ねむたいむ

演劇・朗読 ゆるやかで懐かしい時間 

ひなまつりとりかさん

2012-03-02 | Weblog
ひな祭りが近づくと読みたくなる本がある。
梨木香歩の「りかさん」。人形というものについて、いろいろ考えてしまう物語だ。

子供の時、児童文学を読まなかった私は、児童文学というものは、すべて大人になってから読んだような気がする。
フィリパ・ピアスやルーマ・ゴッテンなどの作品を、子供の頃に読んでいたら人生が変わっていたかもしれないなあと思ったりもするけれど、高校の時、サド侯爵の本に傾倒していた自分が、今反社会的な人生まっしぐらというわけでもないところをみると、本によって変わる人生なんてそんなにはないのかもしれない。

主人公のようこちゃんが祖母から貰った人形、りかさん。リカちゃん人形が欲しかったようこちゃんは、はじめ市松人形のりかさんにがっかりするが、すぐに愛情を感じるようになって、りかさんの心の声を聞くことができるようになる。ようこちゃんはりかさんを通して、いろんな人形たちの思いを知り、その人形たちの哀しい傷を理解し、昇華させる手助けをしていく。
親善大使としてアメリカから渡ってきたのに、第二次世界大戦中は鬼畜米英の象徴として串刺しにされ火あぶりにされたビスクドールの話など、子供が読むには結構残酷な場面もあるが、雛人形たちのユーモラスなエピソードなどもあり、物言わぬ人形を愛しく思える物語だ。

私自身の子供の頃の人形遊びといえば、紙で作った着せ替え人形で、人形も洋服も自分で描いて物語を作り、一人で何役もこなしながら遊んでいた。
雛人形も小さなものは持っていたが、いつのまにかなくなってしまい、それに対しての思い入れもない。

よい人形は、持ち主の心を浄化するという。人形が身代わりとなって、持ち主の強い感情やにごりの部分を吸い取ってくれるのだそうだ。
ふりかえって、私の紙人形たちが、私のいやな部分をみんな引き受けて、正しく純な少女にしてくれたとはとても思えない。

ああ、私って、いまだにつくづく不満ばっかり。
嫉妬や憎しみやいやな感情で胸がいっぱいになると、
今の私にも、よい人形が必要なんじゃないかって、考えてしまうのだ。