ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

とても暑い日の猫のおはなし

2016年08月14日 | ひとりごと


外に出て遊びたい海は、5分でも外にいると頭がクラクラするような暑い日でも、ハーネスを嫌がらずに付けて、意気揚々と、勝手口から裏庭への階段を降りて行く。
近所では多分、変人と変猫がいると、評判になっているにちがいない。

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猫を見たら必ず、「あぁ嫌らしい!」と叫んでいた母に、13歳まで育てられたわたしは、母と生き別れてからもずっと、猫が大の苦手だった。
そのまま大人になり、結婚をし、ふたりの息子を出産し、離婚をし、子連れ再婚をした後もまだ、猫は苦手だったけど、
とりあえず道端でハタと出会っても、回り道をしたり、見ないふりをするほどではなくなったし、
友人が可愛がっている猫ならば、恐々撫でることぐらいはできるようになっていた。

そんなある日のこと、小学二年生だった次男くんが、通学路の途中にあった公園で捨てられていた、小さな小さな子猫を見つけ、それを家に持ち帰ってしまった。
玄関に入るなり、
「あのさ、絶対に見つけるから、うちはあかんって知ってるから、飼うてくれる子見つけるから、絶対今日だけしか頼まへんから」と言いながら、箱の中身をわたしに見せた。

うわっ!猫や!それも一番ヤバい黒猫っ!
母はいつも、猫の中でも黒猫は一番嫌らしい、と言っていたのだ。

頭の中がかなり乱れたが、ダンボールの箱の隅っこで丸くなっているその小さな生き物と、
そのすぐ横で、瞳をお願い星でキラキラさせて、わたしの言葉を待っている次男くんの顔を見たら、
あかんあかん、もう一度公園に戻してきなさいなんて、とてもじゃないが言えなかった。

でも、その時住んでいた借家の、前の住人が飼っていた猫が、畳や柱で盛大に爪研ぎしていたせいで、
わたしたちが入居する前に、柱もふすまも障子戸も畳も、すべて新品に換えなければならなかったので、
大家さんはきっと、猫にはあまり良い印象を持っていないはず…でも一晩だけ、一晩だけだから。

その日のレッスンを済ませ、夕飯の支度をし、慌てて近所のペットショップに走って行った。
「あのー、今夜一晩だけなんですけど、猫を飼うんです」
「はあ…」
「で、初めてなので、いったい何をどう準備したらいいのか全くわからないので、教えてもらえませんか?」
「一晩だけ、といっても、やはりトイレと食べ物は必要だと思いますが…」
「トイレ…?」
「まあ、小さな箱に、猫砂をある程度の深さまで敷いたものですね」
「猫砂…」
その時点でわたしは、かなり後悔し始めていた。
なんだそりゃ?
「その、猫砂ってのは、例えばうちの、極小の砂場があるんですけど、その砂でもいいんですか?」
「そうですねー…なんとも言えないんですが、猫の排泄物は臭いがかなり強いので…」
「じゃあ、とりあえず買いますけど、訓練とかいいんですか?」
「大抵の場合、大丈夫です」
ほんまかいな?
「それで、生後どれぐらいの猫ちゃんですか?」
「う〜ん…それは全くわかりません。息子が今日拾ってきた猫なので」
「大きさは?」
「これぐらいでした」
と、わたしは両手の指で輪っかを作った。
「多分それだと、2週間ぐらいかな…」
そう言って、その店員さんは、食べ物の棚に行き、2食分の缶詰と赤ちゃん用のミルクを選んで見せてくれた。
そして、一番小さなサイズの猫砂を、
「これでも一晩には多過ぎますけど、新しい飼い主さんが見つかったら渡してあげられますし」と、ちょっと申し訳なさそうな顔をして、選んでくれた。

その重たい買い物袋を運びながら、わたしはまだ、このわたしが猫の世話をするなんて…と、独りごちていた。

夜になって、家に帰ってきた夫は、「一晩だけやから」を連呼しながら、あれこれ世話をするわたしを見て、
ああ、こりゃ絶対に一晩では済まないな、と思った、いや、確信したのだそうだ。
そしてそれは、とても正しかった。
初代黒猫キキと1年(彼は突如、わたしにさよならを言って家出した)、二代目三毛猫ゾーイと1年(初めて玄関から脱出して車に轢かれた)、三代目三毛猫ショーティと16年、
そして今、黒猫空(クウ)とシマ猫海(カイ)が、一昨年の冬から一緒に暮らしてくれている。
もう猫がいない毎日なんて考えられないのだから、人間の好き嫌いなんてどうにでもなるもんなんだなと、しみじみ思う。

というわけで、よその人には全くど〜でもいい猫の写真ですが、久しぶりに撮ったので。

暑さにうだる空と海。なぜか寝姿はシンクロしている。




我が家ではゲジチュウと呼ばれているゲジゲジが、暑くてジメジメした日になると、あちこちから姿を現わす。
海のフナムシに似ていて、なにやら刺されるとかなり痛いらしい。

それをじぃ〜っと目で追いかける海。






暑くなった途端に、メキメキという音が聞こえてきそうなぐらいに急にでっかくなった苦瓜。


どれほどデカいかというと…ごはん茶碗がちっちゃく見えるぐらい。


種もきれいに育ってた。


沖縄も顔負けの暑さなので、豚肉と一緒に炒めてたっぷりいただいた。