わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 78 窯を開けるまで解からない?4

2015-02-12 22:19:23 | 素朴な疑問
2) 釉及び施釉に関する事項。(前回の続きです)

 ② 窯詰めに関する事項。

  ) 窯詰めの実際。

   a) 窯の構造。

    窯には、横扉方と上扉方式があります。更に、横扉方式には、「シャトル」方式があります

    これは、「シャトル」と呼ばれる台車を窯の外に引き出し、窯詰めを窯の外で行える方法で

    横や上からだけでなく、左右、前後、真上からも、窯詰めが出来る構造になっている為、

    非常に作業がし易く、窯詰めの全体が見渡せる利点があります。

   b) 窯の容積に従い、複数枚の棚板使いばす。

    容積の小さい窯では、一段で1枚(敷き)で使いますが、容積のある窯では、2~8枚

    (敷き)の棚板を使う場合もあります。棚板同士は隙間無く並べる事もありますが、多くは、

    棚板同士は指1本程度の隙間を設け、その隙間を通して炎や熱を下へ伝える事で、窯内の

    温度を均一化に寄与させる事が出来ます。

    注: 一般に燃料を使う窯は、倒炎式と呼ばれる構造で、窯の壁に沿って天井まで登った

     炎は、一転して窯の下に向かう事になります。その後、一段目の棚板より更に低い部分に

     設けられた煙道を通って、煙突から外に放出されます。この構造では、窯の温度の差が

     少なくなる言われています。実際には下段と上段との温度差は、窯の大きさにもよりま

     すが10~30℃程度出ると思った方が無難です。

    更に、隣同士の棚板間に段差を設ける事もあります。段差を設ける事で、上部の熱や炎は、

    より下に伝わり易いです。但し、棚板同士の隙間が広くなると、炎は走らなくなります。

    即ち、理想の炎とは、細く長く伸びる事と言われています。

   c) 窯の詰め方には、二通りの方法があります。即ち下段を密にし、徐々に祖にする方法と、

     下段を粗にし、徐々に密にする方法です。但し、天井が円形の場合、この円形を十分

     生かす様に窯詰めを行います。即ち、中央部に背の高い作品をその周囲は、徐々に背の

     低い作品を並べます。上記二通りの方法では、陶芸の技法書等では、上が祖で下に行くに

     従い、密に成る様に窯詰めする様に書かれた物が多い様です。但し、これも絶対的な物

     では無く、ある程度好みの問題とも受けとられる場合も多いです。ちなみに私の場合は、

     下が祖で、上に行くに従い密に成る様に窯詰めしています。

   d) 窯詰めには幾つかの決まりの様な物があります。

     即ち、作品は棚板の外に出ない事。施釉した作品は必ず、指一本以上離す事。銅を含む

     釉は、特に距離をとる事。近すぎると、蒸発した銅が隣に移り悪い影響を与えるからです。

     そして、成るべき高さを揃える事です。尚、窯に詰め過ぎると、焼き斑(むら)を起こし易く

     なりますので、7~8割程度が良いとも言われています。

   e) 窯詰めは下段から詰める事に成ります。

    一段目はサイコロと呼ばれる長方体のブロックを下に敷き、窯の底より3~5cm程度浮か

    せて、必要な枚数をセットします。

    一段目に窯詰めが終われば、支柱を立ててその上に新たな棚板を乗せる事に成ります。

    但し、棚板一枚に付き支柱は3本が標準的な本数です。3点で支える事は、上に乗る棚板が

     安定する本数です。4本に成ると、その内の1本が浮き上がり「ガタ」が出る場合があり

     ます。又3本にする事で、棚板の表面を有効に使う事ができます。

   f) 棚板は壊れ物でもあります。立て掛けた物を倒すと完全に割れます。又長年使っている

     内に「ひび」が入る事があります。この「ひび」が全体の半分まで及んだ場合、「割れ」

     の危険性がありますので、そのままでは使用しない事です。但し、支柱の数を増やし例え

     「割れ」ても、作品に影響が出ない様にする事も可能ですので、「ひび」の入った棚板も

     有効に使う事ができます。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 77 窯を開けるまで解からない?3

