わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

朝鮮の青磁1(高麗青磁)

2011-08-19 22:13:22 | 各種の釉(鉄、銅、その他)
中国の青磁は、近隣諸国に、大きな影響を与えます。特に朝鮮に於いては、中国の青磁を模倣しながら、

独自の青磁を作り上げて行きます。

 10世紀頃、龍泉寺窯の青磁が、黄海を渡って、朝鮮の高麗朝の、全羅南道康津郡大口面に、

 もたらせられ、ここに、中央政府が直接支配する、青磁を焼く窯が築かれます。

1) 高麗(こうらい)朝(918~1391年)

 ① 三国時代(新羅、高句麗、百済)には、1200℃以上に焼成できる窯が、存在していたそうです。

   中国六朝時代(439~589年)の青磁や黒釉が流入してきます。

   この初期の青磁は、胎土も不純物が多く、釉薬も滑らかではなく、緑褐色を帯びています。

 ② 作品も中国風(唐風)で、広口長頸瓶、広口長頸裳形瓶、口縁が内側に巻き込んだ大鉢や、

  外側に反った皿など、これ以降に見受けられない、作品も多いです。

 ③ 918年太祖によって、高麗は建国されます。政変も少なく、比較的安定し、文化水準も

   高かった様です。

 ④ 6代の成宗(981~997年)に、中央集権体制が完成し、地方豪族は新しい支配階級に成ります。

  宗と交易しながら、宋の北方の遼(りよう)とも、友好関係を保持します。

  宋の青磁を手本に、12世紀以降、翡色(ひしょく)青磁や、象嵌(ぞうがん)青磁など、

  独自の高麗青磁を、発展させていきます。

2) 高麗陶磁器

   高麗陶磁器の種類は、青磁、白磁、黒釉磁、鉄釉磁などに、分類されます。

  ① 高麗青磁は、世界に比類の無い青磁とされ、特に翡色青磁は、宋の青磁を、押さえて、
   
    天下一品とも、賞される程に成ります。

    青磁では、無文青磁、象嵌青磁、鉄画青磁、銅画青磁などに、区分されます。

    その他、青磁瓦や、青磁のタイルなどの、建築材料も焼かれています。

  ② 翡色青磁

    翡色青磁の胎土は、地元、全羅南道康津郡産で、濃い褐色の土で、適度に鉄分を除く事により、

    粘りの強い、やや白い土に成ります。焼成温度は1200℃以上です。

   ) 翡色青磁には、無文、陰刻、陽刻、透刻(透かし彫り)、及び、象形青磁(人物、動物、

    植物の形)があります。

     a) 無文青磁: 表面に特別装飾を、施していない青磁で、安定した落ち着いた形で、

      格調ある青磁です。

     b) 陰刻青磁: 表面を鋭利な刃物で、細く繊細に彫る技法で、表面の凹凸により、

       釉に濃淡が出て、立体感を出しています。

     c) 陽刻青磁: 文様を器面より、浮き上げて、表現する技法です。

       文様の周囲を削り落とし、文様を浮き上がらせる方法と、切り取った文様を、貼り付ける

       方法、更には、型に押し当てたり、型に流し込んだりする方法も在ります。

       押出陽刻文青磁は、土で作った型を利用して一定の文様を付ける方法で、11世紀後半から

       現れる技法です。

       牡丹文、唐草文などの、文様が多いです。

     d) 象形青磁: 人形形の水注、鴨形の硯滴、猿形の硯滴、獅子形香炉、瓜形青磁などが

       あり、どこか遊び心を持った、作品が多いです。

     e) 透刻青磁: 有名な作品に「青磁透刻蓮花七宝文香炉」(韓国の国宝)があります。

       丁寧に透かし彫を施し、作品の軽さや、繊細さを表現し、更には高度の技術が、

       見て取れます。

  ③ 翡色青磁の全盛期は、12~13世紀で、13世紀に成ると、社会変化に合わせ、象嵌青磁に

    移っていきます。

 以下次回に続きます。

 参考資料: 「韓国美術五千年展」(東京国立博物館他)カタログ 1976年

       「韓国のやきもの」山田貞夫訳 (株)淡交社 発行 2010年
        
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