まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

子会社の粉飾決算等と親会社・取締役の第三者への責任

2011-02-01 01:10:35 | 商事法務

  子会社が不祥事や粉飾決算等を起こしたとき、親会社はその不祥事等の相手先である第三者に責任を負うでしょうか。法律上は勿論負わないと一般的には考えられていますね。別法人ですからね。株主である親会社は、子会社あるいは、子会社の取締役の責任を、親会社が負うということはありませんしね。→しかし、そう簡単に片付けて良い問題なのでしょうか。

○ 会社法23号の定義には、「子会社:会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。」として、施行規則3条では「財務及び事業の方針の決定を支配されている会社」として、法では「経営」と言っている言葉を「財務及び事業の方針の決定」という言葉に単に変換しただけの規定をおいています。(まあ、「変換」としてはへたくそですね)

  

会社法への疑問1):経営・財務や事業の方針の決定を支配しているのに、親会社の責任は無いのでしょうか。特に持株会社は、子会社の経営を支配するための会社ですよね。今の会社法には、連結経営にふさわしい規定がありませんね。しかし、まあ詳細に見れば少しはありますね。単なる付け足しで、きちんとしていませんけどね。(*)

*法人税基本通達9-4-1では、子会社等を整理する場合にやむを得ず損失を負担した場合には、寄付金とはしないという解釈をしていますが。

○ 取締役会の義務である内部統制を定めた36246号(大会社である取締役会設置会社は5項で義務化)は、本来なら子会社を含めた内部統制とすべきですが、そういう規定にはなっていませんね。しかし、施行規則10015号には、「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制としてグループ企業を含めた連結ベースの内部統制構築の定めがあります。 まあ、グループ企業を含めた内部統制を、有価証券報告書にきちん記載している会社はあまりないようですけれども。

会社法への疑問2):会社法の内部統制の規定は、付け足し&おまけで不十分だし分かりにくい。もう少しきちんとした規定の仕方をしてもらいたいですね。

  444条では、連結計算書類の作成についての記載があり、「作成することができる」としていますが、3項では有価証券報告書提出会社については、作成を義務としています。一方、役員等の第三者に対する損害賠償責任を定めている429条では、以下の様に規定しています。しかし、どういうわけか「計算書類」とだけ記載されています連結計算書類を含むのかどうかが、条文からはわかりません。連結経営が当然の時代なので、当然「連結計算書類」は含んでいると考えるのがあたりまえと思うのですが、どうも規定ぶりからみると連結計算書類が含まれていない感じもします。

4291項:役員等が、その職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。21号ロでは、注意を怠らなかったことを証明したときは除外していますが、取締役及び執行役が、以下の行為をしたときの賠償責任を規定しています。

「計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書並びに臨時計算書類に記載し、又は記録すべき重要な事項についての虚偽の記載又は記録」

会社法への疑問3)

  子会社が粉飾決算を行えば、それは当然親会社の連結計算書類に含まれます。重要な子会社の場合は、親会社の連結計算書類でも、重要な事項となりえますし、虚偽の記載になりますね。429条の計算書類に連結計算書類が含まれているのでしょうか?

 注意を怠らなかったことの証明は容易ではないですね。ところで、この注意義務には、子会社の管理監督を含むのでしょうか?

○ 尚、参考までに、金融商品取引法の21条では、「虚偽記載のある届出書の提出会社の役員等の賠償責任」また、24条の4には、「虚偽記載のある有価証券報告書の提出会社の役員等の、有価証券を取得した者への賠償責任」を定めていますね。


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