2015-02-11 17:57:19 | 素朴な疑問
2) 釉及び施釉に関する事項。(前回の続きです)

 ② 窯詰めに関する事項。窯詰めは、焼成する事と同様に大切な作業です。

   この窯詰め如何(いかん)によって、焼き物の良し悪しが決るとも言われる程です。

   又、窯詰めの方法を変化させると、当然焼き上がりにも変化します。

   作品が良く焼き上がる為には、窯の所定の位置(良く焼ける位置)に置く事と、その作品の

   周囲の環境も大きく関係します。窯の容積が大きくなるに従い、その窯特有の場所取りの

   問題が発生します。

  ) 窯には、各々の釉には、特等席的な場所が存在します。

    この場所に置けば、良い確率で希望の発色が見られる場所です。当然、新規の窯では解かり

    ませんが、窯焚きの回数が増えるに従い、経験的に自然と解かってきます。この特等席を

    見出す事が安定的な作品を作り出す一つの「こつ」です。

    この特等席の範囲が広い場合には、数個の作品を置く事が可能ですが、狭い場合には、

    一個のみと言う事もあります。

  ) 窯詰めでは、必要な量の作品が施釉済みになってから、一度に窯詰めを行う方法と、

    ある程度の量の施釉が済んだ段階で、順次窯詰めを行う方法があります。

    窯の容積が小さい場合には、前者の方法を取りますが、容積が大きい場合には、後者の

    方法を取る事が多いです。施釉の終わった作品は、触れただけで釉が簡単に剥がれ易く、

    「ホコリや塵」も悪影響を与えますので、速やかに窯に詰める事で、防ぐ事が出来ます。

    但し、後からだと特等席が埋まってしまっている場合もあります。

  ) 施釉された作品は、釉の性質毎に分類し、更に背の高さや横幅などの違いによって分類

    しておきます。これは、窯に余計な隙間を設けない為(即ち窯を有効に使う為)です。

    尚、大きな作品以外に、箸置きや、香合、ぐい呑みの様な小物も、焼成で大切な要素に

    成ります。上記と同様な理由であり、炎や熱の流れをコントロールする部材と成るからです

    それ故、なるべく作って置き、必要に応じて窯詰めします。

  ) 窯詰め前の作品の処置。

    特別な場合を除き、作品が棚板に接する部分(畳付き)に釉は塗れません。塗ってしまった

    場合は、落とす必要があります。更に、畳付き部分に「水酸化アルミナ」などの高温に熔け

    難い薬品に水を加えたものを塗り、棚板と作品の焼き付きを防ぎます。

  ) 窯詰めは、棚板を使うのが、一般的です。当然、窯詰めの前に窯内の掃除と、棚板の

   掃除が終わっている必要があります。窯内には、破裂した作品の欠片(かけら)が残っている

   場合(素焼き後に多い)や、倒れた棚板の支柱が残っている場合もあります。最悪の場合、

   倒れた支柱がガスバーナーの口を塞いでいる事もありますので、不用品は取り除いておく

   必要があります。棚板の掃除とは、以前に焚いた際、釉が棚板まで流れ落ちたり、作品から

   弾き飛ばされた釉の欠片が「こびり付いて」いる場合などです。この場合は、鏨(たがね)

