リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

なるほど わかりました

2019-04-07 05:43:01 | オヤジの日記

人間の自然治癒力。

 

きっかけは、娘の有給だった。

娘の通う会社は、有給を消化することを推奨していた。だから、娘は、計画を立てて平日に有給をとり、金沢へ一泊旅行に行って、有給を消化していた。

娘の大親友のミーちゃんも、それに合わせて有給を取り、2人仲良く金沢で過ごした。

 

しかし、今回は1日だけ。しかも月曜日という中途半端さだ。

疑問に思って聞いてみたら、「おまえは可愛い娘と一緒に、1日を過ごしたいとは思わないのか」と言われた。

ワンワン。

「吉祥寺と立川、どっちがいい?」

近いから、立川だね。

「じゃあ、吉祥寺」

ニャーニャー。

 

娘のお友だちの誕生日が近いので、誕生日プレゼントを買うため、ついてこいということだ。

1人は、大学時代の同級生フキちゃん。

もう1人は、会社の同僚のオドリさん。幼い頃から日本舞踊をしていたことから、まわりがそう呼んでいるらしい。年は娘より2つ上だという。

フキちゃんには、23を過ぎて初めて化粧を覚えたこともあって、口紅を選んだ。私には、娘と店員さんとのやりとりが、すべてハリーポッターの呪文に聞こえた。なぜだろう。

オドリさんには、コウペンちゃんのグッズを3点選んだ。オドリさんが、とても気に入っているキャラクターだ。ぬいぐるみと弁当ボックス、箸。

娘はコウペンちゃんも好きだが、ネコペンちゃんも好きで、よくLINEのスタンプを送ってくる。

ここまで読んだ方の中で、「こいつは何を言っているのだ! 頭にハエが混入したか。大丈夫か!」と思った方が、おられるかもしれない。

しかし、安心してください。これが平常運転です。

 

買い物が終わって、昼メシ。「ラーメン食おうぜ」

娘は、最近ラーメンが気に入っていた。仕事帰りに同僚と一緒に新宿のラーメン屋に行くのが楽しみだという。

娘曰く、「行列のできるラーメン屋は、やはり美味い。行列のできないラーメン屋は、味が残念だ。ラーメンに関しては、『行列』が選ぶポイントの1つだよ」だそうです。

私は、ラーメン店のラーメンに関しては、否定的だ。なんといっても価格が高い。最近は屋台でも千円近くするところもある。ため息しか出ない。

高級ラーメンが好きな娘だが、私と意見が一致するところもある。

結局、日清ラ王のカップラーメンが一番美味い、というところだ。娘が休日前の夜中、仕事中の私のところに、ラ王を2つ持ってやってくることがある。「食べようぜ」

異論はない。

カップ麺に自家製のチャーシューを五枚乗せ、煮卵と大量の刻みねぎを盛って食う。

「やっぱり、これだよな。これに勝るものはないよな!」

私もそう思う。

 

しかし、今回は、吉祥寺駅から徒歩3分程度のご立派なラーメン屋に入った。

1時を過ぎていたが、行列ができていた。「うまいんだぜ、ここ!」と娘が興奮して、指をポキポキと鳴らした。

前に並んだオタクっぽい男の人が、違う生物を見るような目で、娘を凝視した。

しかし、それを無視して、娘は「待ち遠しいぜ!」と言いながら、今度は、首をゴキッと鳴らした。私もついでにゴキッ。前に並んだ男の人は下を向いて首を振った。ホラー映画を見た気分だったのかもしれない。

 

ラーメンは、高いだけあって、美味かった。トンコツ、魚介系の醤油ラーメンと言うのだろうか。私には濃く感じられたのだが、娘は「これぞ、ラーメンの王道! 麺も100点!」と興奮していた。

その興奮のまま、「さあ、次は猫カフェだ!」。

猫カフェ? 我が家にも猫がいるではないか。猫カフェに行く必要なんかあるのか、と一応抵抗してみた。

実は、娘が月に一回は猫カフェに行っているのを私は知っていた。彼氏のアキツ君が猫好きなので、デートのときに行っているというのだ。

一月に一回行っているんだから、いま行かなくてもいいではないか。

「父ちゃんと行きたいの!」と腕を強力に引っ張られた。

ニャー。

 

初めての猫カフェ。

言っておきますが、私は、我が家のブス猫セキトリひとすじでございます。ブス猫愛に満ちております。

どんなに、可愛い猫でも、私の心が動かされることはございません。

 

アッラー! みんな可愛いじゃん!

