哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

ヘーゲルは、総理大臣か活用か。

2013-06-18 06:35:57 | 
『ヘーゲルを総理大臣に!』(講談社)は、題名が面白かったので、装丁が「もしドラ」のような少女アニメなのは気に入らなかったが、大分前に入手していた本だ。かつて、池田晶子さんは、自分を文部大臣にしてみよ、と書いていたが、同時にヘーゲルが総理大臣になれば、最強の哲人国家の出現である。

実はこの本は少し読み始めて、あまり面白くなかったため、しばらく放置していた。しかし、最近思い立って最後まで読んでみた。読後感としては、言いたいことはまあわかりやすいとは思うし、ヘーゲルへと向かう入門書とならないではないとは思うものの、あまり人にお薦めするところまではいかない。

この本でヘーゲルを取り上げて言いたかったことは、最終章の「生きること」に凝縮されている。自由とは決して恣意ではなく、他在のもとにありながら自分のもとにあること、を自由というと説明している。しかし一方で、ヘーゲルが総理大臣になったら、国家のために国民の生きる権利を犠牲にすることはないとし、財政再建のために社会保障費は削らないし、国や地方の借金を次世代に先送りはしないし、安易に増税もしないとまで書いている。これはさすがにもう眉唾ものであろう。こういう好い事づくめの政策を実行できると掲げて失敗したのが、民主党だからだ。ヘーゲルは確かに矛盾を克服するとはいうが、増税と財政再建と社会保障費の問題は全て現状維持のままで解決できないことこそ、歴史が証明している。


『ヘーゲルを活用する!』(言視舎)は、上述の本よりずっと面白い。こちらは是非お薦めする本である。ヘーゲルの考え方をいろんな現実問題に当てはめて活用しようというもので、現実の国際問題にも当てはめたりして、相当チャレンジな内容である。EUの国家統合は不可能であるとか、チャイナは人工軍事国家であるとか、著者の見解にすぎないかもしれないが、考えさせられる内容ではある。さらにこの本は、長谷川宏訳に触発されて執筆したとも書いてある。


上記のいずれの本も、現実の問題にヘーゲルの考え方を当てはめて解決を考えようとするものだが、理性的なものは現実的なものであり、現実的なものは理性的なものであると言ったヘーゲルだから、現実に活用できるのは当たり前だと言えるのだろう。でも池田晶子ファンとしては、ヘーゲルで睥睨したいところだ。