    などで剥ぎ取り、その跡に「アルミナコーチング」を塗っておきます。

    尚、「アルミナコーチング」は、棚板を長持ちさせる働きもあります。

  ) 窯詰めの実際。

以下次回に続きます。

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素朴な疑問 76 窯を開けるまで解からない?2

2015-02-09 22:19:45 | 素朴な疑問
窯を開けるまで解からない理由は、窯の中の状態がしっかり見えない事も一つの原因です。但し、

釉の熔け具合は、釉の光沢やテストピースを入れ引き出す事で判断できますが、どの様な色に成って

いるかまでは明確に判断できません。当然、窯が冷えるに従いガラス質は固まり、結晶などが成長し

色も固定されますが、この段階で窯を開ける事は出来ません(無理に開けると、作品が壊れます)。

但し、楽焼き等はこの段階で窯を開けますので、少しは条件が良いかもしれません。

 注: 当然の事ですが、本ブログで取り上げた事を実施すれば、窯が安定し常に一定品質の作品が

   焼き上がる事を保障するものでは有りません。なぜなら、同じ容量で同じ燃料であっても、

   各々窯毎に癖があり、一概に安定させるには、「これ」と言えるものが無いからです。

1) 焼き上がりの良し悪しを決定する要素は、数多く存在します。

  「一土二焼き三細工」と言われる評価方法がありますが、ここでは、土と細工の項目を除いて

  お話したいと思います。

 ① 毎回焼き上がりに変化が出る要因。

  尚、ここでは、同じ窯で焼成する事を前提でお話します。

  釉及び施釉に関する事項(釉の種類、釉の厚み、漬け掛け、流し掛けなど)。窯詰めに関する

  事項(棚板の組み方、作品を置く位置など)。窯の構造と調整に関する事項(煙突の引きの

  強さ、空気や電気の供給量、窯の改良など)。焼成温度に関する事項(最高温度、攻め焚きと、

  寝らしなど)。焼成方法(焼成時間、酸化還元、燃料の供給、昇温、冷却スピード等)に関する

  事項。その他の事項(天候、季節)などです。これらは単独で作用するのではなく、複合的な

  要因によって変化します。但し、ここでは個々の事項に付いてお話します。

  前置きが長くなりましたが、ここより本題に入ります。

2) 釉及び施釉に関する事項。

  理想的な釉(色見本通り)が想像できれば、毎回その様な釉に発色させる事が狙いになります。

  但し、理想の釉がどの様なものか、想像できなければ、今まで焼成した中で、最高の物を目指す

  事になります。尚、未知の釉を目指すにしても、ある程度の予測を立てているはずです。

  ① 釉の種類。一つの窯で、単独の釉か複数の釉を一緒に焼成するか。

   ) 一窯全体を一つの釉の作品で占める場合。
    
     窯の大きさにもよりますが、容量の小さな窯であれば、単独の釉を掛けた作品のみを焼く

     事も多いです。その際には複数の釉の作品を一緒に焼成するよりも、条件は良くなります

   ) 釉の種類によっても、推奨する釉を厚く掛けるものと、薄く掛けるもの、普通の厚み

    (昔から葉書3枚程度と言われています)のものがあります。当然、施釉の厚みに差が

     あれば、同じ釉を掛けても発色の仕方に違いが出ます。同じ釉であれば、特別な場合を

     除き、同じ厚みに施釉する事が大切です。

   ) 釉の特性を頭に入れて置く事。

    a) 釉には流動性のある釉(主に結晶釉など)や、流動性の乏しい釉(志野釉など)があり

     ます。更に、流れる割合にも大小があります。当然ですが高温に成るに従い流れ易く

     なります。

    b) 釉によって焼成温度範囲が異なる事もあります。

     陶器の場合、一般に1180~1250℃程度の範囲内に入る釉が多いです。特に1230℃を中心に

     上下10℃程度が普通です。市販されている釉も、おおむねこの範囲内の物がほとんどです

