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太宰治とたばこ(その5)

2015年02月10日 | 小説・映画等に出てくる「たばこ」
「読んでおきたいベスト集!『太宰治』」のその5は、私の大好きな『斜陽』からの抜き書きです。なお、画像の腕時計は私の母の形見です。農作業などの時のため、丈夫な男物のセイコーの時計を身に付けていました。

『斜陽』

326ページ
あくる朝、直治は寝床に腹這いになって、煙草を吸いながら、遠く海のほうを眺めて、
「舌が痛いんだって?」
と、はじめてお母さまのお加減の悪いのに気づいたみたいなふうの口のきき方をした。

341ページ
上原さんは、お酒を飲み、煙草を吸い、そうしていつまでも黙っていた。私も、黙っていた。私はこんなところへ来たのは、生まれてはじめての事であったけれども、とても落ちつき、気分がよかった。
「お酒でも飲むといいんだけど」
「え?」
「いいえ、弟さん。アルコールのほうに転換するといいんですよ。僕も昔、麻薬中毒になった事があってね、あれは人が薄気味わるがってね、アルコールだって同じ様なものなんだが、アルコールのほうは、人は案外ゆるすんだ。弟さんを、酒飲みにしちゃいましょう。いいでしょう?」

409ページ
土間があって、それからすぐ六畳間くらいの部屋があって、たばこの煙で濛々として、十人ばかりの人間が、部屋の大きな卓をかこんで、わあっわあっとひどく騒がしいお酒盛りをしていた。私より若いくらいのお嬢さんも三人まじって、たばこを吸い、お酒を飲んでいた。
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