わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

新釉の話19 混ぜて作る釉7 鉄釉4(黄瀬戸、その他)

2013-08-14 22:26:13 | 新釉(薬)の話

3) 青磁と黄瀬戸釉。

 ② 黄瀬戸釉。

    黄瀬戸釉は、灰釉の古瀬戸釉を進歩させ、くすんだ色を意図的に改良して、黄色味を帯びた

    釉にしたものと、言われています。それ故、古瀬戸釉と大変似た構成成分になっています。

  ) 前回お話した青磁釉をそのまま、酸化(又は中性炎)焼成すれば、黄瀬戸釉となります。

     即ち、青磁釉と黄瀬戸釉とは、本質的には、同じものと言えます。

     即ち鉄分2%程度外割りで入れて作ります。艶のあるスッキリした色に成りますが、深味も

     少ない釉肌になまります。弁柄はほとんど100%酸化鉄ですが、鉄分を黄土から採る場合

     には、10%程度添加します。更に、40%程度の松灰を添加する事で、釉が熔け易くなり、

     ややマット状にもなり、雑味も加わり深味も出ます。

  ) 釉は素地の色に影響されます。

     信楽の白土には、若干鉄分が含まれますので、褐色掛かった黄色になります。

     磁器土や半磁器土などの白い土では、明るい澄んだ黄色に焼き上がります。

  ) 黄瀬戸釉には、「油揚げ手」と呼ばれる表面が光らず、「油揚げ」の様な外観を持つものが

     あり、理想の黄瀬戸と呼ぶ場合も有ります。

     アルミナ(Al2O3)成分が多くなると、釉が十分熔け切らずに微細な結晶が析出し、失透

     する事で、表面が「かせた」感じになります。

    ・ 黄土は、鉄の含有量は弁柄より少ないですが、アルミナ成分を多く含みます。

  ) 施釉は好みによりますが、薄く掛けた方が透明感のある黄瀬戸と成ります。

4) 伊羅保(イラボ)釉。

  ) 黄瀬戸釉に似た釉に(黄)伊羅保釉があります。流動性のある釉で、焦茶色で強く斑

    (まだら)に流れ落ちる筋(文様)が特徴です。

  ) やや厚掛し、酸化又は還元で焼成しますが、酸化焼成の方が黄色味が強い様です。

     又、薄掛けして、流動を抑え黄色味を強く出す方法もあります。

  ) 成分的には、以下の様な調合例があります。

     ・ 土灰50、黄土50、

     ・ 土灰50、長石50、黄土20

     ・ 土灰50、天草陶石、黄土20

     黄土又はこれに類する土は、各地で採取する事は容易に入手可能です。

     その他の原料も手に入り易いですので、工夫して独自の伊羅保釉を作るのも楽しみです。

  ) 伊羅保には種類も多く、添加物によって色に差がでます。

    ・ 緑流伊羅保: 銅系の釉。     ・ 朝鮮伊羅保: 朝鮮系の釉。

    ・ 紺流伊羅保: 呉須系の釉。   ・ 朱斑滴伊羅保: 朱赤系の釉。

    ・ 鉄流伊羅保: 鉄系の釉。     ・ 青伊羅保: 緑色の条痕。

5) 鉄赤釉。

   赤褐色で光沢のある釉です、渋めの赤から赤味が強い赤まで色々あります。

   均一な発色では無く、赤い斑点や、黄味掛かった斑点がでます。

   ) 弁柄(Fe2O3)10%と骨灰3%を添加すると、黒地に赤い斑点が現れます。

   ) 土灰透明釉に弁柄15%とマグネサイトと骨灰を添加すると、赤く発色します。

   ) タルク釉に骨灰などの燐酸成分を添加すると、酸化還元とも発色しますが、還元焼成の

      方が綺麗に発色し易いです。

次回は銅釉に付いてお話します。

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新釉の話18 混ぜて作る釉6 鉄釉3(青磁)

2013-08-13 16:58:14 | 新釉(薬)の話

市販の透明釉(基礎釉)に鉄分を含む弁柄などを添加して、色釉を作る方法に付いて述べていますが

ここでの透明釉は主に、石灰(カルシウム)系の透明釉です。透明釉にはその他、マグネシウム系

(MgO)、石灰バリウム系(BaO)、石灰亜鉛系(ZnO)の釉があります。

一般には、石灰系の透明釉が多く市販され使われています。又土灰系(MgO系)の透明釉も比較的

多く市販されていますが、それ以外の透明釉は、各社のカタログを見ても余り見かけません。

基礎釉の違いにより、鉄分の反応に違いがありますので、参考までに述べておきます。

(尚、基礎釉の調合に付いては、第三章でお話する予定です。)