     但し、土鍋土の場合は、最高温度1180℃と成っている物が多いです。

     磁器であれば、更に高温で1280~1300℃で焼成する事が多いです。

    c) 酸化、還元焼成で発色が変化します。

     釉には、酸化焼成向きのもの、還元焼成のもの、どちらでも発色に影響しない物があり

     ます。それ故、なるべく同じ雰囲気で焼成する釉を選ぶ事です。

     尚、容積の大きな窯であれば、経験からこの場所は還元が掛易い場所を見つける事ができ

     ます。

以下次回に続きます。

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素朴な疑問 75 窯を開けるまで解からない?1

2015-02-08 22:41:59 | 素朴な疑問
陶芸の世界では、作品の価値は、「焼きの良し悪しで決る」と言われています。

「焼き」とは単に、焼成温度のみを意味していません。釉の熔け具合や発色の仕方であり、結晶釉

では、結晶の大きさや出具合であり、焼き締め陶器では、その肌や胡麻(ごま)と呼ばれる、薪

(まき)の灰の掛り具合による景色も評価の対象になります。しかし、普通これらは、必ずしも

最初に意図した状態に焼き上がる訳では有りません。ある意味「運を天に任す」事とも言えるし、

絵付けの絵も「窯が描く」と言われています。それ故、標題の様な言葉が生じたものと言えます。

 尚、商業的に作られる量産品は、品質にバラツキの無い状態にする為、焼成や施釉などは、厳密な

 管理とコントロールの元で、制作されています。一方個人窯などで作られる作品は、いくに管理し

 コントロールしても、作品の出来に「バラツキ」が生じます。

 小生も200回以上の本焼きの経験がありますが、窯を焚くたんびに良くできた時と、失敗する

 (良くない)時があります。当然、良く出来た時と同じ条件で焼成したとしてもです。

 それ故、ある意味必然的な運命で、仕方が無い事とも思えますが、なるたけ安定して良い作品に

 焼き上げるには、どうしたら良いかを考えて見たいと思います。

1) 市販の釉は、色見本が展示されている場合があります。

  しかし、これはあくまでも見本であり、この様に発色すると保障している訳ではありません。

  焼成温度や酸化還元焼成の別、焼成時間などを一定にしても、窯の大きさや燃料の違い、更には

  上昇温度の速さや、寝らし(引っ張り)時間の長短、窯を冷やす速度などの焼成方法の違いに

  よっても「焼きの具合」に変化が出ます。更には、窯詰めの方法や作品の種類、大きさによって

  も左右されますし、施釉の方法でも変化する事になりますので、焼成条件は複雑になります。

  その為、指定の色に発色しないのも、「最もか」と思われる程です。

2) 多くの陶芸家(陶芸を楽しむ方)は1~3個程度の窯をお持ちの事と思われます。

   作品の種類や、釉の違いによって使い分けている方もいると思いますが、多くは1個の窯しか

   持たない方も多いです。その1個の窯でさえ、思うように行かないのが窯焚きです。

   作品の大きさもある範囲内の物で、種類も毎回大きく変化する事は少ないはずで、燃料

   (又は電気)は一定であり、窯の大きさも一定です。即ち、複雑な条件ではなく、焼成条件の

   幅は狭く成っています。窯焚きには、上記以外にも色々な条件や調整すべき事も多いです。

   これらの事も追々述べる予定です。

3) 焼成記録は必ず残し、次回の参考にする事が大切です。

  当然良く焼き上がった時は、なるたけ細かい情報を記載するでしょうが、良くない時や失敗した

  場合にも、記録を残したいです。これらに付いては、順次お話して行く予定です。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 74 陶磁器の表面装飾方法 16

2015-02-07 22:18:44 | 素朴な疑問
8) 釉による装飾

 ② 釉による装飾の仕方の例。

  ) 多色塗り。(前回の続き)

