リスタートのブログ

住宅関連の文章を載せていましたが、メーカーとの付き合いがなくなったのでオヤジのひとり言に内容を変えました。

9年目のハゲ

2020-07-29 05:29:02 | オヤジの日記

ハゲが、国立にやってきた。

大学時代の陸上部同期だ。

ハゲとは、大学時代、一番仲が良かったかもしれない。学部やクラスは違ったが、よく飲みに行ったり、夏の合宿では夜遅くまで語り合った。

ハゲは、最初からハゲていたわけではないので、そのときは「シバエモン」と読んでいた。苗字がシバタだったので。

ただ、大学4年から、急に髪が薄くなり始めたので、ハゲと呼ぶ回数が増えた。

人格者のハゲは、そう呼ばれても怒らなかった。私だったら「草刈正雄」と呼ばれたら、絶対に怒るのに。

 

ハゲがなぜ横浜三ツ沢から県をまたいで国立まで来たのか。こんな危険な時期に。

国立のバーミヤンで会った。

ハゲは40前になったら、髪を剃って潔く完全まるハゲにした。よく剃りきったな、と私が聞くと「だって、この方がマツも俺のことハゲって呼びやすいだろ」とツルツル頭をなでながら笑った。

それは、とてもいい笑顔だった。

ハゲは大学時代から真面目だった。将来まで見越して人生設計をたてていた。彼はみずから自分で敷いたレールを設計通りに歩こうとしていた。

嫌らしい話だが、成績は私の方がハゲよりもよかった。しかし、志はハゲが100点、私は1点だった。

志が高い人は強い。目に見えない何かが、その人にパワーを与える。

ハゲは、大学卒業後、大手の会社に就職した。モーレツ社員ではなかったが、仕事を手際よくこなし、昇級も設計図通りに果たした。

順調な人生だと思われた。

しかし、50歳を過ぎたとき、ハゲに悪魔が忍び寄ってきた。咽頭がんに罹ったのだ。

もちろんハゲの設計図に、そんなものはなかった。愕然とした。

「マツ、俺はこんなものは受け入れられないぞ」とツルツル頭を掻きむしった。

ハゲは大学時代、記録会での成績が悪いと、いつもひどく落ち込んだ。完璧主義ではなかったが、自分の目標が達せられなかったとき、自分を強く責めた。

私などは、目標を持っていなかったから、成績が悪くても、よし、明日から本気出す、俺はまだ実力の半分も出してないぜ、というヘッチャラー星人だった。

 

落ち込みきったハゲをハゲましながら、手術室に送り出した。幸い手術は成功して今8年がたつ。

ただ、それ以来、ハゲの人生観が変わった。自分で自分を縛ることをやめた。それで、気が楽になったという。自分で自分をハゲますことをやめた。

そして、会社を辞めた。真面目なハゲは、絶対に停年まで勤め上げるものだと思っていた。設計図を捨てたのか。

「新しい設計図を描いたら、こうなったのさ。設計図は何度でも描き直せるだろ」

そのあと、ハゲは横浜三ツ沢の自宅で行瀬書士事務所を開業して今に至る。順調らしい。

大学の同じ時期、私も行政書士の資格をとった。しかし、志が100点の男と1点の男の差の現実がこれだ。

でも、俺はまだ実力の半分も出していない。明日から本気出す!

 

で、なんでおまえ、わざわざ国立までやってきたんだ。相変わらずダブル餃子はうまいな。生ビールに最高にあうな。

「先週、初めてのお客さんに相談を受けたんだよ」

離婚の話だという。熟年離婚。60歳過ぎた夫婦が2人で来て「離婚したいんです」と言ったのだ。

と言われても、ハゲは離婚の専門家ではない。ただのハゲた行政書士だ。話を聞いて、ハゲしく困惑した。

「なぜ私のところへ?」と聞いた。「ご近所にあったものですから」とご夫婦は答えた。

弁護士ではなく、ハゲた行瀬書士事務所に来る説明にはなっていないと思うが。ハゲまされたかったのだろうか。

離婚したい理由は、個人情報なので書けない。ただ、離婚とは言っても、同居はし続けたいと言うのだ。ようするに、離婚して財産を真っ二つに分け、お互いの生活費はそれぞれ2人別々に負担する。食事は、お互いが好きな時間に好きなものを食べる。お互いのことは、絶対に干渉しない。

