まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

親子会社間の契約書と租税条約等

2019-03-03 00:05:27 | 商事法務
○ 最近は、きちんとしたガバナンスが求められますし、海外の子会社との取引については移転価格の規制もあります。従い、子会社側でもローン契約等はきちんと取締役会決議で契約の承認をしたり、親子であってもArm’s Lengthの条件で締結されるようになってきました。その一方で、在外子会社では十分な資金調達能力、技術力や経営支援機能を持たない事も多いので、親子会社間で、親子ローン・技術支援/ライセンス・経営支援契約等が結ばれます。また、逆に市場調査等を現地子会社に委託して、委託料を支払うという、どうも資金支援としか思えないような契約を締結する場合もあります。現地子会社にはきちんとした調査能力は無いですから、適当にWebなどから資料を集めて市場調査をしたようなふりをして調査報告書を親会社に送って、親会社はお金をはらいます。当然これは寄付金として課税対象になりますね。

○ 親子間の契約書は、勿論簡単で良いですね。例えば経営支援や役務提供の場合の記載事項は、1)どういった役務を提供するのか、2)その対価・支払・期間、それと少しばかりの一般条項ぐらいでしょうか。またお金を支払う側は、その役務をきちんと受けたことを証明する資料を揃えておかないと、後で税務調査で質問を受ける可能性がでてきますね。

親子ローン契約やライセンス契約の場合は、租税条約に従い軽減・免税での利払い・使用料に該当するか、きちんとチェックして契約書に、子会社側でのWithholding Tax(Taxation at sourceであり、親会社の税金)の納税, 納税証明書の取得・親会社宛の本紙送付等の規定も必要になってきます。これは、ローンや技術支援提供元の親会社の税金を、現地の国税に納めるわけですね。この場合、まず必要になるのは現地国課税当局での親会社の納税者番号を取得しないといけません。例えば、米国を例にすると、IRSからTIN (Taxpayer Identification Number)を取らないといけません。租税条約適用のためには、Application for Employer Identification Number (EIN)をFormSS-4(https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/fss4.pdf)を提出して取得しなければならないですね。インドでは、PAN (Permanent Account Number)を取らないといけません。また注意点として、技術支援契約で支援するときに、本社から技術者が出張し、そのコストを現地子会社が負担しますが、この費用は、あくまでも立替費用ですから、Royaltyの請求書とは別にしないといけません。もし一緒にすると総額の金額から源泉税を支払わなければなりません。  

また国によっては、親子ローン・ライセンス契約は、租税条約とは別途の届出等が必要ですから注意が必要ですね。中国では、ソフトウェアライセンス契約は、当局に契約登記・版権局登記の2つ必要です。ライセンス契約の中身の概要を記載する訳ですね。当然、中国ですから当局が知的財産の中身をチェックして、中国で利用できる技術を見ているわけですね(中国では暗号化は認められていませんね)。インドでは、親子ローンはインド準備銀行(RBI)のECB(External commercial borrowing)規制があります。殆どが自動承認ですが、ECBローンは使途が決まっています。親会社と言えども運転資金の提供はできません。また親会社ローンをEquityにswapするDebt-Equity Swap契約では、国により(インド・ブラジル等)中央銀行の外貨管理の対象となり、例えばブラジルなどでは、Debtを一端返済した形式にして、それをEquityにしたことにする契約にしないといけません。為替管理等の現地法制・中銀規制等は、日本ではわかりませんので、その部分は現地の法律事務所・監査法人の税務部門・銀行などに聞くことになりますね。

○ 大分横道にそれますが、少し弁護士の悪口です。かゆいところに手が届く弁護士にはなかなか出会えませんね。種々の経緯から止むを得ず弁護士に親子ローン契約等を作ってもらったことやライセンス契約等を見てもらった事があります。ピントのぼけた条項を一杯入れたり、不要な修正を入れられて、お金をぼったくられたことがしばしばありますので注意をしましょう。また弁護士だからきちんとした契約書を作ってくれると思って丸投げする人がいます。間違いです。弁護士は、租税条約等はまず理解していませんし、源泉徴収を租税条約を踏まえてきちんと記載している弁護士作成のローン契約・経営支援契約等見たことないですね。

○ 大手有名法律事務所の中には学者先生みたいなことを言って、顧客が何を望んでいるのか考えない弁護士もいます。また不要な規定を入れてFeeをチャリンチャリンと稼ぐ人もいますね。方法としては、1)不要なピンボケ条項を一杯入れてくる場合があります。どうせ他の契約のコピペですね。2) また依頼もしていないのに余計なことをしてFeeを請求する場合もあります。結論とその根拠を英文で数行で回答して某国在の日本人弁護士に行ったら現地の提携法律事務所に聞いて、余計なことにその日本語翻訳を一杯して、time chargeをしっかり請求してきた弁護士もいます。いくつか例を記載してみましょう。
1) 親子間ローン契約:裁判籍をNY州のDistrict Courtとかぐじゃぐじゃ一杯大文字で書いてきました。おまけにご丁寧にWaver of Jury Trial等も規定していました。
⇒あほか。子会社のCEOが親会社を訴えたら解任すればいいだけです。こんな規定は不要です。租税条約・税額控除の事を知らないので、金利のgross-up規定も入れてきましたね。必要な租税条約の届出をして、納税証明をきちんと取って送れと書くべきですね。子会社には、親会社から役員も出向しており、また連結決算で業績も把握しているのに、不要なRepresentations and Warrantiesを入れる人もいますね。

2) 親子間で親会社保有の特許のライセンス契約を結ぶことがあります。無償で使用許諾をしていると、その点を国税から指摘されることもあります。従い、税務署が許容するライセンス料を取得しないと、親会社に寄付金課税を求められることもあります。あるとき、ライセンス契約を作ったら、弁護士の言う事は何でも鵜呑みにするうるさいBossが、弁護士に相談しろというので、「誤りがあればその箇所のみ指摘」という条件で依頼したら、意味のないどうでもよい修正を一杯されて金をとられました。例えば、「entered into between A & B」と冒頭に書いていたら「made and entered into by and between」と修正してきました。ナンセンス修正です。契約書の作成をmake or enter intoは、いずれか1つでも両方記載しても、現在では同じ意味です。これは英国法は判例法で、昔は地方により判例の言葉が違った(アングロサクソン系の言語とノルマン系の言語)のが影響して、make and enter intoと両方書くようになっただけで意味のない修正です。英文契約書で、同じ意味の言葉を並べるようになったのは、そういった過去の歴史的経緯があったためで、同じ言葉をいくつも並べる意味は、今では殆ど意味がありません。

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