旅限無(りょげむ)

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米百俵は何処へ消えたのだろう? 其の弐

2006-02-27 11:16:08 | 教育
■大雪や寒波に苦しめられ、風邪の大流行にも耐えねばならない2月の入学試験という風習は暫く変更されそうもないのは、喉元過ぎれば何とやらで、昔の受験生達にとっては受験は所詮他人事だからでしょうなあ。桜の花を見ながら卒業と入学の儀式を執り行う美意識は大切なのでしょうが、カリキュラムがころころ変わったり、受験方法まであれこれと新しい工夫が実施されると、受験生ばかりでなく大学側でも大混乱なのでしょうなあ。

25日の長崎県立大学(佐世保市)の入試で、200点満点の小論文の配点が問題用紙に誤って100点と表記されるミスがあった。同大は25日中に受験者全員にミスがあったことを伝える文書を郵送。26日中に大学のホームページに訂正と謝罪を掲載する。小論文は募集要項通り200点満点で採点する。毎日新聞 - 2月25日

■受験生の中から、合計点が100点分不足している事を指摘する声が出なかったのが不思議ですなあ。点数配分など一切気にせずに、第一問から解き始める受験生ばかりが集まったのでしょうか?予備校では点数配分の重要性をしつこく指導しているはずなのですが、長崎大学には現役の受験生だけがやって来たとも思えないのですが…


25日にあった熊本大(熊本市)の2次試験前期日程で、一斉放送方式で行う予定だった教育学部の英語のリスニング試験がテープレコーダーの不具合のために取りやめとなり、予備のペーパーテストに切り替えられた。同大入試課は「教育学部の受験生全員が予備の問題を受けており、合否に影響はない」と説明している。同課によると、教育学部の受験生は429人。英語の試験は全4問で午後3時40分から2時間あり、リスニングは4問目だった。英語の試験の開始直前、職員が試験会場の教育学部棟6教室に放送機材に接続して一斉放送するテープレコーダーを最終点検したところ、聴き取りにくい部分があった。受験生に対しては、リスニングが始まる予定時刻に試験監督が口頭で予備の問題への切り替えを説明した。
毎日新聞 - 2月25日

■今時、テープレコーダーを使っていると言うのも呑気な話ですが、急激に生産量が減っているとは言え、メイド・イン・ジャパンはそんなにヤワな製品ではない筈です。何処かの国から輸入した製品だったのか、何十年も前の製品だったのか、原因を知りたいものですなあ。


香川大学(高松市)は25日、同日行った入試の化学で出題ミスがあったと発表した。実施後に教員の指摘で分かったという。ミスがあったのは大問1の小問3。出題文に不要な数値が含まれていたため、問いの趣旨に反し2通りの解答が可能になった。同大は化学の受験者496人全員を正解扱いにした。香川大では昨年の入試の数学でも出題ミスがあった。同大は「迷惑を掛け、心よりおわびする」としている。時事通信 - 2月25日

■新聞の署名記事ではありませんが、大学入試問題にも出題者の名前を書いておいたらどうでしょう?まさか文系の先生が化学や数学の問題を作っているわけではないでしょうから、こういう問題を作る先生の名前を知っていれば、入学後の講義選択の時に参考になるでしょうなあ。最終的に国の知的レベルを決定するはずの大学が、内部から崩壊し始めている、という指摘は随分前から内部告発の形で出されていますが、一向に改善の方向が見えていないようです。文科省が梃入れしようと小手先の対応策を出しても、理系の研究をしたいと志す若者は、ますます米国への留学を希望するようになるでしょう。それを防止するどころか、「使える英語」授業が会話重視に加えて、英語で論文が書けるようにしよう!と言うところまで話が進んでいるようです。日本語でろくな作文も書けない生徒を大量に抱え込んでいる小中学校の先生方はどうするのでしょう?

