息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

骸の爪

2012-01-17 10:52:53 | 著者名 ま行
道尾秀介 著

背の眼』の続編にあたる。

主人公のホラー作家・道尾は滋賀県の山奥にある仏像工房「瑞祥房」を訪れ、
口を開けて笑う千手観音と割れた頭から血を流す仏像を目撃する。そして、
仏像たちが歩き回る音も。

工房の弟子たちは次々と姿を消し、謎が謎を呼びつつ20年の歳月がたつ。

たくさんの伏線、思い込みや錯覚を利用した構成はお見事。
しかもこれらが見事に着地する。無駄なし。
大風呂敷を広げて収集がつかなくなる作家も多い中、ここは単純にスゴイ。
そしてすべてにおいて解決してすっきり、というのが好きな人には
ものすご~くおすすめできる結末だ。
ただやや盛りだくさん過ぎて、途中で冗長な感じはした。

仏像、仏教に関する深い知識、芸術に対する志が見事に描き出されているのも
読み応えがある。

タイトルだけ見るとおどろおどろしいホラーかと思いそうだが、
いい意味で裏切られた。