前回、釉は液体のガラス質であると述べましたが、その熔け方もガラスならではの特殊な様態
を呈します。例えば、氷(固体)が解ける場合は、大気圧(一気圧)では、0℃と言う決
まった温度で解け始め、全体の氷が全部解ける(結晶が壊れて液体になる)まで、その温度は
変わりません。しかし、釉の場合は一定の熔ける温度は存在せず、温度上昇と共に、全体が
軟らかくなり徐々に光沢を帯び、熔け出します。
1) 釉が熔けるとは?
一般的な施釉は、粉末状の材料を適宜調合し、水に溶いて素地に吸収させる方法をとります
高い温度で焼成する事で、粉末状の釉は徐々に軟らかくなり、粉末はガラス化します。
即ち、粉末同士がより強く結び付き、粉末様から液状に変化し、その隙間も極端に少なく
なります。
この現象が起こる温度範囲は広い幅を持ちます。当然、施釉した時とガラス化した時の釉の
厚みでは違いが出ます。
ⅰ) 熟成温度と熟成時間。
良い釉(色、艶、結晶など)を得るには、焼く温度とその温度の持続時間が重要です。
電気炉などで短時間で熔かした釉は、「テカル」感じ(固い感じ)に成ると言われてい
ます。一方、熟成した場合には、「ソフト」な感じがすると言われています。陶芸では
後者が好まれます。熟成時間が長くなると、釉は流れ出します。但し、熟成時間に関係
無く、流れ易い釉を作る事も可能です。
ⅱ) 結晶釉、窯変物などは、適宜の熟成温度と時間が必要です。
熟成温度は最高温度を保持するとは限りません。特に結晶釉の場合には、窯の冷えに伴っ
て結晶化が進みますので、その近辺で時間を掛ける必要があります。
(即ち冷却は緩やかにする事)
ⅲ) 釉は何処から熔けるか?
熱の伝わり方は、伝導、対流、輻射(放射)があります。伝導は棚板などから起こる事も
有りますが、割合は少ないです。燃料を使う窯では、主に対流により熱が伝わります。
その場合釉の表面より素地側に熱が伝わると思われます。一方電気窯の様な炎の出ない窯
では、輻射熱ですのでより大きい質量を有する部分にエンネルギー(熱量)が集まると考
えられます。それ故、素地表面から釉側へ熱が伝わる事になります。
但し、これはあくまで理論上で実際には、釉の層が薄い事もあり、素地側と釉側との時間
差は、無視できる範囲内で、同時進行と見て良いでしょう。
2) 釉が密着するとは?
ⅰ) 釉は釉同士の熱的化学的反応だけでなく、素地の表面とも化学的反応を起こします。
その為に、素地と強固に密着できると言われています。これを「釉が素地を食う」と言う
そうです。
ⅱ) 釉が素地を侵食する。
素地の表面は多孔質で「ザラザラ」しています。多孔質でないと釉が巧く素地に乗りま
せん。その多孔質の中に食い込みますが、その他、素地の表面で、素地や釉中のアルミナ
成分や鉄成分が化学反応を起こします。この境界部分を反応層と言い、他とは異なる組成
で、顕微鏡写真などで確認する事ができます。但し、釉が素地に浸透し過ぎると、思わぬ
弊害もあります。
a) 光沢を失い、釉が薄く掛かった状態になる。
釉の種類の違いには余り関係せず、釉が薄くかかった場合には、薄茶、褐色、黄色
掛かった褐色になります。表面も「ザラツキ」き光沢もありません。
b) 原因は素地及び釉の両方に有ります。
釉の場合には、釉の濃度が薄過ぎる場合や、結晶釉などの流れ易いく粘性が少ない
場合です。素地の場合には、石灰やドロマイトを多く含む場合で、焼成時に発生
する炭酸ガスにより多孔質が多くなる為です。
3) 釉の層はどうなっているか?