◎ 鉄釉に用いる基礎釉の特徴

 ①  MgO釉: 徐冷したり、マグネシウムを多く含むと結晶が析出して、乳濁釉に成り易くなり、

    鉄の含有量が増せば、鉄釉と乳濁色が混ざった感じになります。

 ② BaO釉: 透明感があり、青磁などの青系の釉に適します。石灰釉より熔け易い釉です。

 ③ CaO釉: MgO釉とBaO釉の中間の発色をします。

 ④ ZnO釉: 亜鉛(Zn)は他の物質と結合し易い為、鉄の量が多くなると他の釉とは異なる色に

    成り易いです。

 前置きが長くなりましたが、本日のテーマに移ります。

3) 青磁と黄瀬戸釉

  ① 青磁釉: 東洋を代表する釉(製品)で、中国(漢、唐、宋時代など)や朝鮮(高麗朝)などで

    積極的に作られていました。現在でも事情は同じです。

   ・ 2%程度の酸化鉄を含んだ釉を還元焼成すると、青磁に発色します。更に、鉄分を含む素地を

    使うか、鉄分を添加した素地を使うと、一段と鮮明な青色が発色すると言われています。

   ) 鉄が青色を呈する理由。

     弁柄や珪酸鉄などの酸化鉄が、酸素が剥ぎ取られる還元焼成すると、2価の鉄Fe++の

     形になり青緑色に発色します。

   ) 釉に添加する酸化鉄は出来るだ微粉末にした方が良いようです。

   ) 木灰が多いと透明感のある、緑色になり、長石が多いと透明感の乏しい青色になります。

      現在では「BaO釉」が、比較的容易に入手出来る様に成ったとの事で、透明感のある青味を

      帯びた釉が、容易に作られる様に成りました。

   ) 青磁は鉄分を増しても、色が濃くなる訳では有りません。

      青磁の色を濃くするには、釉を2度、3度と重ね塗りする事です。

      厚く重ね塗りする為、釉が熔けて下方に流れ易くなり、口縁部の釉が薄くなり素地肌が

      透けて見え、紫掛かった色となります。又、釉を掛けない糸尻には、鉄分の多い素地が褐色

      に成りますので、青磁の上物では「紫口鉄足」と呼び、珍重されています。

   ) 青磁釉の色の違いは、釉の成分の違い、施釉の仕方の他に、還元を掛ける温度や、還元の

      強さによっても、大きく変化します。

   ) 青磁の種類は多く、砧青磁、天竜寺青磁(酸化クロムを入れる)、七官青磁、珠光青磁、

      高麗青磁(朝鮮青磁)、銅青磁(銅で着色)などがあります。

次回黄瀬戸釉に続きます。

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新釉の話17 混ぜて作る釉5 鉄釉2

2013-08-09 20:24:15 | 新釉(薬)の話

鉄釉は同じ釉でも、素地の違い、釉の掛け方(厚い、薄い)、窯の種類や形、窯詰め方法、燃料の違い

窯の焚き方(酸化、還元、徐冷)など、多くの条件の差によって、色や艶、結晶状態、釉肌などが、

非常に大きく変化する釉です。

釉に於いても、どの様な釉の構成にするのか、鉄分は何処から採るかによって、大きく異なります。

1~2%程度の鉄が釉に熔けると、還元焼成で、青、緑色系の釉になります。酸化焼成では茶、黄色系

に成ります。更に鉄分が多くなると、酸化、還元に関係なく、褐色から黒色になります。

1) 天目釉

  天目釉は、鉄釉(てつぐうり)の代表的な釉で、種類も多いです。

  黒釉や茶褐色、茶色の釉、更に結晶釉や、流動性のある釉など多彩です。

  ① 黒釉は鉄分が8~15%程度と多量に添加し、酸化焼成すると発生します。

    黒釉には褐色掛かった黒、紺色掛かった黒があります。

    前者はカルシュウム(CaO)が多い場合で、後者はカルシュウムとマグネシウム(MgO)があると

    発色します。 黒釉の代表例は、黒天目や油滴天目等があります。

   ・ 土灰(天然、合成)による黒釉薬は、マンガン、チタン等の不純物が含まれている為、更に

     釉に面白さが出ます。

  ② 天目釉は比較的厚く釉掛けします。その為、釉に流動性が増し、色の濃淡が出易いです。

     窯の温度が高く熔け過ぎる場合には、柿釉や飴釉掛かった斑(まだら)文様が出る場合も

     あります。  又、釉が薄く掛かった場合にも柿、飴、鉄砂の色を示します。

  ③ 天目釉の歴史は古く、当時の呈色剤には不純物が多く含まれ、その為、現在の釉とは微妙に

    異なります。昔の天目釉を理想とする人には、各々独自の調合をしている様です。   

  ④ 天目釉には、黒天目以外に、油滴天目、禾目(のぎめ)天目、耀変(ようへん)天目、柿天目、

     玻玳(たいひ)天目、木の葉天目などがあります。国宝や重要文化財に指定されている、

     作品も多いです。

2) 飴(あめ)釉と蕎麦(そば)釉。

  強い光沢のある褐色の釉に飴釉があります。更に飴釉に緑黄色から金色の結晶が散りばめ

  られているのが蕎麦釉です。

  ① 飴釉。

    基礎釉に5~8%(重量比、外割り)の鉄分を添加して、酸化焼成で、淡茶色から黒褐色の

    艶のある釉を作る事ができます。鉄分は弁柄や黄土から採る事が多い様です。

   ・ 益子焼きの飴釉は、益子赤粉(芦沼赤粉)5%と二酸化マンガン4.5%(いずれも容積比)を

    添加する事で得られるとの事です。 マンガンの代わりに土灰や木灰を使う事もあります。 

    尚、黒釉と飴釉の中間の色に、黒飴と呼ぶ強い光沢のある釉があります。

  ② 蕎麦釉。

   ) 飴釉に5%(重量比、外割り)のマグネサイトを添加することで、淡黄色の結晶の斑点

     (はんてん)のある蕎麦釉を作る事が出来ます。マグネサイトの量を増やせば、結晶が出来

     易く斑点の数が増えます。酸化(褐色掛り)と還元(緑掛る)とも結晶がでますが、全体に

     色味が異なります。

   ) 逆に蕎麦釉の結晶を消すには、珪石を20~40%程度添加します。

      但し、珪石が多くなるに従い、釉は黒くなります。

 3) 青磁釉と黄瀬戸釉。

以下次回に続きます。

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新釉の話16 混ぜて作る釉4 鉄釉1

2013-08-08 17:37:31 | 新釉(薬)の話

今回のテーマは、基礎釉に、鉄分を添加 して色釉を作る方法です。

色釉を作る方法は、前回までにお話した透明釉、乳濁釉、マット釉に金属顔料を入れて作ります。

金属顔料には、鉄以外に銅、コバルト、マンガン等があります。

特に鉄は添加量や焼成の仕方によって、黒、褐色、黄色、赤、緑、白などの様々な色に変化します。

1) 鉄の種類。(鉄の酸化物、鉄を含む物質)

