旧約聖書を読む 8

2018-01-31 17:20:37 | 

 神の属性その2。

 神は、火山の神であると同時に、大地母神でもあるのではないか。

 神はモーセに約束する。「 わたしは降って行き、エジプト人の手からユダヤ人を救い出し、広々としたすばらしい土地、乳と蜜の流れる土地、カナン人の住む所へ彼らを導き上る 」( 出エジプト記3、8)。
 乳と蜜、つまり家畜やミツバチを養えるだけ植物が豊かに繁茂する土地。かなり具体的・物質的な約束だ。決して抽象的な理念を掲げているわけではない。大地母神の特徴だ。

 また、前回も触れた、ユダヤ人の中の不満分子が大地に飲み込まれるエピソード ( 民数記16 )。これは、大地母神の恐ろしい一面を表しているのではないか。母なる大地は、生命を産み出しては、飲み込む。これを、延々と繰り返す。

 さらに、聖書の記述を見てみると・・・。

 モーセは死ぬ前に歌う。「 主は岩、その御業は完全でその道はことごとく正しい 」( 申命記32、4 )。「 お前は自分を産み出した岩を思わず、産みの苦しみをされた神を忘れた 」( 同32、18 )。

 預言者サムエルの母親ハンナの祈り。「 主は命を絶ち、また命を与え、陰府 ( よみ ) に下し、また引き上げてくださる 」( サムエル記上2、6 )。

 これらを、どう考えるべきなのか。

 火山もまた、大地の一部だ。それは人間にとって脅威だが、同時に、肥沃な土地をもたらしてくれる。火山の神であり、大地母神でもある。それほど突飛な説ではないと思うのだが。
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旧約聖書を読む 7

2018-01-30 17:10:03 | 

 神の属性。

 ヴェーバーは、「 エホバの神は、シナイ半島にある火山の神である 」、としている ( 「 古代ユダヤ教 」)。それはおそらく、正しい。聖書の記述からわかる。

 モーセの前に初めて現れた時、神は燃え上がる炎の姿をしていた ( 出エジプト記3 )。

 ユダヤ人を前にして、神がシナイ山に降った時、全山煙に包まれた。神が火の中を山の上に降られたからである ( 出エジプト記19、18 )。

 神の栄光は、ユダヤ人には山の頂で燃える火のように見えた ( 出エジプト記24、17 )。

 エジプトを出て荒れ野をさまようユダヤ人の中に不満分子が発生。公然とモーセに逆らうようになる。すると大地が口を開いて彼らの一部を飲み込み、さらに神の火が250人を焼き殺した ( 民数記16 )。

 預言者エリヤはイスラエル人に向かって言う。「 火をもって答える神こそ神であるはずだ 」( 列王記上18、24 )。

 アラム王の家臣は、王に向かって言う。「 イスラエル人の神は山の神だから、彼らは優勢だったのです。もし平地で戦えば、我々の方が優勢になるはずです 」( 列王記上20、23 )。

 これらはすべて、火山活動を表現している。

 また、ユダヤ人が行う儀式からもわかる。「 毎日1歳の雄羊2匹を、朝夕1匹ずつ、燃やして主に捧げる宥めの香りとする 」( 出エジプト記29 )。
 この儀式は、噴煙を上げる火山=神の 「 形態模写 」 ではないだろうか。火山であるところの神の真似をすることによって、神の力を獲得する。フレイザーの言う 「 共感呪術 」 というやつだ。

 だが、神は単なる火山ではないように思われる。それは・・・。 ( つづく )
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旧約聖書を読む 6

2018-01-29 19:07:54 | 

 神はひとりだとして ( ひとりになったとして )、男か女か。

 断定はできないが、かなり 「 女性的な 」 感じがする。病的に口うるさい母親、みたいな。

 神は、ユダヤ人の生活の些細な点にまで干渉しようとする ( 出エジプト記20~23。レビ記11~27。民数記5~6。申命記4~30 )。たとえば・・・。

 「 爬虫類は汚れている。その死骸が土器に落ちたらその土器は壊す。しかし泉やため池に死骸が落ちた場合、その水は清いままである。ただし、その中の死骸に触れた者は汚れる 」( レビ記11 )。

