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妄想 ホリエモン・メールは北京発信か? 其の四

2006-02-25 14:51:15 | 外交・情勢(アジア)
■冗談かと思っていた「歴史共同研究」が本当に動き出しそうですぞ!

日本政府は昨年5月に京都で開かれた日中外相会談で、歴史共同研究を提案し、中国側も賛同する考えを表明。今年1月に来日したゼーリック米国務副長官は、日米中三カ国の歴史学者による第二次世界大戦中の歴史共同研究を始める構想を提示しており、中川氏の提案にはこうした動きが念頭にあったものとみられる。一方、同じく基調講演に立った公明党の井上義久政調会長は「靖国問題を解決する方策として、首相、官房長官、外相などの閣僚は公式参拝を自粛することが必要だ」と述べた。産経新聞 - 2月21日

■「創刊50周年」記念の『週刊新潮』3月2日特大号、191頁にジャーナリストの船木洋介さんのコメントが掲載されています。記事の題名は『「靖国」「海底ガス」田棚上げ日中友好を賛美する「池田大作」と「王毅大使」』というものです。


1972年に田中角栄、周恩来両首相によって成った日中の国交正常化、その実現の地ならしをしたのが池田名誉会長その人なのだと、過去、創価学会はしきりに喧伝してきた。…「当時、社会党などの野党議員たちがさかんに訪中していた。当時の竹入義勝・公明党委員長もその流れに乗り遅れてはならじと、71年に訪中。そして、3度目の訪中でようやく周恩来との会談に成功する。その際に周恩来は、賠償請求権の放棄など日本側が呑める案を示した。そして、帰国した竹入が角栄にその案を伝えたことが、日中国交正常化に繋がって行った。もともと竹入は角栄と仲が良く、中国はその関係と角栄の親中派思想を見抜いていたからこそ、竹入をパイプ役に選んだのです」

■何ともすっきりした解説です。日本の政界の裏側までお見通しの相手と外交交渉する時は、余ほど注意しませんと、「賠償請求権の放棄」というのが、実は半永久的な経済援助の約束と同義だったりしますから、ご用心、ご用心。日本ではなかなか肉声を拝聴する機会の無い池田名誉会長ですが、北京中央電視台の特別番組では、じっくりと1時間枠のインタヴューを視聴する事も出来ましたなあ。『週刊新潮』の記事によりますと、「井戸を掘った功労者」がいつの間にか角栄さんから池田名誉会長に代わっているのだそうですが、一般の新聞報道では分からない話です。小泉さんとしては自民党内の北京大好き議員団と公明党の皆さんを束にして、天秤ばかりの一方の皿の重石にしているつもりかもしれませんが、このバランスはちょっと危険ですなあ。


自民党の中川秀直政調会長ら与党訪中団は21日、中国共産党と政治、経済、外交など幅広いテーマで意見交換する「日中与党交流協議会」の初会合を北京市内のホテルで開いた。中国側代表の王家瑞対外連絡部長は基調講演で「こう着した局面打開の核心は、政治関係を良くすることだ。靖国神社への参拝を続けることは、決して小異ではない」と述べ、小泉純一郎首相や後継首相の靖国参拝中止が関係改善の前提になると強調した。靖国問題について、中川氏は20日の講演で「小異は棚上げし、共通の利益に注目して日中関係を発展させることが利益になる」と述べていた。王部長の発言はこれを念頭に置いたもので、「参拝を続ければ両国関係の基礎が必ず弱められる」と警告した。

■相手に「警告」されに出掛けたのなら、世話は有りませんが、こういう大ニュースが脇に押しやられて、永田議員とか言う小物をマスコミが大挙して追い掛け回しているのは、事態を知り抜いてやっているのなら恐ろしい事ですが、視聴率と販売部数ばかり追い掛けているのが本心なら、これはエライことになるかも知れません。何事かが起こった時に、国民一堂阿呆面さげて「そんなこと聞いてないよぉ」などと泣きべそをかいても後の祭りという物でしょうなあ。


続いて行われた自由討論では、自民党議員から「中国側が日本の国民感情を理解しなければ、日本側は圧力と感じる」「中国の教育を戦後に重点を移せないか」などの意見が相次いだ。しかし、中国側は「靖国問題は外交カードではない」「この話が片付かなければ、首脳会談も日程に上らない」などと主張、双方の溝は埋まらなかった。時事通信 - 2月22日

■馬鹿正直に「正眼に構えて」まっすぐに面打ちに行って、ピストルで眉間を打ち抜かれたようなものですなあ。相手に聞く耳が有ると信じ込んでいると、こんな間尺に合わない「自由討論」で恥をかかされ続けますぞ!飛んで火に入るのは夏の虫だけですが、春先には北京辺りにも飛んで行くのでしょうか?


