しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

9歳の美空ひばりは「のど自慢」に出場した

2021年10月12日 | 昭和21年~25年
7~8年前ある旅行会社のツアーで3日間同じだった、広島市の方(中年女性)から”私の特技”的な自慢話を聞いたことがある。
彼女の自慢は「NHKのど自慢」に出場するのが特技だというのである。
出場するためには”秘訣”がある。
まず書類応募の際、歌う”曲選び”の秘訣、その曲を歌う理由の秘訣。
予選では客受けする衣装や踊りパフォーマンスの秘訣、話題の秘訣。
それができれば、ほぼ本番出場はOKであるそうだ。

今から76年前、NHKのど自慢が始まり、その年の秋
9歳の美空ひばりは「のど自慢」に出場した。

・・・


「週刊朝日」の昭和史・第二巻   朝日新聞社 1989年発行

観客席には、復員服の男や、モンペ姿の女たちが、ぎっしりひしめき合っていた。
そこは、横浜市伊勢佐木町に近い焼けビルの二階で、
場末の映画館を思わせる部屋の正面には、急ごしらえの、
粗削りの杉のステージが取り付けられていた。


「はい、次の方、お名前は」
「加藤和枝、九つ、長崎物語」

小っちゃななくせに、まるで大人の着るような裾の長い、
真っ赤なドレスを着た少女が現れた。
おでこの広い、鼻もちょっと上を向いて目だけがグリグリと大きい愛嬌のある子だった。
伴奏は天知真佐雄。
合図とともにこの子は歌った。


赤い花ならマンジュシャゲ
オランダ屋敷に・・・・
子供と思われぬサビのよく利いた声。

満場陶然たる中に、この子はすでに一曲を全部歌い終わってしまっていたが、
審査席からは何の合図もない。
島野アナウンサーも中ぶらりんの面持ちで、
「もう一曲、ハイ、何か」
と促した。
次にこの子が歌ったのは「愛染かつら」であった。

審査席では丸山・三枝両委員が複雑な表情をたたえながら顔を見合わせている。
その眼は・・・悪達者・子供らしくない・非教育的・・・ということを互いにすばやく語り合い、ついに丸山氏の手は横に振られた。

「はい、結構です。では次の方・・・」

・・・・・



美空ひばりが、のど自慢で鐘三つでなかったのは、よく知られた話だが、
ついでながら、
北島三郎は鐘二つ、
五木ひろしは鐘三つ、
島倉千代子は鐘二つ、
だったそうだ。








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