   c) 重ね塗りの方法。

    イ) 釉を重ねて塗る方法にも、色々なやり方が存在します。更に、釉を重ねる場合、

     どちらを下に(先に)塗るかによって、重ね合わせた部分の発色が異なります。即ち、

     透明系の釉や明かり色を先に掛け、後から黒っぽい釉を塗ると、後から掛けた釉の色が

     冴えます。逆に黒っぽい釉の上に透明釉や、明るく淡い色を掛けても、後に塗った釉の

     色は冴えません。

    ロ) 流れ易い釉薬の上に、他の釉を掛けると、上に載せた釉も一緒に流れ落ちてしまい

      ます。その為、上の釉の発色は弱くなってしまいます。出来れば、流れ難い釉の上に、

      流れ易い釉を使う方が綺麗に発色します。

    ハ) 表面の全てを、一色の釉で仕上げた後、部分的に他の色の釉を塗る方法。

      多色塗りで一番無難な方法です。但し下に塗った色により、上に載せた釉の色が変化

      する事も珍しくありません。

    ニ) 色数が増えるほど、重ねる順序を考えなければ成りません。当然幾重にも重なると

      釉は厚みを増し、剥がれ易くなり、貫入が入り易くなります。更に釉の熔けも悪くなり

      ますので、多くても2~3重程度に抑える必要があります。

    ホ) 多重掛けで面倒なのは、釉をある範囲内で消費し、溜まった釉を外に棄てない時

      です。即ち外に棄てるとなると、作品の端の一部にも釉が塗られる状態に成ります。

      それを嫌う場合、適量の釉を表面に垂らし、薄く延ばします。余分な釉はスポイト等で

      吸い取る必要があります。

    へ) 細かい模様を釉で表現する事は難しいです。釉が熔けるて一時液体になる事で、

      平らに広がったり、垂直の部分では流れ落ちて、模様が乱れて変化するからです。

      細かい模様の場合、筆塗りの方法か、スポイト掛け、吹き掛けの方法に成ります。

      筆塗りでは濃度の斑(むら)が出易く、スプレー掛けでは、細かいマスキングが必要に

      成ります。その点、スポイト掛けでは点から線、更に面の状態に塗る事が出来ます。

    ト) 多色塗りの場合、下の釉が乾いた後に塗るのが基本ですが、場合によっては、

      下の釉が濡れている状態で、重ね塗りする事もあります。当然、釉の境界線では、

      釉が滲みますが、これも一つの見所と成るかも知れません。

      更に、この技法を積極的に応用したのが、釉によるマーブル模様です。

      作業の方法は、泥漿(でいしょう)による化粧掛けと同様です。又、単に作品を振った

      り、傾けるだけでなく、筆などで表面を掻き混ぜる方法もあります。

      当然ですが、釉を重ね塗りを繰り返す程、素地の吸収力は弱くなり、釉の乾燥は

      遅れます。但し、素焼きをした作品であれば、素地自体が弱くなる訳ではありません。

     チ) スポンジを用いて施釉する。

      スポンジに釉を含ませ、作品の表面に押し当て、判こ(印)の様に使う方法です。

      スポンジにも目の細かい物から、粗い物まで色々存在しています。又、スポンジを

      好みの形にカットし模様にする事も出来ます。スポンジの押し付ける力の強弱で釉の

      濃度もある程度調節できます。

  最後に注意事項として、施釉する際、作品の何処を持てば良いかを念頭に入れて作業する事です

  無計画ですと、持つ場所が無くなってしまう場合もありますし、不用意に指跡を残す事にも

  成りかねません。
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素朴な疑問 73 陶磁器の表面装飾方法 15

