息をするように本を読む

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妖怪と怨霊の日本史

2012-01-12 10:11:53 | 著者名 た行
田中聡 著

日本の歴史は神話から始まる。
そしてそこには荒ぶる神や人に害を与える怨霊など、
「おそれ」のもとになる“もの”が存在する。

ものは古の時代、霊と一体であった。
それが排除され物質となり、人は自然を見出したという。

面白かったのは冒頭の「ひとつ」の話。
古代はひとつ火が忌まれていたという話から、ひとつという意味を
解説している。
ひとつは1ではない。
「一度いらしてください」は1回ということではないし、
「○○のため一日出かけた」という一も1とは違う。
これは兆しなのだという。深い。

霊的存在は時代によって変遷し、「物の怪」「心の闇」などに
なっていく。
平城京は「怨霊」の生まれた場所である。
政権争い、天変地異、疫病。
不可抗力であったさまざまな事象はすべて怨霊のせいとされた。
そしてそれにはもちろん、それを祓うということにつながっていく。

現代でも話題となる「幽霊」ついても言及する。
結局人間ってあまり変わっていないのかもしれないと思ったり。
そして神話とはそのままの出来事ではなかったとしても、
事実をかなり的確に言い当てているのかなあと感じたり。

幅広い文献からの引用があり、わかりやすい解説があるため、
あやふやでつたない知識を整理するのにも役立った。