まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

米国独禁法の概要③-知的財産と独禁法

2013-04-04 23:05:41 | 商事法務

 

 特許は独占を認めますね。大変なチャレンジと努力の成果ですし、その結果として収益機会の独り占めは認められて当然ですが、特許は公開され、それを超える技術の進歩を促します。だから、特許は、反競争的性格と競争促進的(Pro-competition)の性格がある訳ですね。特許は、反トラスト法(米国独禁法)を排除するのが原則なのですが、特許を利用して競争を制限して不当に利益を独占しようとする動きは、やはり反トラスト法の対象となります。但し、特許等で保護される範囲と反トラスト法で規制する部分の境界が不明確というのが実情ですね。従い、米国司法省&FTCは、「知的財産のライセンスに関する反トラストガイドライン(Antitrust Guidelines for the Licensing of Intellectual Property, Apr. 1995)」を公表しています。暇とご興味のある人は、これを読んで私に教えて下さい。私は、読んでいません。

【1】特許の取得 

特許の取得は、原始取得、承継的取得とグラントバックによる取得の3つがありますね。

 原始取得(Acquisition by Grant from the Patent Office) ? 原則として反トラストの問題は生じませんね。例外的に独占訴訟において特許取得そのものが独占行為とされる余地がないわけではないですが。

 

 承継取得(Acquisition by Purchase) - 特許は当然資産ですから、Clayton Act7条の資産取得による反トラスト規制に服します。そこでは、直接間接の株式取得に加えて、「no person subject to the jurisdiction of the Federal Trade Commission shall acquire the whole or any part of the assets of another person engaged also in commerce or in any activity affecting commerce, where in any line of commerce or in any activity affecting commerce in any section of the country, the effect of such acquisition may be substantially to lessen competition, or to tend to create a monopoly.と規定しています。

米国のシンガーミシンが、日本製のミシンを駆逐する目的で、スイス・イタリアの会社から特許を譲り受けたことがSherman Act 1条のconspiracyになるとされました(United States v. Singer Mfg. Co.-374 U.S.174 1963, Supreme Court 1969

 

 グラントバックによる取得(Acquisition by Grant-Back) ? これは問題になるケースがありますね。グラントバックとは、特許実施契約でLicenseeの改良発明をLicensorに、譲渡又は実施権許諾をする条項です。一種の抱合せ(tie-in)契約ですね。有体物ではないので、Clayton Act 3条は適用されずSherman Act 1条の「合理の原則(rule of reason)」により判断されます。その場合の考慮点は、1) 改良発明と対象製品に対するLicensorの立場、2) Grant-backが当事者の研究開発に与えるインセンティブ・ディスインセンティブ,3) Grant-backが独占的実施権の形態かどうか、4)相互性があるか。即ちLicensorも自らが開発した改良発明をLicenseegrantするかどうか、5)基本特許と改良発明との関連性、6)Grant-back条項の期間は基本特許の期間を超えているかどうか、7)Royaltyの支払義務があるかどうか等により判断されます。

 

2】特許ライセンス(実施許諾)契約

  特許ライセンス契約自体は、特許権の権利行使なので当然問題になりません。反トラスト法上適法です。但し、実施許諾契約が、a) 水平的に競争者間で価格協定、市場分割、あるいは過度な取引制限を行う共謀を行う手段の場合には、反トラスト法が介入します。また、b) 排他性(exclusivity)があるかどうかという点もポイントになりますが、実施許諾にあたり、特許権行使を実施権者に認めるExclusive License(専用実施許諾。勿論この場合も適法)と、特許権行使を実施権者に認めないNonexclusive License(通常実施許諾)にするか


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