わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
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素朴な疑問 193 流れ易い釉の功罪とは3

2015-11-12 17:51:36 | 素朴な疑問
  流紋を活かした作品で人間国宝(重要無形文化財「彩釉磁器」の保持者)になった陶芸家に 

  三代目徳田八十吉(とくだやそきち、1933年~2009年)氏がいます。現在は四代目で女性ですが、

  同様の作品を作っています。

3) 流れ難い釉や、流れ易い釉を作るには?。

  流れ易い釉も流れ難い釉も使い(取り扱い)難いのが普通ですが、あえて流れ易くしたり、

  逆に流れ難い釉が欲しい場合があります。そのような時、どの様に対処したらよいのでしょうか。

  尚、焼成温度が高く成り過ぎれば釉は流れ易くなり、温度を下げれば流れ難くなりますので、

  ここでは、焼成温度を陶器では一般的な1230~1250℃の範囲内で行う事にします。

 ① 流れ易い釉

  流紋や斑紋など、釉の流動性を活かし文様になる釉で、海鼠(なまこ)釉や鈞窯(きんよう)

  釉や、その他に流動性を活かした結晶釉などが代表的な釉です。

  ) 流れ易い釉とは、ガラス質に成る成分と、融け易くする成分を多く配合した釉です。

   a) 焼くとガラス質に成る成分は、珪酸(シリカ=SiO2)、硼酸(ほうさん=B2O3)、

    リン酸(P2O5)などがあります。珪酸は珪石から調合する方法と、珪酸を多く含む天然の

    木灰類から取る方法があります。但し、後で述べる様に、珪酸は釉の流れを阻害します。

    即ち、粘度を増す働きがあります。一般には、硼酸(砂)を多くします。

    多くの流れる釉には、木灰類を使う事が多い様です。

   b) 釉を融け易する成分は、カリウム、ナトリウム、カルシュウム等のアルカリ類で種類も

    多いです。

  ) 炭酸リチュムを僅かに添加する事(1%程度)で、流れる釉を作る事も出来ると言われて

    います。添加する事で、光沢も増し、ピンホールも少なくする働きがあります。

    炭酸リチウム(Li2CO3): 融点が700℃の熔剤です。

 ② 釉を二度掛けして、より流れ易くする。

  単体で流れ易くする事よりも、二重掛けして流す方法が一般的です。即ち、上絵付けの要領で

  熔け難い釉で一度焼成した上に、熔け易い釉を施釉し一度目より低い温度で焼成する方法です。

 ③ 一度掛けの焼成では、融点の低い温度の釉の上に、一般の釉を二重掛けすると、下の釉の

   流れに載って、上の釉も流れる事になります。上の釉は流れ易い釉である必要はありません。

 ④ 流れ過ぎる釉を流れ難くする為には、粘着性を持つ原料を添加すれば良い訳です。

   粘度を大きくするには、珪酸(珪石)を増やす。アルミナ成分を増す。硼酸(砂)を含んで

   いる釉では、硼酸を減らす。などの方法があります。

4) 流れ過ぎる釉薬は、棚板まで流れ、作品を「だいなし」にしてしまう事です。

 ① 作品は棚板に固着し、作品を壊さなければ成らない場合も発生します。又棚板に釉が流れ落ち

  棚板を汚します。綺麗に取り除くのも容易ではありません。棚板上には、アルミナコーチングが

  塗られていますので、コーチングごと取り除く事にまります。剥がされたコーチンング部分に

  新たのコ-チングを塗る作業が必要になります。

 ② 施釉する範囲を限定する必要があります。即ち作品の下部に施釉しない部分を残す事です。

   但し、どの位流れるかは、窯の状態や釉の調合方法によって違いがでますので、予め予想を

   立てて置く必要があります。空けすぎても見栄えが良くありませんし、流れ過ぎると大変です。

  試行錯誤の上実施する事になります。

  以上にて、流れ易い釉の功罪の話を終わります。
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