哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

「篤姫」

2007-12-24 16:46:46 | 時事
 NHKの大河ドラマは毎年必ず見ているわけではないですが、「風林火山」はほぼ毎週見ました。筋書きとしてはなかなか面白かったと思います。

 ただ、司馬遼太郎さんが仰る通り、歴史の中での人間の考え方は、その時代性の中で判断しなくてはなりません。なぜ戦国武将たちは、戦いをしたのか。まさに戦国時代だからではありますが、「風林火山」でも、天下を平定して戦いのない平和な世にするため、というような台詞が何度もありました。そこのところは、少なくとも現代の我々の感性のみで捉えるのは浅薄かもしれません。

 ところで、来年の大河ドラマは「篤姫」です。詳しいストーリーは知りませんが、徳川幕府の崩壊期に、帰ることを勧められたにもかかわらず出身の薩摩に戻らず徳川家に留まり、和宮と共に朝廷・薩摩・幕府の間を取り持って、江戸に戦火をもたらすことなく無血開城への道筋を開いた、というのがクライマックスだそうです。これだけでも感動もんですね。

 運命は選べないが、運命に対する態度は選ぶことができる、という『夜と霧』のビクター・フランクルさんの言葉を思い出します。

塩野七生さんの「日本人へ」56

2007-12-16 18:00:00 | 時事
 今月の文藝春秋(新年号)の塩野七生さんの「日本人へ」56は、「滞日三題噺」という題でした。塩野さんは1ヶ月日本に滞在してローマに戻ったそうです。

 その日本での話題の三題というのは、賞味期限、守屋元次官、求めない、の3つです。
 一つ目の賞味期限について、ローマでは日本食品が少ないので賞味期限が切れていても捨てずに結構食べるそうです。そもそも賞味期限がどの程度客観的なものか、冷静に見直してはどうか、とのことです。
 二つ目の守屋元次官については、あれだけゴルフをやっていてスコアが100台ということは、好きでゴルフをやっていない証拠だとのこと。むしろ妻がゴルフ好きだから、仕事一筋の高級官僚が、妻に申し訳ないと思ってずるずる続けてしまったのではないか、というのです。さすが、言い得ていそうです。

 さて、三つ目の「求めない」というのは、今流行りの本の題名で、この本の広告を見た塩野さんは、広告の中の文句を「求める」に変えてみたらどうか、という面白い発想をされていました。「求めない」では歴史は存在しない、求めてやまない人々の大人間模様が歴史だそうです。

 確かにそうですね。この「求めない」について、池田晶子さんならどう仰るでしょうか。

 哲学は知を愛し、知を求めます。ですから知について「求めない」ということはやはりありえないですね。

『儒教とは何か』(中公新書)

2007-12-09 18:46:18 | 時事
 掲題の本は、日経新聞で松岡正剛氏が薦めていたので読んでみました。

 読んだところ、目からうろこ、の内容でした。

 例えば冒頭の部分、仏式の葬式のいろんなルールについてですが、実は仏教を淵源とせず、儒教の要式とされるものがかなり入り込んでいるそうです。

 さらに、そもそも儒教がどのような歴史をもつか、また中国において仏教や道教とどういう関係があったのか等、大きく歴史を俯瞰する内容は、本当におもしろく感じられました。

 とくに儒教の礼教性と宗教性の分離の説明は、日本における儒教の位置づけも含め、頭の整理に大変役立ちます。

 中国人が人生を楽と感じ、インド人が苦と捉えるとか、ややステレオタイプ的な意見には少し違和感を感じるところもありましたが、全般としては大変お薦めの本です。