中国共産党の王家瑞対外連絡部長は21日、自民党の中川秀直政調会長らが出席して北京で開催された「日中与党交流協議会」で講演し、日中関係の現状について「メディアの感情的な扇動によって国民感情の対立がもたらされることを座視してはいけない」と述べ、日本メディアの対中報道が両国関係に悪影響を与えていると非難した。王部長は、小泉純一郎首相による靖国神社参拝など政治問題以外の関係強化を強調。経済協力や文化・スポーツ・青少年交流に加え、「両国の世論と国民感情を正しく有効に導き、ナショナリズムによる両国の対立を防止する」と提案し、メディアの役割の重要性を指摘した。時事通信 - 2月21日

■こうした発言は、東京に在る中国大使館の同志諸君に向けての工作活動奨励メッセージのようにも聞こえますが、こんな話を大人しく同じ檀の上で聞いていると、「仰せご尤も」と全面的に同意したと思われてしまいますなあ。「国民感情を正しく導く」ようなマスコミ捜査は日本では法律で禁止されている事ぐらいは反論しておくべきでしょうに!こんな「粗忽訪朝団」を正しく導いたのは北京の日本大使館の方々でしょうが、こんな百害有って一利無しの茶番劇をいつまで繰り返すのかなあ?と思っていたら、ちゃんと答えが出されていました。


政府は24日の閣議で、阿南惟茂中国大使の後任大使に宮本雄二沖縄担当大使を充てる人事を決定した。宮本氏は外務省のチャイナスクール(中国語研修組)で、中国要人との関係が深い。靖国問題などで冷却化している日中関係改善が課題となる。宮本氏の後任には、重家俊範・南アフリカ兼スワジランド兼ナミビア兼ボツワナ兼レソト大使を起用する。いずれも3月3日に発令される。
読売新聞 - 2月24日

■重家さんの職名がスゴイ!のに驚きますが、こんなに複雑で広大な地域を任地として大活躍された方なら安心かと思えば、取り立ててアフリカ南部で日本政府が目立った動きを見せたとも聞いておりませんから、大過なく過ごされて、目出度く「古巣」の北京に栄転というわけなのでしょうなあ。きっと、張り切っておられる事でしょう。とかくの批判が多かった阿南さんが退任というので、どんなサプライズ人事を小泉さんが見せるかと思ったら、お役人仲間の双六遊びに付き合っていただけのようです。これで任期いっぱい、外務官僚とも仲良くできるし、民主党は自爆して絶対絶命と見えた「4点セット・5点セット」は何処かに消えてしまったし、歴史に刻まれる暴挙となりそうだった皇室典範問題もうやむやになったし、小泉さんは運が良い、とマスコミは書き立てたいのでしょうが、小泉さんに敵対すべき人達がマヌケなだけです。

■中川さんと別行動を取った二階さんは、中国メディアでは大人気だそうですなあ。実質的に尖閣諸島の地下資源を放棄するのも同然の発言をしている人ですから、北京政府は下にも置かない熱烈歓迎ぶりとか……。それを日本の新聞は書きもしないで、ホリエモン・メールの疑惑解明に夢中です。永田議員が長期入院隠遁生活しようと、辞職しようと、あるいは頭を剃って四国で御遍路さんをしようと、大勢にまったく影響は有りません。それどころか、民主党が分裂して消し飛んだところで、また同じような寄せ集め野党は一夜で作れるのですから、これも大した問題ではないでしょうに!偉そうにしていた野党幹部や、ポスト小泉競争で盛り上がっていた自民党幹部もすっかり大人しくなってしまった「ホリエモン疑惑メール」は、一体、何処から発信されたものやら…

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妄想 ホリエモン・メールは北京発信か? 其の参

2006-02-25 14:50:34 | 外交・情勢(アジア)
■自民党が北京詣でをするなら、必ず同道するのは公明党です。

自民党の中川秀直、公明党の井上義久両政調会長は20日午後、中国共産党の李長春政治局常務委員と北京市内の人民大会堂で会談し、小泉純一郎首相の靖国神社参拝をめぐり応酬を繰り広げた。李氏は首相の靖国神社参拝について「中国人民の感情と日中政治の基礎を傷つけた。憂慮すべきは日中関係が国交正常化以来、最も深刻な困難に直面していることだ」と批判。中川氏は「小泉首相が日中の政治的な基礎を壊したとの指摘は当たらない。両国に意見の相違があるからこそ、首脳間の対話を絶やしてはならない」と述べ、日中首脳会談の再開を求めた。

