「満州帝国史」太田尚樹著・新人物往来社2011年発行より転記する。
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映画評論家の佐藤忠男は『キネマと砲声」で、次のように書いている。
「長谷川一夫の役は日本を代表し、李香蘭が中国を代表する。中国がこんな風に日本を信頼すれば、日本は必ずや中国を愛するであろうというメッセージだったのである。
一方的に中国に押し付ける屈辱的な思考以外何ものでもないが、中国侵略を知らずにいる日本人にとっては、甘い自惚れを満足させる幻想であった。」
当時の日本は国防色一色で、息が詰まりそうだったから、映画のスクリーンでチャイナドレスに身を包んだ妖艶な李香蘭に幻惑されたのも無理ない。
しかも純朴無垢な支邦娘が日本人を慕うというストーリーは、日本の優位性が根底にあるので、自己満足に過ぎなかったが観客は読み取れなかった。
甘粕は極力、国策の匂いを消したかった。
満映の関連事業は飛躍的に拡大され、収益を上げていった。
日本から歌舞伎一座や劇団を招き、満州各地を興業させた。
昭和17年満州建国10周年には山田耕作や斉藤秀雄、宝塚少女歌劇団を招いた。
日本から優秀なシナリオライターや内田吐夢のような大物監督を招く一方で、満州人や中国人の若手監督や俳優を育てることに腐心した。
満映は指折り優良会社に成長した。
満州には過去のしがらみも伝統もなく、施設も無かった。
産業だけでなく、知も芸術も受け入れる、自由という得がたい資源と心的領域があった。
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映画評論家の佐藤忠男は『キネマと砲声」で、次のように書いている。
「長谷川一夫の役は日本を代表し、李香蘭が中国を代表する。中国がこんな風に日本を信頼すれば、日本は必ずや中国を愛するであろうというメッセージだったのである。
一方的に中国に押し付ける屈辱的な思考以外何ものでもないが、中国侵略を知らずにいる日本人にとっては、甘い自惚れを満足させる幻想であった。」
当時の日本は国防色一色で、息が詰まりそうだったから、映画のスクリーンでチャイナドレスに身を包んだ妖艶な李香蘭に幻惑されたのも無理ない。
しかも純朴無垢な支邦娘が日本人を慕うというストーリーは、日本の優位性が根底にあるので、自己満足に過ぎなかったが観客は読み取れなかった。
甘粕は極力、国策の匂いを消したかった。
満映の関連事業は飛躍的に拡大され、収益を上げていった。
日本から歌舞伎一座や劇団を招き、満州各地を興業させた。
昭和17年満州建国10周年には山田耕作や斉藤秀雄、宝塚少女歌劇団を招いた。
日本から優秀なシナリオライターや内田吐夢のような大物監督を招く一方で、満州人や中国人の若手監督や俳優を育てることに腐心した。
満映は指折り優良会社に成長した。
満州には過去のしがらみも伝統もなく、施設も無かった。
産業だけでなく、知も芸術も受け入れる、自由という得がたい資源と心的領域があった。