わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 25 灰釉と石灰釉の違い 1?

2014-11-11 22:14:45 | 素朴な疑問
釉には、自然の灰を原料とした釉と、長石や珪石、石灰(その他のアルカリ成分)等の鉱物で調合

された釉があります。現在多く使われているのは石灰(炭酸カルシウム)系の釉で、市販品も多いです

理由は品質が安定し、常に一定の色やガラス質が得られる為で、更に、ある程度の調合が計算式か

ら導き出せれる事で、調合し易い事も大きな原因です。

灰釉は東洋独特の釉で、西洋での釉(石灰釉、長石釉)とは異なります。

当然、灰釉薬と石灰釉では色や趣(おもむき)などに違いがあります。

その違いに付いて述べたいと思います。

1) 歴史的には釉の発祥は,灰釉(かいゆ、はいゆ)から始まります。

  焼き締め陶器の一種の器(せっき)が焼成された、紀元前10~3世紀の中国では、作品に降り

  掛る燃料の灰が、高温で熔け光沢のある、ガラス質を形成する事が発見されます。

  即ち、この発見以降、灰が釉として始めて使われる事になります。

2) 灰釉は中国の唐や宋の時代に、目覚しく発展します。

  わが国に於いても、5世紀に朝鮮半島より、窖窯(あながま)が導入され、器(須恵器等)が

  焼成される様になります。窯の温度も1000℃を超える様になると、燃料の灰の中の石灰や

  アルカリ成分が、素地の珪酸部と化合し、ガラス質を生成し、表面を覆う様になります。

  初期の頃は、草木灰を水で溶き、意図的に器に塗り、釉にしていました。

  やがて、灰と他の長石などの原料と混合し、更に釉としての完成度を増してゆきます。 

3) 16世紀に茶の湯が流行し、千利休や小堀遠州などの茶人の下、禅の美意識と伴に「自然の美」

 が求められる様になります。炎に任せ不規則で地味な色の灰釉陶器が、人気を博す事に成ります。

 西洋でも来日していたバーナード・リーチなどの影響で、盛んに使われる様に成ります。

 ① 自然釉による焼き締め陶器。

  我が国での窖窯では、燃料に薪(まき)を使います。最終段階では、火力が強い赤松を使う事が

  多いです。その灰が作品に降り掛り、緑や黄色の色の付いたガラス質となっています。

 ② 偶然による自然に任せる事から、意図的に灰を掛ける方向に発展してゆきます。

 ③ 同じ自然釉でも、窯の位置や酸素量の有無、温度の差などによって、表情は色々に変化する

  事が発見され更に、焼成方法に工夫が凝らされる様になります。

4) 草木灰の成分。

  草木灰には次に述べる様に、多くの種類があり、その成分にも違いがあるのですが、おおむね

  次の様になっています。

 ① 石灰分が20~50%以上含まれています。

 ② 禾本科(稲科の植物)の藁(わら)や糠(ぬか)、籾殻(もみがら)等の灰には、シリカ

  (珪酸)成分が80%程度含まれています。

 ③ その他、マグネシウム等のアルカリ成分、マンガン、鉄、燐酸(リンサン)成分など多くの

  物質が含まれています。この成分の多様性が石灰系の釉と大きく異なり、釉の違いになります。

5) 草木灰の種類。

以下次回に続きます。

 
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