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まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

台湾の主張 李登輝 1999年執筆(1923-2020: 総統1988-2000)を読んで

2025-05-16 23:08:54 | 国際・政治
〇P48現在(1999年)のところ、中国は決してアメリカに拮抗するような「大国」ではない。―もし中国がアメリカのそうした基盤のかなりの部分を自分のものにしたと判断すれば、現在のアメリカ追従を放棄して、アメリカをアジアから排除する方向に転じるだろう。
〇P59 易の道理を探求する過程で私は、更に深く中国の伝統哲学の人本思想を会得することが出来た。多くの人々は、民主と自由は外来の概念であると思い込んでいる。――儒家が早くから自由主義と民主主義を重視していた事実が判明する。ただその後中国は長期間にわたって封建体制に束縛され、固有の人本主義は歪められた。
〇P62 孫文の三民主義:民族、民権(人民の権利)、民生(国民福祉)。民権主義と「天下は公のために」が中国人には欠落している。中国人は利己主義に走りがちであり、社会との調和を生み出すのが不得意である。
〇P71共産革命によって生まれてきたものが何かと言えば、--「覇権主義的な中華の復活」だった。誇大妄想的な皇帝的支配が蘇ったのである。
〇P82政治家の役割:1) 中国の政治とはなによりもまず「国民を管理すること」にほかならなかった。「民を如何に支配するか」であった。中国ではいまだに昔ながらの政治を行っている。
2)私は政治的な駆け引きよりも、台湾を発展させるための「仕事」を多く行ってきた。台湾のために何をなすべきかを考え、仕事を設定してそれを遂行するのが私の任務である。
〇P87票が欲しいだけの政治は国を害す。「確かに長期的観点に立てばこの政策は必要だが、それを主張すると票が集まらない」という事態がしばしば起こる。政治家同士が国民の前で議論することだろう。
〇P131 未来を拓くのは教育。台湾人は教育熱心な国民。政府予算の15%は、教育と文化に回す。教育改革の中には、魂=台湾では心霊=日本では「こころ」の教育が重要。経済活動の進展は、社会に功利主義的な考え方や投機的な心情をはびこらせ、民主社会に不可欠である相互寛容の精神や相互尊重の気持ちを失わせる危険がある。伝統的文化にある美徳、例えば勤勉・倹約・誠実・互助精神を養うことが重要。
〇中国に望むこと:P143経済的には市場経済だが、政治的には共産党一党独裁体制。少数者の権威主義的かつ独裁的支配が続いている。体質は変化していない。政治的に共産主義、経済的に市場経済という制度は、基本的に重大な矛盾が存在している。
〇対中国:P146中国政府は覇権主義的かつ闘争的で、常に台湾に牙を剝きだしている状態。「急がずに、忍耐強く」という姿勢が必要。
〇対日本:P170自信喪失からの脱却。中国は、戦争中の日本の行為について、これからもことあるごとに問題化するだろう。それは中国の戦略で、投資を含めた日本からの援助を引き出す目的があるからだ。戦前の日本は、勿論多くの問題があったが、日本の主張というものを行ってきたが、戦前・戦中の失敗を経て、戦後になると、対外姿勢に過度の弱さがつきまとう。また、バブル以降の日本の政治家は、発想上の柔軟性が欠落している。
〇P178日本停滞の原因:1)政治家の世襲制、2)排他性の強い官僚主義、3)必要以上の自信喪失
〇P180 多様性の回復:多様性を生かしうる包容力のある社会づくり。例えば、法人化の遅延した農業政策。既成の権益による、多様性の妨害。
〇P198問題は「信念」なのだ。自らに対する信頼と矜持に他ならない。現在の日本の政治的混迷をみるたびに、また様々な日本社会の停滞について耳にするたびに、私はそのことを思い出す。
〇台湾・アメリカ・日本について:P231中国が覇権主義を拡大したとき、日本の「存在」が脅かされる。日本の地理的位置づけから見ても、台湾とその周辺が危機に陥れば、シーレーンも脅かされて、経済的にも軍事的にも日本は孤立することになってしまうだろう。戦略的に見ても、台湾の存在は大きい。
〇P243自分の行ってきた民主化は過去と決別したように見えるかもしれない。しかし、孫文の三民主義を引き継ぎ蒋介石・蔣経国親子の権威主義を経て今の台湾がある。中国人ではなく、台湾を愛し、台湾のために尽くす「新しい台湾人」が生まれてほしい。

