息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

親不孝通りディテクティブ

2012-01-18 10:30:40 | 北森鴻
北森鴻 著

このタイトルとハードボイルドっていうのでちょっと敬遠していた。
しまったぁ~。これは面白いわ。

親不孝通りというのは福岡・博多に実際ある場所。
予備校がたくさんあってそんなふうに呼ばれたらしい。
それにディテクティブ─探偵がくっつくって何? 
とまあ違和感があったわけだ。

中州の屋台でバーを経営するテッキと高校時代からの腐れ縁で
現在は結婚相談所の調査員のキュータ。
二人がかわるがわる語る事件は、裏の世界にもからむ
ちょっと危ないものばかり。
そこには哀しい人間関係があったり、誰かへの愛情があったり。

キュータが働く結婚相談所の社長である“オフクロ”や
ライブハウスのオーナーで迫力たっぷりの“歌姫”、
何が本職なのかもはやわからない博多署の刑事など、
登場人物の豊かな個性は、観察だけでも満足するほど。

陽と陰まったく逆のタイプに思える二人だが、別々に行動しても
なぜだか連携がとれている。キュータが調子に乗りすぎても、
そこから冷静なテッキが何かをつかむ。
そしてバトンタッチすれば、無事解決。
うらやましいほどのパートナーぶりなのだ。

外の土地に住んだ経験があり、標準語を使いこなすテッキと
完全なる地元民として満足し確立しているキュータの違いもいい。
地方は“出ていく”タイプと“ずっといる”タイプに二分されがち。
自分と友を思い浮かべて感情移入する人も多そうだ。

決して後味のよい事件ばかりではない。
テッキにいたっては最後は博多を去ってしまう。
それでも、読後感がさわやかなのは二人のキャラゆえだろうか。