ダビデの息子ソロモン王の死後、ユダヤ人の王国は南北に分裂する。北のイスラエルは、神の命令に違背し、先住民に影響されてバアル神を崇拝するようになる。その結果、神の加護を失い、アッシリアによって征服された。そう、聖書には書いてある ( 列王記下17 )。だが・・・。
これは、「 後付けの説明 」、というやつだ。古代のユダヤ人は、現代において思われているような弱小民族ではなかった。カナン地方の先住民を虐殺して、生き残りを隷属させた ( ヨシュア記 )。ダビデ王の時代には、周辺のモアブ人、アラム人、エドム人を打ち破り、貢納させた ( サムエル記下8 )。だが、しょせんアッシリアや後のバビロニアの敵ではなかったのだ。それを認めたくないユダヤ人は、納得のできる 「 説明 」 を求めた。そうしてできたのが、聖書なのだ。
それでも聖書の記述を信じるならば、この時以来、ユダヤ人に神の加護はない。それを求めるには、自分たちが神の命令を守らなければならない。たとえば、安息日に薪を拾っただけで死刑だ。そう書いてある ( 民数記15、32~36 )。だが、この掟は守られていない。
現代のイスラエル人は、神の約束が無効になっていることを、だれよりもよく知っている。「 イスラエルは神が約束した地だ 」 と言いながら軍事力に頼るのも、当然のことなのだ。