ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

What a nightmare!!

2012年06月11日 | お家狂想曲
3年前に引っ越してきたこの家は、百歳を超えております。
親から遺産として引き継いだ息子&娘達によって売られたので、このまんまで良かったら買ってね、というものでした。
このまんま(as is)というのは、もちろんだから価格も安い(我々にとってはちっとも安くはなかった……)のですが、
まあ、当然、問題があっちゃこっちゃに、宝石のように散りばめられていて(宝石やったらどんだけ嬉しいか……)、
おぉ~いこっちこっちと、我々の気を引きた気にキラキラするのを、適当に見過ごしたり無視したり、
そりゃまあ、余裕があればなんとでもできるでしょうが、そんなことは全く望めず、
ぼちぼちと、身の丈に合った暮らしを続けているわけです。

ジャンクまみれのジャングル庭はまあ、見慣れたからいいとして、
一階のトイレは床が傾いていて、便座に座ると、緩やかな滑り台に座ってるみたいに足を踏ん張らないといけないし、
いろんな物を入れてある鏡つきの棚は、いつかきっと、自分の方に倒れてくるっぽいし、
その上にある4つの電球の照明器具は、コードが途中でブチ切れていて、全く使い物にならないし、
二階の風呂場の床はマジでボロボロで、剥がれて下の真っ黒な板が見えていて、
極めつけは、浴槽の排水に問題があって、分速10ccぐらいしか流れ落ちてくれなくて、
一旦お風呂に入ったら、忘れた頃に戻って、掃除しなければならないのでした。

そんなこともあって、引っ越してから3年も経つのに、両手で数えられるぐらいしかお風呂に入ってなかったのですが、
最近になって、なぜか急に、ゆっくり湯船に浸かりたい~!!という欲求がムラムラとわいてきて、
けれども、そんなことを言っても無駄だと思い、いつか宝くじでも当たったら……などと諦めていました。

で……、

「絶対アメリカなんか行くのイヤやから!」と、頑固に言い続けていた母が、
最近、特に、義父との中が険悪になってきてたからか、いきなり、「わたし、行くわ!」と言い出したのでした。
しかも独りで……。マジか?!
もちろん、来てもらえるのは、とても嬉しいので大歓迎なんですが、
77才になる前後から、あちこち不調を訴えていたので、大丈夫かなと、少し心配でもあります。
とにかく、我々がこちらに越してから、たったの1回しか来てもらってない(11年も前)ので、
しかも独りということで、うんと楽しい時間を過ごせるように、無理の無い計画を立てようと思っています。

そこで……、

お風呂が使えんかったらあかんやん!ということになり、
急きょ、全く予定していなかった、浴槽の排水の改善工事をお願いすることにしました。
実は、これを一番願ってたのはわたしなので、内心めちゃくちゃ嬉しかったのでした。

母の来訪がまだ決まっていなかった時、いつも水回りのことをお願いしてるイジーに来てもらい、修理の予算を尋ねてみました。
「う~ん、前回も同じことを言ったと思うけど、この排水は百年前のもので、すごくミステリーなんだよね」
最初っから、あんまり気乗りがしない様子……。
とりあえず、浴槽に隣接してる棚の中をぶち抜き、機械を使って、パイプの詰まりを取り除こうとしたのですが……挫折……。
風呂場から直すのは不可能、という結論が出ました。
「多分、一階の台所の天井をぶち抜かないと無理だと思う」
「どれぐらいかかるの?」と旦那。
「う~ん、安くて500ドル、高くて900ドル、かな?でも、ボクは空けた穴の補修もするから、全部込みだけどね」

高くて900ドルは痛い!かなり痛い!
旦那に恐る恐る聞いてみると、「費用よりも、彼の態度が気になる」とブツブツ。
「どしたん?」
なにを試してみてもうまくいかなかった彼が、多分独りごちた「Such a nightmare!(悪夢のようだ)」という言葉が引っかかったようです。
まあ、わたしとしても、900ドルは出せないと思ったので、またお風呂が遠のいたな~とあきらめていたのですが……。

