医療事故調査の新制度は、ざっと言って、(1)調査対象は予期せぬ死亡事故に限定、(2)調査を始めるかは医療機関が判断、(3)調査結果の書面による説明は義務化されない、などとなっている。この制度は従来検討されていた案に比べれば、主眼が責任追及のためではなく、再発防止に主眼が置いた制度であると言える。医療者側と患者の間に第三者機関を置いたことは大きい。
新制度として、私は先ず良い制度だと思う。ただ、調査のスタートである「予期しなかった死亡」の基準か曖昧で、これが問題となってくる可能性はある。運用を検証する必要がある。
医療事故調査の新制度の決定に至る過程は長かった。
医師法21条には「異状死体を診断した医師は24時間以内に警察に届けなければならない」、とある。しかし、この法の背景として定義しておくべきはずの異状死体の定義はなかった。
そのために、各学会レベルで異状死の定義が発表された。驚いたことに、日本法医学会、日本外科学会の定義は大きく異なっていた。他にも異状死の定義が何編か発表されている。ある診療関連死について、日本法医学会の定義では異状死として警察に届ける必要があるが、日本外科学会の定義を適応すると異状死でないと判断される。
だいたい、このような重大なことを各学会ごとに異なった見解が出されること自体、医療会の閉鎖性、意思疎通の無さが表れている。こんなことは厚労省が専門家を集めたワーキンググループでも作って定義を提起すべきである。
通常は診療関連死があったとしても悪意がない場合は業務上過失として取り上げることはあっても医師が逮捕されることはなかった。しかし、2004年12月に福島県立大野病院で帝王切開を受けた産婦が死亡したことに関連し、2006年2月に医師が業務上過失と医師法違反容疑で逮捕、起訴された。2008年8月福島地裁は無罪を言い渡した。当然の判断である。
この事件を機会に、われわれ医師は正当な業務を行っていても医療行為が拡大解釈され刑事事件として介入を受けたり逮捕される場合もありうると考えざるをえず、事故や紛争の対応に心を頑なにせざるをえなかった。結果として、医療行為自体が縮小する傾向や、産科医の減少にもつながって行った。
当時からも検討されていた医療事故調査制度は紆余曲折を経た。その背景は、一度紛争が起これば医療者側と患者側が責任をめぐって双方とも極端な立場を主張せざるをえない方向になることを双方が懸念したことにある。医療事故に関しては医療安全と責任追及は別問題である。
2008年頃論議されていた厚労省大綱案は責任追及の資料集めのようだったか、今回の制度ではその不安はだいぶ薄れたと思うが、医療者の責任追及が目的ではない、という理念が守られるかは不安とか、結果的に訴訟が増える可能性があり、その際に報告書か訴訟の証拠に用いられる可能性は否定できない、とする意見はまだくすぶっている。
どんな法であっても解釈次第である。数年運用・検証してみないと分からない。関心を持ってフォローしなければならない。
新制度として、私は先ず良い制度だと思う。ただ、調査のスタートである「予期しなかった死亡」の基準か曖昧で、これが問題となってくる可能性はある。運用を検証する必要がある。
医療事故調査の新制度の決定に至る過程は長かった。
医師法21条には「異状死体を診断した医師は24時間以内に警察に届けなければならない」、とある。しかし、この法の背景として定義しておくべきはずの異状死体の定義はなかった。
そのために、各学会レベルで異状死の定義が発表された。驚いたことに、日本法医学会、日本外科学会の定義は大きく異なっていた。他にも異状死の定義が何編か発表されている。ある診療関連死について、日本法医学会の定義では異状死として警察に届ける必要があるが、日本外科学会の定義を適応すると異状死でないと判断される。
だいたい、このような重大なことを各学会ごとに異なった見解が出されること自体、医療会の閉鎖性、意思疎通の無さが表れている。こんなことは厚労省が専門家を集めたワーキンググループでも作って定義を提起すべきである。
通常は診療関連死があったとしても悪意がない場合は業務上過失として取り上げることはあっても医師が逮捕されることはなかった。しかし、2004年12月に福島県立大野病院で帝王切開を受けた産婦が死亡したことに関連し、2006年2月に医師が業務上過失と医師法違反容疑で逮捕、起訴された。2008年8月福島地裁は無罪を言い渡した。当然の判断である。
この事件を機会に、われわれ医師は正当な業務を行っていても医療行為が拡大解釈され刑事事件として介入を受けたり逮捕される場合もありうると考えざるをえず、事故や紛争の対応に心を頑なにせざるをえなかった。結果として、医療行為自体が縮小する傾向や、産科医の減少にもつながって行った。
当時からも検討されていた医療事故調査制度は紆余曲折を経た。その背景は、一度紛争が起これば医療者側と患者側が責任をめぐって双方とも極端な立場を主張せざるをえない方向になることを双方が懸念したことにある。医療事故に関しては医療安全と責任追及は別問題である。
2008年頃論議されていた厚労省大綱案は責任追及の資料集めのようだったか、今回の制度ではその不安はだいぶ薄れたと思うが、医療者の責任追及が目的ではない、という理念が守られるかは不安とか、結果的に訴訟が増える可能性があり、その際に報告書か訴訟の証拠に用いられる可能性は否定できない、とする意見はまだくすぶっている。
どんな法であっても解釈次第である。数年運用・検証してみないと分からない。関心を持ってフォローしなければならない。