2015-02-06 22:17:49 | 素朴な疑問
8) 釉による装飾

 ② 釉による装飾の仕方の例。

  ) 単色による装飾。

  ) 多色塗り。

    各々の釉は、決められた濃度でその色を単独で使い、所定の温度範囲で指定の色や艶、

    結晶が出る様に調整されています。基本的には、釉同士を混ぜる事はしません。

    混ぜるとその中間色が出るとは限りません。むしろ、予想もしなかった色に成る事も多い

    です。仮に混ぜたい場合は、少量混ぜ試し焼きする事です。

   a) 一つの作品に、重ね塗りする事なく多色の釉を施す。

    例えば、器の内側と外側、上部と下部、左右などを、別々の色を塗る事です。

    その場合、何処で色の境を区切るかが問題に成ります。内外の場合、真上はどちらの色に

    するのか、上下の場合には、水平に区切るのか、斜めに区切るのか、更には釉の配分量も

    考慮する必要も生じます。この区切り方一つで作品のイメージは大きく変化します。

    作品に動きを出す為には、垂直や水平などよりも斜め方向にしたり、波立てたり、釉の

    配分量も半々にせず、大小を設ける事です。

    イ) 施釉の仕方にも、工夫が必要になります。

      釉を全く重ね合わせる事がないと、多くの場合その間が無釉の状態に成り易いです。

      釉は高温で熔け液体状に成りますが、冷えると伴に収縮します。その為、施釉時には、

      隙間が無い様に見えても、焼成後には隙間が出ます。あえて、この部分を無釉にした

      作品も有ります。それも一つの表現方法です。隙間を生じさせない為には、若干重ねる

      事ですが、重ねる順序によって境目の色も変化します。

    ロ) 重ねない様に施釉するには、マスキングの方法が適しています。マスキングテープを

      利用するのも一つの手ですが、素焼きとの相性が悪く剥がれ易いですので、接着力の

      強い「ガムテープ」等でマスキングすれば良いでしょう。更に前回お話した「陶画

      のり」(ラテックス)等も利用できます。

    ハ) 全体に施釉した後、不必要な部分の釉をブラシ、又はスポンジによる水拭き等で

      落とし、そこに別の色の釉を施す方法もあります。落とす範囲が狭い部分には有力な

      方法です。

    ニ) 二色を掛け分けるのは、割合容易ですが、三色以上を掛け分けるとなると、面倒に

      成ります。即ち、複雑に成るに従い、漬け掛けや流し掛けの方法では対応できなく

      なります。即ち、一部をスポイト(イッチン)掛けにしたり、筆塗りを施すなどの

      方法、又はその併用で対応します。一番良い方法はスプレー掛け(吹き掛け)の方法で

      マスキングと併用すると、好みの色を好みの場所に施釉する事が出来ます。

    ホ) 施釉の経験の浅い方は、複数の釉を、どの様な手順で施釉したら良いか迷うはずです

      その場合、頭の中でシュミレーションしてから、本番に取り掛かる事です。作業の

      途中で行き止まらない様にして下さい。   

   b) 重ね塗り。二色以上の釉を重ねて塗る方法です。

    釉同士を混ぜ合わせる事よりも、有効な方法で、その中間色が出る事もあります。

    例えば、白マットの上に黒マットを部分的に重ねた場合、重なった部分がグレー(灰色)に

    なる場合もあります。黄色釉に青磁釉を重ねた場合、淡い緑色に成る場合もあります。

    但し、鉄赤釉に青磁釉を塗ったら、重ねた部分が、予想に反し黒色になったのにはびっくり

    しました。

   c) 重ね塗りの方法。

以下次回に続きます。
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素朴な疑問 72 陶磁器の表面装飾方法 14

2015-02-05 22:03:39 | 素朴な疑問
8) 釉による装飾

 ② 釉による装飾の仕方の例。

  ) 単色による装飾。

   a) 黒なら黒、白なら白一色の釉で装飾する方法です。均一の濃度の釉を掛ける事が多いです

    が、場合によっては、濃淡を付ける場合もあります。良く聞かれる事ですが、グラデー

    ションを付けたいと思われる方もいますが、かなりの難問です。段階的に濃度を変えて

    施釉する事は可能ですが、連続して濃さを変える事は、スプレー掛けの様な方法しか思い

    つきません。但し、釉は薄くしても同じ色に発色するとは限りません。多くの場合薄い釉は

    茶褐色に成り易く、濃い目に掛けた部分は、熔けが甘くなったり、熔け過ぎて流れ易く

    なったりし、希望するグラデーションには成りません。

    (尚、余談ですが、グラデーションは化粧土で行い、その後透明釉を掛ける方が上手くいき

    ます。)

  b) 施釉後の掻き落とし。

    単色の釉を掛けた後、良く研がれた道具(刃物)等で模様に沿って削り取る方法です。

    一般には、削り取る量を減らし、施釉部分を多く残します。 削り取られた後には、素地が

    表出します。それ故、素地の色と釉の色の対比に成りますので、はっきりした色違いの物で

    ある事が大切に成ります。

  c) 蝋(ろう)抜き。(その他、撥水剤、ラテックス)

