まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

開業準備行為・設立費用と効果帰属

2008-06-02 14:37:54 | 商事法務

     開業準備行為・設立に関する費用等に関連する規定が会社法28条にあります。わかりにくい規定です。判例・学説もいろいろ有るようです。28条では、一号=現物出資、二号=財産引受、三号=発起人の報酬等、四号=会社の負担する設立に関する費用について、定款に記載・記録しないと効力を生じないとしています。但し、四号では例外を設けています。即ち定款に記載・記録しなくても、定款の認証手数料と施行令5条記載の費用(定款の印紙税・銀行手数料・検査役報酬・登録免許税)は、新会社の費用とすることができます。即ち発起人が負担しても新会社が成立したときに新会社に請求できますね。発起人側では立替金として処理しますね。

○ まあ、施行令に記載の無い費用でも、実際は新会社に負担させている例がありますね。例えば、会社成立前に役務提供の大半を行う司法書士の手数料とか、会社設立事務協力を行った会社の報酬等ですね。これは厳密にはグレーの領域ですが、まあやむを得ない範囲でしょうか。

○ 財産引受(*)は、開業準備行為の一種ですが、「財産引受以外の開業準備行為」もあります。「財産引受以外の開業準備行為」については28条では規定していませんし、会社法には規定がありません。従い、新会社に効果を帰属させることは出来ないですね。

       財産引受とは、発起人が会社の為に、会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける旨の契約を言いますね。例えば、「○○株式会社発起人代表XX株式会社」が、新会社が使用するサーバをコンピュータ会社へ発注・売買契約を締結して、その効果を直接新会社に帰属させる場合等ですね。仮に、発起人がお金を支払っても立替金であり、新会社に請求(立替金請求書)し、発起人に立替金を支払っても、新会社での支払先は直接コンピュータ会社になりますね。財産ですから、会社が成立し、支払うまでは、資産(サーバ)/負債(未払費用)となります。

     発起人の行為の効果が成立後の会社に帰属するのは、その行為が設立中の会社の機関として、かつ機関としての「権限の範囲内」でなされた場合に限られますね。「権限の範囲」については諸説があるようですが、学説の多数と判例(最判S42.9.26民集2171870頁)では、開業準備行為については、法定の要件を満たした財産引受だけが例外的に発起人の権限に含まれるとしていますね(最判S28.12.3民集7121299頁)。

     整理して考えて見ましょう。以下のような視点で考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

     開業準備行為(財産=資産+負債の取得か、それとも費用の支出か否か)か、設立に関する費用かどうか?

     開業準備行為で、発起人が(新会社が使用する)資産として取得してしまったかどうか、それとも財産引受の要件を具備して資産を取得する契約を締結した段階かどうか?(開業準備行為の費用は、新会社に帰属せず、発起人の責任となる)

 発起人の法律行為の効果が新会社に帰属するには、原則として、発起人は、顕名主義、即ち「○○株式会社発起人代表XX株式会社」として、当該行為を行わなければならない。

-         開業準備行為では、発起人は、財産引受を除いて新会社の為にこれを行う権限は無いとされています。従い、財産引受の要件を満たさなければ、その効果は新会社ではなく、発起人に帰属する。但し、一旦発起人が自ら資産を取得して、新会社に譲渡することはできる(純資産の1/5超の金額の場合は、4671項五号(事後設立)の規定が適用)。

-         設立に関する費用については、発起人の行為の効果は、定款記載の範囲内で、かつ検査役調査で認められた範囲で新会社へ帰属し、新会社はその費用を負担する。それ以外には効果は帰属せず、発起人自身の責任となる。但し、法令に記載されている印紙税・登録免許税等は定款記載・検査役調査不要で、発起人が負担しても立替金として新会社に求償できる。

○ ついでに、税務上はどの様に考えるのでしょうか。参考までに法人税基本通達の関連規定を記載しておきましょう。

2-6-2(法人の設立期間中の損益の帰属)法人の設立期間中に当該設立中の法人について生じた損益は、当該法人のその設立後最初の事業年度の所得の金額の計算に含めて申告することができるものとする。ただし、設立期間がその設立に通常要する期間を超えて長期にわたる場合における当該設立期間中の損益又は当該法人が個人事業を引き継いで設立されたものである場合における当該事業から生じた損益については、この限りでない。

法人税法は、基本法である会社法フォローですね。設立期間中=定款認証、印紙等の費用は、設立後の会社の損益として申告する事ができる。しかし、通常要する期間を越えて長期にわたる場合、その期間の損益は、この限りでない=設立後最初の事業年度の所得の金額の計算に含めて申告することは出来ないというのがこの規定ですね。

尚、「会社成立前の事業に関する損益については、設立準備に伴って必然的に生じる損益を除き(上記)、会社に帰属しないのが原則」というのは、当たり前の事なので、法人税法には記載がありませんね。


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