哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『フェルマーの最終定理』(新潮文庫)

2010-04-05 22:56:56 | 
 4月になると新入生の季節である。この頃になると、雑誌の特集が新入生向けの内容も多くなり、新入生のための推薦本特集も多い。先日、数学雑誌の特集で、掲題の本を是非読むべきだとの記事があったので、読んでみた。

 確かにおもしろい。フェルマーの最終定理そのものよりも、ピタゴラスくらいから語られ始める数学の歴史そのものが、物語として大変おもしろく書かれているのだ。途中でゲーデルの不完全性定理やハイゼンベルクの不確定性原理までも触れられていて、多くの知識を体系付けるかのような、俯瞰的な視点を持てたような気にまでなる。

 ただ最初の方では、数式を捕遺に載せて厳密な数学を少し理解していっている気になるものの、後半ではさすがに高等数学になるのだろう、数式も出てこず(出てきても理解不能だろうが)、全く物語だけの世界になる。フェルマーの最終定理の証明の鍵は、楕円方程式とモジュラー形式なのだそうだが、それらをWikipediaで調べてもさっぱりよくわからなかった。


 この本を読んでいて思ったのは、数学において純粋に論理で考える様は、まるで哲学において考えることと全く同じようにピュアなのではないか、ということだ。しかも何年もかけて考え、そして必ずしも報われるとは限らない。池田晶子さんも、哲学によって人は救われるわけではない、と何度も書いていた。しかし、知を愛するのだ、知りたいのだ、我々は。