偽情報と独裁者 マリア・レッサ 竹田円訳 河出書房新社(22年出版 23年4月翻訳出版)を読んで

2025-05-14 15:43:02 | 国際・政治
Maria Ressa フィリピン生のジャーナリスト。10歳で渡米。プリンストン大卒後帰国。CNNのマニラ・ジャカルタ支局開設・運営。2012年インターネットニュースサイト「Rappler」 https://www.rappler.com/ 米国TIMEのPerson of the Year, 2019年英国BBC「100人の女性」に選出。2021年ロシア独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長ドミトリー・ムラトフと共に、ノーベル平和賞を受賞。現在=2022年7-8件の罪で裁判中(2023.1脱税容疑の4件は無罪確定)。汚職と不正を取上げ、権力者から不当な弾圧を受け、10回逮捕状がだされた。しかし、2019.2に初めて逮捕。その後保釈保証金を納付して保釈中。(前大統領のドウテルテ、現大統領のマルコス・ジュニア等から)
偽情報とその拡散を行うソ-シャルメディア(アルゴリズムで、内容の真偽を問わず刺激的・煽情的な内容が表示できるように設計されている。あまりにひどいものは、プラットフォーム会社がここ2-3年規制を始めた。またソーシャルメディアは海外からの書込み(トランプ支持の内容をロシアが発信)が多い。(尚、フィリピン人は、インターネット等のソーシャルメデイアの接続時間が世界一の国民で、伝統的なジャーナリズムは力を失った)
(P14-16) 2015年には、フィリピンで複数のアカウント工場が、携帯電話番号認証システムを利用してソーシャルメディアのアカウントを生成しているという報告があがっていた(=膨大なフェイクアカウント)。同年ドナルド・トランプのFacebookの「いいね!」*の大半は、フィリピンを含む米国以外からつけられたもの。
(P152)「フォロワー」を売っていた会社の一部はフィリピンにオフィスがあった。⇒ソーシャルメディアは、民主主義の行われている場所を破壊している。嘘というウイルスを私たちに感染させて、互いに争わせ、恐怖、怒り、憎しみを煽り、あまつさえこれを作り出し、世界中で権威主義者と独裁者の台頭を加速させてきたのを目撃し、記録してきた。2018年には、怒りや憎しみを織り交ぜた嘘は、事実よりも広く広範囲に拡散することが、研究により明らかにされている。情報を隠蔽して、嘘と交換する。トランプは、2020年の米大統領選挙で票が盗まれた、選挙泥棒を止めろと言った。独裁者フェルナンド・マルコスは、1972年に戒厳令を敷き、21年政権の座に居座り、盗賊政治(Kleptocracy)を行い、国の財産を私物化100億ドルを盗んだ。(1986年ピープルパワー革命で夫人のイメルダと逃亡)
*ソーシャルメディアボット:偽アカウント、フォロー、いいね、コメントなどの偽のソーシャルメディアアクティビティを生成するアカウント。コンテンツをスパムしたり、人気を高めたり、誤った情報を広めたりする。
(P160) 米国Facebookのプラットフォームでは、極右とオルタナ極右間で多くの嘘が拡散されていた。Facebookは、それを証明するデータを有しながら、共和党との関係がこじれるのを恐れて何の対策もしなかった。
(P203)ロドリゴ・ロア・ドゥテルテは、事実・真実を報道するマスコミの弾圧を行ったが、それには野党党首で副大統領のレニー・ロブレロ(フィリピンでは、正副大統領は、別々の選挙で選ばれる)に、コンテンツクリエーターを雇って、誹謗中傷攻撃を行った。
(P216) 検事総長ホセ・カリダが、Rapplerは所有権と経営権を外国人が握っているという容疑で、Rapplerを証券取引委員会(SEC)に命じており、SECはRapplerの営業許可を取り消した(2018.1)。⇒記者会見で「活動継続」を表明。
(P222)手が付けられないほど偽情報がはびこった批判に対して、Facebook=現Meta(Mark Zuckerberg)は、友達や家屋がシェアーするものを(アルゴリズムを修正して)優先するとした。⇒結果、ジャーナリストと報道機関の弱体化が進んだ。
(P273)2020.11-12 トランプの常軌を逸した振る舞いがエスカレートしていることを踏まえて、緊急に以下の3つをFacebookに要求したが、Facebookは要求を拒否し、逆にRapplerを攻撃した。1)暴力を煽る投稿を削除。2)選挙結果を否定する広告を禁止する。3)選挙結果に関する偽情報や不正確な情報を阻止する為の措置を講ずること。
(P282) 2020.9Facebookは、やっと中国が情報操作していた複数ページを削除した。その中には、マリア・レッサを標的にしているもの、マルコスのイメージを美化するもの、ドウテルテ大統領の娘を支援するもの、米大統領選挙に備えてAIで生成した写真を使ってフェイクアカウントを作成しているものがあった。Rapplerの報道もあり、人権活動家、ジャーナリスト、一部政治家に「テロリスト」と烙印を押す軍や警察のアカウントの削除も行われた。また、ネット上の暴力を現実世界の暴力変える符牒は何かの調査も行った。暴力的メッセージを送り続けることで、人権団体「カラパタン」の15人が殺害されていた。
(P302) マルコス:盗賊政治で国から吸い上げた資産は100億㌦。イメルダの靴コレクションが悪名。2020末現在で、内34億ドル返還。人権について、7万人が逮捕、3万4千人が拷問を受け、3240人が死亡。
(P304)マルコス・ジュニアは、マルコス政権の乱暴狼藉の数々、盗賊政治、人権侵害について、控えめに言ったり、真っ赤な嘘をつく一方、業績については誇張し、批判者、ライバル、主流メディアを中傷。⇒プロパガンダは、歴史の書き換えに有効。嘘は、そのあとで行われるファクトチェックよりはるかに拡散される。
〇トランプの嘘の数:2021.1.26 朝日新聞(ワシントンポストの1.23の記事を引用) 「トランプ氏、虚偽など3万回」 
  https://www.asahi.com/articles/DA3S14778082.html
2年で8158回 NHK https://www3.nhk.or.jp/news/easy/k10011787091000/k10011787091000.html
その他の新聞でも「トランプの嘘報道多数」
〇 イーロンマスク (https://x.com/elonmusk):陰謀論の捏造投稿を拡散 BBC日本 https://www.bbc.com/japanese/articles/c23l805lzneo
  今回の選挙で、X(フォロワー:2億以上)に投稿した内容の半分以上は、虚偽又はミスリーディングだと言われている。
  ファクトチェックを複数の機関が行っていた。
ドイツの公共放送⇒ https://www.dw.com/en/fact-check-how-elon-musk-is-spreading-us-election-lies/a-70663408,
〇 トランプ政権(2016)の首席補佐官(2017.7-2019.1まで)John Kellyは、今年10月下旬にトランプをファシスト/独裁者と語っている。ABCやCBSニュースで報道されている。https://www.youtube.com/watch?v=GQazdiCoBMw,