ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「このただれ切った日本の方向を変える力は、人々の意志と良心的医師たちの活動に委ねられる」広河隆一

2012年09月29日 | 日本とわたし
『DAYSから視る日々』に掲載されていた、広河隆一さんの言葉を紹介します。
わたしの思いをすべて、言葉にしてくださっていました。

↓以下、転載はじめ

最初の小児甲状腺がんの症例の報に接して(広河隆一より)

本人もご家族も、どんな思いで、医師の宣告を受けたのだろうか、どれほどの不安と、恐怖にさいなまれているのだろうか。
せめて医師は、患者の身になって、告知したのだろうか。
それとも、事実は学者のデータ管理庫の中にあって、本人家族には、まだ告げていないのだろうか。

チェルノブイリでは、検査の結果は、親に伝えられた。
しかし、多くの親は、検査結果を子どもに告げることができなかった。
「がん」という言葉は、大人でさえ耐えられないほどなのに、子どもには重すぎる。 
しかし、子どもが、自分の診断書を見つけて、知ってしまうこともあった。
子どもが知った後、泣き明かす母親を、慰める子どももいた。
子どもに襲いかかった事実に、父親が耐えられず、アル中になったり、離婚するケースが相次いだ。
母親と子どもが、残されたケースも多い。

今回、検査を受けたのは、18歳以下の8万人だという。
その子どもたちの多くは、「自分ももしかしたら」と考えているかもしれない。
次の検査で、自分が宣告されるかもしれない、と考えている子どもも多いに違いない。

権威を振りかざす医師や、医師会や、自治体や政府が、「安全」を説くのが自分の役割だと考え、
子どもが、放射性ヨウ素で被曝するのを、予防する仕事を放棄した。
安定ヨウ素剤を与えると、不安をあおってしまい、自分たちが、それまで安全だと言ってきたことが、嘘だということになってしまう。
事故があり、ベントが決定され、被曝の危険性が高まることが分かっていても、子どもや妊婦のために、当然やらなければならないことをやらなかった。

原発事故が起きたら、すぐに何をしなければならなかったかは、専門家でなくても、誰でも知っている。
安定ヨウ素剤を飲むことと、妊婦、子どもの避難である。
それを、権威者はやらなかっただけでなく、むしろ、妨害したケースさえある。
ある医師は、安定ヨウ素剤を、大量に注文した。
しかしそれは、医師会にストップされた。
これら医学界の犯罪は、メディアの犯罪調査とともに、まだ手に付けられていない。

この程度の被曝では、安定ヨウ素剤が必要ないと、彼らは考えた。
しかし、彼らも含め、すべての関係者は、どれほどの放射能が放出されるか、知らなかった。
医師も政府も東電も、分からなかった。
そして、安定ヨウ素剤は、放射能が来る前に、呑まなければ効果がない。
結果的に、多量の放射性ヨウ素が、襲ったと分かってからでは、すべて後の祭りなのだ。
そうしたことが起こらないように、事前に服用するのが、安定ヨウ素剤なのである。
そんなことを知らない医学者はいない。
だから、医学者たちが今回行ったことは、判断の間違いというより、犯罪である。

発表された、子どもの甲状腺がん発症は、放射能のせいではない、と医学の権威者は言う。
「なぜなら、チェルノブイリでは、事故から3-4年後になって、病気が急増したからだ」という。
しかし、実際には、チェルノブイリの事故の4年後に、日本の医学者たちは、小児甲状腺がんの多発を、認めなかったではないか。
「広島や長崎では、小児甲状腺ガンは、十年以上たってから現れたから、これほど早く発症するはずがない」と、あの時彼らは言った。
彼らは、自分たちの知っている知識や経験を超える、「万が一」という言葉を嫌う。
「万が一」に備えることを、恐れる。
自分たちの限界を認めたら、学会のヒエラルキーは崩壊する。

しかし、親が子どもを思う時、何よりも、「万が一」で行動するものなのだ。
そして、チェルノブイリ事故でも、スリーマイル事故でも、母親たちの懸念のほうが、医学者や政府や電力会社の判断よりも、正しかったことが証明されている。
 
今回の、小児甲状腺がんの発症は、時期が早すぎるため、放射能とは関係ない、つまり、原発事故とは関係ないと、医学者たちは言う。
そして、8万人に一人という数字は、ふつうでもありうる数字だと言う。
しかし、これまで彼らは、小児甲状腺がんは、100万人に一人しか現れないと、繰り返し発言していたのではなかったか。
8万人に1人、発症するのが普通だというなら、福島県の子どもの人口30万人余に対して、
これまで毎年、平均して3-4人の小児甲状腺がんが現れていた、とでもいうのか。
そんなデータは、あるはずがない。
 
この、ただれ切った日本の方向を変える力は、人々の意志と、良心的医師たちの活動にゆだねられる。
そして、「万が一」にしろ、被害者がこれ以上増えないようにすることに、すべての力を結集すべきで、取り組むべきである。
子どもたちを守るために。

福島のこども支援プロジェクト「沖縄・球美の里」代表
DAYS JAPAN 編集長
広河隆一

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