哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

『ヘーゲルとその時代』(岩波新書)

2015-11-23 14:16:30 | 
少しづつ池田晶子さんに関する新しい本も出ているようだが、それは置いておいて、今日は2013年に出版された掲題の本を紹介したい。池田晶子さんもヘーゲルに関する本なら、きっと読んで批評されたに違いない。この本は、ヘーゲルに関する最新の研究も反映しているというのであるから興味深い。

まず印象深かったのは、ヘーゲルが貧困の問題を重要視したというくだりだ(130頁)。後にヘーゲル哲学の発展形のようにマルクス主義が台頭してくるが(192頁)、さらにそれを超えて21世紀になってトマ・ピケティ氏の人気著作が注目を浴びたことにも関連してくるよう思える。つまりヘーゲルの考えは、今の時代にいたっても全く色あせない、言い換えれば人類は未だに克服出来ていないとも言える。

そして、あの有名な言葉「理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である」も取り上げている(147頁)。これは、哲学は現にある現実的なものの把握であり、時代によって制約されるとする。現に生きている時代を超えた、ユートピアのような未来構想を論じることに警告したという。

哲学を普遍的なものと捉えると、時代を超えて通用すると思えるし、現にギリシャ哲学等も現代に通用する面があるではないかと思うのであるが、過去の考えを現代に適用しようとすること自体が、まさに時代に制約されていることであった。過去の時代ではなく、今の時代で考えているのだから。

池田晶子さんがよく言っていたような、時代が変わっても人間は同じというのは、時代を超えた普遍的人間像をいうのではなく、その時代時代を生きる人間という意味で捉えるべきものなのであろう。