 

いえいえ、私にはブス猫がいる。浮気などできないぜよ。

しかし、向こうから寄ってくるのだ。しかも膝に頭をスリスリしてくるし。

これ以上書くと、ブス猫愛が揺らいでしまいそうになるので、この先は割愛。

 

終わって、猫カフェの入ったビルの階段を降りていた。

普通に降りていった。しかし、あと3段というところで、突然のめまい。

足を踏み外してしまった。3段だから、まだよかった。私は咄嗟に手で頭をかばい、頭を打つことだけは回避しようとした。しかし、その結果、他がおろそかになった。

脛を階段の角にぶつけてしまったのだ。

痛ったいわ。

立ち上がることはできたが、痛い。横を見ると顔面蒼白の娘が、派手に私の手から離れていった私のバッグを拾っているところだった。

「だ・・・・・だいじょうぶ・・か」

だ、だいじょうぶだあ。

情けないことに、痰が絡んだ声しか出せなかった。

私は、大丈夫なところを見せようと、さあ、次は、どこに連れていってくれるんだい、と強がった。

 

「医者だ」と娘が言った。

 

医者、なんで?

「上着のダウンが裂けている。ジーパンにも血が滲んでいる。救急車、呼ぶぞ」

いや、お父さんは、この程度のことで、救急車を呼ぶような可愛い子に生まれた覚えはない。俺は、King & Princeとは、違うんだ。(覚えたての名前を言ってみた)

「タクシーを呼ぶぞ」

いや、お父さんは、この程度のことでタクシーを呼ぶほど軟弱な子に育った覚えはない。俺は、キング・・・。

「では、吉祥寺駅まで、歩けるか? 医者は家から近い方がいいから、歩けるなら、電車で国立まで行こう」

歩けるとも。

痛かったが、歩けないことはなかった。駅まで150メートル。歩くことはできた。

だが、階段は、つらい。エスカレーターに乗ることにした。

 

それは、私にとって、昭和63年以来のエスカレーターだった。元号の変わり目に、またエスカレーターに乗ることになるなんて。

きっと、次の元号に変わる前には、俺は天国へのエスカレーターに乗っているんだろうな。

 

「おまえ、うまいことを言ったつもりかもしれないが、全然つまらないからな!」

娘の目が殺気立っていた。そこまで、怒らなくても・・・・・。

 

中央線は、空いていたので座れた。車内で娘が検索した国立駅近くの外科も待っている人は、1人だけだった。

問診票を書かされた。熱も測られた。素直に従った。

そのあと、看護師さんが、ひざまずいて質問をしてきた。ここは、メイドカフェ?

「タコとイカのどちらが好きですか?」「山頭火と一風堂は、どちらが美味しいでしょう?」「和牛と霜降り明星は、どちらがビッグになるかしら?」と聞かれたので、丁寧に答えた。

 

レントゲンを撮られてから、15分後に呼ばれた。

男の医師だった。おそらく医学部を出て、医師国家試験に受かった人だと思う。

レントゲン写真を覗いて、「軽くヒビが入っていますね」と言いながら、キリッとした態度でメガネを軽く触った。医師っぽい仕草だった。

私は答えた。

ヒビだけなら、テーピングで固定すれば、日常生活は可能ですよね。

「スポーツをしてました?」

はい。ですので、とりあえず湿布とテーピングでやらせていただけますか。

医師は、「このバカなに言ってるんだ」という冷ややかな顔で、私を一瞥した。

私は、だって俺バカだもん、という顔で医師を見返した。

ため息混じりに、松葉杖のレンタルもあると言われたが、湿布薬と炎症を抑える飲み薬だけを貰って医院から逃げ出した。

娘は「ヒビかよ」と心配そうに私を見上げたが、俺はヒビの経験はあるから、むしろ安心したよ、と普通の顔をして歩いて帰った。

 

