しろみ茂平の話

郷土史を中心にした雑記

「奥の細道」秋涼し手毎にむけや瓜茄子 (石川県金沢市)

2024年09月06日 | 旅と文学(奥の細道)

ナスビは江戸時代に急速に普及し、戦前まで果菜類のなかで最も生産量が多かった。
庶民はぬか漬けで食用し、武士やお金持ちの家では焼いても食べていたのだろう。
縁起もよく「一富士二鷹三茄子」、夢や絵画に登場する。

 

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「芭蕉物語(中)」 麻生磯次 新潮社 昭和50年発行


その夜は雨がひどく降って、明け方まで続いたが、
十八日、十九日はともに快晴で、俳人たちが芭蕉のもとに集まって来た。
二十日は斎藤一泉の松玄庵に招待された。
松玄庵は松幻庵、少幻庵などとも書き、犀川のほとりにあった。
このあたりは川幅も広く、中洲もあって、川を渡る風は涼しく、掬すべき風情があった。
この日の献立は、芭蕉の希望したように、たいそうあっさりしたものであった。
芭蕉はこの席で、
残暑しばし手毎にれうれ瓜茄子 芭蕉
という句を作ったが、これは改作されて、

秋涼し手毎にむけや瓜茄子 芭蕉

となった。
秋も初めの頃で、まだ暑さが残っていたが、どことなく涼気がうごいていた。
瓜茄子をめいめいに皮をむいていただこう、とくつろいだ気分を出したのである。


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旅の場所・石川県金沢市    
旅の日・2016年2月2日                 
書名・奥の細道
原作者・松尾芭蕉

 

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「超訳芭蕉百句」 嵐山光三郎  筑摩書房 2022年発行

枕すゞし手毎にむけや瓜茄子


犀川のほとり一泉庵での吟。
秋の涼気を覚える新鮮な瓜や茄子を馳走された。さあ、皮を剥いていただこう。
秋とはいえ残暑がつづく日、いただいた茄子を「手ごとにむこう」という即興で、
「手毎にむく」は「手向ける」(没した一笑へのたむけ)の気持がある。

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