そして、遺言書を取り交わす。どちらかが先に死んだときにゴタゴタしないためだ。

しかし、それって絶対に弁護士に相談すべき案件だよな。なんで、おまえに相談なんだ。

「ご近所だからな。相談しやすかったらしい」

ハゲが、油淋鶏を食いながら、不気味に照れた。昔から赤面症のハゲの顔が少し赤くなった。タコ坊主。

 

「それで、おまえに相談に来たんだ。元法律事務所で働いていたおまえに知恵を借りにな」

私は、素っ気なく言った。それは弁護士案件だ。おまえが関わることじゃない。横浜に俺の知っている弁護士が1人いる。その人の電話番号を教えるから、この話はそれで終わりにしたほうがいい。行政書士は、プライベートには立ち入らないほうがいい。

ハゲにはハゲの役割があるんだ。できることだけにハゲめ。

でも、おまえ、こんなことのためだけに、わざわざここまできたのか。電話でもよかっただろうに。

「久しぶりにマツの顔を見たかったからな」とハゲはまたタコ坊主になった。

 

私は2杯目の生ビールを飲みながら言った。おまえの頭は密じゃないからいいよな。それほどみごとにツルツルだったらコロナも素通りだろう。

「密といえば、俺たち、大学の飲み会のあと、冬は必ずおしくらまんじゅうをしたよな。覚えているか」

覚えているさ。8人から9人で密になって、渋谷駅前の交番の横でやっていたな。あれは本当に密だった。今だったら、白い目で見られるだろう。

「いや当時も相当白い目で見られていたぞ。深夜に駅前でおしくらまんじゅうをするやつなんかいないからな」

しかし、そんなくだらないこと考えたやつは誰だったんだ。

「おまえだよ。当時のグループで、くだらないことを考えるのは、おまえしかいない。陸上部の合宿で一番最初に晩ご飯を食い終わったやつが、みんなからデコピンを受けるというルールを作ったのも、おまえだ。おかげで晩ご飯に1時間半くらいかかったからな。最後の方は、デコピン覚悟で早く食って、みんな30分くらいで食い終わっていた」

早食いは、体に悪い。みんなにそれをデコピンで知ってもらいたかったのさ。

「大学のキャンパスですれ違ったとき、挨拶が朝はゆで卵、昼はタンメン、夜はチャーシューってのはなんなんだ」

それだけ食っていれば、人間は生きていけると教えたのさ。野菜とタンパク質、脂質を摂りましょう、それがアスリートの基本だ。ありがたいだろ。

 

突然、ハゲがだまった。下を向いた。ハゲの肩に力が入っていた。何か言いづらいことを言おうとしているように思えた。

もしかしたら、2年前に私がハゲにプレゼントしたスマートウォッチを壊してしまったとか。あるいは、今さらながら、カツラを着ける決断をしたとか。あるいは、まさか・・・・・。

ハゲが顔を上げた。そして、私の目を見ずに話始めた。

「この間、定期的な精密検査を受けたんだ」

やはり、そっちの方の話か。胃がズンと重くなった。3杯目の生ジョッキをテーブルに置いた。

怖くはあったが、ハゲの言葉を待った。悪いことは考えない。それが私のポリシーだ。手術から9年目。奇跡は続くと私は信じていた。だから、今回も・・・。

ハゲが一度顔を上に向けて、大きく息をした。そして、言った。

「検査の結果は・・・異常なしだ。それが嬉しくてマツにまっ先に報告しようと思ったんだ。9年間も生存できるなんて、当時は思わなかったよ。結果を聞いたときは泣いたな。嬉しかった。ご褒美を貰った気がした。

ありがたかったのは、おまえは絶対に俺に『頑張れ』とは言わなかった。むしろ『頑張るな』というスタンスだった。あれは、俺の中の何かを変えたんだ。今まで頑張ってきた結果、重い病気にかかった。もしこれからも頑張ったら、俺は、そのままじゃないかって思ったんだ。俺は俺の免疫力だけで病気を治すって思ったんだよ。頑張る必要はないんじゃないか。その結果が、これさ。もちろん先のことはわからない。しかし、言えることは、俺はいま幸せだってことだ」