しかし、強がりはここまでだった。

家に帰って、さらに腫れた患部を見たら、気持ちが萎えた。脛の表面の血は止まったが、内出血がひどい。

これ以上の詳しい描写は鬱陶しいだろうから、書かない。

次の日から、自分の知識の中にあるテーピング技術を駆使して、患部を固定して生活することにした。

2日目、3日目は、腫れからくる痛みで片足ピョンピョンでしか歩けなかった。この腫れと痛みはひくのかな、と絶望的になりながら、何度か湿布とテーピングを取り替えた。

その様子を見た娘から「さすがに今回は、おまえでもギブアップだろ」と言われた。

 

ネバーギブアーップ!

 

折れたわけじゃないんだから、すぐに治る。いや、治してみせる。

4日目。腫れが目に見えてひいてきた。さらにテーピングを強くして、近所を歩いてみることにした。

心の奥に怖さはあったが、家のドアを出て、覚悟をして痛みと戦うように一歩を踏み出したら、歩けた。

100メートルほど歩いたら、痛みが下半身を支配したので、道路にあった自動販売機にもたれかかって、痛みが引くのを待った。

15分くらいで痛みは消えた。しかし、まだ帰りがある。痛みの恐怖と戦いながら家に帰った。

往きほどの痛みは感じなかった。

 

5日目の金曜日。300メートル歩いてみた。痛かったが、歩けた。帰りの300メートルは、休まずに歩いた。

この300メートルは、医院への距離と同じだ。土曜日は、歩いて医院に行くつもりだ。だから、予行として歩いておきたかったのだ。

帰ると、iPhoneに留守番電話が吹き込まれていることに気づいた。

得意先からだった。急ぎの仕事を頼みたい、という内容だった。しかし、私にしては珍しく仕事を断った。

得意先へは電車で行くことになるが、たとえば、電車に乗っていると、私の顔を見て、「ああ、こいつは脛を怪我しているな。ちょうどいいから蹴ってやろう」と、私の脛をサッカーボールだと勘違いするバカが、ひと車両に4人はいるかもしれないと思ったので、断ったのだ。

得意先の担当者には、my condition is so bad and my heart will go on と説明した。

「オー、タイタニック! では、お大事に」

会話が変? いえ、これも平常運転ですけど。

 

昨日の土曜日、娘は休みだった。

「ゼッタイについていくからな」

わかりました。一生ついてきなさい。

私が、普通に歩いているのを見た娘は、「おまえ、ボクに心配をかけないようにと思って、無理してるだろ。もっと、ゆっくり歩け。ヒビが入っているんだぞ」と私をなだめた。

無理をしているわけではない。痛いことは痛いが、普通に歩ける程度の痛みだ。自分でも驚いているくらいだ。

医院では、問診はなく、いきなりレントゲンを撮られた。

待つこと20分。診察室に呼ばれた。

レントゲン写真を見た医師が、「なるほど」と言って、横目で私を見た。そして、「足を見せてください」と言った。

テーピングを施してあったので、そのぐるぐる巻きを取った。赤紫色に変色した脛がムキ出しになった。

無表情で、触られた。ときどき押してきやがった。ちょっと痛かった。

医師は頷きながら、また「なるほど」と言った。

その「なるほど」を聞き流して、テーピングをし直してもいいですか、と医師に聞いた。医師は無言で頷いた。

医師の前で、グルグルした。それを見た医師はまた「なるほど」と言った。

そのあと、ほとんど興味のない顔で「わかりました。また来週の土曜日に来てください」と言った。

 

まるで、驕り高ぶった自民党の政治家みたいだ。説明責任を果たしていない。

で・・・私の脛の状態はどうなのよ。

まあ、なんとなく想像がついたから、いいんですけどね。

 

さくら咲く日の朝、歩いて医院に行き、レントゲンを撮られた。そして、「なるほど」と「わかりました」しか言わない医師に出会った。

 

春ですねえ。

 

息子が国立駅のホームから撮った国立の春。

 


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