  ① 弁柄(べんがら)、紅柄、: 化学名は酸化第二鉄(FeO2)で、赤い金属の粉です。

   天然の物も有りますが現在では、硫酸鉄から人工的に精製された物で、最も一般的な鉄の

   原料です。   多くの生の釉が赤いのは、弁柄が使われている為です。

   精製度が高い(100%の純粋に近い鉄分)物から、やや精製度が落ちる弁柄など、ランク付けて

   市販するメーカーも有ります。純粋に近い物は、面白味がないと、敬遠する人もいます。

  ② 酸化鉄: 酸化第一鉄(FeO)の事で、「黒錆(さび)」とも言われます。

    不安定な物質であるため、自然にはほとんど存在せず、蓚酸鉄 (しゅうさんてつ)を酸素の

    少ない状態で、焼成酸化すると得られます。強磁性体の黒色の粉末状の鉄です。 

    水には殆ど溶けるませんので、釉にも殆ど使用しません。

  ③ 砂鉄(黒浜): 磁鉄鉱が風化して分解され、海岸や川岸に集まったものです。

     約80%の鉄分を含む黒っぽいもので、 鉄釉やチタン結晶釉、鉄絵の原料 として用られて

     います。

  ④ 鬼板、来待石、益子赤粉、黄土その他。

   a) 鬼板(おにいた): 含鉄土石類で鉄分を20~30%含みます。鉄絵の具としても使用

      します。 不純物を多く含む為、色の変化も大きく、好んで使う人もいます。

   b) 来待石(きまちいし): 島根県で採取される含鉄土石。鉄分約6%を含みます。

     ガラス質で単味、又は土灰とで茶褐色系の釉になります。

   c) 益子赤粉(赤土): 益子で柿釉などの鉄釉や、黒化粧土として使われる含鉄土石です。

   d) 珪酸(けいさん): 酸化鉄(約6%)に微量のリン酸を含みます。来待石に性質が似ている。

      珪酸鉄: 弁柄と珪石を1:1、又は1:3で混合し、焼成された顔料です。

   e) 加茂川石: 川原に転がっている鉄分を含む水成岩で、約15%の鉄分とマンガンを含む

      珪石質の含鉄土石です。単味でもよく溶け、黒楽の釉として使われます。

      佐渡の赤玉も同じ様な物です。8~900℃で焼き水中で急冷すると、粉砕し易いとの事です

   f) 黄土:中国黄土、阿蘇黄土などの種類があります。

      鉄化合物を多く含む岩石が、風化する事により一部溶け出し、粘土の中に溜まり、黄色や

      赤色の土に成ります。これを黄土又は赤土とよびます。

      鉄分の含有量は不明ですが、かなりの量を含んでいるはずです。

      黄土は釉としても使いますが、他の白い粘土に混入して、「テラコッタ」粘土にします。

      やや低い温度で焼成すると、「テラコッタ」特有の赤朱色が出ます。高い温度では黒っぽく

      なります。

    g) 土灰、各種木灰類。

       天然や合成の土灰や、木灰には大なり小なり鉄が入っています。それ故、土灰釉はやや

       酸化焼成で黄色、茶色に還元焼成で青色、緑色(ビードロ色)となります。

       民芸調に仕上げるのに向いています。

一つの金属で多くの色を作りだせるのは、鉄のみです。

次回は鉄釉の実際の作り方をお話します。

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新釉の話15 混ぜて作る釉3 基礎釉3 マット釉

2013-08-07 21:55:24 | 新釉(薬)の話

石灰透明釉に他の材料を添加し、別の釉を作る方法を述べていますが、今回はマット(艶消し)

