作品は焼成する事で、焼き物として完成します。
但し、焼成には素焼き、楽焼、本焼き、上絵付け焼きの方法があり、一般に使用に耐える強度になる
には、素焼きでは不十分です。焼成には高熱を閉じ込める窯を用いますが、窯の構造、窯の大きさ、
燃料の違いなど色々あり、それぞれにトラブル(問題)が発生し、その対処法も異なります。
ここでは一般論を述べます。
1) 窯詰めに起こるトラブル。
窯詰めの仕方によって、作品の焼きの良し悪しや、釉の良し悪しが決まりますので、おろそかには
出来ません。しばしば、窯詰め作業で作品を破損したり、窯詰め作業が原因で、焼成中にトラブル
が起こる事もあります。それらに付いて順次述べたいと思います。
① 素焼き、楽焼、本焼き(上絵付け)のそれぞれに、それなりの窯詰め方法があります。
いずれの焼き方であっても、所定温度まで温度が上昇する様に窯詰めする事が、最重要課題に
なります。次に、釉が目的通り又はそれ以上の色艶に焼き上がる事です。
) 楽焼の場合のみ、高温に熱した窯に後から作品を詰め込みますが、他の焼き方では、冷えた
窯に窯詰めをします。 窯出しも楽焼のみが、熱い窯から直ぐに引き出す方法です。
) 素焼き(又は無釉陶器)と本焼き(上絵付け焼き)では、窯詰めの方法は異なります。
素焼き等、無釉陶器では作品を重ねて焼く事が出来ますし、作品が隣同士接触しても、問題
有りません。一方施釉や上絵付けした作品は、重ね焼きは出来ませんし、隣同士が接触する
事もいけません(禁止です)。
② 窯詰めの手順。
) 作品の量。 窯を焚くには、必要な量の作品が必要です。それ故、ある程度の量が無い場合
には、窯を焚く時期を「ずらす(延期する)」必要があります。
当然、窯の大きさ(容積)によって、窯詰めする作品の量は異なります。
・ 窯の容積に対し、作品の量が少ない場合:
a) 燃料費(又は電気代)が無駄に成ります。作品の量によって燃料費が変わる事は少ない
です。また焼成時間もほとんど同じ程度です。
b) 本焼きの場合、最高温度が所定の温度に到達しない場合がある。
少ない量の時は、低い温度では急速に温度上昇するが、高い温度では上昇が鈍り、燃料を
供給しても、ある温度で上昇がストップ、又は極端に遅くなる現象が起こる場合があります。
1150~1200℃程度でストップし易いです。又は、1200℃以上では極端に鈍ります。
即ち、蓄熱する作品が少ないと、熱は窯の中に留まらずに外に放熱されるだけで、供給した
燃料(又は電気)は温度上昇に寄与しません。
・ 量が多過ぎる場合。
c) 素焼きの場合には、量が多くてもさほど問題に成りません。若干焼成時間が長く、燃料費
がやや増えるだけです。 素焼きの場合には、許容できる温度範囲が700~800℃と
広い為、焼成温度にムラが出来ても、その後の作業に影響しません。
d) 本焼きの場合には、作品が多過ぎると、温度上昇は遅くなり、最悪所定の温度に成り
ません。また、「焼きムラ」が起こる場合があります。
本焼きは温度範囲が狭く、所定の温度の±10℃以内に抑えたいです。その為には、
イ) 熱や炎が作品にムラ無く行き渡る必要があります。炎や熱は作品の間を通りますので
少なくとも、指一本程度の隙間を作る必要があります。尚、高温に成るに従い、作品が
収縮しますので、この隙間は広がります。
ロ) 燃料を使う窯では、倒炎式の窯が大部分です。即ち、窯の天井に達した炎は作品の
隙間と棚板の間を通り、窯の最下部に達した後、煙道を通り煙突から外に抜けて行き
ます。 この流れを阻害する要因があれば、温度は希望通りには上昇しません。
ハ) 天井部分までギッシリ窯詰めせず、少なくとも8~15cm程度の隙間が必要です。
但し、鶴首の様に細長い作品であれば、その先端が天井近くにあっても問題有りません
ニ) 電気を使う窯では炎が出ません。電熱線からの放射熱(輻射熱)により、作品が暖め
られ、次第にその周辺の空気も暖められます。それ故、作品の影になる部分は、若干
温度上昇が鈍くなります。作品が多い事は作品間の隙間を小さくする事に成りますので
窯に入るからと言って、詰め込み過ぎない事です。
) 作品の大きさや、釉の種類毎に作品をまとめる。
以下次回に続きます。