些か、フィルム二本は撮りきれずに縁日から出る。それにしても給料日前だからか?閑散とした寂しい縁日である。的屋のお兄さんや香具師の親方の方が多いくらいで恐ろしい縁日である。思えば、オイラの住む町内には仏壇屋でお神輿屋で香具師の方が居て、やはり普通ではない。刺青こそ彫られていないが、言葉遣いや身なりはちょっと普通ではない。春の桜祭りの川淵の縁日でもたんきり飴で露店をひらく。おそらく、此の弘明寺の露店商にも知り合いは沢山居るに違いない。で、帰りがてらに今一度、縁日を通ると金魚すくいに子供達は集まって歓声を挙げている。香具師の後ろから回り水槽を挟んで子供達の前に出てシャッターを切る。子供達は金魚すくいな夢中だからオイラの写真撮影には気付かない。ちょっといい情緒撮影である。
無愛想なドトールのアルバイトにアイスコーヒーを手渡されお兄さん達の直ぐ近くの一服会場に腰掛ける。危険な空気が充満しアイスコーヒーをすする。早く日が暮れないかと考えていると、親方らしき方が其のスジのオーラを醸しながら打ち合わせにやって来た。お兄さん達は総立ちで出迎え激励を受けていた。でも、子供騙しのヨーヨーとか当てクジとかたこ焼きを売る訳である。胡散臭い商売だが、其の胡散臭い処に縁日の魅力が在る訳である。裸電球100W、とっぼい感じのお姉さん、裸電球に照らされた安物の玩具、如何わしいお絵描き煎餅、ゴミバケツ内でかき混ぜるお好み焼きのうどん粉、眉毛も刺青のお母さんやらと危なく怪しく胡散臭い情緒が充満する縁日である。しかし、下町独特の風物だから年に一度は撮りに来る。こういう危ない状況ではライカやオリンパスの様なシャッター音の極静かなカメラが大変役に立つ訳である。
結局、以前に105円で買った中古ビデオ「レッド・バイオリン」を観たが、其の内に雨も上がり隣町の弘明寺まで散歩である。今日は、縁日が開かれ年に一度は下町縁日情緒を撮りには行く。夏の毎月3と8の日の晩は開催されていて出向いた訳だが、何せ夏至なので日も暮れない。で、ロケハンを済ますと門前のドトールで日暮れ待ちをしながら一服である。喫煙席には、縁日関係の刺青をしたお兄さん達も一服中で見応え充分だなっ!皆さん開業前の意気込みも凄く、さすがに其のスジの方々である。カメラなんて万が一にも向けたら大変な事に為るなっ!
今日の休日もどうなるんだっ!どうしようもない雨降りで昼に起床し部屋の掃除を済ませ、蒸し暑い中、大汗をかいてシャワーだという事で風呂へ。嫁さんがお風呂洗いの準備中なので何年か振りにとオイラが洗う。更なる大汗である。終われば、本降りだから今日こそは買い溜め映画でも観るかっ!脇では、嫁さんが合切袋というか巾着というか?を造る算段をして、紬をほどいている。此の紬は、黄八丈で二年前にお客さん二年ネダって戴いた着物をベストに造り直しした残りである。今持って素晴らしい光沢であるので、ベストとのお揃いの合切袋が欲しい訳である。嫁さんは、洋裁が得意で年がら年中子供達の袋物や剣道の繕い物をしている。2週間拝み倒してようやくの制作開始である。今までも嫁さん作の合切袋は何個も作って貰っているがシルクの黄八丈紬では初めてである。いやいや楽しみだなっ!