釉に付いてお話します。

1) マット釉とは、光沢の無い釉の事ですが、それには二つの種類と、三つの方法が

 あります。

 一つは、アルミナ成分を多くするマット釉で、他は、シリカ成分を多くする不熔性の

 マット釉です。

 一般に釉の中にアルミナとシリカ比率が1:7~11の時に綺麗な透明釉になります。

 アルミナの成分を多くすると、マット釉になり、シリカの成分を多くすると乳濁釉に

 なりますが、更にシリカ成分を増すと、乳釉はマット釉に変化します。

 前者のマットは、釉の中に発生する微結晶による現象で、結晶の元となる物質を添加して

 マット釉にする方法もあります。

 後者のマットは、ガラス質が少なく、釉が熔けない不熔性のマットです。

 いずれも、酸化焼成の方が、綺麗なマット釉になります。

 三つ目のマット釉は、「結晶の種」とも言うべき材料を添加してマット釉にする方法です。

 ① 光沢のある透明釉の中に非常に小さな結晶が析出した状態のマット釉。

  この結晶は釉の中は元より表面にも存在し、結晶に光が当たり、乱反射や拡散して

  透明感がなくなり、艶消し状態になったものです。

  ⅰ) この結晶粒は、釉に熔けていた結晶の種が、窯の冷却時に出現した物で、

   最初から熔けずに釉に存在していた乳濁釉とは区別されます。それ故ゆっくり窯を

   冷やした方が良い結果が出ます。 急冷では艶消しには成りません。

  ⅱ) マット釉の中の微細な結晶は、規則正しく全体に分布しており、釉の表面は

   極めて滑らかで、ビロード状の触感が得られます。

  ⅲ) アルミナ成分を多く含む材料の釉。

   a) カオリンマット釉:アルミナを主成分とするカオリンを添加した釉です。

    カオリンの種類も多く、外国産の物もあります。朝鮮(韓国)カオリン、香港カオリン

    AAカオリン(インドネシア産)、河東カオリン、中国カオリン等が市販されています

    代表的なのは、朝鮮カオリンで、800℃程度で焼いた仮焼(かしょう)の物を

    使います。 

    ・ 多量にカオリンを添加すると、釉が光沢の無い粘土質になります。     

  ⅳ) シリカ成分を多く含む材料の釉。

   a) 藁(わら)灰マット釉: 藁は珪酸(シリカ成分)を70~80%含みます。

    藁灰は白萩釉の様な乳濁釉に使われますが、限度以上に添加すると、不熔性の

    マット釉になります。

   ・ 合成藁灰: 天然藁灰に似せて人工的に作ったものです。天然のものより、

    鉄などの不純物が少なく、粒子が均一で白さも均一になります。

    天然の持つ雑味が少なく、面白味に欠けるとも言われていますが、一般的には、

    合成藁灰が多く使われています。

  ② 光沢釉に微量の添加剤を加えると、マット釉が得られます。

   ⅰ) マット釉にする為の添加剤。

    a) 白マット:マグネサイトを5~15%程度添加する。(重量比、外割り)

     マグネサイトの結晶作用で白マット状になります。添加量を増やす程、白さが

     増しますが、20%以上になると、白い斑点が残ります。

     一般に「白マット釉」と言われている釉です。

    注: マグネサイトとは炭酸マグネシウムを主原料とする白い粉で、結晶作用を

      起こします。多量に添加すると、収縮率を高め釉を「カイラギ」状にしたり、

     釉切れを起こします。更に増やすと、釉が粘土状になります。

   b) タルクマット釉。

    タルク(滑石)を多量に入れて艶消し釉にしたものです。10~20%程度添加

    して作る一般的なマット釉で、広く用いられています。少量の添加では逆に光沢が

    出ます。

   注: タルクは酸化マグネシウムを主原料とする物質です。マグネシア成分を含む

    材料に、マグネサイト、ドロマイト等があります。

   c) チタンマット釉、ルチールマット釉、ジルコンマット釉、錫(すず)マット釉、

    亜鉛マット釉

   ・ チタンマット釉薬: 石灰三号釉に10%程度の酸化チタンを添加し、パール状に

    輝く細かい結晶を作りだします。特別な焼成方法を行わなくても、安定した

    強いマット釉になります。

   ・ ルチールマット釉: 酸化ルチールは金紅石(きんこうせき)と呼ばれ、鉄分を

    含む酸化チタン鉱物です。

    石灰三号に10%程度を添加すると、輝きのある艶消し釉になります。

     鉄分の影響で、酸化焼成でクリーム色に、還元で青味かかったマットになります。

   ・ その他のマット釉も、ジルコン、錫、亜鉛 などを適量添加させ徐冷する事で

    結晶が成長して結晶釉となり、マットになります。尚、マット釉にするには、

    大きな結晶にしてはいけません。

  d) 鼠(ねずみ)石灰を10~20%程度、透明釉に添加して、「半艶消し釉」を

   作る事ができます。

   10%程度までは、釉を熔かす働きをしますが、それ以上では、冷却時に小さな

   結晶を生じ艶消し釉となります。 

  注: 鼠石灰の主成分は炭酸カルシウムです。

次回(鉄釉)に続きます。 

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質問、相談7-3 陶芸を習うという事。

2013-08-06 13:31:51 | 質問、問い合わせ、相談事

R子様より、再々度の以下の相談を受けましたので、ここに記載し、私なりの考えを述べたいと

思います。

*****

自分でもまだ、どの程度本気で取り組もうとしているのか、あやふやな部分があります。

それも含めて、自分と向き合ってどうしたいのかを探ってる感じです。

* 子供の面倒を見るのはあなた一人でしょうか? 他の生徒にも声を掛けているのでしょうか?。

→私一人だと思います。が、本当に欲しい助手は、轆轤が引ける人のようです。

轆轤が上手だったらいいのにな、と言われたことがあります。

*先生が制作する際には、見学させて貰うか、あなたも先生の脇で制作する事の許可を得ると

良いでしょう。

→先生の作陶する姿は、きちんと見たことがありません。教室が終わった夜遅くに、一人でされ

ているようです。そもそも人に見られたくないようです。

なので、自分が練習する時には、必ずお手本を最初にひいて見せてもらえるようにお願いしています

*乾燥は自然乾燥が理想ですが、時間が掛かってしまいます。私の教室では、ドライヤーを使って

半強制的に乾燥させ、その日の内に、底削りまで終わらせています。

→自然乾燥です。月2回で、中1週間飛ばして(この間に乾燥)3週目に削りです。

新たな作品作りと並行されてる方はいますが、かなり長く工房に通っている人です。

初心者1年生は多分させてくれません。

*******************************

習い始めの頃に聞いたのですが、先生曰く、「大半の人が2年以内に辞めていく。

手びねりして、チョッと轆轤回して満足して辞める。だから、そんな人に真剣に教える気になれない」、と。

言ってることは分かるのですが、習う側だって最初から2年で辞めるつもりで習うわけではなく、

やっていくうちに教える側のそういう気持ちを感じ取ってしまったり、

自分の中のモチベーションみたいなものが下がってしまったりってあると思うんです。

長々とスミマセン。今はお手伝いすることに集中しようと思います。

あと、他の工房を見に行ったり体験してみたりして、自分に合う場所を探すことも必要なのでしょうか?

