「8月17日、ソ連軍上陸す 占守島攻防記」 大野芳著・新潮社・平成20年発刊 より転記
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それから何時間も経ったのか、爆音直後のことか国端崎の方向から砲声が聞こえた。
けたたましい有線電話のベルが鳴った。
戦車連隊本部から「心配いらん」との連絡だった。ソ連軍は座礁してる油槽船を砲撃しているだけだという。
17日午後10時45分ごろのことである。
国端崎は、とつぜんの砲撃をうけた。
「敵襲ですっ」監視哨の伝令がうわずった声で国端崎独立守備隊長・片桐中尉に報告した。
「よし、配置につけーっ」
彼の指揮下にあった40~50名が一斉に守備についた。
ここで片桐中尉は、大隊長・村上少佐に「ロバトカ砲台より射撃中」との一報を入れた。
第73旅団司令部情報係の下士官・松田は、通信士の脇にいて電話や無線のやりとりを確認傍受する役目であった。
手記で
≪「艦砲射撃?どこだアメリカか?」
「ロバッカから砲撃です!!」≫
ここから村上の記憶と、現場の将兵の手記とが食い違いを生じはじめる。
片桐中尉手記・
間断なく撃ち込まれる砲弾は、国端崎から小泊岬のあいだに炸裂した。
砲弾による砂煙りが無気味な様相を呈し、炸裂音で指示・号令も徹底しない。
村上少佐・
「刺激するな。放っておけ」と指示した。
団体長会同にあった堤中将の訓示に基づくものである。
これが17日午後10時45分ごろのことだ。