何故に大暇なのかは知らないが、ランチの終い時に見えたお客さん。ギター弾きであり、旧洋楽を歌いもする74才の社長紳士。料理の出来る間に店内のギターをつま弾く。「さらばジャマイカ」だ。久しぶりに耳にしたハリーベラフォンテの名曲中の名曲、オイラも小学生の頃に母のLPレコードをよく聴いた。食後には音楽談義だが、やはり歌も歌う。「さらばジャマイカ」英語版である。74才位の方が懐かしんでの歌声はかなりグッと来る。其の内にオイラに編曲~譜面起こしを頼まれる。此、好みの曲だしオイラもレパートリーに欲しいので喜んで引き受けた。カリブ海の「カリプソ」のリズムに載せての叙情豊かな此の名曲をどう料理してギター一本で素材を引き出せるか?丁度、譜面起こしも間合いに入り、次の曲はと思案していた処に航りに舟であった。思えば、此のカリプソもジャマイカを離れる舟からの叙情、キングストンに残した女性への離れがたい未練を歌っている訳である。
コンパクトと言えば、ギター演奏だってコンパクト奏法の家元だかんねっ!それでも、超速爆裂繊細味艶演奏に達し流派も築いた。コンパクトならば、超速でも外さないし、繊細で味艶豊かな演奏も楽だし、何しろ疲れない。苦心したのは、コンパクトな手指の動きで爆裂音を発する事であった。それも、フラメンコの稽古のお陰で指に瞬発力がついて自分でも驚く程の音が発せられる様に為りとうとう超速爆裂繊細味艶演奏の域に達した訳である。写真撮影でも、大袈裟に三脚やリュックサックなんかの大荷物は持たない。二台のカメラと三本のレンズで充分である。スローシャッターも15分の1秒迄ならば手持ちで切れるから三本不要。カメラ本体もあれこれ使いもしない機能無しの単純明解なクラシコカメラだから万が一の露出計だけをポケットに入れているだけである。其の露出計だって1日の撮影で二三度しか使わない。つまり、コンパクトとは機材の有るべき最低限度に巧みな技術と知識、経験、そして其の場の状況を素早く読み取り技術・知識・経験を如何に速く駆
使出来るか?に尽きる。
使出来るか?に尽きる。
今日の月曜日は、分析に因ると前日の日曜日辺りに父の日にて学校でも父親参観なんかがあり月曜日は学校は休校らしい。つまり、子供達は在宅しているから母親は家に居なくてはならずランチ外食処ではないという結論に達した。本当に大暇の1日で電気代・ガス代・水道代にも至らない売上金額であった。行事、催しも結構だが外食産業は堪ったモンではない。仕込みも発注もなく、御用聞きの業者の電話に出るのが嫌である。発注も無いという事は、仕入れも無いという事だから小口現金もそうは必要が無く銀行さんへは入金ばかりで払戻金も少々であるなっ!だからと言って入金額だって少々だから通帳に数字は増えない訳である。コンパクト経営の粋を極めているんだなっ!でも、此以上のコンパクト経営は無理で絞りに搾り、ロスを無くし必要か?否か?を問い詰めながらの経営状態である。
しかしオイラは、作曲家でも編曲家でもなく演奏者だからやはり稽古は欠かさず一時間は採る。大体、1日に10曲程度は稽古するが、250曲を稽古するには一月かかり其の内には最初の曲は忘れかける。つまり、同じ曲を一年では15回程度しか稽古していない訳である。勿論、中には毎日稽古する曲も有るのだが、其れは弾きこなしていないからであるなっ!コード進行の複雑な曲やテクニックを要する曲、速い曲なんかは間隙を縫って稽古している訳である。プロなんかはどうしているんだろう?先日観たセルジオメンデスさん等は「マッシュケナダ」の発表から45年間毎日欠かさず演奏していて10万回は弾いているだろうから身に着いているどころか体そのものであろう。オイラには、未だその様な曲は無い。
昨日は、大忙しと見込んだランチがハズレて大量の仕込みはどうなるんだっ!ワールドカップ有り、空模様危うしでディナーが忙しいとは思えなかった処に22才に為る娘の小学校時代の恩師一家や取引先の家族やらが来店してくれて、何とか仕込み分を捌いた。オイラは、ソース等の仕込み以外は毎日仕込んだ量を残したくない訳である。むしろ足らない方が望みである。お陰で今朝も仕込みに追われている。「マッシュケナダ」も書き終わり一息着くがそれはそれで寂しい訳である。オイラは、料理や音楽で面倒くさいと思った事は無く、いつでも好んで行うくらい天趣味と感じている。此の三年で複雑な音符の羅列でありボサノバやフラメンコ等の譜面起こしも出来る様に為り録音以外での遺産残しも楽しんでいるから、一曲書き終わると直ぐ様次の曲探しをして頭中編曲をしている訳である。
対オランダ戦の土曜日晩はサッカー嫌いの常連客の来店で盛り上がらず。オイラは、学生時代はサッカー部だったから話せば幾らでも話題には尽きないのだが昨夜の三組はサッカー話題は通じない。で更に、音楽興味も無いからどうしようもない。せいぜい車の話題か?昔の道路事情の話題である。高速道路の無い時代に神戸まで一般道で行ったとか、三国峠でチェーン装着に手こずったとか、北海道でパンクに見舞われ隣町まで二時間押し歩いたとか、それはそれで懐かしくも苦い経験談であった。譜面起こしの最中で、閉店までテーブル上に拡げ放しで何も書いていない。それでもオイラは閉店後、急いで帰宅し対オランダ戦の観戦をした。