 ・・・細か過ぎる。

 安息日の掟は厳格だ。ある男が安息日に薪拾いをして、死刑 ( 石打ちの刑 ) になっている ( 民数記15 )。

 儀式に関してはもっとうるさい。細かい手順を間違えただけで、神は祭司長アロンの息子2人を容赦なく焼き殺した ( レビ記10 )。

 こんな規定もある。「 戦争で陣を張った時に、夜、夢精をした者は、陣営の外に出て行き、夕方に体を洗い、日没に陣営に戻ることができる 」( 申命記23 )。

 ・・・夢精くらい、大目に見ろよ。これは、やはり・・・。

 アブラハムの時代まで遡ると、神は子孫の繁栄を約束するかわりに、割礼、すなわち包皮を切り取るよう要求している ( 創世記17 )。

 男性器の清潔さにこだわるのは、男性ではなく女性の方ではないだろうか。女性の目を気にして、男性は手術を受けるのだ。それは、東京上野クリニックのCMでも明らかではないか。
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旧約聖書を読む 5

2018-01-28 17:05:41 | 

 神はひとりか。

 これが、かなり微妙だ。聖書のあちこちで、エホバの神は 「 他の神々を信じるな 」 と言っているが、それとは別な問題がある。

 創世記第1章26~27。神は言われた。「 我々にかたどり、我々に似せて、人を造ろう 」。そして、男と女を創造した。つまり、男と女は同時に生まれた。

 これに対して、創世記第2章では、まったく違う神話が語られている。神は最初に男を造り、彼をエデンの園に連れてきてから女を造ったという。一般に知られているのはこっちの方だろう。

 最初の神話では、神の一人称は 「 我々 」 になっている。「 我々 」 に似せて、人間の男女を創造した。つまり、この神話では、神は男女のカップルだったことになる。カナン地方の神バアルと、その配偶神アシュトレトのように。

 複数形の 「 我々 」 が出てくる話は、まだある。創世記第3章22。善悪を知る木の実を人間が食べたことを知った神は言う。「 人は我々の一人のように、善悪を知る者となった 」。創世記第11章7。バベルの塔を見て、神は言う。「 我々は降って行って、直ちに彼らの言葉を混乱させ、互いの言葉が聞き分けられぬようにしてしまおう 」。

 他国の神々とは違うということを強調するためか。神はひとり、ということになった。だが、そのように聖書を書き換える過程で、「 修整もれ 」 が残った。それが創世記第1章、3章、11章、ということなのだろうか。

 
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旧約聖書を読む 4

2018-01-27 18:14:26 | 

 ろくでもない神。

 神は、100歳のアブラハム、90歳の妻サラに、息子イサクの誕生を予告する。それを聞いたサラは思わず笑ってしまう。神 「 どうして笑ったのか 」。怖くなったサラは、「 笑っていません 」。神 「 いや、確かに笑った 」( 創世記18 )。

 ・・・しつこい。

 アブラハムの孫のヤコブ一家がエジプトに移って400年。彼らの子孫であるユダヤ人は、ファラオの圧政に苦しんでいた。神はモーセに言う。「 わたしはエジプト人の奴隷となっているイスラエルの人々 ( ヤコブの子孫 ) のうめき声を聞き、わたしの契約を思い起こした 」( 出エジプト記6、5 )。

 ・・・えっ。つまり、400年もの間、契約を忘れていたってこと? いい加減にもほどがある。

 ユダヤ人を率いてエジプトを出たモーセに、神は言う。「 主、主、罰すべき者を罰さずにはおかず、父祖の罪を、子、孫に三代、四代までも問う者 」( 出エジプト記34、7 )。

 とんだ祟り神だ。しかも別のところでは、こうも言っている。「 父は子のゆえに死に定められず、子は父のゆえに死に定められない。人は、それぞれ自分の罪のゆえに死に定められる 」( 申命記24、16 )。いったい、どっちを信じればいいのやら。

 さらに神は言う。「 何も持たずに、わたしの前に出てはならない 」( 出エジプト記34、20 )。

 ・・・ドケチ。

 この神は、些細なミスも許さない。モーセの兄の祭司長アロンの息子、ナダブとアビフが儀式の細かい手順を間違えると、二人を容赦なく焼き殺してしまう ( レビ記10 )。  