ハゲの声が震えていた。

 

私のハゲましの言葉はいつも、頑張るな、だ。いま頑張っている人に、これ以上頑張れと声をかけるのは思い上がりだ。人がその人のあるべき姿のまま生きてほしい、というのが私のハゲましだ。私の中に熱い血は流れていない。

とは言っても、嬉しいときは、素直に喜ぶ。

 

私はハゲの頭を両手で包むように、ハゲしく撫で回した。

 

ハゲ、ハゲと言いながら、泣きながらテッペンを何度も叩いた。

 

無防備な頭は、すぐに赤くなった。

しかし、それはハゲが生きている証だ。

 

 


メルヘンの鳥

2020-07-26 05:28:18 | オヤジの日記

金曜日は、久しぶりに外に出た。

立川のLOFTに買い物に行ったのだ。ただ、そのとき愕然とした。国立駅のホームに上がる階段は、意外と長い。私は、エレベータ派ではなくエスカレータ派でもない。必ず階段を利用する。階段を上り切って息切れすることはない。

しかし、今回若干息切れを感じたのだ。息切れは、すぐに収まったが、ショックだった。長いといっても東京タワーの階段を上ったわけではない。駅の階段だ。

ランニングを自粛していたツケが今ごろ出てきたのかもしれない。

「自粛おばさん」が、「ランニングは自粛しなくていいですよ」と言ってくれたら、週に2回は走ったのに。

いつも思うことだが、なんの対策も提示しないなら、感染者数の発表は事務方がやればいいのでは。毎日フリップ芸をやりたいためにテレビに出るって、時間の無駄だよね。そんな時間があったら、しつこく専門家と協議して有効な対策を練って欲しい。

「感染拡大警報」や「不要不急の外出は控えて」などというフリップ芸は、1回見れば十分。

 

中央線は、空いていた。しかし、立川駅前は、そこそこ混んでいた。そこもそこも混んでいた。

LOFTは、そこそこではないくらいに、ソーシャルディスタンスを保っていた。

すぐに目的のものを買うことができた。

こんなことは改めていうことではないが、私はウィンドウショッピングというのが苦手だ。あれいいね、これいいね、あー、でも最初に見たのが一番いいね、という買い物はしない。そんな時間的余裕がない。

最初から、買うものを決めているから、迷いがない。目的のものを見つけたらすぐ買って帰る。

我がヨメは、女性の特性なのだろうが、買い物に費やす時間が長い。決定までに時間がかかる。折り畳みの日傘を買うだけで1時間以上かかる。それぞれどこが違うのだろう。違いがわからぬ。

買い物で意見を求められたときは、私は、いいねいいね、それが最強、と答えるのだが、ヨメは私の意見に従ったことは一度もない。

最終的には、店員さんの意見に従う。

期待していないから、私もその結果に落胆することはない。私の意見は、すぐに泡のように消える。

バブルおじさんですよ。

 

バブルおじさんは、また国立に戻った。

そして、大学通りの木のベンチに座った。手には、コンビニで買ったクリアアサヒとバターピーナッツがあった。

観賞するために買ったわけではない。飲んで食うために買ったのだ。

飲んで食った。

みなさんが働いている時間に、こんなゆるい時間を過ごすのは申し訳ないが、飲ませてください、バターピーナッツをください(あっ、連休だった。だったら気を使うことはないか)。

 

脱力しているとき、私の足元に小さい子猫の形をした猫がやってきた。

茶と黒と白のハチワレ君だ。生後6ヶ月程度と思われる。

首輪をしていないので、野良ちゃんだと思う。人懐っこいのは、人間に警戒心を抱いていないからだろう。

ニャニャ、と声かけたら、寄ってきた。そーっと手を伸ばしたら、怖がることなく触らせてくれた。撫でた。

おー、懐かしい感触。そのあと、いつも持ち歩いているちゃおチュールをバッグから出して口元に持っていった。

なんのためらいもなく食べてくれた。人に相当慣れていると見た。

私の住む国立は猫に優しい街だという。野良猫に餌をあげていると、他のところでは「なに、ノラにエサあげてるんだよ。これ以上ノラを増やすな」と怒る人がいる。「猫にエサをやるな」という看板もたまに見る。

