まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株主名義人と実質上の株主

2011-02-12 00:44:40 | 株式関連

   旧商法201条では以下の規定がありました。即ち、1項では「設人名義又は承諾をずに他人名義株式引受けたものは、株式引受人としての責任を負う」との定めがあり、実際に引受・払込をした者が株主になることに異論はなかったですね。 2項では「他人ト通ジテ其ノ名義ヲ以テ株式ヲ引受ケタル者ハ其ノ他人ト連帯シテ払込ヲ為ス義務ヲ負フ」との規定(今の会社法には同種の規定は無し)があり、これについては名義人が株主となるという少数の形式説と、実際に引受・払込を行った名義借用者が株主になるとする実質説があり、大半の判例・通説は実質説ですね。

   会社法が出来ても、学者の見解は上記のとおり実質説が大半のようですね。即ち、他人(名義人)の承諾を得て名義人名義で株式を引受・払込をしても、株主は実質的に引受・払込をした者であるということですね。しかし、名義借用者が実質上の株主として会社に対して権利行使するには、株主名簿の名義書換が必要であるとしています。でもこの考え方は、おかしいですね。名義人に指図する権利があれば、名義人と実質上の株主を分けても問題ないと思いますけど。

   私は異端児ですから、形式説ですね。株式の法律関係は画一的にかつ形式的に大量の処理をしなければならない特性を有し、法的安定性が必要ですからね。また昨今は、ファンド名義とか、信託財産は受託者(信託銀行)とかの形式的名義人が増えてきています。実質上の株主が誰か等と言っても分からないことが多いのですね。ですから、この現実すなわち形式的な名義人が増えていることを踏まえて、形式説でOK、但し、それをどのように整理するかを考えるべきだと思います。

   即ち、①株式の名義人、②議決権の実質的行使者(名義人に議決権行使を指示する権限ある者)及び③実質的に引受・払込を行う者又は株式取得費の負担者の3つは、もう分離可能・バラバラを前提として考え、この3つの関係間のルールを確立すべきだと考えています。

   実質説・判例は昔からあったのですが、昔から名義人を立てて、形式的に行われてきましたね。金融商品取引法では、その現実を踏まえた規定を置いています。大量保有報告書に記載する保有者には他人名義をもって株券等を所有する者も含みます。27条の233項本文では「保有者には、自己又は他人(仮設人を含む。)の名義をもつて株券等を所有する者」等と言っています。

   しかし、名義人について、やりすぎの場合は、有価証券報告書虚偽記載になります。有名なケースは西武鉄道事件ですね。200410月に西武鉄道の大株主であるコクドが、保有する西武鉄道株を1000人以上の個人名義にしていたことが明るみに出ました。東証では、上場会社の上位10位までの大株主が保有する株式の合計が80%以上になると上場廃止になると定めていますが、コクドをはじめとする西武グループ10社が保有する西武鉄道株は88%を超えていました。つまり、コクドは上場廃止を避ける手段と高株価維持対応として、40年以上にわたり、多くの株式を個人名義にしていたのですね。

   西武のケースは上場廃止逃れと株価の高価格維持の操作ですね。この場合はやはり違法としか言いようがないでしょうが、別に名義人という視点では、多くの企業が行っています。やはり、名義人、議決権の実質権限者、お金の負担者の3者間の関係の整理とルールが必要なのではないでしょうか。

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