 荒れ野をさまようユダヤ人は不平を鳴らす。「 毎日毎日、マナ ( 神が天から降らせた食べ物 ) ばかりだ 」。そこで神はうずらを降らせておいて、ユダヤ人が食べると疫病を送り、大勢を殺した ( 民数記11 )。

 ・・・なんとも陰険なやり口だ。

 こんな神だから、ユダヤ人に裏切られることになるのにゃ。
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旧約聖書を読む 3

2018-01-26 17:52:22 | 

 残念な神。

 神は、モーセを通してユダヤ人に言う。「 あなたは、『 わたしが正しいので、主はわたしを導いてこの土地を得させてくださった 』 と思ってはならない。この国々の民が神に逆らうから、主があなたの前から彼らを追い払われるのである 」( 申命記9、4 )。

 つまり神は、ユダヤ人以前にカナン地方の人々に自分を売り込んで、拒絶された。それで、アブラハムに目をつける ( 創世記12 ) のだが・・・。

 結局ユダヤ人にも裏切られることになるのは、前回書いた通りにゃ。
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旧約聖書を読む 2

2018-01-25 19:04:33 | 

 神は全能か。

 答えは、ノーにゃ。神は、ユダヤ人の裏切りを止めることができない。結局、ユダヤ人の意志任せなのにゃ。

 神は、預言者モーセを通してユダヤ人に明るい未来を約束しつつ、呪いをかける。もしも自分の命令に逆らえば、「 疫病を送る。婚約者を他の男に寝取らせる。あなたをあなたの王と共に知らない国に行かせる・・・等々 」( 申命記28 )。
 また、こうも言う。「 この民は入っていく土地で外国の神々を求めて姦淫を行い、私を捨てて、契約を破るであろう 」 ( 申命記31、16 )。
 
 つまり、最初からユダヤ人の裏切りを予想しつつ、それをどうすることもできないのだ。

 ( 「 申命記 」 のこの記述はいつ書かれたものなのか。「 バビロン捕囚 」 後なのではないか、という議論は置いておく。少なくとも作者はこのように神を描写していて、それが現代まで残っている。 )

 ユダヤ人はカナン地方を征服するが、先住民を皆殺しにはできなかった。これは、命令違反だ。神は 「 現地の七つの民を滅ぼし尽くせ 」 と命じていたのだ ( 申命記7 )。ユダヤ人は逆にカナンの文化に影響され、偶像崇拝を行うようになる。これは、カナン地方の神バアルの加護によるものではなかったか。さらに・・・。

 後にユダヤ人は、アッシリアやバビロニアによって征服されるのだが、それはアッシリアのアッシュル、バビロニアのマルドゥクの方が、エホバの神よりも有能だったからではないか。

 にもかかわらず、今日、バアルやアッシュル、マルドゥクを崇拝する人間はほとんどいないだろう。エホバの神の天下だ。それはなぜか。ローマ帝国がキリスト教を国教とし、ルターが旧約聖書の再評価を行ったから。すべては、神ではなく、人間の力によるものなのだ。
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旧約聖書を読む

2018-01-24 18:35:53 | 

 ヨセフスの 「 ユダヤ古代誌 」 ( ちくま学芸文庫 ) の1~3まで読んだが、4~6は絶版中。古本は結構高い。それなら・・・というわけで、聖書を読んでいるのにゃ ( 新共同訳 日本聖書協会 )。まだ 「 士師記 」 の途中だが、言えるのは・・・。

 旧約聖書というのは、神がひたすらユダヤ人をいびりまくる話でできている。神は、自分の命令 ( これがキツイ ) に従うことを条件にユダヤ人に繁栄を約束するのだが、ユダヤ人は裏切って他の神を崇拝する。すると神は怒って、ユダヤ人を異民族の支配下に置く。ユダヤ人は後悔して、神にすがる。神はユダヤ人を許すのだが、また裏切られて・・・。

 このパターンの繰り返しだ。旧約聖書は、実に 「 循環的 」 だ。

 「 最後の審判 」 に向かってひたすら突き進むキリスト教の歴史観は 「 直線的 」 だというが、それは怪しいのではないか。ルター以降のプロテスタントが旧約聖書を評価しているのは、どういうわけなのだろう。「 最後の審判 」 の後に、人間はまたもや神を裏切って、話は振り出しに戻る。そのような書かれざるラストを、プロテスタントの人々は予感しているのではないか。

 以上は総論的なもの。次から細かいところを見ていくにゃ。
 
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不適切表示

2018-01-21 16:00:16 | 下ネタ

 フーム。中折れはこれでいいが、あとの2つは・・・。

 訪日外国人にもわかるような表示を考えるべきにゃう。
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一票の格差?