一見全体がガラス質で覆われいる様ですが、おおむね素地との反応層、中間層、表層
に別れます。結晶などはガラス質と共に、中間層に現れる事が多いです。表層は
ガラス質で覆われます。
志野釉の様に、気泡を多く含む釉は、釉の粘性が大きい為、表面より逃げ出せず、釉の
中間層にじ込められます。又、この様な釉では、反応層は少なく、釉が直接素地に入り
込み密着しています。
以下次回に続きます。
を呈します。例えば、氷(固体)が解ける場合は、大気圧(一気圧)では、0℃と言う決
まった温度で解け始め、全体の氷が全部解ける(結晶が壊れて液体になる)まで、その温度は
変わりません。しかし、釉の場合は一定の熔ける温度は存在せず、温度上昇と共に、全体が
軟らかくなり徐々に光沢を帯び、熔け出します。
1) 釉が熔けるとは?
一般的な施釉は、粉末状の材料を適宜調合し、水に溶いて素地に吸収させる方法をとります
高い温度で焼成する事で、粉末状の釉は徐々に軟らかくなり、粉末はガラス化します。
即ち、粉末同士がより強く結び付き、粉末様から液状に変化し、その隙間も極端に少なく
なります。
この現象が起こる温度範囲は広い幅を持ちます。当然、施釉した時とガラス化した時の釉の
厚みでは違いが出ます。
ⅰ) 熟成温度と熟成時間。
良い釉(色、艶、結晶など)を得るには、焼く温度とその温度の持続時間が重要です。
電気炉などで短時間で熔かした釉は、「テカル」感じ(固い感じ)に成ると言われてい
ます。一方、熟成した場合には、「ソフト」な感じがすると言われています。陶芸では
後者が好まれます。熟成時間が長くなると、釉は流れ出します。但し、熟成時間に関係
無く、流れ易い釉を作る事も可能です。
ⅱ) 結晶釉、窯変物などは、適宜の熟成温度と時間が必要です。
熟成温度は最高温度を保持するとは限りません。特に結晶釉の場合には、窯の冷えに伴っ
て結晶化が進みますので、その近辺で時間を掛ける必要があります。
(即ち冷却は緩やかにする事)
ⅲ) 釉は何処から熔けるか?
熱の伝わり方は、伝導、対流、輻射(放射)があります。伝導は棚板などから起こる事も
有りますが、割合は少ないです。燃料を使う窯では、主に対流により熱が伝わります。
その場合釉の表面より素地側に熱が伝わると思われます。一方電気窯の様な炎の出ない窯
では、輻射熱ですのでより大きい質量を有する部分にエンネルギー(熱量)が集まると考
えられます。それ故、素地表面から釉側へ熱が伝わる事になります。
但し、これはあくまで理論上で実際には、釉の層が薄い事もあり、素地側と釉側との時間
差は、無視できる範囲内で、同時進行と見て良いでしょう。
2) 釉が密着するとは?
ⅰ) 釉は釉同士の熱的化学的反応だけでなく、素地の表面とも化学的反応を起こします。
その為に、素地と強固に密着できると言われています。これを「釉が素地を食う」と言う
そうです。
ⅱ) 釉が素地を侵食する。
素地の表面は多孔質で「ザラザラ」しています。多孔質でないと釉が巧く素地に乗りま
せん。その多孔質の中に食い込みますが、その他、素地の表面で、素地や釉中のアルミナ
成分や鉄成分が化学反応を起こします。この境界部分を反応層と言い、他とは異なる組成
で、顕微鏡写真などで確認する事ができます。但し、釉が素地に浸透し過ぎると、思わぬ
弊害もあります。
a) 光沢を失い、釉が薄く掛かった状態になる。
釉の種類の違いには余り関係せず、釉が薄くかかった場合には、薄茶、褐色、黄色
掛かった褐色になります。表面も「ザラツキ」き光沢もありません。
b) 原因は素地及び釉の両方に有ります。
釉の場合には、釉の濃度が薄過ぎる場合や、結晶釉などの流れ易いく粘性が少ない
場合です。素地の場合には、石灰やドロマイトを多く含む場合で、焼成時に発生
する炭酸ガスにより多孔質が多くなる為です。
3) 釉の層はどうなっているか?
一見全体がガラス質で覆われいる様ですが、おおむね素地との反応層、中間層、表層
に別れます。結晶などはガラス質と共に、中間層に現れる事が多いです。表層は
ガラス質で覆われます。
志野釉の様に、気泡を多く含む釉は、釉の粘性が大きい為、表面より逃げ出せず、釉の
中間層にじ込められます。又、この様な釉では、反応層は少なく、釉が直接素地に入り
込み密着しています。
以下次回に続きます。