息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

マザーグースと三匹の子豚たち

2012-01-21 10:18:15 | 著者名 か行
桐島洋子 著

入学したばかりの高校の図書館でこの本をみつけ、読みふけったことを思い出す。

この表紙は2006年にあらためて発売されたもの。
モデルでタレントのかれん(文中では渚)、エッセイストのノエル(澪)、
そしてカメラマンのローランド(舵、ローリー)の大人になった姿を、
かれんの夫である上田義彦氏が撮影している。

ちょうど私は子どもたちの同世代にあたるのだが、この奔放な母親と
のびやかなアメリカ暮らしのようすには憧れた。
その一方で自立を促す厳しさや、体験でものを教える姿勢などに
感じるものがあった。

のちに子どもたちが語った当時のようすを聞くと、このサバティカルは
あくまでも例外であり、この時期以外の桐島家の子育ては放任状態に
近かったらしい。とくに1歳のかれんをほぼ初対面の人に託し、そのまま
一年間仕事で留守にしたくだりなどびっくりすることも多かった。

これは著者自身が戦前のお嬢様として生まれており、子育ては使用人の
手を借りるのが当然という家庭で育っていること、したがって母親は
髪を振り乱して家事・育児に向かうというよりは、優雅に社交生活を
こなすことを要求されていたことが根幹にある気がする。

実際は夫婦どころか、自分一人の手で3人を育てることになったのだから、
時間的にも物理的にも手がまわらないのも当然だったのだろう。
保育園や母親に預けることをよしとしなかったようなのでなおさらだ。
といっても上記のかれんを他人に預けた際は、ノエルは実母に預けていた
ようなので、現実は違ったようだが。

それにしても、この思い切りのよさ、そしてわずか一年で財産ともいうべき
体験と知識を与える能力には敬服する。
これは母としてのみだけでない、幅広い知識と生活力があればこそだ。

何しろ仮住まいの身といいながら、ご近所のたくましいおばさんたちと
たちまち知り合いになり、港に捨てられるはずのタラの頭をもらいに出かけ、
野草の食べ方を教わって、経費ゼロの食卓をつくりあげる。
キャリアウーマンってマルチなんだと再確認する出来事の連続だ。
それでいてアメリカのスーパーマーケットの魅力も十分に知り活用している。

子育てのゴールは、一人前にして社会に返すことだと思う。
そういう意味で世界中で困らない人間に育てられた3人にはうらやましさを感じる。