■これも練りに練った作文だと思われます。「意見の相違」を前提にした「首脳間の対話」など一度でも行なったら、北京の中南海は大騒ぎになりますぞ!北京政府の見解が唯一絶対の正義でなくなったら、中華人民共和国は瓦解してしまいます。靖国参拝を中止してしまった中曾根さんの真意は、個人的な信頼関係を結べたと思い込んだ胡耀邦さんが失脚する恐れが有ると聞いて決断したものですから、北京政府の主張が正しいと認めてその「厳命」に従ったのではないのです。しかし、相手は決定的な得点源を手に入れたと狂喜したことでしょう。昔を回顧して大御所ぶっている中曾根さんは、自分が下した決断の意味を誤解している節が有りますから、ご本人が靖国参拝に関して発言する度に、話がややこしくなりますなあ。中曾根さんと宮澤さんを定年退職に追い込んだ事だけが、小泉さんの功績として記録されるかも知れません。前者は靖国参拝問題で、後者は教科書問題で、北京に大きな外交上の財産をプレゼントしたのですからなあ。


中川氏はまた「首相が参拝したからといって、日本が軍国主義に戻ることはあり得ない。首相は参拝について私的であり、A級戦犯を参拝しているのではないと明言している」と強調した。
共同通信 - 2月20日

■「A級戦犯」という歴史用語を使わざるを得ないのなら、この種の発言は慎むべきしょう。それに北京政府は日本が軍国主義に向っているなどと考えてもいません。本当にそんな心配をしているのなら、さっさと米国との一戦を覚悟して台湾を飲みこんで、ロシアと軍事同盟を結んで上で、北朝鮮に核武装させて先兵にこき使うでしょう。第二次朝鮮戦争を起こして今度は釜山まで進撃した後、しっかり踏みとどまって北による南北統一を実現してしまえば、日本は完全に裸になってその存在を無視して、対米交渉だけを進めれば良い、そんな乱暴な戦略で行動を始めるでしょうなあ。しっかり憲法9条を抱きしめている日本である限り、北京政府は安心してオンボロ軍隊を近代化し続けられるのですからなあ。


自民党の中川秀直政調会長は21日午前、北京市内のホテルで開かれた自民、公明両党と中国共産党が意見を交換する「日中与党交流協議会」の初会合で講演し、「歴史の事実を歪曲(わいきょく)する議論を破綻(はたん)させるためには、科学的な実証主義で対抗すべきだ」と述べ、日中両国で日中戦争についての歴史共同研究を始めることや、必要があれば米国などを念頭に公正な第三国の歴史研究者に加わってもらう構想を提案した。

■「米国…公正な第三国の歴史研究者」とは誰の事を念頭に置いているのでしょう?まさか、米国の学者なら常に正しく、かつ日本の側で仕事をしてくれる、などと中川さんに吹き込んだ悪いヤツがいるのでしょうか?客観的な視点で「原爆投下」関連の資料を展示することさえ許さない米国に、どんな公正な歴史観を期待できるのでしょう?『敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人』や『容赦なき戦争 』などを書いてくれているジョン・ダワーさんなどを念頭に置いて、甘っちょろい幻想を抱いている誰かさんが作文を書いたとしたら、後ろからワシントン発の雷が襲ってきますぞ!米国では『レイプ・オブ・ナンキン』などというトンデモ本がベストセラーになり、近々、大作映画まで製作されるそうではないですか?


また、中川氏は小泉純一郎首相の靖国神社参拝について「首相は私的参拝と明言している。公式参拝との違いは、私的参拝は対象を限定できる」と述べ、A級戦犯を対象から外しているとの認識を示し、「心ならずも家族を残して命をささげた戦没者一般に参拝している」と強調した。中川氏は「首相は過去の一時期の植民地支配と侵略を、誤った国策と明言している。言葉のやりとりを絶つべきではない」と述べ、首脳会談の再開や与党間交流の重要性を強調するとともに中国メディアの責任についても言及。「戦後日本の平和的発展をとりわけ青年に伝えられるようになれば、日中関係安定化に寄与する」と指摘した。

■最近よく聞くこの種の言い訳が本当ならば、小泉首相は「A級戦犯」として処刑されてしまった人達の御遺族にきちんと手紙を出すなり、オペラ鑑賞を1回取りやめて相応の場所に招いて、「私は貴方達の御先祖を拝んでいるんじゃないからね。そこんとこヨロシク」と公式に伝えるべきでしょうなあ。まあ、小走りで一般参拝者が利用する拝殿に参拝して、ズボンのポケットから小銭を抓み出して賽銭箱に投げ込んで帰って来るような参拝なら、御遺族の皆さんも願い下げでしょうが……。