    素地の上に溶かした蝋で模様を描きます。筆描きが一般的です。現在では蝋を溶かすのに

    時間も掛り、素早く模様を描く必要がある為、より簡単な方法として、撥水剤が利用される

    事が多いです。又「陶画のり(ラテックス)」も使われています。

    いずれも、焼成すると描いた部分に釉が載らず、素地が現れます。

    これらの違いは、撥水剤には最初より釉は載りません。撥水剤は液体で強烈ですので、

    一度素地に描くと取り除く事は困難です。取り除く為には素焼きをする必要があります。

    それ故、鉛筆などで下書きした後、本番に臨みます。

    「陶画のり」は粘り気のある液体ですが、素地に浸透する事なく、上に釉は載ります。

    筆描きが普通ですが、使用した筆は直ぐに石鹸水などで洗わないと、筆のりが固まり地使用

    する事が出来なくなりますので、注意が必要です。

    蝋抜きは、古くから行われている技法です。但し、現在では手間隙が掛かる為、他の方法が

    取られる様になってきました。蝋は釉を完全に弾く訳ではなく、若干蝋の上に釉が残り

    ますが、本焼きで燃え尽きてしまいますので、ほとんど影響は有りません。

    施釉後に針やピンセット等で取り除きます。それ故、失敗してもやり直しが効きます。

  d) スポイト描き(イッチン)。

    化粧掛けの際にも使われますが、釉掛けの際にも利用する事が多いです。

    釉を筆で塗る方法もありますが、どうしても釉が薄くなり勝ちです。濃い目の釉を使うと

    なると、線が伸びず綺麗な模様を描く事が難しいです。この様な場合、スポイトを使うと

    模様が描き易いです。但し、スポイトを使う際、釉に流動性を付けないと線が引き難く

    なります。水で薄めても良いのですが、なるたけ濃い目にする為に、CMC(化学のり)

    等を添加すると使い易くなります。

  ) 多色塗り。

以下次回に続きます。
    
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素朴な疑問 71 陶磁器の表面装飾方法 13

2015-02-04 22:24:47 | 素朴な疑問
8) 釉による装飾

  釉は作品の機械的強度や汚れ、薬品などから守る働きがありますが、装飾の働きも備えています

  即ち、素地とは異なる色を身に纏う(まとう)事で、その美しさを表現しています。

  釉の掛け方や、掛ける際の細工の仕方によって、色々な装飾を行う事が出来ます。

 ①  釉の色と種類。

  釉の色の種類は無限と言って良い程存在します。何故なら、釉はご自分で調合する事が可能で、

  ある程度の色なら、自分の好みの色を作る事が出来るからです。但し、著名な釉が再現せれて

  いないのも事実です。 当然ご自分で調合したレシピは、公表する必要は有りませんので、秘密

  事項に成っている場合も多いです。

  ) 釉の色は主に、ガラス質の材料(長石、珪石、アルカリ成分)に、金属を添加する事で

     得られます(色釉と言います)。

    (尚、ガラス質のみや、鉛を添加した物では、透明な釉になります。)

    地球上にある金属はほとんどが、空気中の酸素に晒され、酸化金属(即ち金属の錆)として

    存在し、金属本来の色とは異なります。酸化焼成であれば、一般に見られる金属の色を呈し

    ますが、還元焼成する事で、金属本来の色を取り戻す事になります。

  ) 例えば、鉄であれば鉄錆(赤錆)の茶色や茶褐色の色に成りますが、還元では光沢のある

    ステンレスの様な色(輝く白)にもなり、銅であれば寺院の屋根の様な緑錆に成ります。

    これが青織部と呼ばれる色で、還元では赤銅色と呼ばれる赤い色に成ります。これが辰砂釉

    と呼ばれる色です。

  ) 鉄(弁柄、砂鉄、黒浜など)や銅(酸化銅、炭酸銅、硫酸銅など)以外に、亜鉛(亜鉛華)

     錫(白)、クローム(緑)、ニッケル(緑)、マンガン(黒)、チタン(黄色)、酸化

     ルチール(黄色)、タングステン(黄色)コバルト(青、藍)等の金属が多く使われて

     います。 これらの金属も他の金属と一緒に使えば、異なる色に発色します。

  ) 釉は光沢の有るのが一般的ですが、光沢のない釉(マット釉)や不透明な乳濁釉、

     金属結晶が析出した結晶釉等が有り、更に、貫入のある「ひび釉」もあります。

     これらは、釉の調合のみでなく土(素地)の色の違いや、焼成の仕方、焼成温度によって

     色が変化します。

  ) 市販されている各種の釉は、指定の濃度と指定の焼成温度範囲と、指定の焼成方法

    (酸化、還元)で取り扱えば、安定的に発色する様に成っているはずですが、実際に焼成

     してみると、毎回同じ状態に焼き上がる事は少ないです。上記の指定のみでなく、焼成

     時間、燃料の違い、更には、窯の大きさや窯詰めの方法、窯に入れる作品の種類と大きさ

     など、色々な要素が関係すると思われます。 それ故、窯の扉を開けて見なければ、

     結果が判明しません。その事が陶芸の面白さかも知れません。

   尚、釉の調合方法などに付いては、当ブログで何度か取り上げていますので、参考にして

   下さい。

  ② 釉による装飾の仕方の例。

以下次回に続きます。

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