を放つ田中さんですが、にっこりすると騙され易い人の良さが滲み出る事が有りますし、苛められると人前でも涙が涌いてくる体質を持っている人です。田中さんは異動になってから、雑誌やテレビを利用して外務省の応援に回っています。応援と言っても、日本の外交力を増強するわけではなく、言い訳めいた事をあれこれと並べて外務省が叩かれないように予防策を講じているだけのようにも思えますなあ。ですから、金哲虎さんと田中均さんが実際にテーブルを挟んで対面するツーショット画面になれば、まったく似ていない人同士に見えるはずです。顔で負けても言葉と論理で、強い第一印象を相手に与える事は出来るのですが、どうしても日朝協議となると、アマチュアとプロのゲームを見る思いがします。それが田中均さんと金哲虎さんの顔がちょっと似ているなあ、と思っても直ぐに「良く見ると全然違う」と結論する理由になっているようです。

■「女性にモテる呪文を駆使する男」として、世の男どもに虚しい夢と妄想を投げ付けた変な人がマスコミに登場しました。話題になったのは1週間ほどでした。世の耳目が集中した「11人の女性と暮らしている」事実に関しては何の違法性も無いので、重婚罪を避ける為に婚姻届と離婚届を取っ替え引っ換え提出していたという事実に、世の中を舐めている!と嫉妬心を隠して腹を立てている男達が多いようです。女性を横に並べてマスコミに登場した時に、オウム真理教の麻原さんを思い出した人も多かったのではないでしょうか?案の定、雑誌『ムー』や『トンデモ本』でお馴染みのヨタ話を張り合わせて、反社会的な存在として攻撃されないように先手を打って煙幕を張ったようです。

■この人は渋谷博仁(57)という「占い師のようなもの」と自称する初老の男性です。初めてこの人物をテレビ画面で目撃した時、音量を絞っていたので声が聞こえず、剃り上がった頭と威圧的なギョロ目の大写しに目が釘付けになってしまいました。てっきり、日本で一番荒稼ぎしている占い師の細木数子センセイが、諸般の事情で出家して尼さんになったのか、と本気で思い込んだのでしたが、大きな間違いでした。でも、正面からのバスト・ショットをちょっと加工すれば、渋谷さんが細木さんに、逆に、細木さんを渋谷さんに似せる事は簡単なのではないでしょうか?「何者だろう」と訝(いぶか)ってテレビの音量を上げて話を聞いて見ると、メディアがまともに取り上げては行けない事ばかり喋っていましたなあ。

■「占い」や「催眠術」で悩み多き女性達に逃げ場所を提供しているだけの話で、まあ、脅迫容疑で直ぐに逮捕されたので、各メディアはオウム事件で犯した大失敗を再び演じなくても済みそうです。宇宙人だの霊だの、信じる者にしか見えない困ったモノを臆面も無く出されると、ころりと参ってしまう人は世の中に多いことは、本屋さんに並ぶその種の商品の多さが証明しています。トンデモ本も常に本屋さんの棚にはぎっしりと並んでいるものです。今回の事件では、市販の催眠術本がちょっと問題になりました。オウム事件の時には、少しは世間の人が知らないチベット仏教や原始仏教からネタを拾い集める手間を掛けていたので、それを解説している内に報道陣が取り込まれてしまったのでした。しかし、今回は余りにも手軽なネタしか使われていなかったので、マスコミも渋谷さんのヨタ話は冷笑的に削除して報道することが出来たようですなあ。

■まあ、男女の出会いと別れは、芸能ネタでしか扱えないものですから、一度に10人や20人の女性を同時に相手にしている男が居ようと居まいと、他人にとってはどうでも良い事でしょう。ハーレムだか後宮だか大奥だか分かりませんが、奇妙な共同生活という空間は通常の社会通念を破壊する幻惑効果を持つものですから、必然的に不快な「外部」と切り離された特殊なシェルターともなれば、互いに寄り掛かり合って自滅する孤立した空間にもなるわけです。小さな子供が生まれていたそうですから、その子の養育と「外部」に出て来る女性達のケアを誰かがやらねばならないのでしょうなあ。

■他人の空似、もう一組は民主党の木俣佳丈参議院議員と朝青龍です。木俣議員は「モンスター」を自称して選挙戦に挑んでいたそうですが、がっしりした身体に見合った格闘技を見に付けているのだそうです。趣味は「陶芸・水泳・空手」と自分のHPに書いているくらいですから、空手の有段者のようです。酔った勢いで蹴りや突きを出されたら近所迷惑ですなあ。朝青龍よりも眉毛が太いようですが、この人の顔がテレビ画面に出た瞬間に、似ている!と思った人は多かったのではないでしょうか?格闘家は素人を相手にしては行けませんし、それ以上に、(家族全員参加の大喧嘩するのが良くある)アフリカから来日した素人に、年末行事で負けるのはもっとやっては行けない事ですぞ!(其の弐に続きます)