中川氏はこのほか、
(1)投資や知的財産権保護を含む体制の調和を図る日中経済連携協定(EPA)を締結する
(2)平成20年の対中円借款終了後は、自民党が高度経済成長期に推進した「国土の均衡ある発展」の政策を中国に伝え、調和ある発展を支援する
(3)アジアで国境を越えた諸問題解決のために一緒に行動する枠組みを創設する-ことなどを提案した。

■(1)が実現したら奇跡ですから、欧米諸国から大絶賛されるでしょうが、正式が文書を交わした後も海賊版が横行していたら世界の笑い者になるわけですが、それを御承知なのでしょうか? (2)は、日本中の都市をミニ東京にする政策でしたから、ミニ北京とミニ上海を人民国の領土中にゴマンと造り、熊ならぬ羊と豚しか通らない高速道路を全土に造り、不法労働者の大移動を可能にする新幹線網も整備するという愚かな大計画が考えられているのでしょうか?しかも、その財源は日本の税金と国債なのですかな?むしり取られたら未来永劫、返済不能の借金が残りますが、それをどうする御積りか?何より、自民党は「国土の均衡ある発展」をまったく反省していないという事なのですな!東京湾横断道路も瀬戸内海を跨ぐ三本の吊り橋も、業客のいない地方空港も、全部正しかったと考えているなら、日本は自国とチャイナの土建屋さんをこの先数百年かけて養う事になりますなあ。

■(3)は、誰かさんがハシャイでいる「東アジア共同体」プランの言い換えでしょ?そんな危険なホラ話がいつの間に政府の方針になったのでしょう?独断専行の極みではないですかな?外交は相手国のご機嫌取りとは違うのだ、という常識がまだ日本の外務省には定着していないようですなあ。

妄想 ホリエモン・メールは北京発信か? 其の弐

2006-02-25 14:47:59 | 外交・情勢(アジア)
■外務官僚を叱ってる振りをして、実は問題の隠蔽と先送りに与しているとしか思えない麻生さんは、他にも面白い発言をしているようです。

麻生太郎外相は18日、…「靖国問題が決着したら日中関係のその他の問題が解決するかといえば、いろいろもめている点はある。この問題にこだわりすぎると話が難しくなり過ぎ、不必要な摩擦をおこす」と述べ、小泉純一郎首相の靖国神社参拝を理由に首脳会談を拒否している中国側の姿勢を批判した。また、麻生氏は会見に先立ち開かれた外務省主催のタウンミーティングで、一昨年5月に在上海日本総領事館員が自殺した問題に言及。中国側から女性問題に付け込まれ、領事館員が「暗号の乱数表を渡せ」と強要されたと明かした。その上で「(中国側は)追い込みをかけたみたいなもの。断固対応するのは当然だ」と述べた。同種の問題の再発防止については、「(異性が)来たら、『危ねえな』と思うような訓練をしなくてはいけない。訓練、教育、しつけは非常に大事。外務省は真摯(しんし)に反省すべきだ」と強調した。産経新聞 - 2月19日

■この産経の新聞記事も変ですなあ。「靖国」にこだわり過ぎると「話が難しくなり過ぎ」るのではなく、単純明快になり過ぎるのが問題なのですし、この麻生さんの発言は「中国側の姿勢を批判」などしていません。国内向けにそう見えるような作文を読んでいるだけです。威勢の良い中国批判をしているかのように書き立てると、読者が混乱したり誤解してしまう危険が有りますなあ。上海総領事館事件をやっと認めた外務省は、恥とも思わないし危機感も反省の念も持ち合わせておりません!「追い込みをかけたみたいなもの」ではなく、中国の情報機関が仕掛けた馬鹿馬鹿しいほど初歩的な謀略は「追い込み」そのものです。

■「みたいなもの」などと、先代金馬の『居酒屋』じゃあるまいし、「の・ようなもの」などと政治家が発言しては行けません!それは、北京政府に対して激烈な非難攻撃を絶叫しておいて、最後に「時々、ふとそんな気がする昨今です」と言っているようなものです。国内向けには主文をひけらかし、相手国向けには文末に「アリバイ」工作しておくような姑息な作文をし続けている限り、口喧嘩は負け続けますなあ。情報戦の仕来りに従えば、被害に見合うダメージを相手に与えねばなりませんが、中国大使館員に対して謀略を仕掛けて仇討ちをするほど、日本の外務省はマトモではないでしょう。麻生大臣が今頃「訓練、教育、しつけは大事」などと言っているのですから、戦後60年、一体、どんな「追い込み」を在外公館はされていたのやら、はなはだ心配ですなあ。嗚呼!これはムネオ議員の専門分野ですから、この方面の質問趣意書もどっさり提出してくれる事を期待しましょう。