 

◎ 明窓窯より

 もしも貴女が、陶芸を本気に取り組もうとしているならば、ここが踏ん張り処です。

1) 融通の利かない先生や教室のシステムに不満があるとして、「そんな所は辞めて新しい所に

   移った方がよっぽど良い」と、言いたい所ですが、それが問題です。

  ① 先生は暗い感じの人なのでしょうか?

    自分で作っている所を見られたくないとの事ですが、何か理由があるのでしょうか?例えば    

   ) 技術を盗まれる事を心配する為。 これは無いでしょう。技術を盗むのが生徒達で

      ある事は、むしろ先生にとって喜ばしい事です。盗み取るには、ある程度の技量が必要で

      それだけ、生徒が成長した事に成るからです。

   ) ぶざまな様子を曝(さら)さ無い為。 失敗する所を見せたくない為。これも考え難いです。

      陶芸に失敗は付き物です。失敗する事で憶える事も多いからです。失敗を見せる事も

      大切な事です。但し、見栄っ張りや、自尊心の強い人は失敗を見せたくないかも知れません 

   ) 気が散ってしまうから? 一人でじっくり陶芸を楽しみたい為。

      一番考えられる理由です。意外と気の小さな性質かも知れません。

      先生の性格や考え方をじっくり見て下さい。

      そこから何かの手立てが見つかるかもしれません。

  ② 他の場所(教室)に移る事の損得について。

    ) 利点。

      先ず、新たな気分で取り組む事ができます。更に、今までと異なる教授法を受ける事で

      なんらかの刺激をうける事になります。その環境が貴女に合っている可能性もあります。

    ) 問題点。

      a) 今まで何回もお話している事ですが、轆轤作業に統一したやり方はありません。

        人によってその方法は千差万別です。それ故新たな方法で、混乱が起こる事も多いに

        ありえます。

      b) 各々の陶芸教室には、独自のシステム(時間、料金など)や教授方法があるものです。

         他の教室を見学させて貰う事で、それらはある程度見極める事が出来ますが、内部に

         入らないと、解からない事も多くあります。それ故参考程度として下さい。

      c) 私の教室の例ですと、他から移っていらした生徒さんは、長続きしません。

         本人の希望に合致しない為かも知れません。

         本音を言えば、逆に教える側からも、余り歓迎できません。

         即ち本人は知らず知らずの内に、なんらかの癖(くせ)が付いている為、それが邪魔を

         するからです。教える場合、真っ白の状態の方が、断然教え易いです。

 ◎ 結論から言えば、他に移る事には賛成できません。

   例え、その教室や先生に不満があっても、3年間は我慢してみる事です。

  ② 先生曰く、「大半の人が2年以内に辞めていく。手びねりして、チョッと轆轤回して満足して

    辞める。だから、そんな人に真剣に教える気になれない」、と。

    先生の言われる事は、どの教室でも起こっています。だからと言って真剣に教えないと言うのは

    少し言い過ぎです。生徒さんから言えば、陶芸はあくまで趣味の範囲内で、十分楽しみ、自分の

    使う作品も十分作ったので、これ以上作る必要も無く、逆に邪魔になる恐れがあるので、

    ここで辞める決心をしたのかも知れません。

    その他、辞める理由は千差万別です。それ故先生も、無理に引き留める事は出来ません。

   ) 陶芸は3~4年目辺りから面白くなる。

      この頃になると、一通りの工程は習い終わる頃となります。ここからが自分なりのオリジナル

      作品を、自分の力で作れる様になります。それ故、2~3年目で辞めてしまうのは、

      「もったいない」感じです。

   ) 先生の望みは、轆轤の出来る助手ならば欲しいとのニアンスですが、その助手に成る方は

      先生の指導した中の人である必要があります。

      上記で述べた様に、轆轤作業には統一したやり方はありませんし、教え方もバラバラです。

      それ故、他から引き抜いて助手にすると、先生と助手の間に技術的な事や、陶芸に対する

      考え方に差が出て、意見の食い違いが生じます。同じ教室内では困る現象です。

      その為、先生の息の掛かった人(教えた人)を助手にする必要があります。

   ) 前回相談7-2で述べた様に、最小の授業料で陶芸の技術を習得するには、助手に成る

      事です。(勿論正式な助手に成れば、給料を貰うのは当然です。)

      先生のためらいが何処に有るのかは不明ですが、貴女が陶芸を続ける意思が固い事が

      解かれば、轆轤技術の上手下手にかかわらず、貴女を助手(又は、助手的)として認めて

      貰える可能性は大きいです。その為にも先生の考え方や、先生の行う作業(陶芸にかかわら

      ず)に関心を持って、観察して下さい。

   ) 轆轤は練習すれば出来る様になりますので、心配する事はありません。

      陶芸には手捻りと電動轆轤による制作方法がありますが、全く別な方法で、手捻りが轆轤

      作業に役立つ事はありません。教える側からすれば、手捻り後に轆轤を教えるのが一般的

      ですが、これは生徒の様子を観察する為(続けられるか?)の方法で、最初から轆轤のみを

      選択して習っても何ら問題は有りません。

     ・ 練習時間が少ないならば、2時間~2時間半の間、轆轤挽きに専念すべきです。

       更に、削り作業や焼成もしないで、作っては壊し、作っては壊しを繰り返す事です。

       そうすれば、今のままで、練習時間は4~5時間/月と2倍になります。

       貴女の教室のシステムがどの様になっているかは不明ですが、土が自由に使えるならば

       どんどん土を使う事です。幸い土練機を担当しているとの事ですので、追加料金無しで

       轆轤挽きが専念できるのではないでしょうか。

  ◎ 貴女が「フラフラ」せずに、覚悟を決めて取り組めば、良い結果が得られると思います。

 お役に立つ話かどうか解かりませんが、参考にして頂ければ幸いです。 

  何かあったら相談して下さい。 連絡をお待ちしております。  以上  明窓窯   

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新釉の話14 混ぜて作る釉2 基礎釉2 乳濁釉

2013-08-05 20:34:32 | 新釉(薬)の話

失透釉とは、透明でない釉の総称で、具体的には、乳濁釉、結晶釉、艶(つや)消釉を言います。

但し、狭い意味で、透明でなく光沢のある釉のみを失透釉と呼ぶ事もあります。

透明釉や乳濁釉、艶消釉になる原因は、塩基性成分(カルシュウム、ナトリウム、カリウムなど)を

一定にした場合、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)の配合比率によって決まります。

  (この件に付いては後日述べる予定です。)