しかし、国立は、その点ではフリーだ。

ここでは、野良猫ちゃんは、地域猫という形で扱われているようだ。つまり、みんなのノラちゃん。

試しに、膝の上に乗せてみた。逃げなかった。撫で撫でした。

至福の時間だ。クリアアサヒとバターピーナッツがうまかった。

セキトリか、君はセキトリか、と聞いたが、もちろん返事はない。君はこの地域では、なんと呼ばれているんだろうね。

持ち帰ろうかと一瞬思った。本当に強く激しく思った。でも、この子はこの地域の子だ。色々な人に愛されるのが、一番幸せなんだと思い直した。

5分ほどで猫は降りて、優雅にのそりのそりと花壇に入っていった。

ノラ君、また会おうな。

今度は、マグロ味ではなくて、帆立の貝柱味を持ってくるから。

 

ノラ君との再会を待ちわびながら、満足してバターピーナッツを食い終わり、クリアアサヒを飲み終わった。

食い終わって、立ち上がったとき、肩に何かが乗ってきた。

「つるとんたん」じゃん。

私が勝手に名付けたつるとんたんは、ハクセキレイだ。私がマンションの駐輪場に降りると5割以上の確率で、私のそばに降り立つのだ。そして、テケテケテケと歩きまわり、ときにツピーツピーと鳴いた。

最初は偶然かと思ったが、今では、この子は私を認識しているんだな、と思うようになった。

肩に乗せたままマンションまでの300メートルを歩いていった。

つるとんたんは逃げずに肩に乗ったままだった。

側から見たら、肩に鳥を乗せた変なオッサンだ。恥ずかしいオッサンだ。だが、私は生まれたときから恥ずかしい子どもだったので、大人になっても恥ずかしいのは当たりまえだ。どこが悪い!

マンションの入り口まで来て、じゃあ、つるとんたん、またな、と羽根をなでながら言ったら、つるとんたんは、スーッと飛んでいった。

 

私は、いま夢のようなことを考えている。

たとえば、つるとんたんを肩に乗せて自転車でスーパーに買い物にいく。そして、つるとんたんをスーパー前の適当な場所に止まらせて、買い物後に、また肩に乗せて帰るという夢だ。

そんなことは、絶対にできない、野生の鳥はそこまで人に慣れない、というのが、常識的な意見だと思う。

それは、メルヘンだな、という意見もあるだろう。

 

 

だけど、そんなメルヘンも、あっていいよね。

 

 


ソウルフード

2020-07-22 05:30:50 | オヤジの日記

最近、我が家の昼メシは、ほとんど焼きそばである。

 

子どもたちの在宅ワークが始まるまでは、夫婦2人の昼メシだから、適当な残りものを食っていた。

しかし、4人分となると適当であったとしても、ボリューム感が欲しい。そこで、焼きそばを出したら、「美味美味美味」と絶賛された。

それから、ほぼ毎日昼は焼きそばだ。

麺は太麺オンリー。私はむかしからラーメンも太麺派だ。焼きそばには、肉は入れない。だって、肉を入れたら、肉焼きそばになってしまうから。主役が焼きそばではなくなってしまう。

具材は、モヤシとキャベツとニラ。この3つは、決して主役になろうとしない。脇役に徹している。偉い子たちだ。

毎日、ソース焼きそばでは飽きるので、ソースは変える。焼きそばソース以外では、オイスターを使ったり、お好みソース、中濃ソースプラスオイスターソース、鶏ガラと塩、トマトソース、煮干しを煮込んだ出汁、キムチ納豆などで焼き焼きすると味が変わって大変美味。それぞれ、好みでカツオ粉をかけたり、マヨネーズ、青のり、卵黄をかけると、さらに美味。

食材にお金がかかっていないから、コストパフォーマンスはコストコ。

 

焼きそばは、我が家のソウルフードだ。

ソウルフードで思い出したが、何年か前のツィッターで、「ラーメン二郎のラーメンは、やっぱりうまいな。ラーメンは俺のソウルフードだ」というツィートがあった。

それにたいして、「バカヤロー、ラーメンはソウルの食べ物じゃない。立派な日本食だ」というコメントが何件も寄せられたという。

ソウル違い。

たとえ冗談だとしても程度が低い。

以前、テクニカルイラストの達人・アホのイナバ君に、君のソウルフードは何? と聞いたことがあった。

「ああ、サムギョプサルですね。あれなら毎日でも食べられます。いや、毎日は無理かな。1ヶ月に2回は食べてもオーケーですね。オーケー牧場。韓国料理は本当にうまい」

同じソウル違いでも、イナバ君の場合は、ホンワカしている。

 