中国を訪問中の自民党の中川秀直政調会長は20日午前、上海市内の華東師範大学で講演し、小泉純一郎首相の靖国神社参拝で冷え込んでいる日中関係に関連し、両国の経済を糸口に関係打開を進めるべきだとの認識を示した。日中関係全般については、「日中のどちらかが一方的な敗北になるような小異は棚上げし、共同の利益に注目して日中関係を発展させることが両国民の利益になる。(日中関係は)対立と対話、摩擦と協調が並存する関係に成熟すべきだ」と指摘。また、小泉首相の対中政策について、「中国の経済発展は、『脅威』ではなく好機だという認識だ」と強調し、首相の靖国神社参拝に関し「歴史的復讐(ふくしゅう)を念頭に置いてはならない」と述べ、未来志向の関係構築が重要との認識を示した。日中の経済協力については特に、東アジア共同体構想の推進に加え、農業、金融、環境、エネルギー、知的財産問題などで両国の協力を推し進めるべきだとの考えを示した。産経新聞 - 2月20日

■低音を響かせて無表情に語るスタイルの中川さんも、テレビを利用して大きな誤解を国民に刷り込む人のようです。次期政権での重要ポストを得ようと、ホリエモン騒動の真っ最中を狙って訪中したのですから、相当に力が入っています。このタイミングで日中関係を見事に改善してみせたら、重要ポストどころか、次期総理の目も出て来ますからなあ。誰かさんが練りに練った作文を頭に入れて江沢民さんの地元に乗り込んで「講演」するくらいですから、誇大妄想の極致に達しているのかも知れません。「どちらかが一方的な敗北になるような小異は棚上げ」とは、良くぞ捻り出した屁理屈ですなあ。これは実に見事な「空振り」です。「小異」=歴史認識=靖国問題なのですから、この土俵に載っている限り敗北するのは「どちらか一方」ではなく、「日本だけ」です。

■「歴史的復讐」とは新しい表現ですが、一体、誰が発明したのでしょう?「どちらかの一方的な敗北」と同じように、当事者が誰なのかを暈(ぼか)した巧妙な作文ですなあ。「良くぞ戦って下さいました。次の国難にもしっかり備えているので、安らかにお眠り下さい」と英霊に対して祈る魂鎮めを目的とする靖国神社ですから、当然、米国や旧ソ連に対する「復讐心」がその祈りには込められます。ですから、中川さんの発言は日本国民に対して「復讐心は捨てましょうね」という教示とも取れますし、北京政府に対して「今度は人民解放軍が日本列島で暴れ回ってやるぞ!」などと復讐心に燃えては行けませんよ、というお願いにも聞こえます。そのどちらでもないのなら、靖国問題に関する不毛な「水掛論」の応酬は止めましょうよ、という温和なお願いなのかも知れません。そうだとしたら、まったく用を為さない空疎な言葉でしか有りませんなあ。靖国論争は、北京政府にとっては決して無駄な「水掛論」などではなく、最強の切り札になっている事を中川さんはまだ分かっていないようです。

妄想 ホリエモン・メールは北京発信か? 其の壱

2006-02-25 14:46:51 | 外交・情勢(アジア)
■2月16日の木曜日に民主党の永田議員が怪しい電子メールを振りかざして喚いて見せてからの10日間、日本のマスコミの目と耳は完全に機能を奪われてしまいました。永田議員を材料にした記事や報道番組を作ろうにも、取り立てて政治的に価値の有る内容など望むべくもありません。東大出身の元大蔵官僚、それを「エリート」だと短絡させる古い悪弊に始まり、国会で傍若無人に振舞ったという空疎な話を繰り返して報道するばかりです。マスコミが愚かなのではなく、それを面白がっている視聴者や有権者が驚くほど多いという証左なのでしょうが、田中真紀子さんの映像がしつこく放送された頃を思い出しますなあ。

■真紀子さんブームの熱狂を上手に利用した小泉さんは、濁声(だみごえ)を張り上げる真紀子さんの横にはいつも黙ってニヤニヤして手を振っていましたなあ。小泉さんはすっかり有名になって総理大臣にまでなってしまいましたが、真紀子さんは最も適さない「外務大臣」に就任して政治家としての能力がまったく無い事を嫌と言うほど晒して追い出されましたなあ。外務省の恥部が少しばかり表面化したのは怪我の功名でしたし、火の粉を浴びたムネオ議員は底力を見せて復活したのは最近の話題でしたなあ。真紀子さんに持ち上げられていた頃から、小泉さんは靖国参拝を強行すると公言していたのですから、真紀子さんが去って小泉さんが残った時に問題の大きさに気が付いても遅いのです。