■英会話に重心を移した時に、「英文科」卒業の先生方を補助しようと外国人を大量に呼び込んだのは御愛嬌としても、英語の論文指導となれば、そんじょそこらの外人なら誰でも良いという訳には行きませんぞ!資金力に余裕のある有名私立学校がカネに物を言わせて米国の優秀な大学院生あたりを高待遇で招いたりするのでしょうか?英語で論文など書いた事も無いような先生を抱えている地方の大学などには閑古鳥が鳴いて、倒産の連鎖が置きそうですなあ。残念なことに、英語論文などとは別問題で、今存在している大学の半分は、あと数年の内に縮小と消滅の氷河期に襲われるという予測が有りますなあ。消える可能性の高い出身校を持とうとは誰も思いませんし、通学中にマスコミが押し掛けて来て追い回されたい学生も居ないでしょうから、志望大学を選ぶのも大変なら受験する大学を選ぶのはもっと大変になっているでしょう。それも「自己責任」と切り捨てられますから、「ゆとり世代」の受験生の受難は妬市を年を追って厳しくなりそうです。


家庭の経済格差拡大の影響が子どもの学力に及び、成績の下位層が増えた、と考えている教員が5割近くに上ることが25日、共同通信社が全国の小中学校教員を対象に実施したアンケートで分かった。家計の格差が拡大していると感じる教員は約8割に達した。教員の多くは格差拡大の影響として、低所得層では、親が勉強をみる余裕がなくなっていると指摘。勉強の遅れた子への学校の対応も不十分と考えるなど、長期間にわたった不況の中、生活に追われる親の状況が子どもの学習面に影響していることに教員が苦慮している実態が浮かんだ。アンケートは三重県で始まった日教組の教育研究全国集会参加者のうち250人に行い、126人が回答した。
共同通信 - 2月25日

■基礎学力の不足は、学校の責任ではない!という暗黙の前提が出来上がっているようです。貧乏な家の子供は馬鹿だと言い切ったも同然のアンケート結果ですから、こんな資料を公表しても良いのか?と大いに疑問です。マスコミがあれこれと調査して資料として発表するのは仕事として認められるでしょうが、先生方の全国集会でこんな事を調べて発表するのなら、法律を改正して、学校に行かなくても良いようにした方が話が早いようにも思えますなあ。「大きな政府」よりも「小さな政府」の方が良さそうだと思うなら、同じように「小さな学校」を覚悟しなければなりますまい。「米百俵の精神」が何処に活かされているのかさっぱり分からない事になっているようですが、それを誰も騒がないのは、元々、教育に関して誰も気にしていないという証拠なのかも知れませんぞ。

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2 コメント

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Unknown (横丁の隠居)
2006-03-01 10:50:53
子供達の理科離れが進行中という話が、巷間に流れているようです。 これはどこに起因するのでしょうか?

私は、その大きな要因の一つに賃金の問題があると考えています。 つい最近の統計報告でも理工系大学卒業者と文科系のそれにおける生涯賃金では、大きく文科系優位となっていました。 これは、我々の年代では全く考えられないデータです。

先日も、同窓会出た話での極端な意見として「明らかに能力が高い理科系が低い賃金とは納得が行かない」というのがありました。これには殆どの人が思っていたようでした。

確かに、私が大学に進学するころは「学問が良く出来て利口だから理工学部に行く」のだと真剣に信じて疑いませんでしたし、世間一般的にもそのように考えられていたのです。

それが、この処遇では・・・・。しかも、理工系は履修科目も多く必須科目も多くて忙しいのです。一般教養の期間に文系の連中と同じ講義を受けた時に思った、こんなに出来の悪くて不真面目なのに生涯賃金で後塵を拝するなんて、情けない・・・。

これでは理系離れも仕方ないかなと・・・つぶやく。

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横丁の御隠居さんへ (旅限無)
2006-03-01 16:20:10
いらっしゃいませ。技術大国と自称しながら、結局は「営業」と「根回し」が肝腎だというのが経営者の考え方なのでしょうね。良い製品を作っても売り込みに失敗したら儲からない、と言われればその通りで、宅配新聞は記事の内容より「営業」のオマケと付き合いで生き残っているのと同じ理屈ですね。しかし、誰でも同じような製品が作れてしまうという日本は大したものです。青色ダイオード問題で、中村教授が乱暴な訴訟を起こしたのも、御隠居さんのお仲間と同じ義憤に駆られたからなのでしょうなあ。因みに、民主党の鳩山さんと永田君は、理系の出身ですね。理系はマヌケと思われるのは本当に困りますね。
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