ソウルと言えば「ソウルから来た娘」。

2年前に、ソウルから来た娘がいた。その当時29歳だった。

名前を「ユナ」と言った。娘の大親友だ。7歳年上。

ユナちゃんは、子どもの頃から日本が大好きで、韓国ドラマやKPOPには見向きもせず、日本文化に傾倒した。

ユナちゃんは、アイドルグループの嵐が特に大好きで、嵐の歌の歌詞を理解したいために、日本語を独学で習得し始めた。

11歳のときだ。

インターネットで日本のサイトを開き、読み書きを勉強した。会話に関してはYouTubeで勉強した。

高校3年で、会話読み書きは通用するレベルになった。

そのとき、ツィッターの世界で我が娘と出会った。娘は、KPOPにハマりかけていた頃だった。KPOPの情報を少しでも取り入れたいと思って、日本語を自在に操るユナちゃんにアピールした。

「私、KPOP嫌いなんだよね」と最初は拒否されたが、娘が12歳のときから、メール付き合いが始まった。基本、会話は日本語だが、娘が勉強中に難しいハングルの表現に出くわしたときは、ユナちゃんが丁寧に教えてくれた。

優秀な人が教えると習得も早い。娘は大学1年ごろになると、ハングルが、そこそこ操れるようになった。

そこで、娘はソウル留学計画を立てた。

大学3年の後期だ。

留学する前に、娘はユナちゃんに頼まれた。

「うちの両親は、筋金入りの反日なの。日本のことを話すとすぐに機嫌が悪くなるの。でも、夏帆みたいないい子が日本にたくさんいるってわかったら、少しは心を開くかもしれない。お願い協力して」

ユナちゃんの夢は、日本で働くことだった。それを知っていた娘は「わかったぞなもし」と快く快諾して諾諾した。

 

ユナちゃんの家に行っても、最初は、ご両親からまったく無視された。しかし、人間には根気と婚期が必要だ。婚期を逃しても人生の流れが少し変わるだけだが、根気がなくなると「あー、俺の人生なんか、どうでもいい!」と自暴自棄になる。それは、よくない。

娘は婚期根気よくユナちゃんのご両親にハングル語で話しかけた。

すると、ご両親の反日は直らなかったが、留学が終わるころには「夏帆はいい子だよ。この子は信用できる」と言ってくれるまでになった。

そのあと、ユナちゃんはジワジワとご両親を懐柔し、2年前に日本で働くことを許してもらった。

 

そのユナちゃんが、日曜日の夕方、我が家にやってきた。

ただ、いつもと景色が違った。隣に未確認生物がいたのだ。その生物は、ネクタイを締めてお土産らしきものを持っていたのだ。

生物学的には、人間に近い。もしかしたら、男かもしれない。

ユナちゃんが言った。

「ねえ、お父さん、この人が前から言っていた彼氏だよ。連れてきたよー」

ユナちゃん、嬉しそうだね。

「お父さんお母さんご家族の皆様、はじめまして」未確認生物が日本語を喋った。

なんか、固そうなやつだな。つまんねえな。でも、顔はいい。「男梅」のような顔をしていたのだ。これが「カールおじさん」だったら、袋ごと潰してやったのに。

年齢は、ユナちゃんより2歳下。30歳だという。老けてますねえ。

馴れ初めは、とっくに聞いていたので、その話はパス。

 

ちょうど晩メシの時間だった。普段なら、私の手料理を振る舞うのだが、振るのも舞うのも面倒くさかったので、出来合いの弁当を食うことにした。オープンな食事は危険だと判断。

ガスト弁当だ。娘とユナちゃんと男梅に買ってきてもらうことにした。

私だけが、マヨコーンピザ。他の5人はハンバーグ系の弁当だった。

食っている間の話題は、ユナちゃんと男梅が勤めている病院のことだった。シビアな話を聞かされたので、生々しくて割愛。

 

最後に、みんなのソウルフードは何? という話が出た。

私は焼きそば。娘はラーメン。息子は唐揚げ。ヨメは、ケンタッキーフライドチキン、ユナちゃんはおでん。

そして、男梅は「辛ラーメン」と答えた

 

 

それって、ボケたの? 狙っているの?