■クリントン時代に本格化した日本に対する市場開放と同義語の「構造改革」を引き継いで、中身がさっぱり分からない「改革」をひたすら連呼して5年、東京の地価がじわじわと上がり始めると同時にまたぞろ銀行が土地を担保の馬鹿貸しを始めるかと思えば、インターネットのバーチャル空間から奇怪なカネが湧き出して、国境を跨いで怪しげな国につながるパイプや、日本国内の地下水脈ともつながった闇のカネがホリエモン現象を引き起こしている一方で、地道な生産業は中国との関係を深めて、貧乏人用の安物を大量に作って売り捌くようになりました。食糧関連の業種でも、昔は高級品だった牛肉が、すっかり庶民の昼御飯になり、焼肉は特殊な料理ではなくなっていました。商品を買う時に、安さばかりに夢中になって、「どうしてこんなに安いのか?」と考える暇を消費者に与えない詐欺商法ばかりが増えている日本です。

■気が付けばライブドアの株主が22万人もいて、インターネットで会社名も業績も知らない記号でしかない株式を売買する事が賞揚され、安物牛肉を食べて日用雑貨は100円ショップで調達し、衣類も中国製の既製品で済ませている内に、日本国内の丁寧な仕事をしていた企業や職人が職を失って中国やアジア諸国に逃げ出してしまいました。米国からの注文に応じてあれこれ、ツギハギだらけの「改革」を続けていたら、飛行機は落ちるし、証券取引所はパンクする、外国人犯罪は多発してパチンコ屋とATMが集中的に襲われる、嫁不足の解消に日中友好を利用したら残虐な事件が発生する。イラクに自衛隊が出て行っても北朝鮮に拉致された同胞は取り戻せないばかりか、国連でも赤っ恥をかく。島根県の「島」が韓国に削り取られて、島根県が古代の「根の国」に逆戻りしそうですし、東シナ海の領海内で見つかった地下資源の半分は確実に中国に吸い取られる事が決まりかけています。

■問題が大き過ぎて、どこから手を打たねばならないか、さっぱり分かりませんが、北京政府はとても親切に「問題の核心は靖国だ!」と教えてくれます。経済問題や食糧と環境の安全についても、軍事バランスの急速な変化についても、まったく問題としないで北京政府は「靖国」だけが問題だと言い続けています。元々、諸々の外交事案とはまったく関係の無い「靖国問題」ですから、財界からは面倒臭いから相手の注文に応じるように政府に対する無責任な圧力がかかる。政治資金と選挙対策が最重要課題の自民党は、党是など無いが如くに右往左往しているようですなあ。ホリエモンのメールが本物か偽物か、自民党が毎度お馴染みの裏金を誰かさんから貰っているかいないのか、そんな事はどうでも良いのです。そんなスキャンダルを暴き立てて政権交代が起こった所で、今度は野党になった自民党が総力を挙げてスキャンダルの逆襲に血道を上げるだけでしょうなあ。そんな愚かな騒動が起これば、一番喜ぶのは隣の国ですぞ!


麻生太郎外相は18日、東京都内での「外務省タウンミーティング」で、日中関係について「靖国(神社参拝問題)だけの話か。他にもいろいろ問題はある。日本とつき合った方が国益に資する、利益が双方に出る、という形で話をしなければならない」と述べ、青少年交流事業などを通じて改善を図っていく考えを示した。そのうえで「両方とも熱くなるのがもっとも不幸な結果を招く」と指摘した。在上海総領事館の男性職員が04年に自殺した問題については、中国当局から機密情報の提供を強要されたのが原因との見方を示し、「引っかかりやすい話だが、危ないと思う訓練をしておかなければならない。外務省として真摯(しんし)に反省すべきだ」と語った。毎日新聞 - 2月18日

■声と口調の印象で、きっぱりと物を言っているような錯覚を与える麻生さんですが、前段の北京政府にとっての「国益」は、完全に相手の術中に嵌まる愚かな考えです。「靖国」だけを言い立てる事こそが「国益」に最も適うことを北京政府は経験的に知っているのですぞ!そういう学習をさせたのは自民党政府です。以前は社会党の幹部連中もオコボレに預かっていたそうですが、その後釜に座り込んだのが公明党でしょう?「青少年交流事業」は中曾根政権時代の「留学生10万人受け入れ」政策の焼き直しです。靖国参拝を中止してチャイナの「就学生」を受け容れた後、何が起こったか麻生さんはすっかり忘れているようですなあ。案外、外務官僚の悪口を言っているような振りをしながら、御役人が作った作文をちゃっかり読まされているのが麻生さんの正体のようです。

貴方ならどうする?

