秋晴れの肌寒い午後の、マンハッタンに向かう乗り換え駅。
あまりに空が青かったので写真を撮りました。
青空以外は殺伐とした風景です。
マンハッタンに約30分で行ける電車駅は、うちから徒歩5分のところにあります。
とても便利なのだけど、如何せん、電車の数が少な過ぎます。
平日の通勤時間帯だと辛うじて1時間に2本、それ以外は1時間に1本。
週末は2時間ごとに1本で、夜遅くなるとそれも怪しくなります。
さらに週末だけは、ちょうど中間にある駅で乗り換えなければなりません。
日本でいうと、東京駅から電車で30分以内(こちらの電車はタラタラ走るので、多分日本だと20分以内)のところにある郊外の町の電車事情としては、かなり悲惨です。
なので日本に行くと毎回、電車の本数や停止する位置の徹底や乗り継ぎの便利さや案内の分かり易さに感動してしまいます。
さて、その電車に乗って向かったのは、指揮者デビューとなる演奏会が開かれるカーネギーのザンケルホール。
わたしが指揮を担当することになった曲はオペラ曲で、ソプラノとメゾソプラノの二人の歌手とは、1年がかりでリハーサルを繰り返してきました。
役員会議の際に、今まで指揮を一手に引き受けてきたアルベルトが、「副指揮者を募集したい」と言ったのを聞いた瞬間、「自分はできると思う!」と立候補してしまったわたし…。
高校でブラスバンド部に入部し、必死になってクラリネットの練習を始めてからずっと、いつか自分も指揮をしてみたいと夢見ていたので(長っ!)、その勢いったらありません。
その場にいたみんなに、「おいおい、わかったから落ち着いて落ち着いて」となだめられたほどでした。
でも、やりたいからと言ってできるかどうかわからない、というみんなの疑念は当たり前のことで、
だからなかなか現場で振らせてもらうことができず、何回も模擬リハーサルのような練習に立ち合うだけ…心の中は焦りとイライラが募るばかりでした。
一体いつになったらフルオーケストラと練習されてもらえるのだろうとヤキモキしながら、歌手たちとはピアノ伴奏で練習を続けていたのですが、
結局9月の末に2時間、そして10月で合計2時間、本番の直前に40分という時間をもらっただけで、舞台に立たねばなりませんでした。
もっと強気で、さっさと振らせろ!と言えばよかったのかと思ったり、いやいや、それは大人げないんじゃないかと思ったり、そんなふうに心の中ではいろんな思いが右に左に揺れていました。
今回のオーケストラだけの演奏会は、11年前にACMAが始まって以来、初めての企画だったので、発案者のアルベルトにとっても先がなかなか見えないものだったと思います。
だから現場ではたくさんの混乱が起きました。
本番1ヶ月前まで、オーケストラの楽器構成と人数が決まらなくて、なので曲目が変更されたりカットされたりが続き、まさかわたしが担当している曲が却下、なんてことにならないだろうなと心配したりもしました(実は一度、曲の変更があったので)。
それに加え、元々この曲は初心者向きでは全くない、「一体誰が、どうして、こんな曲をあなたにやれと言ったのか」と、指揮の先生(オペラ曲の指揮では名が知られていて、各国のオーケストラの指揮をしている)に苦笑いされたほどややこしいもので、
まあ良い方に考えると、しっかりと学び、練習を積み重ねることができたと言えるのですが、本音を言うと学んでいる間中、ヒヤヒヤしていたのでした。
ということで、今年は年明けからずっと、作曲の仕上げと演奏の練習、歌手たちとの合わせ練習をコツコツやりながら、春過ぎからは指揮の勉強を本格的に始めるという、
なのにオーケストラと顔を合わせて指揮ができたのが、本番の約1ヶ月半前だったという、精神的にずいぶんと葛藤があった年になりました。
けれども、やっぱり指揮は面白い!
大変だけども楽しい!
一回の練習で滝のような汗をかき、顔は真っ赤になってしまうのですが、いろんな楽器、いろんな人たちと一緒に、音の織物を仕上げていくその過程は、やっぱりすごく興奮します。
このワクワクドキドキを経験してしまったらもうやめられません。
幸いにも、たくさんのオーケストラのメンバーから、とても楽しかった、よく引っ張ってくれたという言葉をかけてもらい、多分来年もクビにならずに済むのではないかと思うのですが…。
60の手習となった指揮法。
作曲をして聞いてもらうという夢と、オーケストラの指揮をしたいという夢が叶った2019年。
最後の仕上げは12月の生徒の発表会です。
まだ少し疲れが残っていますが、生徒たちが自信を持って楽しく弾けるように、最大限支えていきたいと思います。
10月の演奏会で弾いた自作曲『OKINAWA』の演奏もするので、その練習もしなければなりません。
あともう一つ、その『OKINAWA』を本格的に録音をすることになったので、それにももう一踏ん張り。
音楽三昧な毎日はまだまだ続きます。
音楽三昧な毎日を続けられるのも、いろんな人に支えられ、助けられてこそ。
本当にありがたいなあと思います。