 

 


前のめり

2020-07-19 05:39:01 | オヤジの日記

素人の言いたい放題 第1回(おそらく2回目はない)。

 

クラスター、オーバーシュート、ロックダウン、ソーシャルディスタンス、ステイホーム、ウィズコロナ、GOTOキャンペーン、東京アラート。

 

集団感染、爆発感染、首都閉鎖、社会的距離、家にいよう、コロナと暮らす、旅いこか、東京警報ではいけないのか。

 

カタカナを使って、政策をアピールする。しかし、中身はなし。新型コロナは、日本列島をだだ漏れ。

 

いい加減にホワイト。カープの滝のぼり。藪からスティック。焼け石にウォーター。寝耳にウォーター。一寸先はダーク。

ルー大柴氏の言葉の方が、私には耳にすんなり入ってくる。

お利口さん方は、その言葉が、自分のまわりにしか通じなくても気にしないんでしょうね。

お利口さん、お利口さん。

今に、トーキョーのホスピタルのドクターとナースがシステムダウンしてエマージェンシーでアウトオブコントロール、などとフリップ芸で言い出すかもしれない。

でも、本当にエマージェンシーを感じてるんですかね。

毎日フリップ芸をしているが、それはいつも曖昧な提案とおねがいだけ。要請しかない。ちょっと刺激的な言葉を使って、危機感を煽っているが、都民は「またか」と飽きてしまっている。

要所要所にグサっとささるような政策がひとつもない。具体策がないまま毎日の会見は終わる。そして、メデイアもそれに対して厳しい意見を言わない。今までの安倍政権への態度と同じだ。

予定調和、馴れ合いだ。

権力に弱いメディア。お利口さんだね。自己保身に一生懸命だね。

 

さらによくないのは、国民だ。

政治家が、「経済効果」「経済を回す」としつこく言うから、もう洗脳され始めている。

観光産業が枯渇し始めているからと洗脳されて、「旅いこか政策」を認め始めている。

政策は有効だろうが、今この時期じゃない。完全に間違えている。

なぜ、この最悪の時期にやるのだ。経済効果より、政府の本音は休業補償を出したくないだけではないか。人の命をないがしろにしている。

 

素人意見なのは分かっている。しかし、休業補償で経営者の負担を減らし、飲食業などの感染者対策などのサポートをし、それと同時進行で、感染源になっている新宿池袋の店員たち全員のPCR検査をしてローラー式に感染源を完全に絞り、ピンポイントで網を張ってウイルスを封じ込めるなどということはできないのだろうか。

日本より10倍の人口がある中国は、その種のことを簡単にやっている。

国によって条件は違う、は詭弁ではないだろうか。

日本政府は能力がないのか。医療機関に能力がないとは思えないが。

いま安倍内閣も都政もコロナ対策の失敗の尻拭いをしたくないから、さりげなく感染者のせいにしようとしている。

感染者を悪者にしようとしている。

しかし、まず最初の失態は緊急事態宣言をダラダラと先延ばしにしたことだ。東京オリンピックの延期が決まって、やっと宣言を出した。ゴテゴテ。

そして、宣言の解除は、ずいぶん早く出した。前のめり前のめり。

その結果が、今の状況だ。

 

後手後手前のめり前のめりは、決して最善策ではない。失策だ。

現実に増えている状況を姑息な洗脳で誤魔化されてはいけない。

数字は正直です。その正直な数字を見ないで、姑息な方便で数字をひっくり返すのが政治家だ。

「旅いこか政策」で、感染者が増えるかはわからない、という政治家や専門家がいる。

それはそうだ。だが、その詳細を精査して結果を予測するのが、政治家と専門家の仕事だ。

「わからない」は、仕事放棄だ。「わからない」は、政策ではない。

増える確率は、増えない確率より絶対に高い。

そのとき、「わからなかった」で終わっていいのか。「想定外だ」あるいは、「想定の範囲です」で終わって、誰が責任を取るのか。安倍晋三氏は今まで言葉では空虚に謝るが、実際に責任をとったことがないではないか。