2006-02-25 03:26:24 | 日記・雑学
■毎日続く理不尽な残業でぼろぼろに疲れている身体を少しでも労(いた)わろうと、断固として確保している週に1回の針やマッサージ治療を予約して、避けられない残業をてきぱきと終わらせて会社を出ます。貴方は万一の場合を考えて自転車で駅に向います。いつもよりずっと早い時間に退社したというのに、路線バスに追い抜かれながら自転車を走らせます。突発的なトラブルが発生したら、バスの定期など無駄なだけですし、定時に仕事が終わった経験がほとんど無いからです。「IT革命」が起これば、事務系のデスク・ワークは個人のライフ・スタイルに合わせた快適で効率的なものに変わる!とアルビン・トフラーが『第三の波』で予言したはずなのに…、などと本気で腹を立てる人は居ませんし、「ペーパーレス社会」という無責任な単語を覚えている人も随分と少なくなりました。紙もリアル・タイムの電話連絡も何倍も増えてしまっているのはどうしたわけでしょう?

■午後9時まで稼動している駅前の「現金自動預け払い機」にぎりぎりのタイミングで飛び込んで、治療代と当面必要な現金を引き出そうとします。とても便利な生活になったと喜ぶべきか、真っ暗になった道端でガラス張りの箱の中で一人で現金を出し入れする危険も自己責任にされる事を怨むべきか、そんな事を改めて考える日本人は居ないようですなあ。そして、貴方は新聞やネット・ニュースを読んでいるので、手軽に預金を引き出せる文明の利器である「現金自動預け払い機」のあちこちを点検します。夜の闇を背景にしてガラス扉に映る、実にマヌケな自分の姿を笑っている余裕は有りません。何処に盗撮カメラが仕掛けてあるか分かったものではありませんから、自分の情けない無様さを忍んでカード挿入口の上下左右に、変な物体が貼り付けられていないかを確認しなければなりません。

■本当は、最新式の盗撮カメラの大きさも形も知らないのです。間も無く、御裁縫に使うマチ針の頭のようなカメラが出現するでしょうし、紙のように薄いカメラとは呼べない機械も出現する勢いですが、カタギの生活をしている人には必要の無い奇怪な機械ですから、そんな新製品の知識など有るはずもありません。一応の探索と確認をして、不自然に貼り付けられている物体が無い事が分かって、念には念を入れてカード挿入口の上に寸止めの空手チョップを振り出し、目にも止まらぬ速さでカードを挿入口に嵌めこみます。万一、カードが傷付いり折れても、再発行して貰えば良いのですし、その手間は預金の全額を引き出された上に、身に覚えの無い借金を背負うよりは遥かに軽い負担ですからなあ。

■少しでもカードの表面を盗撮されるのを防ぐ悲しい技術も上達している貴方は、空手チョップを繰り出した手を下に移動させて、今度は暗証番号を打ち込む指を覆い隠します。最近は念の為に頭や上半身まで使って番号を打ち込む癖が付いてしまいました。「現金自動預け払い機」に喧嘩を売っているような姿のままで、引き出す金額を打ち込もうとした時、盗撮カメラを探索した時には気付かなかった物体が盤面の隅に落ちているのに、貴方は気が付きます。それは一枚の銀行カードです。日本の犯罪事情が気になっている貴方は、視界に入った一枚のカードが放置されている理由を瞬時に推理します。「ピッキング」か「スキミング」、「データ読み取り機」「盗撮カメラ」に「犯罪集団」、「偽造カード」や「ハッキング」…随分と犯罪用語に詳しくなっている貴方です。通帳とハンコを持って顔見知りの銀行員に預金の引き出しを頼んでいた時代など、貴方は知りません。

■恐る恐る、自分の指紋が付くのも忘れて、気が付いたら貴方はそのカードを手に取っていました。決してバカな事を考えていたのでは有りません。昔ながらの「落し物」「忘れ物」に対する当たり前の行動です。ここで貴方は時代の変化に真正面から激突します。大切な銀行カードを置き忘れた人は困っているだろう、という当たり前の同情心が動いて手に取ったものの、万一、違法に他人の預金を引き出した後の証拠隠滅を目的とした工作だったら、素手でカードに触れてしまった自分が、その口座を空っぽにした上に、高額な借金まで押し付けた「容疑者」になってしまうのではないか?

