美容院

美容院に行かなくなってから、もう何年なるでしょうか。
４０年？　４５年？
美容院に行った時の、あの匂いに耐えられないのです。

高校を卒業するまでは、髪を長く伸ばしていましたが、
就職するにあたり、髪を短くしてパーマをかけました。
おかしなもので、就職するのなら当たり前…そんな時代でした。

ところが、美容院の匂いに耐えられなくなった私は
肩までに伸ばした髪を、お仕事時間には後ろで束ねることにしました。
それですと、髪を気にすることはありません。

長くなった髪は、自分で少しずつカットしながら、今に至ります。

そういえば、主人と結婚してから一度だけ、
着物の着付けをしていただくために、美容院に行ったことがありました。
外国人の方々とのお茶会があり、着物で…ということでした。
貸衣装は、主人と相談して決めたのですが、
とても好きな色合いの着物があって、嬉しかったことを思い出しています。

その時、着付けと髪のセットをしてもらいましたが、
美容師さんに「お化粧はどうしましょうか？」と聞かれ
「どうすればいいでしょうか？」と言ってしまいました。
日頃から、お化粧なんてほとんどしていませんでしたので
着物を着るとお化粧をしなければいけないかしら？と思ったのです。

美容師さんは、せっかくの着物ですから…と、
口紅を薄っすらと塗ってくださいました。
あとで、主人にそんなことを話しましたら、
口紅を塗っていたことは気付かなかったそうです。
それほどの薄紅だったのですね。

ただ、それこそせっかく着物を着たのだから…と
写真館に行って、二人の写真を撮ってもらいました。
結婚式をしなかった私たちの、記念すべき写真となりました。

着物を着ることは、もうないでしょうから、
これからも美容院には行くこともないと思います。
明日、ちょっと伸びている前髪を少しカットすることにしましょう。