 

悪いのは、国民や感染者ではない。政府だ。そこを間違えて洗脳されてはいけない。

 

付け焼き刃の東京除外の「GOTOトラブル」は、トラブルにしかならない。

国民を洗脳するだけの前のめりは、日本を決していい方向には導かない。

 

 

などとひとりで勝手に怒っていた金曜の夜、金沢に嫁いだ大食いのミーちゃんからLINEが来た。

「パピー、パソコンで会話しよ」

大食いのミーちゃんは、このブログにたびたび登場する。我が娘の中学からの大親友だ。中学3年から高校1年まで、訳あって我が家に居候をしていたことがあった。

米が大好きな子で多いときで、メシを3合食べる。もちろん、焼肉やラーメン、寿司、カレーライス、ハンバーグなども大量に食べる。気持ちいいくらいの食べっぷりだ。

それで体重は40キロ代後半を維持しているのだ。モンスターである。

結婚して、金沢の旦那の家で暮らし始めたころ、最初は人並みの量だった。しかし、ミーちゃんが遠慮しているのを感じた旦那の若チャマに、「普段通りに食べなよ。ミーらしくないぞ」と言われた。

ミーちゃんが大食いだということを知らされていた若チャマのご両親も「好きなだけ食べなさいよ。遠慮はいらないから」と言ってくれた。

嫁ぎ先は、野菜農家とニワトリ農家、スーパーマーケットをやっていた。食い物には困らない。

そこで、ミーちゃんは朝と昼は普通の食事を摂り、夜ごはんだけいつものミーちゃんに戻った。

その姿を初めて見たとき、ご両親の目はまん丸になり、鼻も口もまん丸になった。三まるである。

納豆10パック分を入れた器と大盛りの丼メシで、ご飯を3杯以上お代わりするのだ。もちろん他のおかずも食い、味噌汁もお代わりする。食べ物は、少しも残さない。

初めはビックリたまげたご両親も、食べ終わった頃には、拍手をしてくれたらしい。

「珍しい嫁が来た」と喜んでもくれたらしい。

 

パソコン画面で、突然ミーちゃんが言った。

「パピー、8月初めにパピーの家に里帰りしたいんだ。いいかな」

この危険な時期に来るのか。やめた方がいいんじゃないか(本当は来て欲しいけど)。

「だって、ゴールデンウィークも里帰りできなかったし、2泊3日くらいなら、どこにも出かけなければいいかなと思って。お義父さんも2泊3日くらいならいいかって、認めてくれたんだ。私たちが東京に行くことは、近所の誰にもわからないようにするからって」

若チャマも一緒に来るが、彼は杉並永福町の親戚の家に泊まって巣ごもり生活を送るという。

そこで、家から一歩も出ずに大学時代の友人と2人で「鬼滅の刃」と「キングダム」を読破するつもりらしい。

 

私は、娘に甘いバカおやじなので、いいよ、と答えた。

 

何か言われたら、俺が絶対に君を守る・・・・・バイバイ返しだ。

 

ああ、今から楽しみで楽しみで楽しみで楽しみーーーーーで仕方ない(泣いている)。

最近、気力が減退気味だったが、フッカーツ!

朝からミーちゃんの好きなMINIONSでも見ようかな。

 

 

俺も前のめり?

 

 


半沢さんとつるとんたん

2020-07-15 05:25:27 | オヤジの日記

来週から「半沢直樹2」が始まるという。

 