1) 乳濁釉について。

  透明釉を乳濁釉に変化させる方法に、3つのやり方があります。

  ① 分相を起こして乳濁させる方法。

     骨灰や蛍石、酸化チタン等の乳濁剤(失透剤)を添加して、分相を起こす方法です。

     これらを少量添加すると、釉に溶け込み分相を起こし乳濁します。 

      注1: 分相とは、同じ釉の中で、性質の異なるガラス同士が混じり合わず、その境界面で

        光が屈折、攪乱(かくらん)、乱反射して、乳濁した状態になるものです。

      注2: 骨灰は主に、牛骨を使います。燐酸を多く含み低温釉の乳濁剤として、利用します。

        多量に添加したり、高温で焼成すると、光沢が無くなり、ピンホールが発生し易いです。

       ・ 蛍石の主成分は弗化カルシウムです。尚、蛍石の名前は、熱すると蛍の様に光る事

         から来ているとの事です。

       ・ 燐(りん)酸を多く含む材料に木灰(樹木や樹皮の灰)や木根、卵殻、獣骨などが

         あります。その他、「りんごの実の芯」に多く含まれているとの事で、この灰を使うと

         良いそうです。

      注3: 酸化チタンを多量に使うと結晶が析出します。

         酸化チタンを含む物質にルチル(金紅石)があり、チタンの含有量は、85~98%程度

         で、他は酸化鉄の不純物を含みます。添加量に応じて全く異なる乳濁になりますので

         予想が困難の面もあります。

  ② 結晶作用で乳濁させる方法。

     目に見える程、大きな結晶が析出するのが結晶釉で、結晶が確認できないのが、乳濁釉

     です。 マグネサイトやジルコンを添加し、結晶を作り出す方法です。

   ) マグネサイト: 炭酸マグネシュウムが主成分で、長石を熔かす性質があり、冷却時に

     細かい結晶を生じ乳濁します。 多量に添加すると、マット状になります。

     又、貫入防止の効果もあります。

   ) ジルコン: 酸化ジルコニュウム、ジルコニアなどの名前で市販されています。

      ジルコンは元素ですので、その化合物を使います。 酸化、還元共白く濁ります。

      次に述べる酸化錫(すず)が高価である為、最近の乳濁釉に多用されています。

  ③ 釉には熔けず、光を乱反射して乳濁にする方法です。  

     酸化錫(すず)は比較的高価ですが、昔より、全ての釉に対して乳濁剤として使われます。

     白色度に優れ、皮膜力も強いです。 酸化焼成の方が、乳濁が強く出ます。

     但し、酸化錫の粒子が極く微細の場合には、8~10%熔け込み、乳濁しない事もある様です

     ・ その他の同じ様に作用する乳濁剤に、酸化アンチモンがあります。

今回は、透明釉に乳濁剤を添加しましたが、各々の色釉に添加して、その色の乳濁釉を作る事も可能

です。 乳濁する原理は変わらないからです。

* 乳濁釉の代表的な釉に白萩釉や、藁(わら)や籾殻(もみがら)、糠(ぬか)の灰を使う釉があり

   ますが、これらは、調合の段階で混入させて乳濁釉を作る方法です。この方法については、

   第3章で述べる予定です。

   今回のテーマは市販の透明釉に添加物を加えて、乳濁釉を作る方法で、趣旨が異なりますので

   説明を省きます。

以下次回(マット釉)に続きます。    

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新釉の話13 混ぜて作る釉1 基礎釉1

2013-08-04 22:43:32 | 新釉(薬)の話

釉の調合を本格的に行うとすると、各材料の特性(性質)の他、ゼーゲル式とか、三角座標とか、

シリカーアルミナ状態図などの知識を理解すると伴に、各種計算などを行い計量する必要があります

この様な難しい話は後回しにして、とりあえず、既存の釉を使い、別の材料を添加する事で、望みの

釉を得る方法についてお話します。

  注: ゼーゲル式や、三角座標、シリカーアルミナ状態図などの説明は、後日行います。

1) 基礎釉とは、透明釉、乳濁釉、マット釉等の釉の事です。

   基礎釉には、色が出る金属が含まれていません。

   これらに、鉄や銅その他の金属類を添加する事で、各種の色釉を作る事が出来ますので、その

   元と言う意味で基礎釉と呼びます。これらの基礎釉の中でも、透明釉が最も基礎的な釉で、

   他の基礎釉を作る事が可能です。

2) 今回のテーマは市販の釉を使いながら、各種材料を添加して市販されている釉や、自分独自の

  釉を作る事を目的にしています。前回までお話していた市販の釉でも種類が豊富で、なんら問題は

  有りませんが、以下の様な利点があります。

  ① 値段が高い事。透明度などの基礎釉は、他の色釉より安価です。

  ② 多くの種類の釉を持つ必要が無く、必要と有らば自作可能ですので、最小限の材料のみを

     ストックしておけば良くなります。

  ③ 自分の好みに合わない、又は自分の窯で必要な色が出ない等で、改良したい時の役に立つと

     思われます。

3) 石灰透明釉は一般敵に使われている釉です。この釉を色々変化させます。

   ① 石灰透明釉の熔ける温度を下げる。

     石灰3号釉(1230~1250℃)を1200℃の光沢ある透明釉にする方法です。

     石灰3号は、一番多く使われている釉ですが、何かの都合で熔ける温度を下げたい場合

     には、酸化亜鉛(亜鉛華)を12%程度添加します。

      注: 重量比での、外割りです(3号釉100gに対して、亜鉛華12gを添加する事です。)