今回は、旦那の患者さんから紹介してもらったリチャードに、予算を出してもらいました。
すると、「多分、浴槽の反対部分の、二階の寝室の壁の裏に、排水パイプがあると思うから、そこをチョイと工事したら大丈夫だと思うよ」と、全く新しいアイディアが!
しかも、超~簡単そうだし、予算も300ドル弱?!よっしゃ~!!
「じゃ、今度の月曜の朝に来るから。まうみ、昼にはお風呂に入れるよぉ~」「きゃ~!!」

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とりあえず、第一番目の可能性として、元々の排水パイプを点検中のふたり。


で、やっぱりあかん、ということで、第二番目のアイディア、旦那の寝室の壁に穴を空けることに。
 

ガリガリと大胆に空けるオリバー。彼はこういう作業のエキスパートさんで、リチャードからドクターと呼ばれてました。


まさにぴったしカンカンで、パイプのド真ん前?!


二人で協力して、まずは古いパイプを外す。


スネークと呼ばれる、排水パイプの内部を掃除する器具を使って、ギュルギュルと穴通しをする。


水がスウッと引いていくはずが……、


「どれどれ、今後はボクがやってみる」とリチャード。


全然減っていかない……。


「ごめんね、第三番目のアイディアしかないみたい」と、めちゃくちゃ済まなさそうに言うリチャード。
「いえいえ、気にしない気にしない!とことんやってちょうだい」とわたし(けれども、心の中では数字が増えていくのにドキドキ)

第三番目のアイディアは……イジーと同じく、台所のここ(棚の左の角)に、穴を空けてみようというもの。


食器棚に天井の破片が入らないようにカバーして、


空きました。


ふむふむ、中はこんなになってるのか……百年の歴史の匂いが降りてきます。


でも、残念ながら、本命のパイプは見つからなくて、食器棚の天井をぶち抜くことに。
食器棚の中から全部取り出して、


食器棚の天井裏には、こんな渋い銅板が貼られていました。


あぁ~~ここでもないっ!!


空いた穴達が哀し過ぎる!!


で、とうとうこんな所まで……ピアノの部屋です。


できるだけ汚れないようにと、いろんな所に布を被せ、作業開始!


いろいろやってます。


ここが最後の砦。絶対にお風呂に入れるようにしてあげるからと、意地を見せる男ふたり。


信じられないけど、二階の浴槽がこんな所にあるのです……。


古い排水口を取り外し、


なんとも怪し気な、どちらかというとホラーな、オリバーの指。親指、怪我してるし……。
これは、一階のピアノの部屋の天井裏から手を伸ばし、指で排水口の掃除をしているの図。


結局、この家の排水システムは、本当に複雑で、しかも、すごく狭い所に配管されていて、こんなグネグネのパイプにしか替えられなかったのでした。


最後の点検をするドクターオリバー。


はい、チーズ。さすがアメリカン。反応が早い!


お風呂は、すごい勢い、とまではいかないものの、ちゃんと排水してくれるようになりました!ばんざ~い!

職人の道具はいつ見てもかっこいい!


思っていた三倍以上の時間がかかり、かなりお疲れのリチャード。


彼もボソボソつぶやいてました。「Such a nightmare……」
多分、うちみたいな家は、配管工さんにとっては悪夢のような家なんでしょう。
だからイジーは正しかったわけです。

旦那のギターを見つけて、「ちょっと弾かせて」と台所に戻ってきたリチャード。


さて、わたしはというと、家に突然空いた穴の周りの掃除におおわらわ。
こんなんがもう、あっちこっちに、びっくりするぐらい落ちています。
もちろん、リチャードは一所懸命掃除してくれていたのですが、まるで追いつきません。


穴の奥が、すっかり乾燥するまで、少なくとも3日は塞がないように。
マジっすか?!
明日から家でレッスンするんですが……。
ま、生徒達も、なかなか見れないもんを見れるってことで、楽しいかも……。
今や、二階の寝室の旦那と、一階のピアノの部屋に居ながらにして、普通の会話ができるようになりました!
いやはや、人生ってやっぱおもろいかも!(支払いはかなり痛かったけど……)