あの種のドラマが好きな人は、楽しみでたまらないでしょうね。ただ、水をさして申し訳ないですが、私は、あの種のドラマが苦手なのだ。

「半沢直樹1」の1話は、娘と見た。

見て20分もしないうちに、娘が言った。

「なあ、このドラマに出てくる男たちは、なんでいつも力んで怒鳴っているんだ。銀行の内部って、そんなにギスギスしているのか」

そう、血管が切れそうなほどの力み方だ。疲れる。俺一人が会社を支えている、と言わんばかりだ。

もちろん、そういう演出だということは理解している。役者さんは、演出に沿って演技しているのだろう。

でも、俺、そういう演出苦手なんだよね。もともと血が薄いから、熱血は受け付けない。娘もそうだ。

大昔の大学時代、私と今現在新宿でコンサルタント会社を営むオオクボは、新入部員の教育係だった。

オオクボは熱血だった。「練習は裏切らない。手を抜くな!」と部員を叱咤した。

それに対して私は、とりあえずケガをしない体を作るべえ、とゆるく指導した。

そんな私をオオクボは怒るのだ。

「もっと親身になれよ。おまえだけの練習じゃねえぞ!」

スミマシェーン。

半沢さんの話に戻って・・・そのときは確か30分延長の回だった。だが、娘と2人、半分の40分でリタイアした。こんな熱ケツドラマには付き合えない。それ以来見ていない。

ドラマは、そのあと大ヒットしたから、みなさんお気に入りだったのだろう。

 

安倍バイバイ返しだ!

 

熱ケツといえば、昨日醤油と生クリームを買いに行こうとして、駐輪場で自転車を出そうとしたときのことだ。私が住むマンションの駐輪場は大変密である。

自転車が密集している。ソーシャルディスタンスは、夢のまた夢。自分の自転車を取り出すのにやや手間がかかる。

いつもより奥まったところに置いたので、体をねじ曲げながら自転車を取り出そうとした。

そのとき、左にあった三輪自転車のブレーキレバーが、私のケツにジャスト・ホールインワン。

アツッ!

痛くて痛くてイタリアン。

私はあまりのイタリアンに悶絶し、自転車の荷台にもたれかかった。

泣いた。

そんなふうにお茶目に泣いていたとき、ハクセキレイが飛んできて、私のまわりをツピーツピーと鳴きながらテケテケテケと歩き始めた。

このハクセキレイは、私が駐輪場に降りるとよくやってきて、同じ行動を起こすのだ。もう10回以上、駐輪場で出会っていた。

私はこのハクセキレイを意味もなく「つるとんたん」と呼んでいた。

 

つるとんたんは、ご機嫌に見えた。

だが、鳥に詳しい人に言わせると、これは愛情表現ではなく、威嚇なのだという。

「オレの縄張りを、荒らすんじゃねえ、このバイキンが」ということらしい。

いや、俺だって好きでバイキンマンになったわけではないさ。カレーパンマンのオーディションに行ったら、熱ケツの演出家に、「おまえは、バイキンマンだ」って命令されただけだ。

ジャムおじさんの方がよかったか。オーディション、受け直そうかな。

と落ち込んでいるときに、痛さに悶えて自転車の荷台にもたれかかった私の肩に、つるとんたんが乗ってきた。

まさか、攻撃か。戦闘態勢に入ったのか。目を攻撃される、と思って私は目を手で隠した。

鹿師しかし、攻撃はなかった。つるとんたんは、優雅に鳴いて飛び立っていったのだ。

威嚇ではなかったのか。

 

EL ALBA MOTAKITTA PASSA

 

そのあと私は、ケツの痛みに耐えながら、スーパーの紀ノ国屋に行った。

普段私は、10回のうち10回は、西友とかいなげや、コープ、OKストアに行く。

しかし、調味料を買うときだけ、紀ノ国屋か成城石井に行くのだ。

私は、食材はケチるが、調味料だけは、それなりの値段のものを買う。料理というのは、食材がJ2だとしても調味料次第でJ1リーグに上がれることがある。

調味料の効果は絶大だ、とシラガおやじは思っております。

カレーもスパイスを選べば、プロの味に近づけまっせ。

ハンバーグも下味のつけ方で、絶品料理になりますがな。

レタスだけのサラダも調味料の配合だけで、幸せあふれる味になるでごわす。

 

ケツの痛みがおさまったころ、マンションの駐輪場に戻った。

自転車をしまっているころ、またつるとんたんがやってきて、いきなり肩に止まった。

え? いきなりか、目への攻撃はやめてくれよな、ケツもイヤだけど。

そう思いながら、つるとんたんの体をやさしくやらしく撫でた。するとツピーツピーと鳴いたあとで、すーっと飛んでいった。

 

この行動は、なんなんでしょうね。

威嚇なのか、親愛なのか。

 

 

そのケツ論は、まだ出ていない。