         但し、各々乾燥した状態(粉末状)での重量ですので注意して下さい。

      石灰1号釉は、1250~1280℃程度で焼成しますが、1230℃程度であれば、上記の

      数値を参考にしますが、酸化亜鉛を更に多く添加し、1200℃程度にしようとすると、亜鉛

      結晶が析出し、結晶釉となり透明度が無くなりますので、注意して下さい。

   ② 貫入透明釉(ひび釉)を作る。

      この名前の釉は市販されていますが、石灰透明釉より、容易に作る事が出来ます。

      石灰3号釉に平津長石を重量比1:1の割合で混ぜ合わせます。

    ・ 注:  ここで述べる添加剤は、一般に市販されている陶芸材料で、比較的少量(1Kg程度)

        でも入手可能のものです。

   ③ 透明マット釉を作る。

      石灰透明釉に、鼠(ネズミ)石灰を添加すると、マット調~半マット調の釉になります。

      添加量は5~20%程度です。添加量が増えるに従い、白濁感も増し、マット感が強く出ます

      更に、下絵の呉須や鬼板が滲み易くもなります。

      ・ 注意事項: 鼠石灰は炭酸カルシウムを主成分とする鼠色の石灰で、成分的には、白石灰

        と大差ありませんが、鼠石灰の方が安価の様です。

        市販されている鼠石灰は、小さな粒子を含んでいますのでいます。この粒子は釉に

        溶け難く斑点として表面に出てきますので、乳鉢などで良く磨り潰す必要があります。

        又、篩(ふるい)をお持ちなら、80番メッシュ程度の篩に通して下さい。

         注: 篩の目の粗さは、1インチ当たりの目数を表したものです。それ故、数の多い程

             目が細かくなります。

      ・ 上記の様に調合したからと言って、必ずしも満足が行く釉に成らないこも知れません。

        その原因は、窯の構造、燃料の差、焼成温度、窯内の雰囲気(酸化、還元)、窯の焚き方

        などによって、大きく左右されます。それ故、参考程度とし、各自微調整が必要になります       

 以下次回(乳濁釉)に続きます。  

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新釉の話12 市販の釉10 ピンク系、火(緋)色、その他

2013-08-02 20:33:29 | 新釉(薬)の話

1) 市販されているピンク系の釉には、以下の様なものがあります。

  ピンク釉、 桜桃釉、コスモスピンク結晶釉などです。

2) 火(緋)色釉には、以下の釉が市販されています。

   火色釉、 信楽火色釉、緋色釉、火色焼締釉、その他、火襷(ひだすき)釉など。

   但し、火色と緋色の区別がいまいち解かりません。見本の色を見るとほとんど区別が付きません

1) ピンク系の釉について。

  ① ピンク釉: メーカーによって、酸化、還元ともOKのものと、酸化のみで発色する釉があります

     1230℃以上で発色する場合が多い様です。

  ② 桜桃釉: 明るい桃色に焼き上がります。

  ③ コスモスピンク結晶釉:

     ピンク亜鉛結晶釉: 亜鉛結晶(通常白)がピンク色に発色したものです。

2) 火(緋)色の釉について。メーカーによって火色釉や緋色釉と名前が異なりますが、同じ釉と

   思われます。

   火(緋)色は登窯や窖窯(あながま)で、薪(まき)による無釉の焼締陶器で得られる赤い色です。

   これを釉と見るか、着色と見るかは、議論の分かれる処でしょう。ほとんどガラス質がなく、茶色

   味のある赤い色が表面覆っています。この色は薪による場合のみ発生しますので、通常の

   ガス窯や電気窯では見る事が出来ませ。(勿論、匣鉢(さや)を使って焼締の火色を出す事は可能

   ですが・・) そこで、薪窯と同じ様な色を人的に作り出されたのが、火(緋)色釉です。

  ① 火色釉: 市販されているポリ容器の釉を見ると、9割以上が水分で、ほんの少し、焦げ茶の

     液体が底に沈んでいる状態です。見慣れた釉とは極端に違います。これを良く攪拌して

     使います。

   ) 施釉の方法は、筆や刷毛塗り、又はスプレー掛けで行います。ほんの少量を薄く塗る事で

      発色します。濃過ぎると火色は出ずに、汚い茶色に成りますので注意します。

      又、火(緋)色を塗ったあと、その上に他の釉を掛けると、緋色は消えてしまいます。

   ) 火襷状にするには、筆で線状に塗ったり、和紙染めの要領で、細く千切った和紙に釉を

      浸し、素焼き面に貼り付けたりします。(本物の火襷は、藁を巻いて発色させます。)

   ) 還元焼成より酸化焼成の方が、赤い色が鮮明に出ます。

        焼成温度範囲は比較的広く、1200~1300℃と成っています。

   ) 土は古信楽の細めや荒めが良い様です。

  ② 火色焼き締め釉: 小生の窯では、赤く成らず黄色味掛かった艶消し釉となります。

     焼成条件で赤に出ると思われますが・・・

     施釉の仕方は、火色と同じで、筆(刷毛)塗りや、霧吹きで薄く掛けます。

3) その他の釉:

