まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

M&A ―Due Diligence(DD)のポイント

2007-02-20 00:50:58 | M&A

M&AではDDを行って、買収対象会社の内容把握と買収金額の算出・妥当性?の検証を行いますが、その際のポイントは何でしょうか?

DDを行う際には、当該企業用のチェックリストを(出来れば自分であるいはアドバイザーのアドバイスも参考にして)作成した方が良いですね。DDの体制、とりまとめ役、責任者等もハッキリさせて、そのチェックリストに基づきマネジメントと緊密な連絡を取って行いましょう。

チェックリストは、全体をカバーし大項目、中項目、小項目に分類して、更に重要調査項目・重点度も明記、かつワンポイントコメントもつけて、当該事項の調査ポイントも記載しておきましょう。弁護士事務所などから出来合いチェックリストをもらうこともありますが、平板で何が重要かわかりません。案件毎に自分で作成しましょう。

1)             買収企業の経営陣による売却企業の経営者等との面談等

買収企業は、買収後対象企業を未来に向かって経営します。買収したら、買収事業をどの様に経営するか、自社との相乗効果・相互補完をどの様に発揮するか、どういったカルチャーで、どの様な人が働いており、差し当たりの経営陣をどうするのか等を検討します。

2)             買収企業の各部署の担当責任者による売却企業の資料の分析と必要な面談

売却企業の事業の詳細を調べて、具体的に今後どの様に変革していくかなどを検討します。メーカの場合は大変です。製品、技術力、研究開発力、品質管理、環境等調査も膨大になります。いくつもの作業グループを組成して調べます。コンピュータ・通信システムの概要を調べて更新・統合の可能性等の調査も必要です。人事制度、給与レベル、退職給付債務(厚生年金基金等)。

     ポイント:買収企業と売却企業が主役です。投資銀行・監査法人のコンサルティング部門・弁護士等は脇役です。買収結果や今後の経営に何の責任も負わない脇役をあまり頼りにしてはいけません。投資銀行等は案件が進み出すまではそれなりに機能がありますが、進み出したら多少のプロセスコントロールを行いますが、それほど機能があるわけでもありません。勿論TOB合戦や、新株予約権差し止め仮処分申請等の事態が発生したら別ですが。

3)             財務

DD

(1)    監査法人のコンサルティング会社が通常は行います。数字を通して、会社の全体像を把握します。しかし、これは過去及び現在までの調査で、事業の将来を予測するものではありません。事業を買収して経営するのは、買収企業です。

(2)    まず数字自体が信用出来るかチェックが必要ですね。(いやがる会社も多いですが)3期間ぐらいの税務申告書のコピーを入手しましょう。ポイントは、売掛金、棚卸資産等いくつかの項目ですが、退職給付債務、役員報酬等もきちんと調べましょう。棚卸資産等も年齢調べをして稼働・滞留を調べます。また、実際の棚卸資産の管理等買収企業の担当者等も管理の状況やコンピュータシステム等をきちんと調査しましょう。

4)             法務DD&契約書作成

(1)   DD:重要契約はきちんとチェックしておく必要があります。最近の国際的なライセンス契約では、合併や企業再編が行われたときは、契約解約の条項が入っている場合がありますからね。これは別に弁護士さんにチェックしてもらわなくても出来ますね。訴訟などを抱えておれば、弁護士さんの意見を聞くことも大切です。しかし、売却企業に変な締結済みの契約があっても変更出来る訳ではありません。ハッキリ言ってお金の割に、あまり機能が有るわけではありません。でも、法務DDもやったという事が買収企業の社内正当化に役立つなら、起用しても良いでしょう。

(2)   契約書作成:経験ある、また企業法務に詳しい弁護士さんに見てもらうか、作成・修正をお願いしましょう。弁護士さんによっては、あまりノウハウも無く、契約書も実務に根ざさない、抽象的かつ枝葉末節を、ぐじゃぐじゃ言う人がいますので注意しましょう。また税金問題の発生する場合は、監査法人のコンサルティング会社等と相談しましょう。

5)             買収金額の算出、妥当性?検証

(1)    買収金額は、背後事情、競争状態、力関係で決まります。1988年2月、米国のタイヤメーカであるファイアストーン(FS)とブリジストン(BS)との間で、BS75%出資でFSと合弁会社を作り、FSの海外工場の大半を、その合弁会社の傘下に収める内諾(MOU)が出来ました。ところがイタリアのピレリが、大きなお世話で、3月上旬にFS全株式を$58/株で購入するTOBを実施すると発表しました。これに対しBSは3月中旬$80/株で全株式の対抗TOBを行うと発表して決着しました。FSは事業低迷で、年初の株価は$10割れでしたが、BSとの合弁発表で$45に急騰、ピレリの横やりで結局BSは$80/株払う羽目になり、総額26億ドルで買収しました。(それからBSは、FSへの大変な追加負担と苦労が始まりました)また最近の例では、東芝のWHの買収価格は、三菱重工の倍近くの金額を提示したとも言われています。

(2)    相互補完、相乗効果のある売却企業なら、買収企業の経営者なら、だいたい勘が働く筈です。BSPLと事業概要が分かれば、相場観が働く筈です。まあ大体これぐらい、でも交渉事なので、百歩譲って「やむなし価格」ならこれぐらいと判断できます。(判断出来ないなら、経営者を止めるか、買収を止めた方が良いです)。

(3)    買収価格は、「豚に真珠」、その事業に興味の無い人には無価値です。買収して、事業・業績拡大したい買収企業には買う価値が有ると言うことです。上場企業で株価がある場合は別として、買いたさと売りたさの程度・強度、競争状態、背後事情(資金繰り、オーナーの事業承継、オーナーが株でちょんぼして大損等)等により決まります。最初から公正・適正な買収価格など存在しません。殆どのケース「やむなし価格です」

(4)    相手と交渉して妥結価格が見えたら、その価格が妥当である事、公正買収価格である事を装うために、また株主にも説明しないといけませんので、価格算出を行う必要があります。

監査法人のコンサルティング会社や、投資銀行に、DCFとか類似会社・業種比準、EBITDA multiplePER等いろんな方式がありますので、計算しやすい方法で計算してもらって、「買収価格は妥当である」という意見・報告書をもらっておきましょう。

今回はだいぶ長くなりました。これぐらいにしておきましょう。

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