■貴方は、大急ぎで自分の用事を済ませて最寄の「交番」に走ります。週に1回の針・指圧の予約時間が迫っていますが、自分が重大な犯罪に巻き込まれてしまっているかも知れない!と思うと治療はキャンセルしても惜しくは有りません。まだ宵の口で、駅周辺の盛り場にはこれから一杯機嫌になろうと思って歩いている素面の人が沢山歩いている時間です。ところが、駅前の交番に走って行った貴方が見る物は、「無人交番」です。電話の留守機能に吹き込んである録音メッセージみたいな、「今、留守です。急用の人は110番してね」という意味のプレートを見た貴方は愕然とします。

■プレートの指示通りに110番したら、タクシーにでも乗らないと行けない遠方の警察署に来るように言われるに違いありません。馬鹿馬鹿しくなった貴方は、カードを破棄して何事も無かった事にしようという悪魔の囁きを聞きます。しかし、「袖擦り合うも他生の縁」と思い直して、もう一度、善意のうっかり者が急いで現金を引き出した後でカードを忘れただけの、他愛無い出来事だったら、今頃電車で帰宅したか、お目当ての店に入ったうっかり者が蒼褪めている様子を想像して困惑します。その時、少し離れているけれど、駅の反対にも交番が設置されている事を思い出した貴方は、早くこんな厄介事から解放されようと、一心不乱に駅を突っ切って反対側のロータリーを駆け抜け、小雨模様の寒い夜だというのに汗ばんで、希望を繋いだ交番に辿り着きます。

■しかし、この交番も「無人交番」で、お気楽な「連絡してね」プレートが掲示されています。もう、歩道に出来ている水溜りにカードを浸けて指紋を消して立ち去ろうかと思います。しかし、もしもそのカードが単なる忘れ物だったら、それを拾う者が「しめしめ」と思ったら自分が新たな犯罪の発端になってしまうと考える善良な貴方は、体中から力が抜けているのに、頑張ってカードの裏表を検(あらた)めます。何と!そのカードは銀行再編成の騒ぎで吸収合併されて消えて無くなった銀行のカードなのです。都市銀行は、お客様の為に「バンクス」とか言うカードに互換性を持たせるサービスを始めているので、今は無くなった銀行が何処の銀行と合併して、今は何と言う名前の銀行になっているのか、そんな馬鹿馬鹿しい知識が無ければ都会では生きて行けなくなっている現実に笑いが出ます。

■何故なら、そのカードの裏には、「このカードを拾われた方は下記の銀行に御連絡下さい」と書かれていたからです。既に存在していない銀行に、どうやって連絡するのでしょう?その辺の通行人に、銀行再編成に詳しい人を探して、「今の名前」を教えて貰う努力をしなければならないのでしょうか?駅周辺を走り回って「ネット・カフェ」を探して料金を払ってインターネット検索でもしなければならないのでしょうか?そして、そんな努力をした結果、まったく関係の無い方向に向う電車やタクシーを使って「最寄の銀行」に行かねばならないのでしょうか?愚かなバブル時代の乱脈融資の後始末で、国から税金を恵んで貰いながら、無人の「現金自動預け払い機」だけを残して「閉鎖」「合併」を続けて顧客の生活や仕事を不便にしてしまった銀行の罪深さを、貴方は改めて考えます。余りに馬鹿馬鹿しいので、カードを拾った「自動現金預け払い機」のボックスに戻って、自分が浪費した時間を悔しいけれど、無かった事にして、次に機械を使う人に責任を「丸投げ」すれば済むのでしょうか?

■ここまで読んで悩んで下さった方のために、隠されていた小さな事実を書き添えて安心して頂きましょう。貴方が拾ったカードの表面に(それが本当に必要なのかは知りませんが)所有者のローマ字が浮き出ていて、それが偶然にも同じ会社の別の部署に所属している同僚の珍しい苗字と同じだったのです。草臥れ果てた貴方は、まだ理不尽な残業をしている同じ部署の同僚に電話を入れて、緊急連絡先を問い合わせつつ、手短かに事情を説明したのです。そして、不安と困惑の実に嫌な気分のまま、電車に乗って予約していた針灸院に向っていると、やっと待ちに待った連絡が入ります。あれこれと最悪の事態を考えてじたばたした自分が愚かに思えるような、単なるうっかりした忘れ物だった事実が判明します。

■小泉総理大臣は、所信表明演説で、「無人交番を無くす」と公言していた事を、納得の行かないまま帰宅した後でネット検索して知るのです。そして、全国に「無人交番」が急増した事と、文部科学省が「ゆとり教育」を言い出した事とが同じ政策から導き出されたらしい根拠を見つけるのですなあ。公務員の「週休二日制」を実現するのは、日本人が大好きな国連に所属するILOの指示に従うという大義名分が有りましたし、公務員の労働団体も大賛成でした。突然、休日が増えれば、あちこちに大穴が開くのは当たり前なのに、その手当てをしないまま、休日だけを増やしたのは誰なのだろう?貴方は誰も教えてくれない大問題にぶつかって、何故か馬鹿馬鹿しくなって考えるのを止めて眠りに就くのですなあ。

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