ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「安倍さん、もう国民をだますのはよそうではないか」by深草徹弁護士

2014年06月11日 | 日本とわたし
集団的自衛権 協議前に閣議決定案 「今国会中」首相が指示
【東京新聞・朝刊】2014年6月11日



安倍晋三首相は10日、官邸に自民党の高村正彦副総裁を呼び、
武力で他国を守る集団的自衛権の行使を容認する、解釈改憲の閣議決定を、22日までの今国会中に行うため、
公明党との協議をまとめるように指示
した。

与党は、10日の協議で、集団的自衛権の実質的な議論に入ったばかりなのに、
9日には政府が、自民、公明両党幹部に、閣議決定案の非公式な提示もしていた。 
 
高村氏は会談後、記者団に、
今国会中に、集団的自衛権という言葉も入れて、自公の合意をできるよう、一層努力してほしいということだった。
時間をかけずに結論を出してほしい、というのが首相の強い希望
」と述べた。
 
自民、公明両党は10日、5回目の与党協議を行った。
政府が、集団的自衛権の行使事例に分類する自衛隊の米艦防護に関し、
公明党は、「集団的自衛権ではなく、個別的自衛権などでおおむね対応できる」と主張し、
行使を認めたい自民党との溝は埋まらなかった。
 
政府が9日、与党に示した閣議決定案は、集団的自衛権は、現憲法でも、限定的なら行使は容認されると読める内容
閣議決定後、必要な法整備を進める方針も示していたため、公明党側は、受け入れを拒否した。
 
首相は、閣議決定に関し、「時期ありきではない」と、協議を見守る考えを示してきたが、自ら、早期の閣議決定に言及した。
本格協議の前に閣議決定案を示す政権の姿勢に、公明党幹部は「論外だ」と反発した。
 
首相は10日夜、公明党の太田昭宏国土交通相らと、都内の料理店で会食した。


上記の東京新聞の記事を読んで、いよいよあからさまなゴリ押しをまた始めたな、と思いながら、他の方々の見解を読ませていただきました。
中でもこの、深草弁護士の見解が、非常に分かりやすかったので、ここで紹介させていただきます。

↓以下、転載はじめ
文字の強調などは、わたしの考えで行いました。

これはおかしな話だ

「安全保障法制整備に関する与党協議会」に関する話だが、おかしなことがある。

本日(2014年6月10日付)「朝日」紙朝刊で、大要、次のように報じられた。

「政府は、『自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な、自衛の措置を認める』という、閣議決定案を準備している。
これは、1972年に、田中内閣が示した見解の一部を、採用したものだ」


「これについて、安倍首相は、9日の参院決算委員会で、
『この中に、個別的自衛権は入るが、集団的自衛権は丸ごと入らない、ということだった。
しかし、果たしてそれがすべて入らないのかについて、研究している』と語った」



これを読むと、もともと反対の人は「けしからんな」、もともと賛成の人は「そうか」で終わってしまうだろうし、
さらにもともとよくわからない人はますますわからなくなってしまうのではなかろうか。

「いや、私はよくわかったよ」という人、あなたはよほどの精通者だ。


その後、共同通信が、14時59分に、次のニュースをネット上で配信した。

内閣法制局が、集団的自衛権行使を限定的に認めて、憲法解釈の変更を提起する閣議決定の原案を、了承していたことが10日、分かった。

安倍晋三首相が、今国会中の解釈変更を目指していることを踏まえ、
『憲法の番人』として政府内で歯止め役を担ってきた法制局が、行使容認への方針転換に踏み出す
政府関係者が明らかにした。
 
閣議決定原案は、集団的自衛権行使を『わが国の存立を全うするために必要な自衛の措置』として容認する内容
9日に、政府側が、自公両党幹部に非公式提示した」



これを読んで、ようやくもやもやが解消した。
どうやら、
礒崎陽輔安全保障問題担当首相補佐官をはじめとする官邸サイドと、内閣法制局との間で協議して、
「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を認める」ことにより、
集団的自衛権行使にも踏み込むことができるようにする、との閣議決定案を練り上げ、
自民、公明両党に非公式に提示した、
安倍首相は、これに手ごたえを感じている、こういうことのようだ。


そういうことがわかると、
安倍首相が、今国会中に閣議決定をする、と突然表明し、与党協議会を急がせたこと
及び、
集団的自衛権行使8事例について、かたや、集団的自衛権行使を認めなければ対応できないから、集団的自衛権行使を認めるべしとしたこと(これはトートロジーで結論だけしか述べていない)
こなた、
いや、個別自衛権の範疇で対応できる余地がないか検討するべきだなどと、世にも不可思議な議論をしている(これの正しい答えは、集団的自衛権行使は認められない、である)こと
これらの裏も読めてくるようだ。

「安全保障法制整備に関する与党協議会与党協議会は、猿芝居、茶番だ


さて、伝えられる閣議決定案、1972年の、田中内閣の示した見解の一部をパクッてきたとのことだが、
参考までに、田中内閣見解の全文を引用してみよう。

憲法は、第9条において、同条に、いわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているが、
前文において、『全世界の国民が・・・・平和のうちに生存する権利を有する』ことを確認し、
また、第13条において、『生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については・・・・国政の上で、最大の尊重を必要とする』旨を定めていることからも、
わが国みずからの存立を全うし、国民が平和のうちに生存することまでも放棄していないことは明らかであって、
自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な、自衛の措置をとることを禁じているとはとうてい解されない

しかしながら、だからといって、平和主義をその基本原則とする憲法が、右にいう自衛のための措置を、無制限に認めているとは解されないのであって、
それは、あくまで外国の武力攻撃によって、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が、根底からくつがえされるという急迫、不正の事態に対処し、
国民の、これらの権利を守るための止むを得ない措置として、はじめて容認されるのであるから、
その措置は、右の事態を排除するためとられるべき、必要最小限度の範囲にとどまるべきものである。
そうだとすれば、わが憲法の下で、武力行使をすることが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られるのであって、
したがって、
他国に加えられた武力攻撃を阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない

(1972年10月14日参議院決算委員会提出資料)
 

伝えられる閣議決定案なるものを作成した人たちは、アンダーラインの箇所にいたく感動したようだが、これは単なる枕詞、
重要な部分は、太字で示した部分だ。
これこそまさしく確立し、定着している「自衛権行使三要件」、つまり自衛権の定義と要件なのだ。

安倍さん、もう国民をだますのはよそうではないか