「滝」の俳句~私の心に見えたもの

220728 佐々木博子(「滝」瀬音集・渓流集・瀑声集 推薦作品より)

沢音の浮力に乗れり糸とんぼ 加藤信子 「滝」7月号<渓流集>

2013-07-11 05:53:21 | 日記
 沢の水の流れる音と鳥の声が森いっぱいに響いている。糸
とんぼは飛ぶ力が弱く、見ていると動いているよりも休んで
いるときの方が多い印象だが、それがフッと草の葉をはなれ
た。それは沢音の浮力を待っての飛翔の瞬間と、意表をつい
た表現でありながら大いに納得させられる。本来「浮力」は
流体中に生じるものだが、糸とんぼであれば、いかにも音の
流れにさえ影響を受けそうである。心眼の働いた美しい句に、
私は瑠璃色の糸とんぼを思った。(H)