息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

異形の大国 中国

2012-01-13 15:19:52 | 著者名 さ行
櫻井よしこ 著

著者が『今日の出来事』のキャスターをしているとき、そのわかりやすく
落ち着いた声で読まれるニュースを聞くのが楽しみだった。
番組の最後に「おやすみなさい」と言われると、ああ一日無事に終わったなあと
いう安堵を感じた。
パワフルさと柔軟さ、引かない強さとしなやかさ、舌鋒とおだやかな声、
正反対のものが共存するのは彼女の魅力だ。

そしてその信念の強さゆえに敵が多い人でもある。
正直著者の書くものが好きな私でも、う~ん?と違和感を感じることはある。
それでもここまではっきりとものを言えるということへの尊敬のほうが
先に立つ。

本書は『週刊新潮』の連載をまとめ平成20年に刊行されたので、
やや古いのだが、中国という国を理解する助けになる。

良い悪いと単純に区分けするとなんだか悪いことをしているかのような
気になってしまうが、異文化を理解するにあたり、考え方の特性や行動の方向を
分析するのは当然のことだ。
しかし、顔立ちが似ておりかつ隣国であり、そしてかつては文化の伝わる道で
あった国に対して、わかりあえるはずという甘えや油断が先に立つ人が多い。

過去の戦争にまでさかのぼり、日本人の罪の意識を刺激してゆさぶりをかけ、
誤った虐殺事件を事実と言い換える。
確実に自社工場で起こった毒物混入を「ありえない」と言い切り、日本側に
問題があると言い張る。
かと思えば、自国の未来を担うべき乳児に与えるミルクに毒物が混入される。
日本にいて平和のぬるま湯にひたっていると事実とは思えないことばかりだ。

違和感は人間の大きな武器だ。
おかしいと思ったときは自分で対処する。結局生き残るとはそういうことなのだろう。
相手を傷つけること、それによって自分が嫌な思いをすることをひたすらおそれ、
中途半端な笑顔で問題を見過ごすことは、この国を相手には不可能なのだ。

お互いの幸せのためにも平和な関係のためにも、ときとして厳しい言葉が
必要なのだということを痛感する。
そして、現代の中国は四千年の文化を背負う中国とは全く違うものになっている
ということも哀しいが事実のようだ。