2018-01-19 17:44:53 | Weblog

 福岡高裁那覇支部が、去年10月の衆院選は合憲と判決。

 それはそうだ。逆に、違憲無効とする判決が出た場合を想像してみるといい。それこそ、国民の参政権に対する侵害ではないか。
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なんでだろー

2018-01-16 19:00:14 | 音楽

 レコードコレクターズがキング・クリムゾンの 「 セイラーズ・テイルズ 1970-1972 」 を特集しているのだが・・・。

 とんでもない間違いがある。「 アースバウンド 」 に入っている 「 21世紀の・・・ 」 と 「 グルーン 」 が演奏された1972年2月11日のウィルミントンでのライヴも完全収録されている、というのだが、それは違う。

 前にも書いたが、ウィルミントンではアーリー・ショウとレイト・ショウの2度ライヴが行われていて、「 アースバウンド 」 に入っているのは 「 レイト・ショウ 」 の方、「 セイラーズ・テイルズ 」 に入っているのは 「 アーリー・ショウ 」 の方なのだ。それは、聴き比べればすぐわかる。「 21世紀の・・・ 」 でのロバート・フリップのソロが明らかに違うし、「 グルーン 」 ではソロそのものがなくなっている。

 これはこれで悪くないが、「 アースバウンド 」 の完全版を期待する人は、裏切られることになるのだ。
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読売新聞の

2018-01-15 17:37:07 | Weblog

世論調査で、80パーセント以上が韓国の追加要求拒否を支持、か。

 当たり前だ。韓国の大統領は、「 日本は真の謝罪を 」 と言うが、誰がどんな基準で真偽を決めるのか。

 こんな要求を聞いていると、日本は最終的に韓国の植民地になってしまうのにゃ。
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録画していた

2018-01-14 16:13:31 | アニメ・ゲーム

「 剣王朝 」 を見たが・・・。

 うーん。ワシにはさっぱりわからん。このキャラがどんな人物で、どうしてこういう行動に出ているのか、説明がほとんどない。だから、感情移入できない。悪い意味で異化効果が出ているのにゃ。

 編集の仕方もおかしい。第1回のラストで主人公がゾンビに囲まれたところで、新キャラが助けに来る。だが、第2回に入ると、肝心のゾンビを倒す場面が省略されているのにゃ。これってもしかして、コストカットの影響?

 中国発のアニメだという。日本のアニメは衰退して、中国に取って代わられるだろう、とよく言われるが、そのうちこの作品のようなアニメばかりになるのだろうか。デストピアにゃう。
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声優の

2018-01-11 17:16:54 | アニメ・ゲーム

竹達彩奈さんに大量の脅迫メールを送り付けた男が逮捕。「 ファンクラブの元リーダー 」 だという。

 やっぱり、追いかけているうちは、ダメなんだよね。自分が追いかけられるような存在にならないと。
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渋谷で

2018-01-08 19:34:58 | 演劇

現代演劇ポスター展のトークショーを観る。

 上手から笹目浩之、榎本了壱、J・A・シーザー、萩原朔美の4氏。約1時間40分。

 榎本氏 「 今や、美術大学でもポスターを教えない。役者の写真ばかりだ 」。「 プロデューサー、ディレクター、イラストレーターをひとりでこなす人がいなくなった 」。

 正月早々、ヘビーな話だわ。でも・・・。

 シーザーさん 「 ポスターと演劇は、別な世界のような気がする。ポスターと違って、劇作は本番直前まで続くのだから 」。

 朔美さま 「 でも、観客に向かって一番先頭に立っているのは、役者ではなくポスターだよね 」。

 ・・・あふっ。あふぅっ! シーザーさんがやり込められるところを、初めて見たわっ!!
これだけでも、来た甲斐があったわっ!!

 売り場に森永理科にゃんこがいなかったのは残念だけど、ワタシは今、とっても充実しているのだわ。うふっ。うふふふふふっ。

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