  ① ラスター釉: 金色ラスター、金彩ラスター、オパールラスター、パールラスター(真珠釉)、

     マンガンラスター(玉虫ラスター釉)等が市販されています。

     一般に酸化焼成で、還元では発色しないとの様です。

  ② 各種色釉。 顔料を入れた釉ですので、安定した発色になります。

     (趣が無い釉との評価があります。)

     焼成温度も1200~1250℃程度で、主に酸化焼成で行います。

     今まで述べて来た各種色の他、以下の釉が市販されています。

    ・ マロン釉、チョコレート釉、えび茶釉、セピア色釉、くじゃく(ピーコック)釉、もえぎ黄緑釉、

      小豆赤色釉、鼠色釉など。

  ③ 鍋釉(なべゆ): 土鍋用の釉薬で1200℃以下で使われる釉です。

     透明釉、白釉、黒釉、鉄釉、ベージュ釉、からし釉、織部釉、黄色釉、そば釉、クリーム釉など

     の釉が市販されています。

  ④ なまこ(海鼠)釉: なまこの名前の付く釉は色々ありますので、幾つか挙げておきます。

     白なまこ、乳白なまこ、緑なまこ、支那なまこ、薄紫なまこ、赤なまこ、黄土なまこ、群青なまこ

     灰なまこ、赤斑点なまこ等の名前で、市販されています。

  ⑤ その他、ここで記載できない程の色々の釉が市販されています。詳細を知りたい方は、釉薬

    メーカーのカタログや、ネットで調べて下さい。

今回で市販の釉の話を終わります。

尚、釉の中には説明不足のものも多々ありますが、小生の勉強不足でこれ以上説明出来ませんので

ご勘弁下さい。

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新釉の話11 市販の釉9 茶(褐色)系、赤系

2013-08-01 22:25:28 | 新釉(薬)の話

1) 市販されている、茶系又は褐色系の釉には、以下の様なものがあります。

   飴(あめ)釉、蕎麦(そば)釉、来待(きまち)釉、柿天目釉等が代表的な釉です。

2) 赤系の釉には、鉄による発色と、銅による発色があります。

   但し、同じ赤でも鉄釉と銅釉の赤では、大きな差があります。

   前者では、鉄結晶釉、陶赤などがあり、後者には、辰砂(しんしゃ)釉が代表的な釉です。

1) 茶系、褐色系の釉は鉄釉です。

  鉄は鉄釉七変化と言われる程、多様な色を呈します。

  素地の種類や、釉の調合、釉掛け、窯の構造、窯詰めの仕方、燃料の種類、窯の焚き方により、

  黒、赤、茶、褐色、緑、黄色、青、白も出るとの事です。 

 ① 飴釉: 鉄の配合量によって、黒飴釉、飴釉釉、黄飴釉などが市販されています。

   (但し、黄飴釉は、カタログでは余り見る事はありませんが・・)

   鉄分が、釉に完全に溶け込んでいる釉です。いずれも光沢が強く出ます。   

  ・ 飴マット釉: 基礎釉にマット釉を使い鉄分を添加した釉です。

 ② 蕎麦(そば)釉、黒蕎麦釉: 飴釉や黒飴に緑黄色の結晶が部分的又は全体に出る釉です。

    結晶を出さない方法などは、第二章でお話します。

  ③ 来待釉: 島根県松江市宍道町来待に産出する、来待石を主成分に土灰を調合した釉です。

   褐色~赤褐色(場合によっては、黄伊羅保風)になり、古来より石州(石見)瓦や甕(かめ)など

   の陶器に使われてきました。 酸化焼成で行うと良いでしょう。

  ④ 柿天目釉: 赤味があり、鈍い光沢のある茶色の釉です。甕(かめ)等の雑器に使われて

     います。還元焼成に向いています。

    ・ 柿釉: 光沢のある茶色の釉で、酸化焼成で行います。還元焼成では黒~褐色になります。

  ⑤ 鉄砂釉: 褐色地に茶色の微結晶の釉です。酸化、還元ともOKです。

  ⑥ 鉄釉: 茶色の光沢釉です。焼成の条件によっては、次の赤系の釉になる場合もあります。

  ⑦ 鉄マット釉: 茶色の艶消し釉です。酸化、還元ともOKです。

  ⑧ ワラビ釉: 酸化焼成で、飴釉地に、金茶流紋釉となります。

2) 赤系の釉。

  ① 鉄系の釉: 朱赤色の鉄が全面に析出する結晶釉ですので、失透釉です。

     鉄分が釉に溶け込んでいる為、均一の結晶になり易いです。

   ・ 鉄結晶釉: 明るい朱赤色の結晶釉。酸化、還元ともOK.

      カタログには上記の様に記載されていますが、小生の窯(ガス)では綺麗な赤が出ません。

   ・ 陶赤: 上記結晶釉より、くすんだ赤茶色です。    

   ② 銅系の釉: 銅を含んだ釉を酸化焼成すると、緑色に成りますが、還元焼成すると美しい

     赤い色になります。銅及びその化合物は高温で、揮発し蒸発易い為、二重掛けの方法が

     取られますが、市販の釉は、一度掛けで十分効果が出る様です。

     (これらの原理は第二、三章で取り上げる予定です。)

    ・ 辰砂釉: 結晶釉ではありませんので、やや透明性があります。

      白い素地に施釉し還元焼成で、赤紅色が鮮明に出ます。

      焼成温度はSK-7(1230℃)程度で、流れ易い釉です。

  ③ その他の市販されている赤釉と表示のある釉。

    赤志野釉: 緋色の志野釉。還元焼成。

    赤萩釉: 酸化焼成で、茶色の乳濁釉。などがあります。

以下次回(ピンク釉、緋色釉、焼締釉、その他の釉)に続きます。    

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